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 I.コロモイシキー(ロシア語読みではI.コロモイスキー)と言えば、プリヴァト・グループの総帥で、ウクライナを代表するオリガルヒの一人だが、今日のウクライナ政財界における立ち位置が今一つ分かりにくいなと思っていたところ、ロシア『エクスペルト』誌(2017年12月25日‐2018年1月14日号、No.1-2)に同氏を軸とした最近のウクライナ政財界力学を論じた記事が出ていたので、以下のとおり抄訳しておく。

 コロモイシキーは2014年のマイダンのスポンサーの一人で、ドンバスで戦った義勇部隊の創設者でもあった。2014年3月から2015年3月まではドニプロペトロウシク州の知事を務めた。彼は、今でも主に企業家のままなので、革命と内戦に投資したカネを、最大限に回収しようとしている。多くの国営企業に出資しており、キエフ中心部も含め、武装した「愛国者」の支援により、行政庁舎を難なく占拠することができた。法律については、あからさまに無視する姿勢を示している。公務員の二重国籍を禁止する法律が成立した時には、「法律が禁止しているのは二重国籍で、私は三重国籍なので関係ない」とうそぶいたほどだ。なお、彼はウクライナ、イスラエル、キプロスのパスポートを保有している。

 やりたい放題のコロモイシキーに、ポロシェンコ大統領は嫌気がさし、知事から解任した。コロモイシキーが保有していたウクライナ最大の銀行であるプリヴァトバンクを、国は国有化せざるをえなかった。というのも、かつてのオーナーたちの乱脈経営で、銀行のバランスシートに60億ドルもの穴があいてしまったからである。そうしたことが起きたからくりは単純で、プリヴァトバンクは集めた預金や中銀からリファイナンスされた資金を使って、オーナーたちの関連企業に融資を行い、無価値の担保しか差し出していなかったのである。これを問題視したウクライナ財務省は、ロンドン高等裁判所(国際仲裁裁判所のこと?)に、コロモイシキーの国外資産を凍結するよう要請し、その要請は今般受理された。

 そうこうするうちに、ポロシェンコ大統領は、M.サアカシヴィリとの関係が険悪化し、コロモイシキーとは和解することにした。ポロシェンコは、側近中の側近であるYu.ルツェンコ検事総長を、コロモイシキーとの面談のためにアムステルダムに派遣したほどである。取引の理屈は単純で、コロモイシキーが野党支援をやめて政権にわずかな「納税」を行う代わりに、政権側はコロモイシキーの資産には手をつけないというものだった。しかし、そこに割って入ったのがO.ダニリューク蔵相で、同氏はコロモイシキーの在外資産を差し押さえた上に、ルツェンコの解任を要求した。ダニリュークの主張は、ルツェンコ検事総長はプリヴァトバンクの旧経営陣およびオーナーらの取り調べを長引かせすぎており、その反面でプリヴァトバンクの現経営陣・財務省・中央銀行を追及しており、また汚職対策機関を攻撃しているというものだった。国家汚職対策局は過去1年半、ポロシェンコ大統領の汚職を執拗に追及している。

 今回、ロンドン高等裁判所の犠牲になったもう一人が、ポロシェンコ大統領の旧友であるK.フリホリシン(ロシア語ではK.グリゴリシン)であり、同氏が保有していた財閥「エネルギー・スタンダード」の資産を凍結された。裁判所は、フリホリシンと、かつて地域党のスポンサーだったV.ノヴィンシキーとの係争を審理していた。ウクライナ出身のフリホリシンは、ロシアではロシア国籍と見なされるが、その主たる資産はウクライナにある。フリホリシンも、ポロシェンコ同様、2004年と2014年のマイダンのスポンサーだった。だが、コロモイシキーとは異なり、フリホリシンは現職大統領との関係を悪化させなかった。ロシアが6.8億ルーブルの税金未納でフリホリシンを提訴し、国際手配した際に、彼はウクライナ国籍を与えられウクライナに定住した。

 これらの事件はすべて繋がっているのか、それともポロシェンコが単に不運なのかは、分からない。しかし、サアカシヴィリの組織する抗議行動が広がりを見せ、治安部隊はそれに対処できず、汚職対策機関が大統領を攻撃している中で、蔵相の離反とロンドン裁判所の判決は、ポロシェンコにとって非常に痛い。


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