服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版)

私のホームページ「ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪」(http://www.hattorimichitaka.com)のブログ版です。

カテゴリ: ウクライナ

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 こちらに見るとおり、駐ウクライナEU代表部が、2016年にEU・ウクライナ間の「深化した包括的自由貿易協定(DCFTA)」が発効したことにより、両者間の貿易が活発化したということを強調するリリースを発表した。それについて伝えた記事がこちらである。

 これによると、2016年にウクライナからEUへの輸出は3.7%増、往復の輸出入総額は8.1%増だった。2016年のウクライナの輸出の37.1%がEU向けであり、9.9%のロシア向けを大きく上回っている。今後7年間で連合協定が実施に移されていく中で、貿易関係はさらに拡大していくことになろう。ウクライナの法制および技術規制をEUのそれに適合させていることにより、ウクライナの輸出は利益を得ており、これらは関税引き下げ効果よりも大きいものであると、プレスリリースは強調している。


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 こちらの記事によると、ドンバス紛争の情勢悪化により、ここに来てウクライナのメトインヴェスト社の事業所で、操業が止まる事態が重なっているとのことである。具体的には、エナキエヴェ冶金工場と、原料炭を産出しているクラスノドンヴヒーリャで、操業の停止を余儀なくされた。軍事衝突の継続、ウクライナ政府支配地域と武装勢力の占領地間での鉄道輸送の封鎖が、その原因。デモ隊がЯсиноватая – Скотоватаяのチェックポイントを閉鎖して以来、占領地への原料の移入と、製品の移出が不可能になっている。この閉鎖は1月末に、野党議員および退役軍人が分離主義勢力とともに組織したもので、彼らはこの物流がオリガルヒの利益になっており紛争を激化させていると主張している。ポロシェンコ大統領は先日、封鎖は占領地の住民から電力と暖房を奪い、工場を停止させ、ウクライナから20億ドルの輸出収入を奪うと指摘していた。なお、エナキエヴェ冶金工場とクラスノドンヴヒーリャ自体はウクライナ政府の統治下にあり、ウクライナ政府に納税している。


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 2016年秋の動きなので、少々古く、かつマニアックな話題で恐縮である。こちらの記事が、興味深いことを伝えている。ロシアやベラルーシなどから成るユーラシア経済連合は、ウクライナから輸入するフェロアロイ(合金鉄)の一種であるフェロシリコンマンガンに、アンチダンピング関税を導入しようとした。連合の政府に該当するユーラシア経済委員会が、ウクライナのフェロシリコンマンガンに5年間にわたって26.35%の追加関税を導入すると発表したものである。フェロアロイは、製鋼の際に添加物として使用して、特定の性状を得るのために用いられる。ウクライナではI.コロモイシキーのプリヴァト財閥の傘下にニコポリ、ザポリージャ、スタハーノフと3つのフェロアロイ工場があり、2014年にはロシアに2億ドルのフェロアロイを供給していたが、それらがアンチダンピング関税の対象となることになった。しかし、ベラルーシのベラルーシ冶金工場や、ロシアの一連の鉄鋼メーカーは、ウクライナ産のフェロシリコンマンガンのユーザーであるため、ベラルーシ政府がAD関税に反対し、その結果、AD関税導入は当面延期され、政府間の協議に委ねられる旨が7月に発表された。それから数ヵ月が過ぎ、ようやく10月になってベラルーシも納得し、妥協が成立した。ベラルーシがAD関税導入に同意した条件は、ロシアのチェリャビンスク電気冶金コンビナートがベラルーシにフェロアロイを供給する際の価格を20%引き下げるというものだった(こちらによれば、チェリャビンスク電気冶金コンビナートはロシア最大のフェロアロイ生産者であり、そもそも今回のAD導入は同社の発意によるものだった)。AD関税導入後、チェリャビンスク電気冶金コンビナートが損害を受けない水準まで、製品が値上がりすると見られる。これにより、ロシアの鉄鋼メーカーも影響を受けるが、鉄鋼メーカーの生産原価に占めるフェロシリコンマンガンの比率は1~2%程度なので、影響は軽微とされている。

 ユーラシア経済委のこちらのページが、本件に関する公報だろう。なるほど、2016年6月2日に採択された文書が、2016年10月28日に発効したと記されている。


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 EUが2016年10月に発行した 34th Annual Report from the Commission to the European Parliament and the Council on the EU's Anti-Dumping, Anti-Subsidy and Safeguard activities (2015) というレポートを眺めているところである(やや重いがこちらからダウンロード可能)。EUが他国の産品に課している反ダンピング・反補助金措置について、2015年までの状況をまとめたものである。2011~2015年に新たにEUによる反ダンピング・反補助金調査の対象になった事案を産業部門別にまとめたのが上のA表、対象国別にまとめたのが下のB表ということになる。産業部門では鉄鋼が多く、国では中国が多いという、イメージどおりのデータとなっている。私の関係国では、この間にベラルーシが1件、カザフスタンが1件、ロシアが4件、ウクライナが1件、調査の対象となった。

 それにしても、こんなことを言うのはナイーブかもしれないが、EUのアンチダンピング政策は恣意的だなと、改めて思うわけである。EUが2008年にロシア・ウクライナ・ベラルーシおよび中国産の溶接管を対象に導入した反ダンピング関税がある。こちらに見るように、EUは2015年1月に、ロシア・ベラルーシおよび中国に対してはその反ダンピング関税を維持する一方、ウクライナは同措置から外す決定を下した。その説明が振るっていて、

 Following disclosure, interested parties argued that maintaining the measures in force against Russia while terminating the measures in force against Ukraine (see below) amounts to discrimination, since Russia and Ukraine allegedly had similar spare capacities.

