10月28日投票の最高会議選挙を控え、ウクライナの野党に大同団結の動きが出ている。これに関するロシア『コメルサント』紙の報道振りは概略以下のとおり。

 28日、ウクライナの統一野党は戦略を発表した。ヤヌコーヴィチ大統領の早期辞任と大統領選実施を求めることが、その柱である。ヤヌコーヴィチがそれに応じることは考えにくいから、野党にとって唯一の可能性は10月28日の議会選で勝つこと、しかも450議席中300議席を獲得することである。

 野党のプログラムと戦略は、キエフで開かれた会合で発表された。これに先立ち、5月12日日に開かれた反大統領派のフォーラムで、野党連合を結成する旨が表明されていた。その際に、団結する用意のある政党のリストも示された。問題は、新法によれば、政党連合が議会選に参加することはできないということであり、そのために野党リーダーたちは自党における自らの党員資格を停止した上で、ティモシェンコ党(バチキウシチナ)の統一名簿に合流することを余儀なくされた。

 ティモシェンコ党と同盟を組む政党のうち、最も影響力があるのは、A.ヤツェニューク元最高会議議長の「変革戦線」である。この他、Yu.ルツェンコ元内相の「国民自衛」、V.キリレンコ氏の「ウクライナのために!」、B.タラシューク元外相の「ウクライナ国民運動」、S.ソボレフ氏の「改革と秩序」が参加する。

 収監されているティモシェンコが選挙に出馬できないので、おそらくヤツェニューク氏が選挙名簿のトップに立つと見られる。比例名簿の他、225の小選挙区の候補者名簿も策定される。

 ヤヌコーヴィチの退陣の他に野党連合が目標としているのは、最低生計費を1,037フリヴニャ(約129ドル)から2,400フリヴニャ(300ドル)に引き上げること、陪審員制度を導入すること、最近実施された入札の結果を見直すこと、ロシアの天然ガスへの依存度を低下させることなどである。

 むろん、野党連合はティモシェンコとYu.ルツェンコの釈放をめざす。しかし、それを実現するためには、単に議会選で勝つだけでなく、450議席中300議席をとる必要がある。ヤツェニュークによれば、そのあかつきには、議会が大統領の支配下から外れ、司法も同様であり、さらに政府もそうなる。閣僚は大統領が任命するが、議会の支持を得ていない政府は予算案も通すことができず、ヤヌコーヴィチには服さなくなる。そして、300議席あれば、大統領弾劾法を可決し、それに対する大統領の拒否権を覆すこともできる、という。

 しかし、現在のところ野党連合の勝算は微妙である。キエフ社会学国際研究所の調査によれば、野党連合に票を入れる用意がある有権者は15.9%だけで、地域党の15.6%と同レベルである。その他、ボクシング世界チャンピオンのV.クリチコのUDARが5.9%、共産党が4.7%などとなっている。別の「レイティング」という調査機関によれば、野党連合が18.8%で、地域党が16.6%、UDARが7.2%、共産党が6.1%であった。

 最高会議の勢力図は、多分に225の小選挙区にかかっている。小選挙区は、必ずしも党派的な対決とはならず、富豪の担ぐ候補が当選したりする。従来もそうだったが、新たな選挙法により従来以上にそれが容易になった。

 ヤヌコーヴィチは、ティモシェンコを収監することにより、パンドラの箱を空けてしまった。ヤヌコーヴィチが大統領ポストを失ったら、政敵からの報復に遭うことは確実である。したがって、ヤヌコーヴィチとしては何としても政権の座にしがみつき、野党に議会を渡さないようにするしかない。つまり、今般、野党連合が発表したプログラムの実現を阻止するということである。

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