服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版)

私のホームページ「ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪」(http://www.hattorimichitaka.com)のブログ版です。

カテゴリ: ウクライナ

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 別に新しい情報ではないが、個人的なまとめ作業。2016年4月6日にオランダの国民投票でEU・ウクライナ連合協定の批准が否決され(拘束力はない)、同協定をめぐる状況が袋小路に陥り、EU側は対ウクライナ関係をトーンダウンさせることで、本件収拾を図った。すなわち、2016年12月15日に開催されたEU首脳会議で、連合協定に制限事項を明記することで合意したものである。その合意点は、こちらのサイトに見るように、同日付の欧州理事会決定の付属文書として発表された。以下ではその付属文書にある合意(Decision)を翻訳しておく。

欧州連合、欧州原子力共同体およびその加盟諸国とウクライナとの間の連合協定に関する、欧州連合加盟28ヵ国元首または政府長と、欧州理事会会合の決定

 欧州連合、欧州原子力共同体およびその加盟諸国とウクライナとの間の連合協定にその政府が署名した欧州連合加盟28ヵ国元首または政府長は、

 EU・ウクライナ連合協定批准法案に関する2016年4月6日のオランダ国民投票の結果と、オランダ王国首相によって国民投票に先立ち表明された懸念に留意し、

 EU・ウクライナ連合協定およびEUの諸条約を完全に遵守し、そしてウクライナとの関係を深めたいとのEUの目標に沿いつつ、これらの懸念に対応することを望み、

 2016年12月15日付の欧州理事会の結論を重んじ、

 共通理解として以下のことを決定した。それは、オランダ王国が連合協定を批准し、欧州連合が批准作業を完了したことをもって発効する。

 A.共通の価値にもとづいて連合協定の当事者間の緊密で持続的な関係を構築することを目標としつつ、連合協定はウクライナにEU加盟候補国としての資格を与えるものではなく、将来においてウクライナにそのような資格を与えるコミットメントを成すものでもない。

 B.連合協定は、安全保障、とりわけ紛争回避、危機管理、大量破壊兵器の不拡散といった分野でのウクライナとの協力関係を再確認するものである。それは、EUおよびその加盟諸国に、ウクライナに集団安全保障またはその他の軍事援助・支援を提供することを義務付けるものではない。

 C.連合協定は、市民の移動性を高めるという目標を掲げてはいるものの、ウクライナ市民とEU市民の相互に、互いの領土内で自由に居住・労働する権利を付与するものではない。連合協定は、被雇用か自己雇用であるかにかかわりなく、EU加盟諸国の領土で求職するウクライナ国民への許可割当を決定するEU加盟諸国の権利に影響を及ぼすものではない。

 D.連合協定は、ウクライナにおける改革プロセスを支援するEUのコミットメントを再確認するものである。連合協定は、EU加盟諸国のウクライナに対する追加的な金融支援を求めるものではなく、二国間の金融支援の性格と規模を決定するEU加盟各国の独占的な権利を変更するものでもない。

 E.腐敗との闘争は、連合協定の両当事者間の関係を高める上で、中心的である。連合協定の下で両当事者は、民間および公的の両セクターにおいて、腐敗と闘争しそれを防止する上で協力することになる。法の支配に関連した両当事者間の協力は、とりわけ、司法の強化、その効率の改善、その独立と公平性の確保、腐敗との闘争に向けられる。

 F.民主的諸原則、人権および基本的な自由の尊重、上記E項で言及されたものをはじめとする法の支配の尊重は、連合協定の本質的な要素である。両当事者はそれらの義務の完全な履行を要請され、その履行と執行はモニターされることになる。義務が不履行となった場合には、各当事者は連合協定第478条に則って適切な措置をとりうる。適切な措置の選択に当たっては、連合協定の機能を乱すことが最も少ないものが優先される。これらの措置は、やむをえない場合には、連合協定の条項で規定された権利・義務の停止を含みうる。


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 ウクライナでヴォロディーミル・フロイスマン(ロシア語ではウラジーミル・グロイスマン)首相が就任してから、4月14日で1年が経過した。これに関連し、こちらのサイトで、オレグ・グロモフという評論家が論評しているので、以下のとおり要旨をまとめておく。

 ウクライナと西側の関係という観点から言うと、IMFとの交渉において、様々な困難にもかかわらず、フロイスマンはIMFからトランシュを取り付けており、最近第4トランシュが供与され、近いうちに第5も続く見通しである。IMF側の評価によれば、フロイスマン内閣の最大の功績はマクロ経済を安定化させたことで、ロシアとの通商関係悪化による損失にもかかわらず、2016年の財政赤字を1年前の見通しの対GDP比3.7%から2.3%に引き下げてみせた。

 IMFではさらにウクライナ政府に対して2つの重要な措置を期待しており、それは国内で物議を醸す問題である。第1に年金改革(受給開始年齢の引き上げ)であり、第2に現在は一時見合わせとなっている土地売買の自由化である。

 これらの措置の実施は、連立与党の実質的な崩壊ゆえに、困難なものとなる。2016年にポロシェンコ・ブロックの何人かの議員は会派を離脱し、ヤツェニューク首相退陣後の「人民戦線」議員たちも煮え切らない姿勢を見せている。その幹部の一人であるアヴァコフ内相は、大統領選出馬の野心を持っており、フロイスマン首相およびポロシェンコ大統領を同盟相手というよりはライバルと見ている。それは、内相の支配下にある民族主義的な軍人集団の動きにも見て取れ、それが昨今のドンバス封鎖やロシア系銀行圧迫政策といった流れを主導しており、政府は不本意ながらそれを受け入れざるをえなくなっている。

 かくして、内閣は宙ぶらりんの状態となり、こうした状況では市民の生活水準を削るような法案を通すのはきわめて困難である。来たる大統領選のことを考えれば、なおさらだ。

 つまり、フロイスマン首相にとっては難問が増すばかりで、彼は前任者のヤツェニュークに劣らず政治的なカミカゼ特攻隊とならざるをえない(ちなみにヤツェニュークは退任後、政界から完全に消えた)。世論調査によれば、国民のフロイスマン支持率は2%以下なので、ヤツェニュークと同じ運命を辿る可能性が高い。

 マクロ経済安定化は、フロイスマン首相および政権の人気低下という代償を伴っている。公共料金は2015年から2017年3月までに2倍以上になっている。平均年金が1,000グリブナであることを考えると、高齢者の大部分は自動的に無産階級に転落した。こうした状況では、フロイスマンが首相から退いた後、第二の政治人生が待っているかというと、それは厳しい。

