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 趣味でよく読む(?)日本の財政破綻ものの一種だけど、これは経済書とかノンフィクションというのではなく、小説。幸田真音『大暴落 ガラ』(中央公論新社)である。その内容は、

 与党・明正党の総裁選で惜敗しながら、野党議員の投票により日本初の女性総理大臣となった三崎皓子。党の重鎮議員の反対で組閣もままならない。そんななか、危機管理官より、「秩父に大雨が降っており、このままでは荒川が決壊、都心が水に沈む可能性がある」との情報が入る。さらに追い打ちをかけるように、台風八号と九号が発生。皓子は日本では例がない「緊急事態宣言」を提案するが、経済の停滞を理由に閣内で反対の声が上がり――。

 あかね銀行のディーリングルームではその頃、「なんだこれは! 」絶叫が響いていた。一瞬でドル円相場が20円も飛び、159円をつけたのだ。「ガラだ! 大暴落だ! 」――。

 東京都心を直撃する大規模な自然災害、ゼロ金利政策を続ける日銀への信用不安。いつ現実のものとなってもおかしくない二つの危機に襲われた日本を、皓子はどのように救うのか?

 フィクションとはいえ、この手の作品を楽しめるかどうかは、ストーリーがいかにリアルかということにかかっているだろう。この作品では、複数の危機が同時並行的に発生するわけだが、本作品でそれぞれの危機がどれだけリアリティをもって描かれているかというと、

政治危機 > 自然災害危機 > 金融・財政危機

 であるように感じた。政治危機は、すでに日本で実際に起きていることと、大差ない。自然災害危機は、気象学的な設定にやや強引さがあるような印象もあるものの、一般論として言えば、いったん首都圏で大規模水害が起きたら、破局的な事態になりかねないというのは、その通りだろうと思った。問題は、金融・財政危機の描き方であり、これが著者の一番の得意分野だと思うのだが、正直言えばこの点に物足りなさを感じた。金融・財政危機は長期的・構造的な問題であり、本作ではそれをマーケットの動揺の問題として描くことに終始してしまっている。政治家のひらめきで相場危機を一山超えたら、それで終わりというわけではないはずなのに。

 まあ、小説が苦手な私が、400ページ以上ある本を一気に読んでしまったということは、面白かったことは間違いないが。

大暴落 ガラ
幸田 真音
中央公論新社
2017-03-08


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