服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版)

私のホームページ「ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪」(http://www.hattorimichitaka.com)のブログ版です。

カテゴリ: 学問のすゝめ

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 ブリュッセルに来る行きの飛行機の中で読んだ本。明石順平(著)『アベノミクスによろしく』(2017年、インターナショナル新書)。内容は、以下のとおり。

 アベノミクスの失敗をデータで徹底検証!  「アベノミクス以降の実質GDPは、3年間で比較すると民主党政権時代の3分の1しか伸びていない」「2014年度の国内実質消費は、戦後最大の下落率を記録」「GDP算出基準改定のどさくさに紛れてGDPを異常にかさ上げ」といった知られざる事実を、政府や国際機関による公式発表データを駆使して導きだし、詳細に分析!  さらに「アベノミクスの成果」と謳われる雇用の改善がアベノミクスと無関係であること、株価の上昇が官製相場によるものであることなどもデータで明らかにする。本書はアベノミクスが空前絶後の大失敗に終わっただけではなく、日本の未来に超特大の副作用を残していることを平易な文章で暴き出す。豊富なデータにより、アベノミクスの本当の姿が今、明らかになる。

 アベノミクス、リフレ政策に関する議論は、神学論争と化しており、賛成派・反対派の議論が収斂することは永遠になさそうである。ただし、賛成派はアベノミクスにより近い将来に日本経済は大復活すると予言しているのに対し、反対派はそれには効果がなく、むしろ無軌道な金融緩和が日本経済の混迷を深め、危機的状況に至る恐れがあると主張しているわけだから、どちらが正しいかはそう遠くない将来に歴史が証明することになるのではないか。もっとも、アベノミクス推進派は、たとえそれが破綻したとしても、「財政政策が不充分だった」などと弁明し、負けを認めないだろうが。

 アベノミクスやリフレ政策に関しては関連書があまたあるが、その中でも本書は平易ながら問題点を的確に示した啓蒙書として、広く読まれるべきだろう。特に、GDP改竄に関する下りに、本書の新味がある。ただ、著者は弁護士であり、本来であれば経済学者が率先してこのような警鐘を鳴らすべきだと個人的には思うが、どうだろうか。

アベノミクスによろしく (インターナショナル新書)
明石 順平
集英社インターナショナル
2017-10-06


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 HP更新しました。マンスリーエッセイ「『ベラルーシを知るための50章』が刊行されました」です。当ブログでもすでに簡単に告知はしましたが、改めてエッセイで刊行に当たっての所感を述べました。


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 こんな新刊をご恵贈いただきましたので、ご紹介します。仙石学(編)『脱新自由主義の時代?: 新しい政治経済秩序の模索(地域研究のフロンティア)』(京都大学学術出版会、2017年)。内容は以下のようなもの。

 経済システムの崩壊とハイパーインフレを緊急に克服するという意味では,ネオリベラリズムは一部の地域,特に南米と東欧で一定の成功を示した。しかし,その重篤な副作用としての格差の拡大固定,民主主義の形骸化や人間的な社会関係の喪失は,強く批判されている。ネオリベラリズムとは世界史にとって何だったのか。現場から検証する。

序章 「ネオリベラリズム」の後にくるもの[仙石 学]
第1章 「ポストネオリベラル」期の年金制度?—東欧諸国における多柱型年金制度の再改革[仙石 学]
第2章 危機意識に支えられるエストニアの「ネオリベラリズム」[小森宏美]
第3章 ネオリベラリズムと社会的投資 —チェコ共和国における家族政策,教育政策改革への影響とその限界[中田瑞穂]
第4章 スペイン・ポルトガルにおける新自由主義の「奇妙な不死」—民主化と欧州化の政策遺産とその変容[横田正顕]
第5章 ラテンアメリカ穏健左派支持における経済投票 —ウルグアイの拡大戦線の事例[出岡直也]
第6章 ポスト新自由主義期ラテンアメリカの「右旋回」—ペルーとホンジュラスの事例から[村上勇介]



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 趣味でよく読む(?)日本の財政破綻ものの一種だけど、これは経済書とかノンフィクションというのではなく、小説。幸田真音『大暴落 ガラ』(中央公論新社)である。その内容は、

 与党・明正党の総裁選で惜敗しながら、野党議員の投票により日本初の女性総理大臣となった三崎皓子。党の重鎮議員の反対で組閣もままならない。そんななか、危機管理官より、「秩父に大雨が降っており、このままでは荒川が決壊、都心が水に沈む可能性がある」との情報が入る。さらに追い打ちをかけるように、台風八号と九号が発生。皓子は日本では例がない「緊急事態宣言」を提案するが、経済の停滞を理由に閣内で反対の声が上がり――。

 あかね銀行のディーリングルームではその頃、「なんだこれは! 」絶叫が響いていた。一瞬でドル円相場が20円も飛び、159円をつけたのだ。「ガラだ! 大暴落だ! 」――。

 東京都心を直撃する大規模な自然災害、ゼロ金利政策を続ける日銀への信用不安。いつ現実のものとなってもおかしくない二つの危機に襲われた日本を、皓子はどのように救うのか?

 フィクションとはいえ、この手の作品を楽しめるかどうかは、ストーリーがいかにリアルかということにかかっているだろう。この作品では、複数の危機が同時並行的に発生するわけだが、本作品でそれぞれの危機がどれだけリアリティをもって描かれているかというと、

政治危機 > 自然災害危機 > 金融・財政危機

 であるように感じた。政治危機は、すでに日本で実際に起きていることと、大差ない。自然災害危機は、気象学的な設定にやや強引さがあるような印象もあるものの、一般論として言えば、いったん首都圏で大規模水害が起きたら、破局的な事態になりかねないというのは、その通りだろうと思った。問題は、金融・財政危機の描き方であり、これが著者の一番の得意分野だと思うのだが、正直言えばこの点に物足りなさを感じた。金融・財政危機は長期的・構造的な問題であり、本作ではそれをマーケットの動揺の問題として描くことに終始してしまっている。政治家のひらめきで相場危機を一山超えたら、それで終わりというわけではないはずなのに。

 まあ、小説が苦手な私が、400ページ以上ある本を一気に読んでしまったということは、面白かったことは間違いないが。

大暴落 ガラ
幸田 真音
中央公論新社
2017-03-08


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 「持ちこたえられない」というのが結論である。このほど読了した河村小百合『中央銀行は持ちこたえられるか ─忍び寄る「経済敗戦」の足音 』(集英社新書、2016年)によれば、中央銀行(具体的には日銀のこと)は安倍政権のリフレ政策の皺寄せに耐え切れず、遠からず健全性を維持できなくなるとの見通しが示されている。やはり錬金術はインチキだったという、当たり前の話である。

