20120521kholmyansky

 前の記事でお伝えしたとおり、5月14日、ウラル連邦管区大統領全権代表のYe.クイヴァシェフがスヴェルドロフスク州知事代行に任命され、それによってウラル全権代表のポストが空席となった。そして、プーチン大統領は18日、スヴェルドロフスク州ニジニタギル市に所在するウラル鉄道車両工場の労働者、I.ホルマンスキフ氏(写真右)と面談し、同氏にウラル全権代表への就任を打診、同氏もこれを受け入れた。プーチン大統領は21日、ホルマンスキフをウラル連邦管区の大統領全権代表に任命する大統領令に正式に署名した。

 ホルマンスキフの経歴は、こちらのサイトに掲載されている。1969年ニジニタギル生まれ。ウラル国立工科大学卒。卒業後、今日まで一貫して、ウラル鉄道車両工場で働いてきた。同氏が一躍有名になったのは、昨年暮れにモスクワで反政府デモが吹き荒れていた時期に、自らが「男たち」を引き連れてモスクワに出向き反政府集会を蹴散らして見せるとプーチン首相に提案したことだった。大統領選におけるプーチン候補支持委員会のウラル鉄道車両工場支部長に就任し、2012年2月には体制支持派の新団体「勤労者の擁護のために」の共同議長に就任していた。

 このように、過去数ヵ月は政治に関与しプーチン支持運動に身を投じていたとはいえ、同氏が一介の「労働者」であることは変わりなく、異例の抜擢は驚きをもって受け止められている。私自身、今回の大統領選およびプーチン新体制の確立にあたって、ニジニタギルという街、なかんずくウラル鉄道車両工場という企業の象徴的な役割に着目してはいたが、まさかここまで絵を描いたような事態になるとは思わなかった。

 前置きが長くなったが、本件に関し、本日付の『コメルサント』紙の論評振りを、以下のとおり抄訳して紹介する。

 ホルマンスキフの急激な出世は、政界においても、専門家筋でも、バラバラな評価を受けている。また、同氏の抜擢は、野党に対してだけでなく、エリートに対しても、シグナルであると指摘されている。

 政治評論家のD.オレーシキンによれば、プーチンは今回も連邦中央の地域問題に対する批判的な態度を誇示しようとしたが、エリートが今回の人事に明確に反対することはなさそうだという。モスクワ大のR.トゥロフスキー教授は、今回のプーチンの行動は地域のエリートに対する見せしめだが、ホルマンスキフ全権代表の下で代表部の陣容が強化されないうちは、地域のエリートたちはホルマンスキフを無視すればいいだけだと指摘。政治工学センターのA.マカルキン第一副所長は、もしもホルマンスキフが代表部の誰かを解任して自派の人間を後任に据えるとか、あるいは自派の知事を据えるようにプーチンに依頼したら話は別かもしれないが、現時点では彼はむしろ、革命の潮流に反対し現体制を支持している人民を象徴する存在にすぎない、との分析を披露。選挙工学研究所のYe.スチコフ所長は、プーチンは個人的忠誠心に応じて人材を要職に配置しており、教育・経験・知性なども重要ではあるが二次的である、と指摘。社会学者のO.クルィシタノフスカヤは、エリートは今回の人事を受け入れるだろう、そのポストを狙っていた2~3の人間は個人的に失望するかもしれないが、全体としてエリートはプーチンが刷新を求める人々の要求に耳を傾けなければならないことを理解している、と指摘。

 これに対し、野党は今回の人事をイメージ戦略にすぎないと受け止めている。ヤブロコのS.ミトロヒンは、プーチンは大衆の支持を模索しており、首都の住民よりも本物の労働者階級に自分は近いのだということを誇示しようとしたのだ、と述べた。共産党のV.ソロヴィヨフは、大統領は自分が生産に従事する人々に依拠しており、社会問題の解決を重視しているということを誇示しようとしたのだ、との見方。

 情報筋によれば、ホルマンスキフの全権代表への就任で、スヴェルドロフスク州知事の人選にも影響が及ぶ可能性がある。Ye.クイヴァシェフ知事代行の他、V.ヴラソフ・スヴェルドロフスク州首相代行、ウラル鉄道車両工場のO.シエンコ社長などが候補になっているという。与党「統一ロシア」は本件につき18日にV.ヴォロジン大統領府第一副長官と協議し、14日以内に党の総会幹部会が知事候補を選定することになる。

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