21日成立したロシアのメドヴェージェフ新内閣に関し、まずは『RBCデイリー』紙の記事を抄訳して紹介する。

 メドヴェージェフ新内閣は、4分の3も陣容が一新された。だが、新味があるのは大臣のポストで、それに対し副首相はほぼそのままの顔触れで新首相に引き継がれた。専門家たちは、新内閣を「次官内閣」と呼び、多くの異動にもかかわらず、政府内部の力関係はほとんど変わらないと見ている。

 メドヴェージェフは引き続き、7人の副首相と仕事をすることになった。閣外に去ったのはI.セーチンとV.ズプコフで、それに代わりメドヴェージェフの補佐官だったA.ドヴォルコヴィチと、モスクワ市の社会開発問題担当の副市長だったO.ゴロジェツの2人が副首相の座に就いた。経済のリアルセクターを担当することになったドヴォルコヴィチは、大統領の表明した7つの優先事項が政府の戦略的課題となると発言している。

 ドヴォルコヴィチとともに財政・経済ブロックを率いるのが、I.シュヴァロフ第一副首相である。政府筋では、財政も含め、シュヴァロフは従来の管轄分野をすべて保持する見通しであるという。運輸・通信分野の管轄は未確定だ。シュヴァロフは「手頃な住宅」プログラムも担当することになるかもしれない。

 一般の大臣のレベルでは、入れ替わりがより激しい。大臣ポストを維持したのは、5人だけだった。経済発展大臣には、E.ナビウリナに代わって、A.ベロウソフが就いた。ベロウソフは、省内で大幅な人事異動はないとしている。経済発展省と財務省は永遠の敵同士だったが、ベロウソフの大臣就任で両省の立場が接近する可能性もある。ベロウソフ本人が、シルアノフ蔵相とは旧知の間柄で、仕事がしやすいと述べているからだ。アルファバンクのN.オルロヴァ主任エコノミストは、ドヴォルコヴィチの存在により民営化政策が継続されるという期待もできる一方、ベロウソフの経済発展相就任により、民営化政策の行方が不透明になると指摘する。「実業ロシア」のB.チロフは、A.クドリンにとってはマクロ経済安定化が第一だったが、ベロウソフとドヴォルコヴィチの入閣により、ロシアは安定化政策だけでなく開発の方向にも進める、ドヴォルコヴィチはよりイノベーション的で多くのラジカルな改革アイディアを有しているとの認識を表明。「ロシアの支柱」のS.ボリソフも、ベロウソフとはこれまで有益な協力関係にあり、今後も中小企業の発展に尽くしてくれるだろうとの期待を示した。

 エネルギー相のポストには、A.ノヴァク前財務次官が就いた。ただ、エネルギー産業に対するセーチン前副首相の影響力が気にならないかとの質問に対し、ノヴァクは明確な返答を避けた。ノヴァクはエネルギーに関し実質的に素人であり、あるエネルギー大手の幹部は、「多くは次官人事にかかってくるだろう。その人選は、『最上層部』の同意を得なければならないことは明白だ」と指摘する。

 N.フョードロフ新農相は、2010年までチュヴァシ共和国大統領を務めた人物であるが、この重要な職責への準備が怠りなくできるよう、かなり以前から大臣就任を打診されていたと、本人は語っている。フョードロフは、ナショナルプロジェクトの賜物で農業は上り調子であり、農工コンプレクス発展の国家プログラムにつき各方面と詳細を詰めることが課題であると語っている。ロシア食肉同盟のM.マミコニャン会長は、ロシアのWTO加盟の関係で、現在ロシア農業が必要としているのは農業出身の大臣というよりも、業界の利益を擁護し、財務省や経済発展省と密接に協力できるような政治的経験豊かな人間であると語る。農業景況研究所のD.ルィリコ所長も、フョードロフはチュヴァシ共和国大統領として知名度があり、農村の社会的発展に尽くし成果を挙げた人物であるとして、歓迎の意を表した。

 保健・社会発展省は、保健省と労働・社会発展省に分割される。保健省の大臣には、保健・社会発展次官だったV.スクヴォルツォヴァが就く。保健省の幹部の中で、同氏が唯一の医師であるとのことで、近年保健関連の重要政策はすべて同氏を通して決定されてきた。T.ゴリコヴァ大臣は退任するが、同じ分野の大統領補佐官に就任するので、引き続き同分野を統括することになるという。

 文化大臣には、下院議員だったV.メジンスキーが就任する。現在、文化行政は荒廃しきった状況にあるとされ、財政資金を箱ものや人件費ではなく、成果に対して支出するようにすることが課題だという指摘がある。

 通信相に起用されたN.ニキフォロフは、タタルスタン共和国で通信相を務めていた人物だが、新内閣で最も若い閣僚となった。ニキフォロフを知る人々によれば、彼はイノベーションや新機軸を好み、地元タタルスタンでナンバーポータビリティ制度を導入した実績もあるので、今度はロシア全土でそれが実施されるかもしれない、とのことだ。

 さて、ガイダル研究所のS.ジャヴォロンコフは新内閣を、「次官内閣」と評している。大多数の新閣僚はこれまで次官を務めてきた人物か(スクヴォルツォヴァ、トピリン)、かつて次官だった人物(リヴァノフ、ベロウソフ)だからである。ジャヴォロンコフによれば、次官たちが大臣に昇格する一方、これまでの大臣たちは大統領府など他の役職に移動し、そこから少なくとも部分的には政府をコントロールできる、という。政治工学センターのI.ブーニンは、組閣にあたっては2つの目的、すなわち従来の路線および非公式な派閥・利害関係を継続することと、世論に歩み寄るということが追求された、と指摘。ジャヴォロンコフも、不人気な大臣は去ったが、その代りに現れたのは従来の路線を継承する人々だった、変化が生じうるのは前任者と関係のない人間が大臣になった通信省と農業省だけだ、との見方。ジャヴォロンコフはさらに、新内閣の良いところは仕事の経験だ、これはカミカゼ内閣ではない、かつてのプーチン大統領の下での2人の首相の時のような「技術的な政府」にはならないが、新内閣が強力になるということもない、プーチンは自派の人間を閣内に保持し、自らの大統領権限とクレムリンに異動する人々を通じて政府をコントロールし続けるだろう、と述べた。

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