周知のとおりロシア代表はユーロ2012で不名誉な一次リーグ敗退という結果に終わったが、それを受けこのほど、S.フルセンコ・サッカー協会会長が辞任した。ただし、それに至るには見逃せない底流があったようだ。こちらのサイトに掲載されている記事を、以下抄訳して紹介する。

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 ユーロでの失態により、S.フルセンコ(写真)がロシア・サッカー協会会長の座を失うことになった。フルセンコは、プーチン大統領と面談し、退任を申し出た。フルセンコは同会長職を2年半務めたことになる。ただ、専門家の指摘によれば、フルセンコは拙速な改革を急ぎすぎ、今回のロシア代表の敗退を待つまでもなく、サッカー界では同氏に対する不満が渦巻いていたという。

 プーチン大統領が中東歴訪に旅立つ前のタイミングをとらえ、フルセンコはプーチンと面談し辞任を申し入れた。フルセンコは、ユーロでの失敗がその理由であると、明言した。フルセンコは、「ロシア代表は非常に強かっただけに、この結果は恥ずかしい。こうした結果につき、ファンの皆さんに謝罪したく、それゆえに重い決断を下した」と述べた。

 プーチン大統領は、フルセンコの労をねぎらい、その仕事に謝意を表した。プーチンは、「ロシアのサッカーは急激に発展している。新たなタレントが生まれている。審判の制度が改革されており、これは八百長を防止する上で重要だ。ビーチサッカー代表に至っては、獲れるタイトルはほぼすべて獲っている」と、フルセンコの実績を評価したうえで、フルセンコにUEFA執行委員会での仕事は継続するように要請した。

 今後、ロシア・サッカー協会は3ヵ月以内に臨時総会を開き、新会長を選出することになる。有力候補としては、B.グルィズロフ前下院議長、V.ムトコ・スポーツ相などが取りざたされている。ちなみに、ムトコはサッカー協会の前会長であり、メドヴェージェフ前大統領が公職者がスポーツ団体のトップを兼務することを禁止したためサッカー協会会長から退いていたが、プーチン新大統領がその規則を撤廃する可能性があるという。

 ただし、専門家たちは、フルセンコの辞任理由がユーロでの敗退であることに、違和感を示している。サッカー選手・指導者労組のN.グラマチコフ書記長は、次のように指摘する。「フルセンコ会長は代表監督気取りだが、代表チーム敗退の責任はD.アドヴォカート監督が負うべきだ。フルセンコ会長の業績はむしろ、ユース年代の状況、サッカービジネスの状況全般、ロシア選手の海外での活躍といった基準で評価すべきで、これらの指標のどれ一つとして満足の行くものではない。ロシアには民間のサッカーアカデミーが1つあるだけで、各クラブは、プレミアリーグでさえも、一部の例外を除いて、予算の10~15%しか自前で稼ぐことができず、国からの補助金に依存している。西欧のビッグクラブで活躍しているロシア人プレーヤーは1人もいない。」

 情報筋によれば、フルセンコ会長の退陣を求める動きは、ユーロ本大会の前に始まっていたという。5月半ばに与党「統一ロシア」の議員グループ(A.ヴァシレンコが中心)がプーチン大統領に、照会状を贈った。そこには、協会を揺るがす恒常的なスキャンダルや、2018年W杯の劣悪な準備状況への懸念が示され、協会はロシアの法律で動いておらず、ユース年代は放置されている、と指摘されていた。別の関係者は、W杯の準備作業につき、フルセンコ会長が自らの管轄外の問題にも熱心に介入していたことを指摘する。

 フルセンコは、サッカー協会会長に就任する前は、「ナショナル・メディア・グループ」の経営者だった。サッカーにかかわるようになったのは、2005~2008年にゼニトの球団社長に就任してからであった。同氏が、ロシア・スポーツ界の幹部としては稀に見る活発性を示したのは、事実である。短い在任期間の間に、ロシア・サッカー界にあらゆる改革と新機軸をもたらした。だが、それらはどれ一つとして、今のところ明確な成功を示しておらず、いくつかについては激しい非難を浴びている。

 とりわけ、これまでロシアの気候には合わないとして見送られていた、国内リーグを西欧型の秋春制に移行させる改革を断行した点については、前任の2人の会長であるV.コロスコフもV.ムトコも激しく批判している。また、サッカーに「良心コード」を導入したことも、現場では物笑いの対象となっており、昨年には国内サッカーにおける暴力と人種差別の事件がむしろ増えている。

 サッカー界では、協会会長の交代が、どのような影響をもたらすか、懸念している。2010年の選挙で会長の座をフルセンコと争ったA.アミノフ(サッカー発展基金会長)は、肝心なのは会長を交代させることよりも、組織、サッカーの管理方法を変えることだと指摘する。フルセンコ会長以前も、それらは芳しくなかった。「10年間にわたってロシアのサッカーに巨額のカネをつぎ込んできたが、成果はまったくそれに見合わない」と、アミノフは述べる。

 前出のグラマチコフは、ロシアのサッカーには、民主化、透明性、地域協会の役割向上が求められるという。会長職には、独立し、落ち着きがあり、サッカー経験の豊富な人物、理想を言えば国際的に活躍してきた人物が望ましく、サッカーの改革という難事業、とりわけビジネスとしてのそれを改革できる人物が求められると、グラマチコフは述べた。

 アミノフも、グラマチコフも、クレムリンによって任命される会長では、これらの課題を成し遂げられないと指摘する。政権にとっても、政権主導の会長人事は、タブーだ。なぜなら、今回のユーロのように失敗した時に、協会に責任を押し付けられなくなるからである。

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