 This claim is not supported by the findings of the investigation, which established significant spare capacities in Russia accounting for at least most of the consumption on the EU market. On the other hand, for Ukraine, it was established that the available spare capacities for exports to all countries are limited. Due to this significant difference in spare capacities, the claim of discrimination is therefore rejected.

 ロシアと違って、ウクライナはダンピング輸出できるような遊休設備が限られているので、もはやダンピングの心配はない、したがってこれはロシア差別・ウクライナ優遇ではないのだ、と主張している。別のところでは、(ウクライナの支配的な鋼管メーカーである)インテルパイプが仮に60%輸出を増やしても、EUでのシェアは0.5%程度にすぎない、とも。よく言うよなあ。なら、なぜそもそも2008年にAD関税適用したのかという話だ。


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 昨年末のこちらのエントリーで、ウクライナがロシア産の窒素肥料にアンチダンピング関税を課す決定を下したということをお伝えした。しかし、最新のこちらのニュースによると、アンチダンピング関税は2月28日から導入される予定だったが、ウクライナ政府の省庁間国際貿易委員会は2月13日、その導入を当面延期することを決めた。農業省の働きかけもあり、国内の窒素肥料不足、それによる価格高騰が農業に打撃を与えないよう、配慮したものである。今後は、中国、中近東、米国などからの調達を確保し、供給源を多角化して市場の安定を図る意向である。


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 ロシアではワインのボトリングがそこそこ行われているが、自国で醸造しているというよりは、海外から安いワインの原液を樽で買ってきて、単にロシアの工場でボトリングしているだけのパターンが多い。そうした中、ウクライナから併合した(国際的には承認されていない)クリミアは、本物のブドウおよびワインの産地として名高い。しかしながら、昨今では、実際には輸入樽ワインを使っているのに、パッケージにクリミアの風物を描いて、いかにもクリミア・ワインと見せかけた商品が出回っているようだ。

 しかし、こちらの記事によると、ロシアは特定産地のブドウを使用している醸造所には、その旨の証明を与えるということを始めたそうである。クリミアで収穫されたブドウを85%以上使用している場合に、正真正銘のクリミア・ワインという称号が与えられる。そして、2016年11月に有名なマッサンドラがその証明を取得したのを皮切りに、ノーヴィ・スヴェート、ソルネチナヤ・ドリナと続き、今般アルマ・ヴァレーが加わって、これで4ブランドがその指定を受けたことになる。


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 ちょっとした備忘録なのだけど、日本のテレビニュースで、こんな報道がなされた。

 北方領土の歯舞群島の島の一つに、ロシア側が第二次世界大戦終結時、日本の降伏文書に署名したロシア軍人の名をつけたことが明らかになりました。

 タス通信によりますと、ロシアのメドベージェフ首相が千島列島や北方領土で名前がついていなかった5つの島に対して、ロシア名をつける指示書に署名したということです。そのうちの一つは、歯舞群島の秋勇留島付近の島で第二次大戦終結時、日本の降伏文書に署名したロシア側代表の、デレビヤンコ将軍の名がつけられたということです。

 島の命名については、2010年からサハリン州議会で検討されてきましたが、現在、北方領土での日ロ共同経済活動の公式協議を行う準備が進められているなかで改めて、ロシア側の実効支配が強調された形です。

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 当方、歴史に疎く、デレビヤンコ将軍というのを知らなかったので、確認のために調べてみた。ウィキペディアのこちらのページにあるように、Кузьма Деревянкоであり、「ジェレヴャンコ」と読んだ方がずっと自然だろう。キエフ近郊の生まれで、民族的にはどう見てもウクライナ人であろう(ウクライナでも2007年に英雄の称号を授けられている)。


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 こちらの記事によると、EUは2月8日、ウクライナ制ワイヤーロープに課していたアンチダンピング(AD)関税を10日から撤廃することを発表した。このAD関税はウクライナのスタリカナト・シルル社の製品を対象に導入されていたものであり、1999年に51.8%の税率で導入され、実質的にEU市場への輸出が不可能になっていた。2016年1月に同社とウクライナ政府の尽力によりAD関税率が51.8%から10.5%に引き下げられ、これによりようやくEU市場への輸出再開が可能になっていた、という経緯がある。今回の撤廃により、EUがウクライナ産品に適用しているAD措置としては鋼管を残すのみとなり、ウクライナ政府は鋼管に対するAD適用は現状にそぐわないとして、その撤廃を求めていく構えである。

 なお、対象となっているウクライナのスタリカナト・シルル社のHPはこちら。2010年12月にオデッサのスタリカナト社とドネツィク州ハルツィシク市のシルル社が合併してスタリカナト・シルル社となった由である。


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 こちらの記事が、ウクライナの「レイティング」という機関が同国で実施した全国社会調査の結果概要について伝えている。調べたところ、原典はこちらであろう。調査によれば、ウクライナ国民の33%が、自らを貧しいと答えている。貧困者は、東部居住者、高齢者、農村居住者に多かった。一方、自分は社会の上層に属すと答えた回答者は、18%にすぎなかった。

 以上が結果概要だが、ただ、貧困が33%、上層が18%という自己評価は、まあ普通ではないかという気がするし、もはや日本社会もそう変わらない感じがする。また、かつてウクライナの貧困と言えば西部というイメージがあったが、政変後、東部が没落したということだろうか。後日時間を見付けて、もう少し読み込んでみたい。


