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 ウクライナでヴォロディーミル・フロイスマン(ロシア語ではウラジーミル・グロイスマン)首相が就任してから、4月14日で1年が経過した。これに関連し、こちらのサイトで、オレグ・グロモフという評論家が論評しているので、以下のとおり要旨をまとめておく。

 ウクライナと西側の関係という観点から言うと、IMFとの交渉において、様々な困難にもかかわらず、フロイスマンはIMFからトランシュを取り付けており、最近第4トランシュが供与され、近いうちに第5も続く見通しである。IMF側の評価によれば、フロイスマン内閣の最大の功績はマクロ経済を安定化させたことで、ロシアとの通商関係悪化による損失にもかかわらず、2016年の財政赤字を1年前の見通しの対GDP比3.7%から2.3%に引き下げてみせた。

 IMFではさらにウクライナ政府に対して2つの重要な措置を期待しており、それは国内で物議を醸す問題である。第1に年金改革(受給開始年齢の引き上げ)であり、第2に現在は一時見合わせとなっている土地売買の自由化である。

 これらの措置の実施は、連立与党の実質的な崩壊ゆえに、困難なものとなる。2016年にポロシェンコ・ブロックの何人かの議員は会派を離脱し、ヤツェニューク首相退陣後の「人民戦線」議員たちも煮え切らない姿勢を見せている。その幹部の一人であるアヴァコフ内相は、大統領選出馬の野心を持っており、フロイスマン首相およびポロシェンコ大統領を同盟相手というよりはライバルと見ている。それは、内相の支配下にある民族主義的な軍人集団の動きにも見て取れ、それが昨今のドンバス封鎖やロシア系銀行圧迫政策といった流れを主導しており、政府は不本意ながらそれを受け入れざるをえなくなっている。

 かくして、内閣は宙ぶらりんの状態となり、こうした状況では市民の生活水準を削るような法案を通すのはきわめて困難である。来たる大統領選のことを考えれば、なおさらだ。

 つまり、フロイスマン首相にとっては難問が増すばかりで、彼は前任者のヤツェニュークに劣らず政治的なカミカゼ特攻隊とならざるをえない(ちなみにヤツェニュークは退任後、政界から完全に消えた)。世論調査によれば、国民のフロイスマン支持率は2%以下なので、ヤツェニュークと同じ運命を辿る可能性が高い。

 マクロ経済安定化は、フロイスマン首相および政権の人気低下という代償を伴っている。公共料金は2015年から2017年3月までに2倍以上になっている。平均年金が1,000グリブナであることを考えると、高齢者の大部分は自動的に無産階級に転落した。こうした状況では、フロイスマンが首相から退いた後、第二の政治人生が待っているかというと、それは厳しい。

 フロイスマンはレームダックと化して現在に至っており、自立した政治的な展望を切り開く見通しはない。ヤツェニューク同様、西側からの支援が得られるにしても、部分的にすぎない。現に、欧米からは構造改革の遅れを批判されている。

 フロイスマンがテクニカルな首相であるがゆえに、今のところ解任を免れている。また、ティモシェンコも、他の野党勢力も、ポロシェンコ・チームも、不人気な政策を実施せざるをえない首相というポストを引き受ける用意は今はできていない。ヤツェニューク以来、ウクライナの首相という役回りは、そのように損なものとなっているのである。


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