なんか、本ブログにサッカーのことばかり書いて、本業が疎かになっているような気が。調査・研究活動も平常どおり続けているんだけど。
今、ウクライナについての書き物をしていて、その過程で見付けた資料をちょっと紹介したい。ウクライナの社会調査機関「ラズムコフ・センター」のサイトを見ていたら、ウクライナ国民の生活実感の長期的推移を跡付けた調査結果を見付けたので、それをグラフにしてお見せする。
ラズムコフ・センターでは、定期的に実施しているウクライナ全国の世論調査で、「次の状況のうち、貴方の家庭に最も合致するのはどれだと思うか?」という質問を問うている。回答の選択肢は、「どんなものでも買える」、「生活には余裕があるが、住宅や自動車までは買う余裕がない」、「生活にはほぼ困らないが、家具・冷蔵庫・テレビなどを買うのは難しい」、「食料品や安価な必需品は買える」、「必需品を買うことすらままならない」という5つ。その回答結果が、2004年から2011年までにどのように変遷してきたかを示したのが、上図である。ただし、「どんなものでも買える」と答えた回答者は、ピーク時でも1.1%にすぎず、だいたいは1%以下なので、これを図示することは不可能である。そこで図では便宜的に、「どんなものでも買える」と「生活には余裕があるが、住宅や自動車までは買う余裕がない」を合計して、「生活には余裕がある」として示している。また、年に何回か調査が行われている中で、基本的には毎年3月の調査結果にもとづいて作図したが、3月の数字が得られない場合にはなるべくそれに近い月のデータで代用した点、ご容赦願いたい。
ともあれ、図からは以下のような点が読み取れよう。第1に、ウクライナ国民はまだまだ全体的にあまり豊かではないということである。最新の2011年3月の調査結果は、「どんなものでも買える」:0.2%、「生活には余裕があるが、住宅や自動車までは買う余裕がない」:3.4%、「生活にはほぼ困らないが、家具・冷蔵庫・テレビなどを買うのは難しい」:33.6%、「食料品や安価な必需品は買える」:39.6%、「必需品を買うことすらままならない」:20.7%、であった(回答困難・無回答が2.4%)。むろん、この手の調査では、どちらかというと自分の暮らし向きを厳しめに評価するバイアスがあるかもしれない。一時期、日本車が飛ぶように売れて供給が追い付かなかったことを考えれば、このグラフが示唆するよりも、ウクライナ国民の購買力はありそうである。それでも、ロシアと比べればだいぶ見劣りするのは間違いないし、貧困層にかなりの厚みがあることは否定できない。
第2に、趨勢的な情勢も、あまり芳しくないということである。バブル華やかなりし2008年前半までは、国民の物質的状況も年々改善されていた。それが、リーマンショックを受け、2009年に大幅に悪化してしまった。経済危機からの回復がロシアなどよりも遅れている上に、2011年の数字を見ると、状況が再び悪化しつつあるとも受け取れる。
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