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 こちらの記事によると、2016年にウクライナはロシアから天然ガスを輸入せず、輸入は全面的に欧州から行った。輸入量は、2015年の164億立米から、2016年の111億立米へと、32%縮小した。2016年の輸入のうち、国営ナフトガスが82億立米、民間企業が29億立米であり、民間企業の比率が拡大している。

 一方、こちらの記事によると、2016年のウクライナにおけるガスの消費は、住民が119億立米(5%増)、産業需要家が99億立米(12%減)、住民向けの暖房・給湯が57億立米(3%減)、公共施設および産業向けの暖房・給湯が16億立米(33%増)などとなっている。


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 Russia & CIS Metals and Mining Weekly(January 20 – January 26, 2017)が、2016年のウクライナのコークス産業の実績に関し伝えている。これによれば、2016年にウクライナのコークス工場には、1,760万tの原料炭が供給され、これは前年比11%増だった。その内訳は、輸入炭が1,180万t(19%増)、国産炭が580万t(2%減)だった。その結果、輸入炭の比率が67%となった。2017年初頭現在の原料炭のストックは、30万t程度となっている。2016年にはコークス工場から製鉄所に1,070万tのコークスが供給され、これは前年比11%増だった。他方、2016年には120万tの輸入コークスが供給され、これは前年比8%減だった。国産と輸入を合計して、計1,190万tのコークスが製鉄所に供給されたことになり、これは前年比8%増だった。


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 こちらのページに見るように、世界鉄鋼協会は先日、2016年の全世界の鉄鋼生産動向に関する主要指標を発表した。全世界の生産量は、2015年の減産から一転し、2016年には前年比0.8%拡大して、16億2,850万tとなった。全世界の生産の約半分を占める中国も、2016年には1.2%増を記録した。

 粗鋼生産量ベスト10の顔触れは、下表のとおりである。私の関係国では、ロシアが世界5位で前年比0.1%減。ウクライナはドンバス情勢が落ち着いたことで生産が5.5%上向き、世界十傑に復帰した。なお、この表にはないが、ベラルーシは223万t(前年比11.2%減)、カザフスタンは424万t(8.5%増)、モルドバは7.6万t(前年比82.8%減)であった。

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 こちらによると、欧州委員会は、ウクライナ政府が起草した「2035年までのウクライナ・エネルギー戦略」の草案につき、批判的な見解を示した。欧州委の評価によれば、草案にはコンセプト上の不備が見られる。特に、2019年以降のロシア産ガスのトランジット、ドンバス紛争などに伴うリスク・不確実性を考慮しておらず、サイバーテロなどにも注意を払っていないことが問題である。市場価格への移行、交差補助の廃止などの課題にもしかるべく言及していない。ウクライナは国際公約で2020年までに再生可能エネルギー源を11%以上とする義務を負っているが、それに関しても草案は触れていないほか、大気汚染物質の排出削減目標の問題も扱っていない。さらに、今後19年間GDPが年率4.3%成長するという楽観シナリオしか想定していないことも問題である。


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 2017年1月13~19日付けインターファクス『ロシア&CIS金属鉱山ウィークリー』によると、2016年のウクライナのフェロアロイの生産は前年比16%拡大し、102.8万tとなった。ウクライナ・フェロアロイ生産者協会が明らかにした。

 シリコンマンガンの生産が81.5万t(16.7%増)、フェロマンガンが10.4万t(19.1%増)、フェロシリコンが10.1万t(12.4%増)だった。ただ、マンガン鋼の生産は26.5%減の7,420tだった。

 企業別では、ニコポリ工場が74.6万t(24.1%)増、ザポリージャ工場が品目ごとにまだら模様だったのに対し、スタハーノフ工場はドンバス紛争地にあり操業しなかった。

 ウクライナの2大マンガン鉱石鉱山であるオルジョニキーゼとマルハネツィは、需要の落ち込みで2016年1~2月には操業を停止した。通年では、オルジョニキーゼが73.8万t(18.5%増)を採掘したのに対し、マルハネツィは51.2万t(12.3%減)にとどまった。両鉱山合計のマンガン精鉱の生産は125万tで3.6%増だった。


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 こちらの記事によると、2016年のウクライナの鉄鋼業の生産は、銑鉄2,350万t(前年比8%増)、粗鋼2,419.6万t(同6%増)、完成鋼材2,140万t(同6%増)であった。

 一方、こちらの記事によれば、ウクライナ冶金産業による2016年の天然ガス消費は、2016年に17.4億立米となり、これは前年比14%減であった。また、こちらの記事によれば、ウクライナ冶金産業による2016年の電力消費は前年比4%増の129億kWhであった。


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 こちらに出ているウクライナ石油精製業の動向をごく簡単に整理しておくと、ウクライナでは石油精製業が2000年代半ばから一貫して危機的状況にあり、現時点で実質的に稼働している製油所は2箇所しかない。具体的には、プリヴァト財閥系のウクルタトナフタ傘下のクレメンチューク製油所と、ハルキウ州にあるシェベリンカ・ガス精製工場である。

 2016年1~7月にはウクライナに30.1万t、9,160万ドル分の原油が輸入された。主な輸出国はカザフスタンとルーマニア。クリミアとドンバス占領地を除くウクライナ国内の原油採掘は2016年1~7月に11.9%低下し、95.8万tとなった。2016年1~6月のガスコンデンセートの採掘は5.5%減の31.5万tだった。2015年の原油採掘は11.8%減の180万t、ガスコンデンセートの採掘は6.8%減の65.6万tだった。