 個人的に本書から学んだ点としては、米国やEUも日本と同様のリフレ政策を推進してきたようでいながら、やはり日本のそれは異次元であること、日本ではプライマリーバランスさえ改善すれば安心のような風潮があるが、あくまでも問われるべきは財政収支全体であること、米国の緩和政策では最初から「出口戦略」が意識されていたのに対し、日本のそれは出口戦略が決定的に欠けていること、一口でマイナス金利と言っても日欧でかなり内容に違いがあること、日銀は米欧の中銀に比べて説明責任をまったく果たしていないこと、などである。

 それにしても、本書でも最後の方で指摘されているとおり、これだけのリスクが日々肥大化しているにもかかわらず、日本のマスコミはほとんど警鐘を鳴らしていない(著者によれば、そもそも大新聞レベルでも問題を理解できていないそうだ)。まあいいや、自分だけでも自衛しよう。



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 今般編集作業が終わった『ロシアNIS調査月報』2017年1月号では、「ソ連解体から四半世紀を経たロシア・NIS」という特集を組んでいる。ロシア・NISのすべての国を個別のレポートで詳しく論じるという意欲的な号になっているので、楽しみにしていただきたい。12月20日発行予定。

 さて、エストニア、ラトヴィア(私は通常は「ラトビア」と表記しているが)、リトアニアのバルト三国は、両大戦間期に独立国だった実績があるので、旧ソ連のいわゆる「新興独立諸国(NIS)」の範疇には含まれない。2004年にEU加盟を果たしたことを受け、2006年に私どもロシアNIS貿易会の事業対象からも外れてしまった。しかし、今回の月報の特集テーマであるソ連解体とその後の歳月、若き独立諸国の歩みを考える上で、バルト三国は避けて通れない。そこで今回の特集号では、せめて書評コーナーでこれら三国を取り上げることにした。明石書店の世界歴史叢書のシリーズから出たアンドレス・カセカンプ著、小森宏美・重松尚訳『バルト三国の歴史 ―エストニア・ラトヴィア・リトアニア 石器時代から現代まで』を紐解いてみた。以下、その書評を当ブログでもお目にかける。

 実は、バルト三国の歴史を総合的に論じた書籍というのは、あまり多くないらしい。というのも、エストニアとラトヴィアが歴史的に共通のコースを辿ってきたのに対し、リトアニアの歴史はだいぶ異なっており、三国を網羅した通史を描くのは至難の業だからだ。その点、本書はバランスが良く、翻訳も丁寧で大変に読みやすい。バルト三国について本邦で得られる最良の入門書と断言できる。

 バルト三国がソ連体制下で苦難を味わい、ソ連解体の際に急先鋒の役割を果たしたことは、良く知られている。したがって、これらの民族は終始一貫して反ソ連的、反ロシア的なのではないかというイメージを、つい抱いてしまう。しかし、歴史的には必ずしもそうではなく、エストニア人・ラトヴィア人にとっては、中世から20世紀初めに至るまで、現地の支配層であるバルト・ドイツ人こそが、克服すべき存在であった。また、中世にリトアニア大公国で栄華を極めながら、16世紀にポーランド王国に取り込まれたリトアニア人にとっては、ポーランドと一線を画し自己確立することが鍵であった。エストニア人・ラトヴィア人・リトアニア人がこれらの課題を解決し、国民国家として自己形成していく上で、ロシアは意外と肯定的な役割を果たしたことが、本書からは伝わってくる。

 むろん、ロシアは善意からバルト三国の民族・国家形成に協力したわけではない。私が本書で最も強い印象を受けたのは、ロマノフ王朝時代、「バルト・ドイツ人もロシア人官僚も、エストニア人およびラトヴィア人に民族としての未来や可能性はなく、間違いなく同化されると信じていた。唯一の問題は、エストニア人およびラトヴィア人がロシア化するのか、ドイツ化するのかという点にあったのである」(143頁)というくだりだった。別のシナリオを辿れば、エストニア人やラトヴィア人は、モルドヴィア人あたりと同じように、ロシア語を話してロシア正教を信仰する、ロシアの中の小民族といった存在になっていたかもしれない。そのような歴史の「イフ」や大いなる逆説を、小さき民族たちが語りかけてくれるのが、本書『バルト三国の歴史』である。

 いずれにしても、生れ落ちるに至ったバルト三民族が、ソ連解体のドラマにおいて主役級の役割を果たしたわけである。当時話題になったキーワードや事件名を挙げるだけでも、歌う革命、人間の鎖、人民戦線、血の日曜日事件、主権宣言など、枚挙に暇がない。本書では、「ソ連解体の結果としてバルト三国の独立が達成されたと言われることが多い。だが、その逆の方が真実に近い。バルト三国の民衆運動がソ連国内の民主化を加速し、ソヴィエト帝国の屋台骨を揺るがしたのである」(279頁)と指摘されており、まさにその通りだろう。



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 この週末、10月29~30日に京都女子大学で、ロシア・東欧学会の2016年研究大会が開催された。個人的には、ロシアの分科会で「ロシアの通商・産業政策におけるユーラシア経済連合の意義」と題する報告をさせていただいたのだが、テーマがマニアックなのと、報告の完成度が低かったことから、反響は低かった。

 今回はとにかく、冒頭に設けられた共通論題「漂流する世界とプーチンのロシア」で蓮見雄さんが「世界経済の構造転換をめぐる対抗・協調とロシアの選択」という報告を行ったのが、白眉だったのではないだろうか。ロシア・東欧学会なので、「ロシアは重要」という前提になりがちであるところ(あるいは、そもそもの重要性を問うこともなく蛸壺研究に終始)、ロシアはマージナルかつ受け身だという主張を研究大会の冒頭に持ってくるというのは、なかなか斬新だったと思う。学生時代に受けた伊豆見元先生の授業で、「朝鮮半島問題を考える時の基本の一つは、朝鮮半島問題が世界的に見ればそれほど重要でないということをわきまえることだ」という話を聞いてとても印象に残ったが(自分の研究分野の重要性が相対的に低いということを認めるのは勇気の要ることだろう)、それを思い出した。