 フロイスマンはレームダックと化して現在に至っており、自立した政治的な展望を切り開く見通しはない。ヤツェニューク同様、西側からの支援が得られるにしても、部分的にすぎない。現に、欧米からは構造改革の遅れを批判されている。

 フロイスマンがテクニカルな首相であるがゆえに、今のところ解任を免れている。また、ティモシェンコも、他の野党勢力も、ポロシェンコ・チームも、不人気な政策を実施せざるをえない首相というポストを引き受ける用意は今はできていない。ヤツェニューク以来、ウクライナの首相という役回りは、そのように損なものとなっているのである。


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 3月末のやや古い情報だが、こちらの記事が、ウクライナのポロシェンコ大統領がトランプ米新大統領との会談実現を試みているが、なかなか実現しないということを伝えている。

 記事によると、ポロシェンコは何としても、プーチン・ロシア大統領に先んじてトランプ大統領に会いたいと願っている。米ロ首脳が7月のドイツでのG20サミットで顔を合わせることは確実なので、それよりも前ということになる。ポロシェンコのチームは今年に入って、2月および4月という会談候補日を挙げていた経緯があるが、現在ではウクライナ外交当局は、イタリアで開かれるG7か、またはブリュッセルでのNATOサミットで米ウ首脳会談が開催される可能性があるとしている。ただし、現在のところウクライナは正式な招待を受けているわけではない。

 2月5日にポロシェンコとトランプが電話会談を行い、その後、首脳会談の件も話し合われたことが明らかになったが、具体的なことは何ら発表されなかった。外交筋によれば、電話会談でポロシェンコは、ドンバス和平に関する「Great plan of peace」、通商および投資プロジェクトに関する「Great story of success」を提案、トランプ側はそれらの問題を首脳会談で話し合うことにしようと応じたという。電話会談後、ポロシェンコ政権側は2月末にも首脳会談の開催が可能と踏み、ポロシェンコが国連安保理に出席してその足でニューヨークからワシントンDCに向かうという青写真を描いたが、その時点では米側の同意が得られなかった。ポロシェンコは、2月末にミュンヘンで開催された安保会議でペンス米副大統領と面談するに留まった。

 現在ウクライナ側が最も有力視しているのは、5月25日のブリュッセルにおけるNATOサミットの場である。もう一つ、5月25~27日にイタリアで開催されるG7サミットがある。もっとも、両方の行事で、今のところウクライナが正式に招待されているわけではない。それでも大統領の側近によれば、「我々は希望を失っていない。米側は我々に、『会談の準備ができたら、24時間前に連絡するから、すぐに飛んでくるように』と言っていた」ということである。ウクライナ最高会議のアンナ・ホプコ外交委員長は、ウクライナにとってトランプにドンバス和平についての我々の立場、ロードマップを伝え、米国がそれを共有し和平プロセスに関与してくれることは、きわめて重要だと話す。

 2017年にウクライナのクリムキン外相はすでに2度訪米しており、ティラーソン国務長官、マクマスター国家安全保障問題担当大統領補佐官と面談している。ウクライナ側はその最大の成果が、クリミアとドンバスはまったく別個の問題であること、それらに関し「取引」などは一切ありえないということを、ティラーソン長官がしっかり理解できた点だとしている。ウクライナ側はフリン氏に代わって国家安全保障問題担当大統領補佐官に就任したマクマスター氏との会談にとりわけ手応えを得ており、ウクライナ問題についての理解を深めてくれたとしている。

 ポロシェンコ周辺の証言によれば、トランプは前任者のオバマとは異なり、米国がミンスク和平プロセスに参加することに反対ではない。一方、ロシアは現在、別の形式で交渉を行うことを含め、全力でミンスク和平を葬ろうとしており、それゆえに米の参加に反対していない。ドイツは米国の参加には難色を示している。ウクライナは、誰もミンスク合意を破棄しないのであれば、形式へのこだわりはない。その間にトランプはプーチン大統領との対話を試みており、4月半ばにはティラーソン国務長官が訪ロ、前任者のケリー長官はウクライナに立ち寄ってから訪ロしていたが、今回はウクライナを素通りであり、ウクライナ側は不満を抱いている。トランプ政権がノルマンディー4のすべての国との個別交渉を進める中、ノルマンディーフォーマットの交渉は実質ストップしている。ロシアは外務次官会合を欠席した。一方、ウクライナ代表のクチマ氏は、ノルマンディー4による迅速な首脳会談が必要だと主張している。


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 今さら昔話をしても仕方がないのだけれど、先日あるウクライナ関係者が、「2013年にウクライナはユーラシア関税同盟にオブザーバー加盟した」と発言していて、当方は「おや?」と思った。私の認識では、確かに当時のヤヌコーヴィチ政権は関税同盟にオブザーバー加盟をした上で「3+1」といった形の協力関係を築きたいと願ってはいたが、結局それが実現しないうちに2014年のユーロマイダン革命を迎えたと理解していたからである。

 そこで、事実関係を確認してみると、私の理解で正しかった。当該の動きは、当ブログでもこちらのエントリーで取り上げていた。それで、その当時は怠っていたのだけれど、今回はユーラシア側とウクライナとのメモランダムの原典テキストにも当たってみた。こちらのサイトに掲載されている「ユーラシア経済委員会とウクライナ間の連携強化に関するメモランダム」というのがそれで、2013年5月31日に調印されている。この中で、「関税同盟、単一経済空間諸国との連携を深化し、その後にユーラシア経済連合のオブザーバーになりたいというウクライナの希望に留意し」という文言がある。明らかに、ウクライナがオブザーバーになる希望を表明し、ユーラシア側は単にそれをテイクノートしただけである。しかも、ご丁寧にも、この文書の末尾には、本文書は国際条約ではなく、何らの権利も義務も発生しないということが明記されている。

 しかし、このメモランダムを読むと、内容が滑稽だ。ウクライナは、ユーラシア側から招待された場合には、ユーラシアのサミット等の会合の公開部分に出席できるとされている。公開部分というのは、マスコミのカメラが入っているセレモニー的な部分ということだろう。そんな形ばかりのパートに出席して意味があるとは思えない。また、ウクライナはユーラシアで採択された文書の写しを受け取る権利をもつ、ただし部外秘文書を除く、などとされている。ユーラシアで採択された文書は、秘密資料以外はすべてウェブサイトに公開されるはずであり、まったく無意味な「権利」だ。さらには、ウクライナはユーラシアの諸文書に示された原則を順守し、ユーラシアの利益に反する言動は差し控える、などという笑える文言もある。結局のところ、ロシアはウクライナに対し、ユーラシアかEUかの二者択一を厳しく迫り、いいとこ取りは許さなかったということだろう。