 2016年1~7月にはシェベリンカ・ガス精製工場で9.7万tのガソリン(13.2%増)、7.6万tの軽油(20.5%増)、3.2万tの重油(2.9%増)が生産された。2015年にはそれぞれ17.7万t(13.8%減)、10.9万t(8.3%減)、5.5万t(2.4%増)であった。同工場では低品質のユーロ2製品の生産を取りやめ、ユーロ4に移行する作業を進めている。2016年春にはガソリンで、8月には軽油でその転換が終わり、9月からは白油すべてがユーロ4に移行することになっている。

 クレメンチューク製油所では、2016年上半期に、29.7万tのガソリン(24%増)、25.6万tの軽油(10.7%増)、7.8万tのジェット燃料(?、27.6%増)、16.2万tの重油(0.8%減)が生産された。2014~2015年の生産実績は明らかでないが、2015年9月からカザフ原油の供給が始まり、生産増に転じたとされている。プリヴァト傘下の他の2つの製油所は操業を停止している。

 ロシアのロスネフチの傘下にあるルハンシク州のリシチャンシク製油所は、2012年から不採算を理由に操業を停止している。ドンバス紛争の破壊も被った。地元行政では、2016年7月からポリプロピレンの生産が始まるとしていたが、現時点ではまだ実現していない。

 ヘルソン製油所は、コンチニウム財閥の所有となっているが、かなり以前から、生産アセットとは見なされておらず、どちらかというと、ここを基盤に新たな製油所を建設する敷地と見なされている。ナサリク・エネルギー相もウクライナには1箇所か2箇所の新鋭製油所が必要だと発言している。ただし、ヘルソンに新たな精製設備を建設するにも、10億ドル程度が必要である。

 オデッサ製油所は、かつてはロシアのルクオイルに、その後はオリガルヒのクルチェンコに属していた。亡命したクルチェンコの資産は、現在、裁判所によって差し押さえられており、したがってオデッサ製油所で近い将来に石油製品が生産される見通しはない。


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 いまや欧州最貧となったウクライナという国だが、ソ連時代の名残で、高度産業である航空機製造産業を抱えている。だが、同産業はロシアとの分業関係で成り立ち、なおかつロシアを主要市場としてきた経緯があり、ウクライナの政変後には産業としての存続が危ぶまれる事態となっているわけである。ウクライナの航空機産業につき、こちらの記事が報告しているので、ごく簡単に要点だけまとめておく。

 記事によれば、ユーロマイダン革命後、新たな方向性を模索するウクライナ航空機産業において、やはり焦点となっているのは、アントノフ社であり、同社が中核となって数十のウクライナ関連企業が結集できるかということが鍵となっている。アントノフは、定期的に話題には上るものの、それが実際の契約に結び付いたり、発注が実行されたりといったことは、必ずしも多くない。最近では、2015年6月にAn158をキューバの航空会社に引き渡した程度で、同機の納入は計6機になった。それ以降、何機かの受注が発表されたが、その多くは、サウジアラビアとの契約など、ウクライナ国外での組立を想定している。

 2016年夏、アントノフは、航空機エンジンの世界的大手である米ゼネラル・エレクトリック社と協力覚書に調印した。これに怒りを露わにしたのが、ウクライナの地場航空機エンジンメーカーであるモトル・シチ社のオーナーであり、最高会議議員も務めるヴャチェスラウ・ボフスラエフである。同氏は「ウクライナの声」に寄稿した文章の中で、本件はウクライナの国益、付加価値の高い科学集約産業に対する裏切りだと、アントノフと外資との提携を激しく非難した。

 当面、ウクライナの航空機産業には、2つの主要課題がある。生産および人員を市場条件に合わせて合理化すること、そしてロシア産の部材から国産または欧米産の部材に切り替えていくことである。ただ、輸入代替には時間と資金を要する。アントノフ社では、輸入代替プログラムはすでに80%完了したとしている。


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 上掲動画は、2015年9月にベラルーシ冶金工場(BMZ)で新たな圧延設備が稼働し、その際にルカシェンコ大統領が工場を訪問してセレモニーを行った際の様子である。

 こちらの記事などが伝えるところによると、この近代的な設備により付加価値の向上が可能になり、鉄鋼生産のバランスがとれるようになる。この設備の生産能力は年間70万tで、100万tまで拡張することも可能。すでに2015年3月から試験・調整運転が行われており、9月までに3.6万t、1,500万ドルが輸出された。生産の約75%が輸出されることが想定されており、また線材の完全な輸入代替、鉄筋の90%以上の国内自給が可能になる。輸出はブルガリア、イタリア、リトアニア、ポーランド、米国、フランス、チェコ、スロバキア、ドイツ、オーストリア、ベルギー向けに行われている。同プロジェクトの投資総額は3.3億ユーロであり、「2011~2015年のベラルーシ・イノベーション発展国家プログラム」に沿い、ベラルーシ政府の政府保証を得た上でユーラシア開発銀行およびベラルースバンクの融資により実施された。

 上掲の動画の中でルカシェンコ大統領は、この追加的な設備の建設は必須だった、なぜなら半製品をそのまま販売することは犯罪的ですらあり、付加価値の高い完成品にシフトしなければならないからだ、完成品こそより多くの利益をもたらし、ひいてはより高い賃金と税収に繋がる、今すぐにというわけにはいかないだろうが、将来的にはすべての半製品を加工して完成品を販売するようにしたい、などと発言している。これを見て、私は考え込んでしまった。半製品から完成品へのシフトという課題は、旧ソ連を代表する鉄鋼業立国のウクライナが取り組むべきなのに、独立後四半世紀も放ったらかしになっていた課題だからだ。ウクライナは鉄鉱石と石炭という資源と、ソ連から引き継いだ巨大設備がありながら、製鉄所を傘下に収めたオリガルヒたちは目先の利益を追い求め、延々と付加価値の低い半製品を生産・輸出し続けた。そして、付加価値が低くとも、それなりに利益は挙がったはずだが、そのお金はどこに消えてしまったのだろうか? それに対し、初期条件としては鉄鋼業の基盤が強いとは言えないベラルーシが、大統領の号令の下、設備投資を積み重ね、高付加価値化に取り組んでいる。。。私自身は、ルカシェンコ体制を肯定するつもりはまったくないのだが、こうした明暗を目の当たりにすると、「ウクライナよりもベラルーシの方がまし」と考える人々が少なくないのも、無理はないような気もしてしまう。


