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 ロシアでは、ウクライナ危機後、「輸入代替」が経済政策のキーワードとなり、2~3年前にはそれ一色という雰囲気すらあったが、ここに来てそれがだいぶトーンダウンしてきた印象が強い。

 それと符合するように、こちらの記事によれば、プーチン大統領はこのほど女性企業家との対話の席で、輸入代替は一時的な現象にすぎない旨発言した由である。私などもロシアの輸入代替政策をテーマとしたレポートなどを書いてきただけに、何やらハシゴを外されたような心境である。

 プーチンいわく、輸入代替という考え方自体は万能ではなく、輸入代替が競争を阻害するようなことがあってはならないわけで、それが我々が最終的に目指すところではない。これはきわめて重要な点だ。我々皆が理解しなければらないのは、輸入代替なるものは、一時的な現象にすぎないということで、皆さんにはぜひ理解してもらいたい。これは現状に適応する一時的な手段のようなものだ。我が国はロシア国内だけでなく、世界市場においても競争力のあるような、しかるべき質と手頃な値段で製品を生産するよう努めなければならない。輸入代替が要請されるのは、まず何よりも国家安全保障にかかわる部門で、たとえば軍需産業がそれに当たる。ロシアは(従来ウクライナから輸入していた)船舶エンジン、ヘリコプターエンジンを自国で生産するようになったが、それは状況に強いられたものだった。いくつかの事例では、経済制裁など困難な状況にもかかわらず、我が国はそれに取り組んできたし、今も、これからも続ける。

 以上がプーチンの発言振りである。まあ、プーチンは3年ほど前に輸入代替政策が台頭した当初から、内外で競争力のある産業を育てることが肝心であり、弱い産業を人為的に保護するつもりはない旨強調していたので、今回も本質的には新しいことを述べたわけではない。ただ、それにしても、「一時的な現象」というのは、踏み込んだ表現であり、プーチン政権の風向きの変化をうかがわせる。


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