 京都女子大学のキャンパス自体はまあ普通の大学の風景だったが、周りは史跡や観光名所だらけで、知的刺激は受けそうな環境だった。


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 こんな新刊のご紹介をいただきました。小泉悠『プーチンの国家戦略 ―岐路に立つ「強国」ロシア』(東京堂出版、2016年)、2,200円+税。内容は以下のとおり。

 プーチン大統領が絶対的指導者として君臨するロシア。この大国は、どこに向おうとしているのか。軍事、核、宗教、ウクライナ、NATO、旧ソ諸国、北方領土問題、宇宙開発など多岐にわたる切り口からロシアの戦略に迫る。「軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理」で話題となった、いま注目の若手ロシア研究者 小泉悠氏の最新作。

 ところで、この本の帯には佐藤優氏の推薦文が書かれており、佐藤氏の名前の方が著者の小泉さんより大きく目立つようになっている(笑)。以前、ロック評論家・渋谷陽一の本の帯に桑田佳祐が推薦文を寄せ、そちらの方が目立つようになっていたので、見た人が「桑田の本」と勘違いして手に取るという、そんなことがあったのを思い出した。もう小泉さんは誰かの名前を借りて売らなくても大丈夫じゃないでしょうか。



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 以前もタイトルだけご紹介したが、このほど読了したので、改めて取り上げさせていただく。杉本侃編著『北東アジアのエネルギー安全保障 ―東を目指すロシアと日本の将来』(日本評論社、ERINA北東アジア研究叢書5、2016年)である。A5判・312頁、定価:本体5,400円+税となっている。

 ERINA北東アジア研究叢書の一環として刊行された本書は、2011年度に立ち上げられた「北東アジアのエネルギー安全保障に関する共同研究グループ」の研究成果をまとめたものということである。エネルギーの大供給国ロシアと、大消費国日本の関係を、様々な視点から分析することで、周辺諸国を含む北東アジア全体のエネルギー安全保障を論じている。また、研究会立ち上げ後の2014年に、ウクライナで政変が発生したことから、それによって生じたウクライナ危機が図らずも本書の重要な背景になっている。

 順を追って見ていくと、新井洋史による第1章「序論:北東アジアのエネルギー情勢をどう捉えるか?」は、北東アジア地域の持つ特性、日・韓・北朝鮮・中・モンゴル・露という各国の経済・エネルギー事情、国際インフラの特性と整備状況、地域国際協力の枠組みについて論じている。

 本村眞澄による第2章「パイプライン政策とエネルギー安全保障」では、エネルギー安全保障についての視点、パイプラインというものの特質、ロシアのパイプライン政策と対欧米関係、ウクライナのパイプライン問題などが扱われている。パイプライン問題をいたずらに地政学的対立と捉えることを戒める本村氏の年来の主張が改めて打ち出されている。

 兵頭慎治、エレナ・シャドリナ、蓮見雄、原田大輔による第3章「ロシアの対外エネルギー戦略」は、ロシアと北東アジア、ロシアとアジア、ロシアと欧州、ロシアと日本のそれぞれの関係について論じている。

 篠原建仁、安達祐子、蓮見雄、原田大輔、による第4章「ロシア・エネルギー企業の戦略」では、ロスネフチ、ガスプロム、ヤマルLNGプロジェクトについての分析が披露されている。

 真殿達による第5章は、「ウクライナ危機とは何だったのか」というもの。ウクライナ問題の本質に関する、鋭く、目配りの効いた考察だと感じた。

 杉浦敏廣による第6章「カスピ海の資源開発動向とアジア地域への波及」は、カスピ海における石油ガス開発の概況を論じ、アジアへのインプリケーションを探ろうとしている。

 シャグダル・エンクバヤルによる第7章「エネルギーと気候変動」は、本テーマに関する基本を解説した上で、その問題設定を北東アジアに当てはめ、地域のエネルギー消費のあるべき姿を模索した論考である。

 杉本侃による第8章「日ロエネルギー協力の展望」は、長年この分野に携わってきた著者らしく、ロシアのエネルギー戦略の歴史的変遷を踏まえ、日ロ間のエネルギー協力の課題が論じられている。

 巻末には、執筆者らによるウクライナ危機および日本のエネルギーの課題に関する座談会の模様も採録されている。

 書名に「北東アジア」と冠されてはいるが、本書で極東地域を扱ったのはむしろ一部であり、ロシアのエネルギー問題全体に関する概説書だと理解していいだろう。より正確に言えば、ロシアのエネルギー戦略の全体像、ウクライナ危機、東方シフトといった背景を理解した上で北東アジアのエネルギー安全保障を考えるべきだというのが、本書のメッセージなのだろう。



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 先日もちらりと書いたが、東アジアのスラヴ研究学会に出席するため、今日から月曜日まで上海出張である。そこで、こんな本はどうだろうか。高橋基人著『こんなにちがう中国各省気質 ―31地域・性格診断』(草思社、2013)年。内容は、

 中国と一口に言ってもとてつもなく広い。東北地方から海南島まで、沿海部から青海省、チベットまで、住んでる民族もちがえば、文化もちがう。顔がちがう、食物がちがう。「反日デモ」で大騒ぎする報道の向こう側で、どんな人が住み、どんな暮らしがあるのか。住んでいる地域別に人びとの気質を体験的に説いた、面白い中国人論。北京、上海、東北三省から海南島、沿岸部から敦煌、チベットまで、広い中国、ところ変われば、人も変わる、文化がちがう、食べ物がちがう。「反日デモ」報道ではわからない中国人の本当の顔。

 といったものだ。ベテランの元企業駐在員が書いたものなので、非常に真に迫っている。ただ、全部一気に通して読破するような本ではないので、以前買ってチラチラ読んでいたのだが、今回上海に行くということで、上海の部分を読み返した次第。

 上海人の気質は、「精明(ジンミン)」という言葉に象徴される、ケチで小心者で目先の利益にこだわりがちなところ。中国人は皆、上海の街は好きだが、上海人は嫌いだ、と言うそうである。



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 こんな新刊が出ました。ウェンディ・ロワー著『ヒトラーの娘たち ―ホロコーストに加担したドイツ女性』(明石書店、2016年)です。私もベラルーシの地名表記についてのアドバイスをする形で、ちょっとだけ手伝いました。Amazonからコピーすると、内容は以下のようなもの。

