1年近く前の古い情報だが、こちらのサイトで、A.グーシチンというロシアの政治評論家(上掲写真)が、ウクライナ政界にはドンバス紛争に関し3つほどの潮流があるということを論じているので、要旨を整理しておく。
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ウクライナ政界に見られる立場で、第1に挙げられるのは、両人民共和国を軍事的に奪還すべきだという過激シナリオである。しかし、ロシアは制裁も省みず両人民共和国を何としても支援しようとするので、このシナリオを実施するのは至難である。この立場をとるのは民族主義・過激勢力であり、まず自由党が挙げられるが、同党は小数の小選挙区議員を有する存在にすぎない。もう一つ、人民戦線の中にもそのような立場が見られるが、多数派ではない。最近、ウクライナ軍が強化されただけに、このシナリオは西側でも歓迎されないし、ロシアが指をくわえて見ていることもありえない。
第2は、「再統合」という路線であり、「野党ブロック」、(条件付の)親ロシア・反マイダン政治勢力がしばしばそれを唱えている。彼らはミンスク合意を実施することによる再統合が必要と考え、地方選挙、憲法改革、ドンバスへの特別なステータスの付与を実施に移すべきだと考える。これに対し、政権側は、表向きはミンスク合意を履行すると言っているものの、そのためにはまず安全保障が確保され国境管理権の引渡しがなされなければならないとの立場をとる。
第3は、沿ドニエストルのように紛争を凍結し、問題の責任と両人民共和国の費用負担をロシアに押し付ければいいという立場である。実質的にドンバスの一部を手放すことで、ウクライナ社会はより同質的になれるという効果もある。今日我々が目撃しているのは、まさにこのシナリオの実現であり、実際、ミンスク合意の政治部分はまったく実行されていない。ポロシェンコ大統領が何より目指しているのは、自らが政権に留まり体制を維持することである。ポロシェンコが長期的に何を目指しているのかを見極めるのは難しいが、現時点でポロシェンコが志向しているのも、まさにこの第3のシナリオである。
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