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 ウクライナのポータルサイトに掲載された情報にもとづき、同国の産業情報をお届けしているが、今回はこちらの化学工業。ウクライナの化学工業と言えば、窒素肥料産業が花形であり、この資料では窒素肥料メーカーの売上高・利潤指標(上掲)と、その他の化学メーカーの売上高・利潤指標(後掲)という具合に、区分されて掲載されている。ただ、解説文はほぼ窒素肥料に関する話だけとなっている。

 記事によれば、ウクライナの窒素肥料産業の利益率は、2015年にマイナス17~18%だった。もっとも、2014年がマイナス23.4%だったから、それよりは改善した。窒素肥料メーカーの税引き前損失総額は、2014年の360億グリブナに対し、2015年は200億グリブナだった。2016年に関しても、大きく改善する見通しはない。窒素肥料の生産量も連続で低下している。その原因は、2014年5月からドンバス地方に所在するホルリウカのスチロール社とセヴェロドネツィクのアゾト社が操業停止していることである。工場を保有するOstchemでは、国家が安全を保障することが再開の条件としており、特にホルリウカが占領地にあることを考えると、近い将来の再開は期待しにくい。Ostchemの他の2工場、リウネ工場とチェルカスィ工場も、原料となるガスの供給停止を受け、2015年に4ヵ月間操業を停止した。こうしたことから、2015年のOstchemのアンモニア生産は38%減、硝酸アンモニウムは25%減となった。国内需要が優先されたため、輸出はさらに大幅に落ち込んだ。

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 ロシアやウクライナでは、鉄道車両生産はかなり重要な産業である。ウクライナの鉄道車両産業の現況につき、こちらの記事が伝えている。

 記事によれば、ウクライナにおける貨車の生産は、2015年に前年比81.5%も縮小し、1,151台に留まった。企業別では、クリュキウ車両工場が489台、ポパスナ車両工場が350台、鉱山運輸会社が123台などであった。

 これに対し、2016年上半期の貨車生産は、前年同期比73%増の1,100台に達した。ただし、これはトルクメニスタンからの大型契約750台の賜物である。2016年通年の生産がどうなるかは、トルクメニスタンやウクライナ鉄道から大口の契約を取り付けられるかどうかにかかっている。

 ウクライナ鉄道は、従来も鉄道車両の修理は手掛けていたが、新社長の下、今後は自ら鉄道車両の生産にも乗り出す意欲を示している。

 ウクライナとロシアの関係悪化のため、ロシアへの輸出はまったく期待できない状況にある。しかも、ロシア自体の需要が縮小しており、2016年上半期のロシアの貨車生産は1万500台に留まり、これは2010年以降最悪の数字であった。


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 実は、タバコ産業は知る人ぞ知るウクライナの主要産業の一つである。タバコ産業が「成長産業」になっているという点で、世界の中でも稀有な事例かもしれない。また、ここにはJTIという日系企業(多分に多国籍企業ではあるが)の存在もあり、しかもウクライナから日本にタバコが輸出されているというデータもある(ただし、日本側とウクライナ側で統計データに齟齬が見られ、正確なところは良く分からない)。

 こちらの記事が、そのウクライナのタバコ産業・市場につき報告している。2015年にWHOが実施した国際調査によれば、ウクライナの喫煙率の高さは世界で18番目である。18歳以上の国民の30~35%程度が喫煙者とされている。ただし、以前はベスト10の常連であったのに対し、近年は喫煙率が顕著に低下している。BATによれば、ウクライナ国内市場の規模は、2012年の829億本から、2015年の702億本に縮小した。2008年から2014年にかけてのタバコの値上がり率では、ウクライナが世界のトップだった。その後さらに、物品税の引き上げが実施されている。

 ウクライナのタバコ生産を担っているのは同国に進出した多国籍企業であり、その売上高、純利の数字は表のようになっている。

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 デロイトが発行したウクライナ鉄鋼業に関するこちらのレポートに、興味深い図が載っていたので、そこだけ抜粋して取り上げさせていただく。2009年現在の鉄鉱石資源の埋蔵状況を図示したものである。グラフの縦軸は、鉄鉱石の埋蔵量を示しており、上に位置する国ほど埋蔵量が多いということになる。しかし、鉄鉱石というのは品位にばらつきがあり、鉄を豊富に含有しているものもあれば、わずかしか含んでいないものもある。品位の低い鉄鉱石は、選鉱作業を行って精鉱を得る必要があるので、それだけ商品価値も低いことになる。グラフでは、鉱石の鉄含有割合を横軸にとり、右に行くほど含有量の多く品位の高い鉄鉱石を有していることを表している。

 まあ、鉄鉱石資源については、様々な数字が飛び交う傾向があるように思うが、この資料によれば、図に見るように、ウクライナが世界で一番大量の鉄鉱石資源を抱えている。しかし、その品位は、主要国の中で最も低い部類である。それに比べると、ロシアは、埋蔵量がウクライナに次いで多いことに加えて、品位も一定水準を満たしている。私の理解によれば、円の大きさが、埋蔵量×鉄含有割合によって導き出した、Fe資源の純保有量を表しているのだろう。