 ナチズムが生んだ一般のドイツ女性たちは`血塗られた地'(ブラッドランド)で何を目撃し、何を行ったのか。レイシズム、国家主義のさいはてに待つ、知られざる歴史の闇に迫る。ナチス・ドイツ占領下の東欧に入植した一般女性たちは、ホロコーストに直面したとき何を目撃し、何を為したのか。冷戦後に明らかになった膨大な資料や丹念な聞き取り調査から、個々の一般ドイツ女性をヒトラーが台頭していったドイツ社会史のなかで捉え直し、歴史の闇に新たな光を当てる。



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 論文執筆の参考とするために、既存の文献をいくつか読み返しているところなのだけど、そのうちの一つ、今井雅和『新興大国ロシアの国際ビジネス ―ビジネス立地と企業活動の進化』(中央経済社、2011年)。本書の中で、現在の私の関心に直接関係するのが、第1章第3節の「参入企業とロシア市場」という部分。ここでの分析では、外国企業のロシア市場への参入動機を、「ソーシング」(外国への輸出のための供給基地)、「マーケティング」(ロシア市場での販売)、「(ロシアでの)国内生産・マーケティング」、「リサーチ」と分類しており、この分類法は非常に有用である。そして、著者はロシアに進出した主要外国企業につき、どのカテゴリーに当てはまるかを示して一覧表にしており、非常に参考になった。

 本書執筆時点では、ロシアはエネルギー・資源のソーシング国とは位置付けられても、製造業のソーシング国となるのは非常に考えにくい、という図式だった。当時は、外資企業のロシア工場はもっぱらロシア国内市場向けだった。ロシア工場で現地生産して外国に輸出するようなことは、フィンランド系タイヤメーカーのノキアンなど、ごく一部に限られた。ただ、その後の情勢変化で、最近では日系を含む外国自動車メーカーのロシア工場から諸外国向けに自動車が輸出するようなケースも増えており、現時点でこの分析を行えばかなり違った図式が浮かび上がりそうである。今井さんには、ぜひ本研究のアップデートをお願いしたいところであり、特に今井さんのお詳しいタイヤ市場についての再論を期待したい(タイヤはロシアに所在する外国メーカー工場からの輸出が盛んになっている分野の一つなので)。



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 以前もタイトルだけご紹介したが、このほど読了したので、改めて取り上げてみたい。安達祐子著『現代ロシア経済 ―資源・国家・企業統治』(名古屋大学出版会、2016年)である。

 Amazonの内容紹介をコピーさせていただくと、「ソ連解体からエリツィンを経てプーチン体制へ、未曾有の経済危機から新興国へと成長したロシア経済を、資源のみならず、独自のガバナンスの重要性に着目して包括的に叙述、移行経済におけるインフォーマルな国家・企業間関係の決定的意味を捉え、ロシア型資本主義の特質に迫る。」という内容である。なお、著者はこのテーマに関する博士論文をベースとした著作をすでに英語で上梓しており、本書はそれをアップデートしつつ日本語化したものということである。

 私の理解によれば、本書は現代ロシア経済を、コーポレート・ガバナンスを軸に解き明かしたものである。コーポレート・ガバナンスの一般論、旧ソ連の特殊条件についての考察、ロシアにおけるコーポレート・ガバナンスの整備と実態についての議論、そしてユーコス、シバール(ルサール)、ノリリスク・ニッケル、ガスプロム、ロスネフチ、ロステクを題材としたケーススタディが披露されている。

 本書は400ページを超える大著であり、このテーマについての著作としては本邦はもとより、おそらく世界的に見ても最も完成度の高いものの一つだろう。欧米、ロシア、日本の先行研究を網羅的に把握し、ロシアのコーポレート・ガバナンス問題について非常にバランスのとれた、深い考察がなされている。法整備、産業ごとの特性、企業行動、政治的力学、国際関係などに的確な目配りがなされており、理論や規範だけにとらわれないロシアのリアルが描かれていると感じた。

 本書の完成度を認めた上で、一つだけないものねだりをさせていただくとすれば、本書では先行研究のサーベイが完璧かつ網羅的すぎて、逆に「著者・本書独自の発見や主張が何なのか?」という部分が伝わりにくくなっている印象を受けた。ただし、私の理解する限り、本研究の独自性は確かに存在する。それは、ロシアにおけるコーポレート・ガバナンス違反は、必要悪という面があった、ということではないかと思う。つまり、旧ソ連の企業は単なる「生産単位」にとどまり、市場経済における主体としては不適格なものだったので、私有化の過程でそれを強引な手法を使ってでも最適化する必要が生じ、その再編過程でコーポレート・ガバナンス違反が横行したということが、本書では克明に描かれている。しかしながら、私の印象では、著者はコーポレート・ガバナンス違反が必要悪であったということを示唆するにとどまり、明確に主張として打ち出すことは自粛しているように見受けられた。その点を敢えて明確に主張した方が、本書の独自性が際立ち、学界での論争に繋がったのではないかと、個人的には少々惜しいような気がした。

 いずれにしても、ロシア経済と企業、コーポレート・ガバナンスの諸問題に関心を持つ者にとっては必読となる、きわめて高い水準の研究書である。

現代ロシア経済―資源・国家・企業統治―
安達 祐子
名古屋大学出版会
2016-02-08


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 このほど読了した、久保田博幸『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』。最近私は、狼少年よろしく、日本の財政問題についての危機意識をことあるごとに表明しているのだが、正直言えば、本書の著者である久保田博幸氏の受け売りの部分が大きい。この方はYAHOOのアプリの経済コーナーに毎日コラムを執筆しているので、それを読むのが日課になっている。で、YAHOOのコラムは無料で読めるが、これだけ色々勉強させてもらっているのでタダ乗りはいけないと思い、その著書を買って読んでみることにした。それが本書『聞け! 是清の警告 アベノミクスが学ぶべき「出口」の教訓』というわけである。著者は前書きでこんな風に言っている。

 私はリフレ派と呼ばれる人達の考え方に対しては、あまり賛同できません。そのリフレ派がデフレ脱却の手本としていたのが高橋(是清)財政でした。リフレ派は特に大きなレジーム・チェンジとされた日銀による国債引受が、デフレ脱却に大きな効果があったとの見方をしていたのですが、ここに違和感を覚えていました。是清の政策が何か勘違いされている面があるのではないかと訝しんでいたのです。

 日銀による国債引受は戦後に制定された財政法で禁じられており、主要国でも中央銀行による国債引受は禁じられています。その禁じられた政策を行ってまで、デフレから脱却を目指すとするリフレ派の意見は、危険な発想と考えていました。

