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 例の米トランプ政権の鉄鋼関税は、この3月になって唐突に出てきた印象があったが、実はこちらのサイトに見るように、少なくとも2018年1月の時点で米商務省による関連レポートが出ており、それなりに周到に根回しが進められていたのだということに、遅れ馳せながら気付いた。鉄鋼・アルミの輸入が米国の国家安全保障を脅かすので、通商拡大法232条を適用して高関税を課すという荒唐無稽な措置は、3月になってトランプが突然個人的な思い付きで打ち出したわけではなく、一応外堀を埋めた上で発表されたということらしい。むろん、元々のイニシアティブはトランプ大統領に属し、トランプが商務省にこれこれの調査をやれと命じて出来上がったのがくだんの報告書ということになる。ちなみに、経緯を言うと、報告書は1月12日にロス商務長官からトランプ大統領に提出されていたものの、一般に公開したのは2月16日だったとのことだ。

 それで、トランプ関税に関し、ロシア側の当初の受け止め方としては、ロシアが米国に輸出しているのは主に鉄鋼半製品であり、それを米国の工場でさらに加工して完成製品を得るための材料にすぎないので、必ずしも高関税の対象にならないのではないか、といった希望的観測もあったように思う。しかし、1月の米商務省のレポートを眺めると、半製品の輸入も敵視していることが明白である。実は、米商務省は2001年にも同様のレポートを出しており、その際には半製品の輸入は米国の安全保障にとって特に脅威にはならないという立場が示されていたようだ。ところが、今回のレポートでは一転して、たとえば熱延製品の生産原価に占める半製品(スラブ)のコストは90%にも及び、そうした半製品の供給をロシアやブラジルのような国に依存している状況は安全保障上重大な問題である、という精神が横溢している。


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