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 世銀のこちらのページに、世界各国の国民による国外出稼ぎ収入の各種統計が掲載されている。ここではその中から、2015年のロシア・NIS諸国の国外出稼ぎ収入が、各国のGDPに対してどれだけの比率を示しているのかという数字をピックアップし、上掲のようなグラフを作成してみた。特に新たな驚きはなく、既知の構図が再確認できる。タジキスタン、キルギス、モルドバといったNISの低開発な小国は、国外出稼ぎ収入への依存度が世界的に見てもかなり高いことが知られている。ウクライナやウズベキスタンも、大量の国外出稼ぎ労働者を送り出しているが、この両国の場合には自国の経済・人口規模がそれなりに大きいので、対GDP比ということでは若干数字が下がる。ロシアやカザフスタンは、むしろNIS諸国から労働移民を受け入れる側であり、この指標はごく小さい。ただし、ロシア人やカザフ人が出稼ぎとまったく無縁というわけではなく、たとえばロシアの地方の人たちがモスクワなどの自国の大都会に働きに出るような国内出稼ぎ現象は、広範に見られるはずだ。

 なお、ウクライナの国外出稼ぎ収入の推移は下図のとおり。最大の出稼ぎ先がロシアだったので、その景気悪化と両国関係の対立で、収入は低下を辿っている。

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 ロシア・タタルスタン共和国の石油会社「タトネフチ」は、かつてウクライナの製油所に出資したのだが、乗っ取りまがいの所有権簒奪に遭い撤退を余儀なくされ、その後法廷闘争が続いた。その事実関係についてこちらの記事が触れているので、要旨を整理しておく。

 ウクライナのクレメンチューフ製油所は、原油供給を確保するため、1994年に合弁企業「ウクルタトナフタ」を創設し、ウクライナ側の出資分として製油所が同社に移管され、タタルスタン側からは採掘企業(複数)の株式と現金による出資がなされた。タタルスタン共和国とタトネフチが、計55.7%の株式を握っていた。しかし、2007年にタタルスタン側は合弁企業に対するコントロールを失い、2009年にはウクライナ側の裁判所の判決によって所有権を完全に剥奪された。タトネフチはロシア・ウクライナ投資促進保護協定にもとづいてウクライナを相手取り2008年に調停手続きを開始した。2014年7月にハーグの国際仲裁裁判所はウクライナの協定違反を認定し、タトネフチに1億1,200万ドルの補償金を利子付きで支払うことをウクライナ側に言い渡した。ウクライナ側は後日、これを不服としてパリの裁判所に上告したが、2016年11月末に却下された。そして今般タトネフチは、ウクライナ側が1億4,400万ドル(これが利子付きの金額?)の補償金を支払うよう、強制執行を求める訴えをロンドンとモスクワの裁判所に提訴した。


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 ちょっと用事があって、こんな図を作ってみた。2016年のロシア・NIS諸国の為替下落率とインフレ率を対比させつつ図示したものである。為替は、2016年末の各国通貨の対米ドル公定レートを、2015年末のそれと比較し、名目で何パーセント下落したかを見ている。なお、あくまでも下落率なので、棒が上を向いているプラスが下落(通貨安)ということであり、下を向いているマイナス値は逆に名目の通貨高を意味する。たとえば、2016年のロシアの場合には、マイナス16.8%だから、名目でそれだけルーブル高になったということである。一方、インフレ率は消費者物価上昇率であり、年末ベース(12月の前年同月比)のデータとなっている。言うまでもなく、名目の為替下落率よりもインフレ率の方が大きければ、それだけ実質の通貨高が生じていることになり、2016年にはそうしたパターンの国が多かったようである。


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 あからさまな手抜きで恐縮だが、こちらのサイトに、2015~2016年のウクライナのメーカー別鋼管生産量というデータが出ていたので、備忘録がてら紹介する。案外レアな情報ではないかと思う。

 一番上にあるハルツィシク鋼管工場は、アフメトフ氏のSCM/メトインヴェスト傘下であり、CISを代表する天然ガス輸送用大径管メーカーだったのだが、ドンバス占領地に所在し、その凋落が悲しい。


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1481350020 ウクライナの中銀総裁はヴァレリヤ・ホンタレヴァ(写真参照、ロシア語ではヴァレリヤ・ゴンタレヴァ)という女性が2014年6月19日から務めてきた。しかし、汚職容疑を追及されるなどして窮地に陥り、4月10日に辞意を表明した。最高会議の議決を経て、退任が正式に決定する運び。ただ、ウクライナではありがちなことに、本件は完全に政争の具となっており、様々な議論が飛び交っている。

 こちらに見るとおり、金融専門家のセルヒー・フルサ氏は、「我々はホンタレヴァに感謝しなければならない」と主張している。フルサによれば、ホンタレヴァは中銀そのものと銀行セクターの改革をかつてなく大胆に推し進めた功労者である。ただ、痛みを伴う改革ゆえに敵も作り、オリガルヒの保有するマスコミでバッシングを受けることになった。IMFや国際金融筋は、ホンタレヴァを賞賛していた。ホンタレヴァが、一時的なやむをえない行政措置から卒業でき、彼女本来の哲学である自由化に向かえればよかったのだが、改革がそこまで貫徹できなかったのは残念。ホンタレヴァの厳格な通貨政策のお陰でベネズエラのような泥沼に陥らなかったことに感謝したい。ゾンビ銀行を淘汰した政策も正しかった。フルサ氏は概略以上のように訴えている。

 一方、こちらでは、ウクライナの政治評論家のルスラン・ボルトニクが、ホンタレヴァについて批判的に論評している。いわく、ホンタレヴァの退任はだいぶ以前から取り沙汰されていた。彼女は政界での信用を完全に失っただけでなく、肝心なことには、ポロシェンコ大統領の支持も失っていた。彼女の腐敗疑惑が数多く噴出したのは、まさにそれに関連している。西側パートナーの影響下にある「国民腐敗対策局」だけでなく、大統領の影響下にあるウクライナ検察庁からも、批判にさらされていた。過去数ヵ月、政権中枢から、ホンタレヴァに辞任を仕向けようという働きかけが続いてきた。その際に、彼女は職務上、政権幹部の不都合な情報を握っているので、特定のスキャンダルを理由に解任するということは避けたかった。他方、もう一つの考えられるシナリオとして、現在ウクライナでは連立の組み替えに関する交渉が進んでおり、急進党あたりが連立に復帰する可能性があるが、その際に取引材料として中銀総裁ポストを使う可能性があり、そのためにホンタレヴァに退任を依頼したということも考えられる。