 アベノミクスにおける金融政策では、さすがに財政法で禁じられている日銀による国債引受までは踏み込みませんでしたが、その代わりに年間発行額の7割もの国債を買入れるという異次元緩和政策が決定されたのです。

 リフレ派の政策が日銀の政策となり、その模範とされたのが是清の政策であるのならば、高橋財政を改めて確認し、アベノミクスと比較することがたいへん重要です。

 高橋財政でデフレ脱却に成功したのは、最初のレジーム・チェンジとされる金輸出禁止による効果が大きかったように思われます。

 期待に働きかけるというより、円安や財政政策、政策金利の引下げなどにより直接に経済に働きかける経路が存在していたのです。その財政政策に必要とされる国債の発行方式として日銀の国債引受を選択したと思われます。

 これに対してアベノミクスでは、円安による株高や輸入物価の上昇等への影響はあったものの日銀の異次元緩和が実体経済に働きかけるような経路が見当たりません。リフレ派の言うところの期待に働きかける効果についても、なにやら呪文で物価が上昇するかのような印象を持っています。

 アベノミクスの中心には日銀の異次元緩和があり、その異次元緩和の主役は国債です。日銀による国債引受が、かつて高橋財政の出口政策を困難にさせることになりました。アベノミクスもやはり同様に出口が大きな問題となることが予想されます。

 安倍首相や麻生蔵相は、戦前に高橋是清が財政ファイナンスを断行し、その結果デフレ・不況を脱却したとして、リフレ政策を正当化している。しかし、現実には高橋財政は国債の日銀引き受けの賜物というよりは、その他の条件に恵まれたがゆえに不況を脱出できた。しかも、財政ファイナンスという禁断の政策手段を選択したため、軍事費拡張を求める軍部の圧力に抗しきれず、戦後のハイパーインフレの原因を作るとともに、自らも二二六事件で暗殺される憂き目に会うわけである。これは、日本財政史の黒歴史に他ならないが、数十年後の似非経済学者や為政者によって高橋財政の真相が曲解され、新たな財政破綻を招くようなことがあれば、二重の悲劇となろう。



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 これは週刊エコノミストの先週号、「特集:ヘリコプターマネーの正体」。まあ、私の理解によれば、マイナス金利というのはミッドウェー海戦くらいで、ヘリコプターマネーはいよいよアベノミクスの本土決戦のようなものであり、そんなに遠くない将来に日本国民全員が本件に翻弄される可能性が高いので、問題意識を持っておいた方がいいと、個人的には思う。

 この特集を読んで、だいたい聞いたことのあるような話が多かった。そうした中、岩村充「ヘリコプターマネーはすでに現実:予期せぬ『出口』への備えが必要」は、日銀保有国債の永久債化プランという非常に具体的な危機打開方法が提示されており、新鮮ではあったが、正直この論考だけ極端に技術的で難しすぎ、私にはほとんど理解できなかった。

 ただ、直感的に思うことは、この岩村さんの提示している解決策は、とても頭の良い人が考えた、優れて工学的な対処法だということである。ということは、原発のように、すべてが遺漏なくきちんと機能すれば確かに有用かもしれないが、一つ想定外の出来事で歯車が狂えば、破局的な事態がもたらされるのではないかと、そんな予感を感じてしまうのである。それは、政治家の不用意な一言かもしれないし、S&Pの格下げかもしれないし、ヘッジファンドの攻撃かもしれないし、大地震かもしれない。こういうものは、プロ中のプロの高度なプランよりも、一般庶民の「国がいくら借金してもチャラなんて、絶対おかしい」という市井の感覚の方が、えてして本質を突いていたりするものだと思う。

 まあ、大多数の国民にとっては、「難しい話はさておき、では我々はどうすればいいの?」ということに尽きるだろう。エコノミストのこの特集号には、萩原博子「高インフレに備えるお金の動かし方」、深野康彦「インフレに備える投資術:不動産、金を買い、国債はショート」といった実践的な記事も掲載されているので、目を通しておいて損はないだろう。



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 これも夏休みに読んだ本。明石書店のエリアスタディーズのシリーズで、『イギリスを知るための65章』。私自身、現在そのシリーズの別の国の作業をしているところなので、他の国も参考例としていくつか読んでおり、今回はBrexitもあったのでイギリス編を紐解いてみたというわけである。ちなみに、このエリアスタディーズのシリーズは、電子書籍のKindleになっているものといないものがあり、私はKindle版が得られる本はそちらを選ぶようにしているので、今回もKindle版を利用した。

 そんなわけで、イギリスの65章を読破はしてみたものの、イギリス編はだいぶ歴史・文学・文化に偏重した中身だった。逆に言うと、今日の政治・経済・社会問題、国際関係などは、かなり手薄である。私の発想では、ビートルズ、パンクロック、イングランド・プレミアリーグ、ラグビーなどの章くらいあってもいいと思うのだが、それらは正面から扱われていない。まあ、イギリスのようなネタが尽きない国は、ある程度重点項目を絞らないと本としてまとまらなくなってしまうので、これはこれでいいのだろう。せっかくなので、EUに関係したくだりだけ、以下引用しておく。

 二〇〇二年一一月、日産のゴーン社長(当時)は、早期にユーロ参加が実現しない場合、イングランド北東部サンダーランドからヨーロッパ市場に向けた新型車の生産拠点をよそに移すつもりだ、とブレア首相にせまった。日産が五〇〇〇人の雇用を提供しているこの地方は、ブレア首相の地元である。一九九七年、トヨタの奥田社長(現会長)は、欧州通貨統合に参加しなければイギリスへの投資を見直すと警告したが、そもそもこの年、「親ユーロ」を掲げて総選挙で保守党を破ったのが、現労働党ブレア政権であった。ユーロ安ポンド高が製造業に影響しないはずがない。製品輸出の六割をヨーロッパ市場に頼っている現状で、この国の製造業を支える日本やアメリカのメーカーからの批判は免れない。

 イギリスにとって、EC加盟は政策の大転換だった。それは、植民地や自治領との貿易において享受してきた特恵関税など、大英帝国の遺産をすて、「西」ヨーロッパ市場を選ぶことを意味した。背後には、スターリング・ポンド圏が縮小して、ポンドが切り下げ一歩手前まで弱体化していたという通貨事情があった。また、軍事的にはアメリカとNATOで連携していてもドルへの反発が強いヨーロッパで、首都ロンドンを一大金融市場と変貌せしめる。こんな夢もEU加盟には託されていた。