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 ウクライナがこれだけ低賃金国家になると、これからますます欧州のアパレル下請け国家として名乗りを上げるようになると予想される。そんなわけで、こちらに出ているウクライナ・アパレル産業の動向について、簡単に骨子をまとめておく。

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 ウクライナの衣料市場において、過去2年ほどの重要なトレンドは、ウクライナの消費者が国産品への関心を強めていることである。

 ウクライナ独立後の25年間で、軽工業の生産量は10分の1に低下してしまった。軽工業が鉱工業生産全体に占めるシェアも、20%から、0.8%へと落ち込んだ。2015年にも軽工業の生産高は8.4%低下した。しかし、品目別に見ると、成長しているものもある。2015年に靴下・ストッキングは20%増、女性衣料は0.8%増だった。

 2015年現在、ウクライナには軽工業企業が2,500社あり、うち1,900が縫製工場である。企業数が多いのはハルキウ州271、リヴィウ州237、フメリニツィキー州152、ドニプロペトロウシク州104、キエフ州97などである。

 過去15年ほどは、ウクライナ軽工業は委託生産に注力している。生産全体に占める委託生産の比率は80~90%に上るという。New Look, Marks & Spencer, Next, Laura Ashley, Top Shop, Zara, Mexx, Triumph, BCBG, Esprit, Hugo Bossといったブランドのアパレルがウクライナで生産されている。それらはドイツ、イタリア、ポーランド、英国などに輸出されている。

 ウクライナの国内市場は、1,200億グリブナほどの市場規模がある。2015年の軽工業製品輸入額は18億ドルで、前年比27.3%減だった。ウクライナ国内メーカーにとって輸入代替生産の余地は大きい。ウクライナ国内生産にとって妨げとなっているのは、税制のまずさ、グレー輸入および生産、密輸である。ウクライナ生産者の80%は闇経済に従事しているので、公正な競争は成立しえない状況である。課税逃れをしている中国製品、トルコ製品の攻勢により、国内生産が圧迫されている。国内市場の67%が闇輸入または闇生産によって占められている。

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 こちらの記事にもとづき、本日はウクライナのコークス生産の動向を整理する。

 ウクルメタルルグプロムのデータによれば、2016年上半期にウクライナのコークス生産は27%伸び、550万tとなった。その結果、ウクライナはコークスの輸入を33%削減し、53.5万tの輸入で済ませることができた(これは統計局のデータ)。アルセロールミタル・クリヴィーリフは伝統的に、ポーランドにあるグループ企業のアルセロールミタル・ポーランドからコークスを輸入しており、2016年上半期にも38.3万tを輸入した。もう一つの大口供給国であるロシアからの輸入は26.9万tだった。

 ロシア産コークスを購入しているウクライナの鉄鋼メーカーは多くなく、購入理由は国内のコークス不足というよりは、ロシア産の高品質である。2016年にロシア産を購入したのは、イリチ記念冶金コンビナート、ザポリジスターリである。

 メトインヴェスト傘下のアウジイウカ・コークス化学工場は欧州最大のコークスメーカーだが、同社はドンバス紛争の軍事境界線に近すぎるという問題を抱えている。時折、インフラ、特に鉄道と送電線が、戦火の被害を受け、そのたびに工場は出荷を停止して復旧作業を余儀なくされる。2016年にも6月と7月に後半にそうした事態が起きたが、数日後には操業は再開されている。

 また、武装勢力の占領地で2016年初夏にコークスの出荷、原料炭の搬入の鉄道輸送に支障が生じたことも、各工場に打撃を与えた。それが特に該当するのが、占領地側にあるアルチェウシク、マキイウカ、ヤシニウカの各コークス化学工場であり、当時は鉄道出荷ができなくなり在庫を積み上げている状態だった。7月に鉄道輸送が再開され、ようやく困難が解消された。

 ウクルメタルルグプロムのデータによれば、2016年上半期にウクライナのコークス化学工場には300万tのウクライナ産原料炭(前年同期比9%増)、610万tの外国産原料炭(同33%増)が供給された。ドンバスの紛争開始以来、ドンバス炭の入手困難により、外国の原料炭への依存度は一層高まった。2013年には1,660万tのコークスを生産するのに1,140万tの輸入原料炭を要したが、2015年には1,160万tのコークスを生産するのに990万tの輸入原料炭を要している。製鉄メーカーが高炉での石炭粉注入にシフトするようになっていることも、より品質の高い外国産を求める要因となっている。ウクライナではコークス生産と発電用の両方に用いられる低品位の石炭がだぶついており、エネルギー石炭政策省としてはコークス化学工場への販売を拡大したいが、単体ではコークス生産には向かないので、より伝統的なKクラスまたはZhクラスと混ぜて使う必要がある。

 2016年に入って鉄鋼市場が改善し、占領地域の情勢もある程度安定したことから、2016年通年ではコークスの生産は前年比20%ほど拡大し、1,400万tレベルになると期待される。そのためには、1,200万tの外国産原料炭が必要である。


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 引き続き、Top-100の情報にもとづき、ウクライナの産業動向につき報告する。本日も昨日と同じこちらのページに出ている鉄鉱石部門の情報。

 製鉄部門と異なり、鉄鉱石の採掘産業は、それほど深刻な状況にはない。事業拠点がドンバスではなく、ドニプロペトロウシク州およびポルタヴァ州に所在しているからである。2015年の鉄鉱石精鉱の生産量は6,680万tで、これは2014年比で1.6%減、2013年比で2.3%減に留まった。同様に、2015年のペレットの生産量は2,170万tで、これは2014年比では1%減、2014年比では10%減だった。減産の原因は、国内需要の低迷と、世界的な市況の悪化である。