 こちらでは、経済評論家のオレクサンドル・オフリメンコが、ホンタレヴァの仕事について批判している。オフリメンコいわく、彼女の仕事の評価はとても簡単で、結果は銀行システムの焼け野原だ。彼女以前にはどうにかこうにか機能していた銀行システムが、現時点では完全に崩壊している。彼女の下で、外為市場は実質的に闇市場化し、融資は機能せず、国民は銀行を信用しなくなった。今後は、5年ほどで銀行システムを再興できるような優秀な専門家を総裁に据えるべきだ。人選は全面的にポロシェンコ大統領にかかっている。オフリメンコはこのようにコメントした。

 関連して、ウクライナの銀行数の減少を示した上掲の図は、こちらから拝借した。


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 こちらなどが伝えているように、IMFはウクライナ向けの拡大信用供与175億ドルの支援を続けているが、このほど新たなトランシュ10億ドルの供与を決定した。近日中に入金され、ウクライナの外貨準備は161億ドルまで拡大する見通し。ウクライナでは本年さらに3回のトランシュ、45億ドルを受け取ることを見込んでおり、次回の供与は6月末頃を想定している。

 本件に関連し、IMFが4月4日に発表したレポートが、こちらにアップされている。

 なお、こちらの記事によれば、IMFはドンバス封鎖問題に関連し、2017年のウクライナの成長率見通しを2.8%から1.9%に下方修正した。


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 こちらの記事によれば、ウクライナの主要製鉄所の一つであるジェルジンシキー記念ドニプロ冶金コンビナートが、操業を停止したということである。同工場はドンバス工業連合(ISD)財閥に属し、ドニプロペトロウシク州カミャンシケ市(旧ドニプロジェルジンシク市)に所在している。同社の発表によれば、財務面での問題および運転資金不足と、ドンバス占領地との貨物輸送の途絶によりコークス供給が途絶えたことが原因という。従業員に賃金は支払われる。


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 こちらのサイトに、2014~2016年のウクライナ製菓市場のブランド別動向に関するデータが出ているので、紹介する。ポロシェンコ大統領は、2014年の選挙戦に際し、利益誘導の疑惑をかわすため、自らが保有する製菓大手「ロシェン」を身売りする構えを示していたが、現在のところ実現していない。上に示したのが2014年の市場シェア、下に示したのが2016年のそれなのだが(単位は菓子類の生産量、トン)、ポロシェンコ大統領在任中にロシェンの一強体制が強まるという、少々よろしくない現象が起きている。なお、ウクライナの製菓産業全体では2016年にわずかながら生産が回復し、前年比0.1%増の69.9万トンとなった。

2016

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 この話、初めてというよりは、確か以前から出ていたと記憶するが、こちらの記事によれば、日本政府はウクライナのドンバス復興に向けて400万ドルを拠出するということである。このほど角駐ウクライナ大使がその旨を表明した。2017年4月から2018年3月にかけて、国連および赤十字を通じて400万ドルを拠出し、戦乱で被害を受けたドンバスのインフラ再整備、中小企業支援、被害住民への支援などに充てる。なお、2014年4月半ばから続くドンバス紛争では、少なくとも9,940人の犠牲者、23,455人の負傷者が出ている。


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Denis_Voronenkov

 少々古い話になってしまったが、ロシアの元下院議員であるデニス・ヴォロネンコフ氏(写真)が3月23日にキエフで暗殺された。私自身はきな臭い話が苦手で、当ブログは経済を中心とする人畜無害な情報が主だが、ヴォロネンコフ氏の事件については少々事情があって簡単に調べたので、要点だけ整理しておく。

 デニス・ヴォロネンコフ氏は1971年生まれで、司法、軍事、ネネツ自治管区行政などの仕事をしたあと、2011~2016年に共産党所属の連邦下院議員を務めた。2016年の下院選ではニジェゴロド州の小選挙区で落選、選挙運動の際に「自分はアフガン従軍帰りだ」といった偽りの主張をし(実際にはソ連がアフガンから撤退した時にはヴォロネンコフはまだ未成年だった)、どうも虚言癖のある人物だったようだ。奇矯な言動の一つとして、2016年には「ポケモンGoユーザーはスパイや、さらにはテロリストになりかねない」と唱え、ロシアにおけるその利用禁止を関係省庁に訴えたことが知られている。2014年12月に不動産乗っ取り(5億円程度の物件)疑惑に関連して議員不逮捕特権の剥奪が提起される。2016年9月の落選後、2016年10月にウクライナに逃れたことは(12月にウクライナ国籍取得)、訴追を逃れるのが目的だったか。2017年2月にロシアより国際指名手配を受けている。ウクライナに亡命してから政治的立場を一変させ、以前はロシアのクリミア併合を称賛していたが、ウクライナ亡命後は「自分は反対票を投じた」と立場を翻した。暗殺の数日前に、ロシアのウクライナ侵略を支援しているスポンサー、ウクライナ側の協力者を暴くとの名目で「ウクライナ・ロシア調査センター」の創設を提案、自らそのトップとなる構えを見せた。しかし、3月23日にキエフの街中で3~4発の凶弾を浴び、その場で息を引き取った。事件が起きたのは11:30で、現場はシェフチェンコ大通りのプレミア・パレス前であり、まさに白昼堂々の暗殺劇であった。実行犯のウクライナ人、オレクサンドル・パルショフ(1988年セヴァストポリ生まれ、ドニプロ在住)はその場でボディーガードから発砲を受け、病院で死亡が確認された。前科者で、近年は傭兵のようなことをしていたらしい。暗殺事件に関しポロシェンコ大統領は即座に「ロシアによる国家テロリズム」と非難した。


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 ウクライナの銀行セクターは、かつてロシア資本の進出が盛んな部門の一つであった。しかし、過去3年のウクライナ危機、ウクライナ・ロシア関係の悪化により、その事業環境は厳しくなっており、先日も当ブログで「ウクライナがロシア系銀行に制裁」というエントリーをお届けしたところである。