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 夏休みに読んだ本の紹介。しばらく前から書店の店頭で目にして気になっていた、徳勝礼子『マイナス金利―ハイパー・インフレよりも怖い日本経済の末路』(東洋経済新報社)。その内容は、「邦銀と外銀との相対取引で発生した円のマイナス金利が、いまや短期国債市場にも波及している。そうした事態を引き起こす原因を探っていくと、空前の金融緩和と、それと表裏一体となった財政拡張に突き当たる。低い国債金利は市場が財政リスクを懸念していないからではなく、懸念しているからこそマイナス金利がある、というロジックが解明される。外資系証券でレラティブ・バリュー・アナリストを務める著者が、金融マーケットが発している日本経済への警告を読み解いた、異色の日本経済論」というもの。

 はっきり言って、かなり読み応えのある本であり、私もたぶん半分くらいしか理解できなかったと思う。著者は、なるべく分かりやすい例え話などを多用して、読者に伝えようと努力しているものの、肝心な部分では難しい話をたたみかけるような感じになり、個人的にすべてを消化することはできなかった。いやでも、日本経済の行く末を考える上では避けて通れない、必読書になると考える。以下では、特に重要と思われる部分だけ、引用してみる。

 ドル資金の調達にプレミアムが付くということは、逆にドル資金を既に持っている投資家から見れば、収益機会となる。何しろ、ドルを貸してあげれば、円は市場よりもかなり低い金利で借りられるからだ。しかし、ドルを貸すことによって円をマイナス0・2%で調達できれば、円の短期国債にマイナス0・05%で投資しても利ザヤが得られることになる。そのような投資家がマイナス金利で調達した円で円資産を実際に購入し始めることで、2014年9月のような円金利のマイナス化が目に見える形で発生してきた。これこそが元祖・円のマイナス金利だ。

 財政拡大のために信用リスクが高まっている国家に対して、通常なら市場はそれなりの金利を要求するだろう。しかし、国家が制度や規制を通じて国民が低金利でも国債に投資せざるを得ない状況を作ることで、人為的に低金利が維持されるように誘導することができる。これが金融抑圧だ。金利を市場で自由に決まる水準よりも低く「抑えつける」という意味で抑圧という強い言葉が使われている。

 中でも、タイトルに「ハイパー・インフレよりも怖い」とあるように、本書の中で著者が中心的なメッセージとして打ち出しているのは、次のような点である。

 そういう意味では、これまでいろいろな形で予想されていたドラマチックなハイパー・インフレや、国債暴落、日本国の破綻は起こらず、金融抑圧の究極の形態としてのマイナス金利が最終的に財政のつじつまを合わせていく、という可能性があるのではないか。

 もし暴落と破綻が起こってしまえば、その後には再生することもできる。しかし、マイナス金利によって徐々に国の借金が国民の資産によって少しずつ強制的に埋め合わされていく形になれば、衰弱死的な経済になっていくように思われる。そのような展開は、ある意味破綻よりも怖いとはいえないだろうか?

 ハイパー・インフレは確かに怖い。しかし、それが衰弱死よりもまだ希望を持てるとすれば、それが短期決戦で否応なく再生を強制することだ。太平洋戦争の後のハイパー・インフレは確かに途方もなく苦しく、筆者自身も自分がその場にいたら、乗り越えられるかどうか正直不安である。しかし、人的資源があれば経済を再建できる。ゼロからやり直せばプラスに持って行けるからだ。一方、国の債務のつじつまが合うまでマイナス金利が継続する社会で幼少期から青春までを過ごして育ったら、その人間はそこから経済を再建しようと思うガッツを持ち合わせるだろうか。



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 今般こんな本が発行された。『世界ダークツーリズム ―人類の悲劇の歴史をたどる旅』である。この中に私の書いた「ホロドモール博物館:歴史の闇に埋もれた旧ソ連時代の大飢饉」も採録されている。とはいえ、この書籍を紹介するのは、少々気が重い。私の研究者としての立ち位置と、編集側の編集上の都合がかみ合わず、辛い作業になった。まあ、そのあたりについては2月のエッセイに書いたので、私の認識をよりストレートにお知りになりたい方は、そちらを参照していただければ幸いである。こうやって出来上がった本を手に取ってみると、他の章の担当者は作家、ジャーナリスト、ライター、旅行ガイドといった方々が多く、研究者は私を含め数少ない。編集側としては、もっと現地を訪れた時の臨場感ある報告のようなものが欲しかったんだろうな。まあ、「ホロドモールにそのものの解説をお願いしたい、訪問記などはこちらで用意するから」と編集側から言われたから、それくらいならできるかなと思って、渋々引き受けたんだけど。ともあれ、他の章はたぶん読みごたえがあると思うので、買って損はないはず。1,800円+税。



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 いやあ、これは面白かった。橘玲著『タックスヘイヴン Tax Haven』(幻冬舎文庫、2014年)である。ただ、最近関心が集まっているタックスヘイブン問題に関する解説書というのではなく、小説である。パナマ文書問題を発端にタックスヘイブンが話題になっているのに合わせ、2014年に出た本を最近電子書籍化したという経緯である。内容は以下のとおり。

 東南アジアでもっとも成功した金融マネージャー北川が、シンガポールのホテルで転落死した。自殺か他殺か。同時に名門スイス銀行の山之辺が失踪、1000億円が消えた。金融洗浄(マネーロンダリング)、ODA、原発輸出、仕手株集団、暗躍する政治家とヤクザ……。名門銀行が絶対に知られたくない秘密、そしてすべてを操る男の存在とは? 国際金融情報小説の傑作!

 橘玲氏の現代の経済問題についての著作は私も何点か読み、ライターとしての力量は分かっているつもりだったが、小説作品もここまで面白いとは、驚きだった。本書の場合は、マネーロンダリング問題、日本社会の闇をサスペンス的に描き、そこに青春グラフティ的な要素も無理なく落とし込んでいるところが凄い。ただし、本書に登場するタックスヘイブンはほぼシンガポールに限られ、正直タイトルも別の方が良かったのではないかと思えるほどで、タックスヘイブンに関する概括的な知識を習得するために本書を手に取ると、やや空振りになるかもしれない。



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 このほどこんな本をKindle版で読んでみた。山田吉彦『完全図解 海から見た世界経済』(ダイヤモンド社、2016年)というものである。「海がわかれば、経済がわかる。激変する世界をつかむ新しい視点! 経済予測・分析に使えるデータ満載! 各種データ、航路図などなど、図解でわかりやすい!  激変する世界をつかむ新しい視点。日本の貿易は、99.7%が「海」で行われる。南シナ海は、20兆円の貿易圏である。世界を動かす「石油価格のメカニズム」。経済予測・分析に使えるデータ満載!石油、海運、造船、漁業、紛争etc」などとうたわれている。