 こうしたことから現在各社は、精鉱およびペレットの鉄含有量の向上という製品品位の向上に取り組んでいる。だが、現在のところ数値指標に成果が表れるには至っていない。2015年1~7月のペレット生産は4.2%増だったが、鉄鉱石精鉱は減産が続き2.4%減となった。


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 引き続き、ウクライナ鉄鋼業に関連した情報の整理。2016年10月に出たこちらの記事が、ウクライナ鉄鋼業では危機にもかかわらず意外に投資意欲が旺盛だということを伝えているので、記事の要旨を以下整理しておく。

 2016年8月末にマリウポリを訪問したポロシェンコ大統領は、現在、鉱山・冶金部門で実施されている投資により、輸出増や歳入増が可能になると発言した。業界団体のウクルメタルルグプロムによれば、同団体に加入する製鉄所の設備投資は、2010年45億グリブナ、2015年83億グリブナ、2016年上半期26億グリブナと推移している。また、生産1t当たりのドル換算の投資額を見ると、2010年17.4ドル、2015年20.4ドル、2016年上半期8.8ドルとなっている。

 市況は引き続き厳しいものの、各社は新技術の導入、以前に着手した生産性向上のための投資プロジェクトを継続している。中でも野心的な投資計画を表明しているのはアルセロールミタル・クリヴィーリフで、2020年までに12億ドルを投下して近代化を実施するとしている。2015年に同社は51.7億グリブナ(約2.4億ドル)の設備投資を行った。

 メトインヴェストは、債務リスケとの絡みで、中期的な投資計画を表明するようなことはしていないが、2015年には2.9億ドルの、2016年第1四半期には0.5億ドルの設備投資を行ったということである。同社傘下の工場では、2.2億ドルを要したイリチ記念工場の焼結工場の大規模な近代化が完成段階にある。アゾフスターリの石炭粉注入設備も完成に向かっている。エナキエヴェ工場では2016年初頭に同様の工事が完了した(総工費1.2億ドル)。これらは環境対策の観点から重要な作業である。2016年9月にはイリチ記念工場に連続鋳造設備を導入する契約が結ばれ(総工費1.5億ドル)、これにより粗鋼・鋼材の生産能力が倍増し、従来平炉で生産されていた粗鋼に比べ品質が向上するとともに、環境面でも改善が期待できる。メトインヴェストがその他の投資家と対等出資で経営しているザポリジスターリでは、2015年に13億グリブナを投資し、現在は第3高炉の大規模改修の準備を進めている(15億グリブナを投資する予定)。ザポリジスターリでは、鉄鋼業が資本集約的でエネルギー多消費型であることにかんがみ、まさに省エネに重点を置いていくとしている。ザポリジスターリでは2016年上半期に生産を拡大しつつも天然ガス消費の15%削減に成功した。メトインヴェストでは、環境対策プロジェクトに加え、コスト削減プロジェクトも推進しており、エナキエヴェの石炭粉注入設備稼働、イリチの第4高炉の改修、アゾフスターリの第4高炉の近代化などはまさにその目的である。アゾフスターリのプロジェクトについては、ポロシェンコ大統領がマリウポリ訪問時に、ウクライナ最良の投資プロジェクトの一つと評したほどだ。

 ロシア資本のエヴラズ・ウクライナでは、2015~2016年に5億グリブナ以上の設備投資を行う。特に重要なものは、生産増強、省エネのプロジェクトである。環境対策の大規模プロジェクトもあり、特にドニプロ冶金工場では第1圧延設備で水循環システムが、転炉ではガス浄化システムが稼働する。

 どの企業でも、コスト削減を重視している。その最大の原因は、時には経済的合理性さえ省みない中国の輸出攻勢である。全世界で、自国市場を外国の鉄から守ろうとする保護措置の波が生じている。2016年だけで、EU、ユーラシア経済連合、カナダ、インド、台湾で、ウクライナ産の鋼材に対するアンチダンピング調査または関税導入が実施された。

 ただし、資金調達の困難ゆえに、各社は長期間を要するプロジェクトには慎重にならざるをえず、即効的な、明確な経済効果のあるプロジェクトを重視している。各社とも、投資は自己資金または株主の資金で実施しているということで、ゆえに大手の金融産業グループに属しているメーカーの方が資金調達面で有利である。アルセロールミタル・クリヴィーリフの近代化は、親会社のアルセロールミタルの資金で実施されており、すべてのプロジェクトについて投資効果が厳密にチェックされているという。多くの欧州諸国では年利3~5%程度で融資が受けられるが、ウクライナの銀行は25~30%もの金利を要求する。

 つまり、ウクライナの鉄鋼メーカーが新たな融資を獲得することは、事実上不可能ということである。したがって、より本格的な設備投資は、状況が改善するまで先送りせざるをえない。たとえば、ザポリジスターリでは平炉を全面廃棄して転炉に完全移行したい意向だが、費用は13億ドルを超え、現状ではその実施は困難である。同社はすでに同プロジェクトに自己資金3億グリブナをつぎ込んでいるが、プロジェクトを完遂するためにはどうしても外部資金が必要だという。

 ウクライナ独立後、こうしたプロジェクトの実例は多くない。ドンバス工業連合(ISD)傘下のアルチェウシク冶金コンビナートは、平炉から転炉に移行した。メトインヴェストでは、2015年にイリチ工場の平炉をすべて停止し、転炉への転換を図った。インテルパイプでは、インテルパイプ・スターリが電炉を稼働させ、ドニプロ下流管圧延工場の平炉を置き換えた。アルチェウシク冶金コンビナートとエヴラズ・ドネツィク冶金工場では、条件の良い融資を獲得できないがゆえに、連鋳への移行を実現できないでおり、同様にドネツィクスターリも平炉から電炉への転換を果たせていない。