 そうした中、こちらのサイトに、ウクライナにおけるロシア系銀行の状況をまとめた図解資料が載っており、便利なので、上掲のとおり転載させていただく。

 このうち、ズベルバンク・ウクライナについては、すでにロシアのズベルバンク本社がウクライナ法人身売りを決定している。こちらの記事などが伝えているとおり、サイド・グツェリエフ氏を筆頭とするコンソーシアムが100%の株式を買い上げることになり、このほかラトビアのノルヴィク銀行とベラルーシの民間企業がコンソーシアムに名を連ねている。なお、サイド・グツェリエフは、スラヴネフチ/ルスネフチのオーナーとして知られるミハイル・グツェリエフの息子である。


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 ウクライナのUNIAN通信のスマホアプリは、以前は「共有」ができず、情報の後処理にとって不便という欠陥があったが、久し振りに利用してみたら、「共有」できるようになっていた。そこで、改善記念に、UNIANの記事を使って1本お届けしたい。

 こちらの記事によれば、ウクライナの化学産業業界団体である「化学同盟」は、化学肥料の輸入代替の必要性を唱えている。同団体によれば、2016年にウクライナは149.5万tの窒素肥料、139.9万tの硝酸ナトリウム、36.8万tのリン酸アンモニウムを輸入し、約305億グリブナの費用を費やした。このうち、窒素肥料の149.5万tは完全に自給して120億グリブナを節約することが可能だし、硝酸アンモニウムも90万tは国産化し90億グリブナの節約が可能である。つごう、210億グリブナをウクライナは節約できるのだ。しかも、輸入の70%はロシアからであり、それだけの資金が国外に流出する一方、ウクライナではリウネとチェルカスィの窒素肥料工場が停止を余儀なくされている。ウクルトランスガスはOstchemのガス3.5億立米を押さえており、それをOstchemに返却すれば、両工場の操業再開は可能である。オデッサ臨港工場はOstchemに2.5億ドル分のガス代未払いがあり、同工場が利益を上げて債務を返済できるような条件を整備すべきである。「化学同盟」の幹部はこのように主張した(業界団体と言いつつ、完全にOstchemの利益代表だな、これは)。


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 こちらの記事に、分かりやすい図が出ていた。2010年12月を起点にとって、その後ウクライナの平均賃金(青の縦棒)と住宅・光熱費(赤の折線)とが、2016年7月までにどれだけ上昇したかを見たものである。この間、賃金も100%ほど上昇はしているが(つまり2倍になった)、住宅・光熱費は300%近く値上がりしており(つまり4倍近くになった)、まったく賃金が追い付いていないことが分かる。特に2015年春の公共料金値上げがどれだけラディカルなものであったかが、一目瞭然である。

 なお、この記事を書いているのはオレクサンドル・オフリメンコというエコノミストで、ウクライナの論壇では非常によく目にする名前であり、体制に批判的な論陣を張ることが多い。「ウクライナ分析センター」というシンクタンク(といっても個人商店だろう)を主宰しているようで、フェイスブックページに見るように、ウクライナ経済の困難を図解で解説するのを得意としている。


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 ベラルーシがロシアと石油・ガス供給で揉めて、ロシアの代替の原油供給源模索の動きに出ている。そうした流れで、こちらのニュースによれば、今般イラン産原油8万tを積んだタンカーがウクライナのオデッサ港に到着した。オデッサから鉄道でベラルーシのモズィリ製油所に輸送される。ウクライナ領の鉄道輸送は、オデッサ・ペレスィピ駅から、対ベラルーシ国境のベレジェスチ駅までで、輸送料は1t当たり11.88ドルとなる。


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 『ベラルーシ実業新聞』のこちらのページに、CIS諸国の平均賃金を米ドルに換算してその推移を比較した図が掲載されていた。ありそうでない、便利な図なので、日本語を添えた上で転載させていただく。

 図は、2016年11月までの月別の推移を跡付けたもの。ちなみに、旧ソ連諸国では12月に賃金の未払い分などがまとめて支払われることが多いので、どの国も各年の12月の山が突出する形となっている(したがってインフレ率なども12月にピークを迎える)。2014年頃からロシア、カザフスタンといったCISの中では豊かな国でもドル換算賃金が低下しているのは、原油価格の低下とそれに起因する景気後退、為替下落によるものである。ウクライナは政変後に為替がドカンと落ち、かつて欧州最貧と呼ばれたモルドバを下回り、今や中央アジアの低開発国であるキルギスと肩を並べている。なお、最新の2016年11月の各国の平均賃金を、大きい順に並べると、以下のとおり。

  • ロシア:553ドル
  • カザフスタン:416ドル
  • アルメニア:378ドル
  • ベラルーシ:363ドル
  • アゼルバイジャン:302ドル
  • モルドバ:254ドル
  • キルギス:203ドル
  • ウクライナ:201ドル
  • タジキスタン:128ドル

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 都合により、ウクライナの話題が続いて恐縮である。日本の通関統計によれば、ウクライナからのタバコ輸入が増えている。タバコは2015年にウクライナからの輸入品目として突如登場し、ざっくり言うと日本の対ウクライナ輸入の半分前後を占めるに至っている。2015年には55億本、2.9億ドルが、2016年には62億本、3.6億ドルが輸入された。ウクライナ・グリブナが下落したことで、ウクライナから調達するメリットが生じたのだろう。

 それで、どんな商品が輸入されているかを、ざっとネット情報で調べてみたところ、こちらのページに見るように、どうもフィリップモリスのマールボロ・ブラック・メンソール・エッジ1、エッジ8という商品がウクライナ産らしい。ウクライナには日系JTIの立派な工場もあるので、JTIウクライナ工場の商品が日本に供給されているのかな?などとも勘繰ったが、そうした事実は掴めなかった。


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 こちらのサイトに、ドンバス紛争とオリガルヒのリナト・アフメトフ氏のかかわりについて論じた論考が掲載されているので、その要旨を以下のとおりまとめておく。

 ドネツィク人民共和国、ルハンシク人民共和国は、ウクライナ側によるドンバス封鎖の解除を求めていたが、期限として設けていた2月27日までに解除されなかったので、3月1日に在ドンバス企業に対する外部管理に踏み切った。ドネツィク人民共和国のトップであるザハルチェンコによれば、これまで企業がウクライナ側に納税していたのか、人民共和国側に納税していたのかを精査し、前者の場合には人民共和国への登記変更を行い人民共和国に納税する必要があるという。