 読んでみたところ、海をめぐる経済の諸問題を頭の中で整理する上では、それなりに役に立つ本だなと感じだ。しかし、入門書であるためか、どうも全体に食い足りない。それに、私自身がある程度知見のある分野、たとえばロシアに関してのくだりなどは、全体的にピント外れで、首を傾げてしまったのも事実である。一例として、以下のような部分だ。

 現在のロシアも19世紀の南下政策と同様の動きをしています。目的は天然ガスの輸出ルートの確保です。まずバルト海を目指しましたが、ソ連崩壊後、バルト三国とポーランドはEUの一員となり、現在はロシア軍の仮想敵国ともいえる北大西洋条約機構(NATO)にも加盟しています。今もロシアが支配するバルト海の港、カリーニングラードは、ポーランドとリトアニアに囲まれた飛地にあり、自由に動き回ることが難しくなりました。カリーニングラードとロシア本国の間を移動するためには、リトアニア政府の発給するビザが必要です。ロシアは、カリーニングラードを主要港として期待することができなくなりました。(中略)

 そこで、現代においてもロシアが最後に頼れる海域は日本海です。2014年12月、プーチン大統領はウラジオストクを自由港にするとの計画を発表しました。極東開発は、プーチン政権にとっての生命線となっています。

 さて、エネルギー資源を全面的に輸入に依存する日本にとって、もしかしたら逆転満塁ホームランになるかもしれないのが、メタンハイドレートである。本書には、「2014年度のメタンハイドレート開発促進事業の政府予算は127億円であり、さらに補正予算で20億円が追加されました」という記述があり、個人的にそのあまりの額の小ささに驚いた。一方、こちらの記事によれば、日本はこれまで核燃料サイクルに12兆円つぎ込んできたということであり、つまりメタンハイドレートの年間開発促進費の1,000倍に上る。重点を置く分野を、完全に誤っていると言わざるをえない。



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 先日、蓮見雄さんにご紹介いただいた新刊、福田耕治編著『EUの連帯とリスクガバナンス』(早稲田大学現代政治経済研究所研究叢書、2016年)。目次は以下のとおり。「EU脱退の法的諸問題―Brexitを素材として」という、妙にタイムリーな章もある(笑)。本体3,700+税。

  • EU/欧州諸国の連帯とリスクガバナンス―理念・歴史・理論的枠組み
  • EU/欧州福祉レジームにおける連帯と社会的包摂―「時間銀行」の社会実験を事例として
  • ユーロ危機とヨーロッパ経済の動向
  • 政策レジームと社会的連合―均衡と危機の間のヨーロッパ・日本・アメリカ
  • EU脱退の法的諸問題―Brexitを素材として
  • パリ・ブリュッセルテロ事件に見る西欧先進社会の危機とEU共通テロ政策
  • シェンゲンのリスクとEUの連帯
  • EUの医療保障と連帯―国境を越える患者の権利を事例として
  • 競争政策におけるEUの連帯
  • EUエネルギー政策とウクライナ・ロシア問題
  • EU加盟諸国の合意形成に向けた協調行動



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 塩原俊彦さんから、こんな新著のご紹介をいただきました。『プーチン露大統領とその仲間たち ―私が「KGB」に拉致された背景』(社会評論社)です。



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 廣瀬陽子さんから新刊のご案内をいただいた。『アゼルバイジャン ―文明が交錯する「火の国」』(ユーラシア文庫5、群像社)というもの。内容は以下のとおり。まだアマゾンのページはないようだ。

 東西冷戦の時代もイスラームとキリストの二大宗教圏の対立する現在も常にその最前線に位置するアゼルバイジャン。石油と天然ガスに支えられた経済と伝統的な氏族政治と世襲政権で安定を確保しながらロシアとトルコとイランの間で常に衝突の危機をはらんでいる国の歴史と現状。


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 こんな新刊のご案内をいただいた。小泉悠著『軍事大国ロシア ―新たな世界戦略と行動原理』(作品社、2016年)というものだ。内容は、「復活した“軍事大国”。21世紀世界をいかに変えようとしているのか?「多極世界」におけるハイブリッド戦略、大胆な軍改革、準軍事組織、その機構と実力、世界第2位の軍需産業、軍事技術のハイテク化…話題の軍事評論家による渾身の書下し!」といったもの。464ページもある立派な本だ。

軍事大国ロシア
小泉 悠
作品社
2016-04-21


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 こんな新刊をご恵贈いただいたので、紹介します。村上勇介・帯谷知可(編著)『融解と再創造の世界秩序(相関地域研究2)』(青弓社、2016年)、2,600円+税。冷戦終結後、急激に加速したグローバル化は二十世紀的な秩序を融解させ、アメリカの国際的地位の低下や中国の台頭、中東や東アジアでの緊張の増大など、国家間の関係性は劇的に変容した。諸国家のせめぎ合いによって新たな秩序はどのように立ち上がっているのか。中東、中東欧諸国、ラテンアメリカなどの政治・経済状況から現代世界を読み解く、という内容。章立ては以下のとおり。

プロローグ 覇権大国不在の無秩序な世紀の到来(村上勇介/帯谷知可)
第1部 国家の動態、地域の変容
第1章 ボーダースタディーズからみた世界と秩序――混迷する社会の可視化を求めて(岩下明裕)
第2章 中東の地域秩序の変動――「アラブの春」、シリア「内戦」、そして「イスラーム国」へ(末近浩太)
第3章 動揺するヨーロッパ――中東欧諸国はどこに活路を求めるのか?(仙石 学)
第4章 ラテンアメリカでの地域秩序変動(村上勇介)
第2部 越境のダイナミズム
第5章 「非・国民」――新たな選択肢、あるいはラトヴィアの特殊性について(小森宏美)
第6章 ロック音楽と市民社会、テレビドラマと民主化――社会主義時代のチェコスロバキア(福田 宏)
第7章 社会主義的近代とイスラームが交わるところ――ウズベキスタンのイスラーム・ベール問題からの眺め(帯谷知可)
第8章 資本主義の未来――イスラーム金融からの問いかけ(長岡慎介)
エピローグ 地域から世界を考え、世界から地域を考える――相関地域研究の試み(帯谷知可/村上勇介)



