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 ちょっと用事があって、こんな表を作ってみた。過去10年のEUの鉄鋼輸入相手国を整理したものである。EUは米国のトランプ鉄鋼関税に対抗し、2018年7月19日から鉄鋼輸入に暫定的に関税割当を適用してきた。そして、2019年2月2日からは、関税割当が正式に導入され、これが2021年6月30日まで適用されることになっている。関税割当とは、ある一定量までは通常の関税率で輸入されるが(EUの場合、鉄鋼の関税率は基本的に0%、鉄鋼製品は大部分が5.0%)、それを超えると以降は高率の関税率が適用されるという仕組みであり、本件の場合にはそれは25%の上乗せとなっている。この措置の影響を探るための下調べとして、上掲のような表を作成した次第だ。まあ、一口に鉄鋼といっても、プリミティブな半製品から高度な鋼板類まで色々あるし、できれば金額よりも数量ベースで見たいところなのだが、とりあえず全体像を知るための表である。

 EUは域内貿易比率が非常に大きな地域経済圏であり、鉄鋼に関しても輸入はEU域内からが多く、その比率は常に7割を超えている。しかし、鉄鋼の域内輸入比率は、2009年の78.3%から、2018年の72.6%へと傾向的に低下している。

 ロシアは、単独の国としては、EUの最大の鉄鋼輸入相手国である。実は、2018年7月以降のEUの暫定的な関税割当は、かえってロシアには有利に働いたようで、表に見るように、2018年にロシアのEU向け鉄鋼輸出は大きく伸びた。同様のことは、トルコについても言えるようである。こうしたことにかんがみ、EUは2019年2月以降は、基本的に国別に割当を設定し、ロシアのような国から突出して輸入が増えないように修正を図った。

 それに比べると、ウクライナのEU向け輸出は、このところ振るわない。むろんこれには、ドンバス・アゾフ海情勢というウクライナ側の事情が大きく影響している。ただ、ウクライナはEUと連合協定を締結しDCFTAが成立しているのに、それでもEU側の制限措置の対象に加えられてしまうのは、モヤモヤする(今回の関税割当が及ぼす影響は実際には小さいという指摘もあるが)。

 その他のCIS国では、モルドバがEU向け鉄鋼輸出を増やしていることが興味深い。これは、沿ドニエストル共和国に所在するモルドバ冶金工場の製品に他ならず、親ロシア分離主義地域の工場であるにもかかわらず、ちゃっかりモルドバとEUのDCFTAの恩恵に浴しているわけである。

 今や世界に冠たる鉄鋼超大国となった中国だが、中国はEU向けにはそれほど大量に輸出はしていない。日本も微々たるものである。EUはトランプ関税への対抗措置として関税割当を導入したわけだが、実は米国からの輸入はごくわずかである。


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