 ドンバスの占領地には、アフメトフ氏のSCM傘下のDTEK、メトインヴェストに属す企業が47社所在する。メトインヴェスト系で主なものには、カリミウシケ(旧コムソモリシケ)鉱山管理局(上掲写真)、ハルツィシク鋼管工場、エナキエヴェ冶金工場がある。DTEKはドンバスに火力発電所複数を抱えている。ドンバス占領地にあるメトインヴェストの鉱山冶金企業は、年間15億ドルの輸出収入をもたらしているほか、ウクライナ本土の企業もその供給に依存している。たとえば、クラスノドンヴヒーリャからの石炭供給が途絶えると、ウクライナのコークス化学工場におけるコークス生産が年間100万t低下する。また、カリミウシケからの石灰の供給が止まると、マリウポリとザポリージャの製鉄所も被害を被る。ドンバス企業の停止によるメトインヴェストの外貨収入喪失額は年間24億ドルに、雇用の喪失は4.5万人に達する恐れがあるという。アフメトフが保有するウクルテレコムのドネツィク事務所も3月1日に事業を停止し、通話やネットアクセスの停止で20万人が影響を被る。2014年以来人道支援の拠点として用いられていたドンバス・アレーナも、封鎖された状態にある。

 紛争が始まって以来、両人民共和国の指導部とアフメトフがこれほど大掛かりに対立するのは、初めてのことである。アフメトフは過去3年、人民共和国とウクライナ政府の間でバランスを取ろうとし、最低でも自分の資産を守り、あわよくば両者の仲介役として株を上げようとした。しかし、すぐに関係は悪化し、アフメトフ派の人材が両人民共和国の要職から排除された。アフメトフに近いヴォストーク大隊のホダコウシキー司令官は、ザハルチェンコに敵対する立場に転じ、ドンバスをロシアに編入すべきという立場に転じているが、ドネツィク人民共和国指導部には入っていない。

 かくしてドネツィク人民共和国は実質的に、アフメトフとの間に形成されていた非公式な関係の見直しに着手した。これまでアフメトフはドンバス住民を支援し、地域を資金的に回す役割を担わざるをえなかったが、ここに来ての情勢緊迫化で、アフメトフ系の企業が非公式な形で地域を支え続けることが難しくなっている。人民共和国当局が、国有化はせず、外部管理に留めていることは、アフメトフが当地の資産を保全するために、彼により厳しい条件を押し付けていることを意味する。妥協の余地がある反面、アフメトフが企業に対する管理を完全に失うリスクもある。ドネツィク人民共和国側もフリーハンドではなく、アフメトフの企業が供給する原料に依存しており、生産の全面的停止、社会破綻の脅威がある。ロシアから原料を調達する構えも見せているが、それには時間がかかりすぎ、制裁の対象になりかねないためロシア企業が供給に応じるとは思えず、これは脅しの試みだろう。ロシア市場を製品の販路にできるとも思えない。

 ロシア側では、両人民共和国の独立を承認する問題が取り沙汰されることが増えてきている。仮にそうなれば、2008年にアブハジアおよび南オセチアでやったのと同じシナリオになるが、実際にはロシアはドンバスについては最初から沿ドニエストル・シナリオを選んでいたように思われる。ロシアがドンバスの独立を認めると、ウクライナの対外政策の手足を縛る圧力のテコを失ってしまう。ドンバスが独立すれば、ウクライナは地政学的により一層西側一辺倒の国になってしまい、それはロシアの利益にそぐわないし、ミンスク合意が最終的に破綻し、西側がロシア包囲網をより一層強めることになりかねない。


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 ウクライナのキエフ国際社会学研究所は、定期的に実施している全国世論調査において、「貴方は社会的な抗議活動に参加する用意があるか?」ということを問うているようである。2016年12月に実施されたその最新結果が、こちらのページに出ている。今回の調査では、参加する用意があるという回答が48.5%、ないという回答が45.6%、回答困難が5.9%だった。参加する用意があるという回答者は、上図に見るとおり、今回の調査で過去最高レベルに達したようである。こうやって見ると腐敗していたヤヌコーヴィチ時代の方が民心は安定していたようであり、もとの濁りのヤヌコこいしきといったところだろうか。

 なお、今回の調査結果を地域別にみると、抗議活動参加の用意があるのは、西部で49.2%、中部で43.5%、南部で50.0%、東部で57.2%となっている。一方、こちらに見るとおり、ユーロマイダン革命直前の2013年11月に実施された世論調査の同様の設問では、抗議活動参加の用意があると回答した者は22.2%に留まっていた(上掲図と整合せず、どうも調査方法の技術的な変更があったような様子だが、正確なことは不明)。その際に、2013年の結果を地域別に見ると、西部では28.5%、中部では22.2%、南部では21.4%、東部では16.7%であった。不穏な空気は、かつては西部で強く、今日では東部で強くなった、ということになる。


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 こちらの記事が、ウクライナ与党の動向について伝えている。ウクライナでは、2014年11月に議会選挙が実施され、「欧州ウクライナ」という名称の連立与党が結成された。名を連ねた会派は、ポロシェンコ・ブロック、人民戦線、急進党、祖国、自助党で、302名からなる多数派だった(過半数は226議席)。しかし、2015年9月に急進党が離脱、2016年2月に祖国と自助党が離脱し、連立与党にはポロシェンコ・ブロックと人民戦線が残るのみとなった。どの会派も連立協定を破棄すると宣言はしていないので、法的には議会における与党多数派は存続しているが、残留している2会派では226議席に達していないので、実質的にはすでに多数派でなくなっている。そこでポロシェンコ・ブロックでは、元の5会派から成る連立を再興すべく、交渉を開始しているが、現在のところ進展はない。2月には急進党が連立に復帰するとの観測が伝えられたが、党首のリャシコは2月末にそれを否定している。

 下図は、少々古いが、こちらから拝借したもの。

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 ウクライナで、本土とドンバス占領地の鉄道輸送が遮断されていた問題は、こちらに見るとおり、3月15日のウクライナ国家安全保障・国防会議において、境界線の貨物通過を停止する旨の決定が正式に下された。こちらのサイトで、ドンバス封鎖問題につき、ロシアの有識者がコメントしているので、その要旨を以下のとおり紹介する。上級経済学校国民研究大学世界政治経済学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学長(写真)のコメントである。