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 ウクライナで毎年秋に『TOP-100』という刊行物が出ており、同国の産業別の動向が概観されていて大変便利なのだが、今年度は今のところウクライナに出張する機会がないので、入手できないでいる。しかし、こちらのサイトで情報が小出しにされており、ある程度の中身に触れることは可能である。そこで当ブログでは本日から数回に分けて、このサイトの情報に依拠しながら、ウクライナの主要産業の動向について報告してみたい。まず本日は鉄鋼業を取り上げる。なお、それぞれの産業部門につき、下の表に見るような、主要企業の売上高および利潤の数字が示されている。

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 ウクライナ鉄鋼業は、2014~2015年にドンバス地方での戦闘に起因する衝撃を受けた。しかし、2016年に入ってからは徐々に回復に転じている。

 2013年の生産量は、銑鉄2,910万t、粗鋼3,270万tだった。それが、2015年には、銑鉄2,190万t、粗鋼2,290万tに縮小した。その原因は、ドンバスの占領地帯で工場が停止したことである。アルチェウシク冶金コンビナート(ルハンシク州)、エナキエヴェ冶金工場(ドネツィク州)、ドネツィクスターリ(ドネツィク州)が操業を停止した。また、引き続き鉄道輸送に支障が生じているドネツィク州マリウポリ市のアゾフスターリ、イリチ記念工場も、生産が大幅減となっている。ただ、2015年春の和平実現により、鉄鋼業の状況は徐々に安定に向かい、2016年1~10月の生産量は、銑鉄1,400万t(前年同期比16%増)、粗鋼1,450万t(同10%増)だった。

 それでも、ドンバス諸企業の活動が深刻な障害に直面していることに、変わりはない。特に、クリヴィーリフから鉄鉱石を搬入し、完成した製品を域外に出荷することに、障害がある。ウクライナ鉄道が、軍事境界線までの輸送、また軍事境界線を越える輸送を、安定的に実施できていないからだ。これには、やむをえない事情(インフラの破壊など)もあるが、ウクライナ鉄道のトップ交代に2年も要したという人為的な要因もある。2016年4月にポーランド人実業家のヴォイツェフ・バリチュン氏がウクライナ鉄道社長に起用されたことで、事態が好転することが期待されている。


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 こちらのサイトに見るように、世銀が半年に一度発表しているレポート『Global Economic Prospects』の最新版が、1月10日にリリースされた。その中から、私の関係国であるロシア・NIS諸国のGDP見通しの部分を、上掲のとおりお目にかける。足下で油価が回復していることを受けてか、ロシア・NIS諸国の見通しは前回よりも上方修正されているところが目立つ。


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 こちらの記事によれば、ウクライナの金・外貨準備は2016年に17%拡大し、2017年1月1日現在で155億ドルとなっている。

2015年1月1日:75億ドル
2016年1月1日:133億ドル
2017年1月1日:155億ドル

 と推移している。なお、もし仮にIMF融資の第4トランシュが入っていたら、2017年1月1日現在で172億ドルになるはずであったということである。IMFは4ヵ年のプログラムでウクライナを支援しており、2015年3月に50億ドル、8月に17億ドル、2016年9月に10億ドルを実行した。


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 ウクライナ=肥沃な黒土という図式があり、鉱工業の衰退が進む中で、農業が同国を支える度合いが強まっている。

 しかし、こちらに見るように、ウクライナの土壌・農業化学研究所のスヴャトスラウ・バリューク所長はこのほど、ウクライナの黒土が劣化していることを指摘し、警鐘を鳴らした。所長によれば、ウクライナ黒土の養分は、すでに西欧の農地の半分となっている(西欧では化学的な施肥の時代が150年以上続いているので)。過去130年間でウクライナの黒土は腐植質の30~40%を失い、もはやその肥沃さは平均的なレベルにすぎなくなっている。ウクライナ黒土2,600万haのうち、1,500haは劣化した状態にある。米国で行われているように、ウクライナでも土壌保護のための国家機関が必要である。研究所は、農業省と共同で、土壌保護のための法案を起草した。バリューク所長はこのように語った。

 このバリューク所長の指摘を踏まえたこちらの記事でも、ウクライナでヒマワリ、アブラナ、トウモロコシといった負荷の重い作物を無制限に栽培していることが、土壌の劣化に繋がっているとしている。

 正直言って、ウクライナの黒土が劣化し、その生産性が並みになってしまうなどということは、これまで個人的に考えたこともなかった。そんなことがあるのかと思い、情報を検索してみると、日本語では以下のような情報がヒットした(どこのどなたが書いたものなのかは不明)。

 植物の成長には日光や水以外に燐や窒素といったものが必要です。世界の穀倉地帯、ロシアやウクライナの黒土帯やアメリカのプレーリーバンクでは、草原に長年蓄積された燐や窒素があるので長年大きな収穫を続けることができたのです。しかし、こうした地域は長年の酷使で次第に養分が枯渇しつつあります。例えば、人工的に窒素肥料を作ろうとすると、原料は無尽蔵ですが高温高圧条件で反応させなければならないので莫大なエネルギーが必要です。しかし、昔ながらのやり方、ヨーロッパでよく見られるように畑を一定期間牧草地にすれば地力を回復させることができます。また、大豆を栽培することによっても窒素分を回復させることができます。ところが、残念なことに大豆の作付け面積は大幅に減少しています。(以下省略)


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