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 先日タイトルだけご紹介した中村逸郎著『シベリア最深紀行 ―知られざる大地への七つの旅』。早速読んでみたので、以下簡単にレビューしてみたい。

 ごく簡単に言ってしまえば、本書は著者がシベリアの辺境を訪ね歩いた記録である。それでは、元々の主たる関心が「ロシア」であったはずの著者が、何ゆえに「シベリア」に魅せられ、その中でも特に辺鄙な土地に引き寄せられたのか。これについて筆者自身は序章の中で、次のように述べている。

 わたしはトボーリスクを包み込むシベリアの大自然と出会って、これまで知っていたロシアと異なる原風景をまえに思う。茫々たる大地は、どのような存在も無力化してしまう。自然の驚異にさらされると、シベリアに乗り出してきたロシア人さえも価値を問いなおされ、存在理由が相対化されるのではないだろうか。

 「ロシアのなかのシベリア」という枠組みでシベリアを理解するには限界があるのではないか。・・・ここで思いきってこの構図を逆立ちさせ、「シベリアのなかのロシア」と考えてみてはどうだろうか。・・・

 ・・・シベリアに入り込んだロシア人はどのような変容をとげ、逆にシベリアの人々はロシア人をいかに受容したのだろうか。従来の「ロシアのなかのシベリア」に対峙する「シベリアのなかのロシア」から見える両者の交じり合いと折り合いのつけかた、ときには相克の実態を描いてみたい。

 私の理解するところ、本書はあくまでもロシア論だと思う。ただ、ロシアを論ずるにあたって、そのメインストリームではなく、地理的な辺境、非ロシア人、非正教徒、正教徒の中でも異端派などにあえてフォーカスすることによって、いわばそこから逆照射するような形でロシアというものの本質を浮かび上がらそうとしているように思える。ロシアのことをこれから知りたいという初学者が、まず本書を手に取ったら戸惑うことになるだろうが、一定以上のロシアの知識のある方が、より深くロシアを理解しようと思ったら、本書から得られるところはきわめて大であろう。

 と、若干お堅いことを申し上げてしまったが、単純に旅行記として読んでも、本書はすこぶる面白い。私もロシア研究者の端くれなので、できることなら80以上あるロシアの地域をすべて訪問してみたいという夢があるが、日本の全都道府県制覇などと違って、実現は至難の業である。中でもシベリアの奥地にあるような諸地域を訪問するのは、まず無理だろうと諦めている。その点、本書におけるヤマロ・ネネツ自治管区、トゥヴァ共和国、ザバイカル地方などの訪問記は貴重なものであり、個人的にまず行く機会がないであろう土地への旅行を疑似体験させてもらった。しかも、私は普段ロシアの地方を訪れる時、州都と、せいぜい州の第2の都市くらいの訪問で済ませてしまうことが多いが、著者は都市というよりも、シベリアの村に分け入っていく。とりわけ、タイガの奥地に潜む古儀式派の村を訪問するくだりには、鬼気迫るものがあった。

 古儀式派のくだりを含め、本書の中でとりわけ白眉と言えるのが、トゥヴァ共和国訪問の記録だろう。驚くようなエピソードのてんこ盛りであり、本当に逆立ちして世界を見たような変な気分になる。実はこの最貧共和国の幸福度がロシアで一番高いというのにも驚いたが、我々経済関係者が注目しているトゥヴァの鉄道建設に関しては、地元民は必ずしも歓迎していないようだ。トゥヴァ共和国の医療施設には常勤のシャーマンがいるそうで、医療行為に加えて祈祷や生活相談も施されているというから、驚きだ。ただ、著者が実際にシャーマンの治療を受けてみたところ、何とも人間臭いやり取りも。トゥヴァではシャーマニズムと仏教が奇妙な形で共存しているそうで、ロシア人が推し進めるロシア正教とも相まって、一筋縄では行かない宗教模様となっている。

 複数の宗教が奇妙に共存しているのは、ザバイカル地方も同じであり、チタはキリスト教、ユダヤ教、イスラム教が隣り合わせに共存していることから「第2のエルサレム」とも称されているのだそうだ。ところが、ここにはチベット仏教も根を張っており、実はロシア正教徒、ユダヤ教徒、イスラム教徒が自らにとっての「二つ目の宗教」として仏教を受け入れるケースが多いのだそうだ。大学生が選択する「第二外国語」というのは聞いたことがあるが、「第二宗教」などというのは、個人的にも初耳だ。

 私自身は、一番好きな場所がヨドバシカメラ・マルチメディアAKIBAだという、現代文明にどっぷり浸かった人間だ。本書の著者のようにシベリアの道なき道を進んだりするのは無理だし、人見知りということもあり、シベリアの奥地の民と同じ目線で対話をしたりすることはできない。本当に、本書によって得がたい疑似体験をさせてもらったと思っている。



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 どういうわけか、当ブログではこのところ新刊の紹介が続いている。3月はこの種の書籍が集中的に出る時期なのだろうか?

 このほど、ご恵贈いただいたのは、杉本侃(編)『北東アジアのエネルギー安全保障 ―東を目指すロシアと日本の将来』(ERINA北東アジア研究叢書5、2016年)。300ページあまりで、5,400円+税。まだ本日届いたばかりで、詳しくはこれからじっくり吟味させていただこうと思う。



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 こういう新刊のご紹介をいただいた。岡部芳彦著『マイダン革命はなぜ起こったか ―ロシアとEUのはざまで』(ウクライナ・ブックレット3、ドニエプル出版、2016年)。正直申し上げると、ドニエプル出版というのも、ウクライナ・ブックレットというのも初めて聞いたが、日本ウクライナ文化交流協会というところが企画・編集に当たって、ウクライナについてのブックレットをシリーズ化していくようだ。分量は64ページで、価格は500円+税。ドニエプル出版のサイトでも注文できるようだし、もう少しすればAmazonでも買えるだろう。


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 これも新刊のご紹介。中村逸郎著『シベリア最深紀行 ―知られざる大地への七つの旅』(岩波書店、2016年)。「シベリアの底知れぬエネルギーを抱えてこそロシアは成り立つ。今も活躍するシャーマンたち、極北のトナカイ遊牧民、各地に広がるイスラム教徒や仏教徒と各宗教の寺院をはしごする住民たち、密林に住む自給自足の旧教徒やドイツ系移民たち。シベリア最深部の秘境に暮らす多様で自由かつ強靭な人びとを訪ね歩いた政治学者の稀有な記録」という内容。これから読みます。



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