 ウクライナ政権がドンバスを経済・輸送面から封鎖することを決めてから、ドンバスは苦境に立たされるだろう。ドンバス経済の一部は、ウクライナとの関係を保っていた。たとえばエナキエヴェ冶金工場は、石炭はドンバス産、鉄鉱石はウクライナ本土のクリヴィーリフ産であり、こうした事例は数多い。占領地とウクライナ本土で境界線が引かれていても、砲撃を受けたり、オーナーが放棄したりした企業以外は、ドンバス企業は生産を停止しなかった。

 ドンバスの人々は、少ないながらも、賃金を受け取っていた、ルハンシク、ドネツィク当局も、企業が稼働し、住民が安定的な所得を得ることを重視し、税収を得るよりも賃金を優先していた。ウクライナ側も、ドンバス産の石炭、原料、半製品に対しては旺盛な需要があり、ウクライナ全土の冶金産業にとってドンバスが大きな役割を果たしていた。ウクライナは石炭供給の問題をドンバスなしでは解決できず、ロシアを含む他国から輸入せざるをえなくなる。

 ウクライナや、一部のロシアマスコミも誤って伝えているが、ドネツィクおよびルハンシクの両人民共和国は、企業を国有化したわけではなく、外部管理下に置いただけであり、ましてや企業が閉鎖されるわけではない。外部管理を敷いたのは、企業を稼働させたいからであり、すでに外部管理導入から数週間経っているが、一部の企業は完全にではないにせよ稼働を続けており、一部は停止した。

 ドネツィクおよびルハンシクの両人民共和国は、ロシア市場を当てにしている。客観的に言っても、ドンバス経済はロシアに対して競争力がある。ロシアにとってドンバスの産業の面倒を見るのは荷が重いが、これらの地域を支援しなければならないので、他に方法はない。

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 だいぶ遅れ気味のフォローになるが、ウクライナとドンバス占領地を結ぶ鉄道を封鎖している「有志」本部が、今度は3月5日から、ウクライナとロシアを結ぶ鉄道輸送を妨害し始めたということである。両国間の主たる鉄道路線が通るウクライナ・スムィ州のコノトプという街で、運行が遮断されているということらしい。しかし、その後、実際には貨物は問題なく通過できているような情報もあり、正確なところは未確認だ。ともあれ、本件とドンバス封鎖の問題につき、こちらのサイトに出ているロシアのアレクサンドル・グシチン氏のコメント要旨を以下のとおり紹介しておく。

 ウクライナがロシアとの通商を遮断しているのには、いくつかの側面がある。

 第1に、ウクライナ内政の要因である。自助党は、リヴィウでのごみスキャンダルと、クリヴィーリフでの選挙失敗で問題を抱えていたが、対ロシア通商封鎖で先頭に立ち、得点を稼いでいる。封鎖はオリガルヒのR.アフメトフ氏への打撃となるので、その背後にはオリガルヒのI.コロモイシキー氏がいるという説がある。本件はまたポロシェンコ大統領への痛手ともなる。ポロシェンコはミンスク和平は手詰まりだと語っており、封鎖にもかかわっているが、それによってウクライナの電力部門は苦境に陥っており、封鎖はウクライナ自体にボディーブローとなっているほか、グリブナ下落やその他の金融面での悪影響が生じかねない。こうして見ると、封鎖は大統領への圧迫であり、得点を稼ごうとする政治勢力の試みである。

 第2の要因として、ウクライナでは社会的な不満が非常に高まっており、その責任をロシアおよびドンバスになすりつけることによって国民の不満を逸らそうという思惑がある。

 第3の要因として、ドンバスを切り離して、ロシアに押し付けるための一環という面がある。一部の政治エリートはこの路線を志向し、ドンバス保全に努めようとはしていない。ウクライナの条件でドンバスを復帰させることは不可能だからであり、それゆえにドンバスとの経済関係を断ち切ろうとしている。ドンバスをモスクワに転嫁することは、沿ドニエストルでも生じていることであり、現実味がある。この見方によれば、ドンバスをより断固として取り込むよう、ロシア側に強いているということになる。

 ロシアとの通商封鎖に関しては、愛国的なPRという側面が強い。ドンバス封鎖が対ロシア通商封鎖とどのようにリンクしていくかというのが、注目点である。


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 こちらのサイトこちらのニュースによれば、ウクライナはロシアの国営銀行系のウクライナ子会社5行に対する制裁を導入した。3月15日付の大統領令によるもので、ズベルバンク・ウクライナ、VTBウクライナ、BMバンク(VTB子会社)、プロムインヴェストバンク(対外経済銀行子会社)、VSバンク(ズベルバンク子会社)が対象。これらの銀行が関係者のために資本を国外に持ち出すことが禁止される。また、ウクライナ国営企業・組織がこれらの銀行に預金をすることも禁止される。ウクライナはEU、米国およびその他の諸外国にも制裁に参加するように呼びかけている。

 上掲写真は、ウクライナの過激派たちがロシア系銀行店舗を襲撃している様子。УВАГАとはロシア語のВНИМАНИЕの意味。


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 ロシアがクリミア併合を既成事実化しようとしている中で、その最たるものは、ロシア本土のクラスノダル地方とクリミア半島を隔てるケルチ海峡に、橋をかけようとしていることであろう。こちらによれば、橋の総工費は2,279.2億ルーブルで、自動車道路としての開通は2018年12月が予定されている。

 非常に見応えがあるのが、橋の概略を説明したノーヴォスチ通信によるこちらの特設サイトである。私はロシア人が作りがちなこうした妙にインターアクティブで凝ったウェブサイトが嫌いなのだが、このサイトはまあまあ良くできているのではないかと思う。同サイトに記されている事実関係を以下のとおりまとめておく。

  • 橋の建設コースは、74もの案の中からえらられた。建設は海峡の両側から勧められている。
  • 橋の総延長は19kmであり、これはロシアだけでなく、ヨーロッパ全域でも最長となる。従来のヨーロッパ最長はポルトガルのヴァスコ・ダ・ガマ橋の17.2kmだった。
  • 1日当たり両方向にそれぞれ47便の鉄道列車が運行される予定。
  • トゥズラ島は、かつてはトゥズラ砂州としてタマニ半島に繋がっていたが、20世紀初頭に侵食により分離した経緯がある。
  • 冬季には海は底まで氷結することがある。流氷が流れることもあるが、橋脚はその衝突にも耐えるように設計されている。
  • 海底からは古代や中世の文化財が見付かった。また、当地は第二次大戦の激戦地でもあったので、多くの爆弾も見付かった。
  • 船舶の航行のために、橋には、幅227メートル、高さ35メートルのアーチ部分が設けられる。その箇所は水深9.35メートルであり、喫水8メートルまでの船舶の航行が可能。
  • 自動車道路の最高速度は時速120km。自動車が橋の通過に要する時間は10分程度。

