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 ウクライナ統計局のこちらのページで、『2015-2017年のウクライナ国民の国際労働移民(Зовнішня трудова міграція населення України 2015-2017)』と題する統計集が刊行されているのを知った。ウクライナ危機が起きてからこのシリーズの統計集が出るのは、これが初めてのようである。2.7万の世帯を対象にサンプル調査を実施し、それにより国全体の数字を推計しているようである。昨日、当ブログで取り上げた図解資料も、どうやらこの統計集にもとづいて作成されたようだ。

 この中に、ウクライナの労働移民の行き先の国と、その出身地をマトリックス状に示した表が載っていたので、今回はそれを取り上げてみたい。それが上表なのだが、国外出稼ぎ労働者の総数は130万人とされている。一般的に、ウクライナの出稼ぎ労働者数は300万~500万人に上るとされることが多く、今回の130万という数字は過小である可能性があるだろう。

 この資料で、注目すべきは、ウクライナを西部・北部・中部・南部・東部と5つのマクロリージョンに区分することを試みていることだろう。当国では、民間シンクタンクによるこのようなマクロリージョン区分の前例はあり、私などもラズムコフ・センターの方式を採用してきたが、今回のようにウクライナの公的機関がそれを行った例は、個人的に記憶にない。この統計集の説明書きによれば、世帯調査のサンプル数に限界があり、州別のデータを示すと統計的ばらつきが大きくなりすぎてしまうので、州を5マクロリージョンにまとめることでそれを回避しようとしたということだが、図らずもそのお陰でウクライナの地域分類法に関する有力な方式が示されることとなった。

 いずれにしても、表から明らかなのは、労働移民というのは、圧倒的にウクライナ西部の現象だということであり、西部が国全体の69.4%を占めている。西部=親欧州というステレオタイプに反して、ロシアに向かう西部住民も多いことが分かる。なお、原典では、マクロリージョン別内訳がパーセンテージで示されていたのを、それでは分かりにくいので、上表では人数の実数を算出して示している。西部以外の各マクロリージョンは、サンプル数が少ないので、統計的な誤差が生じる恐れがあると説明されている。というわけで、統計的なばらつきや、果たしてどこまで網羅的かという疑問はあるにせよ、ウクライナの労働移民の全体像をイメージするには有益な資料と言えそうだ。


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