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 こちらの記事によると、ウクライナの社会経済変革研究所のI.ネスホドウシキー所長が現地のラジオ番組に出演し、ウクライナの対外債務問題につき発言したということである。

 所長によると、2017~2019年にウクライナ政府は125億ドルの対外および対内債務を支払う必要がある。ウクライナ国立銀行がその旨を公表しており、そのためにはIMFとの協力を継続して構造改革を堅持しなければならない。3月30日にIMFの新たなトランシュが受けられるが、我々をそれを、何らかの目的で消費できる融資というのではなく、本来であれば行わなければならない支払の猶予と捉えるべきである。もしもIMFの資金がなかったら、ウクライナ経済への悪影響は深刻である。もしも国内債務だったら、実質的に財務省証券をウクライナ中銀が買い上げている形なので、リスケなり、新たな証券の発行もある程度可能であるが、対外債務ではそれは不可能であり、リスケは即、テクニカルデフォルトを意味する。所長はこのように指摘した。


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 ロシア・NISのニュースサイトによく見られる図解資料(ロシア語でインフォグラフィカという)は、ブログのネタに困った時や忙しい時に便利なので、時々取り上げさせてもらう。意外にも、苦労して書いた文章などより、こうしたいただきものの図解の方が反響が大きかったりする。

 さて、そうした図解シリーズだが、こちらに、ウクライナのオリガルヒがドネツィク人民共和国による「国有化」で、どういった企業を失うのかという情報が出ている。これは、ウクライナからの分離・独立を求めている占領地域、自称「ドネツィク人民共和国」および「ルハンシク人民共和国」当局が2月27日に、占領地に所在する企業に外部統治を適用する旨を表明し、3月2日にドネツィク人民共和国がその対象となる43社のリストを発表したもので、上図ではそれがオーナーのオリガルヒごとに整理されてまとめられているわけである。

 ドネツィク人民共和国による43社リストの原典は、こちらであろう。以下ではそれを箇条書きで整理しておく。

  1. Филиал «Металлургический комплекс» ПрАО «Донецксталь» — металлургический завод
  2. ЧАО «Макеевкокс»
  3. ПАО «Ясиновский коксохимический завод»
  4. ЧАО «Енакиевский металлургический завод»
  5. Макеевский филиал ЧАО «Енакиевский металлургический завод»
  6. ПАО «Харцызский трубный завод»
  7. ПАО «Ер Ликид»
  8. ЧАО «Комсомольское рудоуправление»
  9. ЧАО «Енакиевский коксохимпром»
  10. ПАО «Концерн Стирол»
  11. ПАО «Донецккос»
  12. ЧАО «ДОКУЧАЕВСКИЙ ФЛЮСО-ДОЛОМИТНЫЙ КОМБИНАТ»
  13. Донецкий электротехнический завод
  14. ПРАО «Донецксталь-Металлургический завод Донецк»
  15. ПАО «ДТЭК Шахта «Комсомолец Донбасса»
  16. ООО «Моспинское УПП»
  17. ЧАО «ЦОФ «Колосниковская»
  18. ООО «ДТЭК Сервис»
  19. ООО «Электроналадка»
  20. Арендное предприятие Шахта им. А.Ф. Засядько
  21. ОП «Зуевская ТЭС» (ООО «Востокэнерго»)
  22. ДТЭК Высоковольтные сети
  23. ДТЭК ПЭС-Энергоуголь
  24. ДТЭК Донецкоблэнерго
  25. ООО «Инвест–Транс»
  26. ООО «РОСУКРТРАНС»
  27. ООО «ТРИМОБ»
  28. ПАО «УКРТЕЛЕКОМ»
  29. ООО «Астелит» (ООО «Лайфселл»)
  30. ООО «ДОНЕЦКАЯ МЕЖДУНАРОДНАЯ ШКОЛА «ГРИГОРЬЕВСКАЯ»
  31. ООО «Редакция газеты «Донецкие новости»
  32. HarvEast Holding
  33. ООО «Метинвест-СМЦ»
  34. ООО «Комплекс Пушкинский»
  35. Корпорация «Межрегиональный промышленный союз»
  36. ПАО «Украинская акционерная страховая компания «АСКА»
  37. ПАО «ПУМБ»
  38. ООО «7 ЛИНИЯ»
  39. ООО «Донбасс Арена»
  40. ООО «Отель «Донбасс-Палас»
  41. ООО «Проект – 2012» (Отель Park Inn by Radisson Donetsk)
  42. ЧАО «Футбольный клуб «Шахтер» СТБ «Кирша»
  43. ЧАО «Люкс»

 一方、自称ルハンシク人民共和国行政府は、こちらに見るとおり、2月27日付の政府決定第75号で対象企業を制定している。対象は3社であり、すべてアフメトフ氏傘下の企業となっている。

  1. ПАО «Краснодонуголь»
  2. ООО «ДТЭК Ровенькиантрацит»
  3. ООО «ДТЭК Свердловантрацит»

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 屑鉄(鉄スクラップ)というのは、むろん産業の花形というイメージはないが、電気炉で再び鉄を作る原料となり、鉄鋼業における重要性は意外に高い。ロシア・ウクライナ・ベラルーシの鉄鋼業のことを考える上でも、実はスクラップの貿易が無視できない要因となっている。

 こちらの記事が、ウクライナの鉄スクラップ供給・輸出事情について伝えている。これによれば、2014~2016年とウクライナではスクラップが不足する状況が続いており、2017年に入っても不足が解消されていない。2016年のウクライナのスクラップ輸出は27.3万tで、これは前年比77.5%減だった。金額ベースでは4,862万ドルで、83.3%減だった。しかし、2017年1~2月には1.8万tを輸出し、前年同期比77.9%増だった。金額ベースでは366万ドルで、70.7%増だった。他方で、1~2月には6,755tの輸入も行われた。輸出の最大の相手国はトルコで数量ベースで93.0%を占めるが、輸入の最大の相手国もトルコで79.9%を占めている。


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