昨年秋にNHKのBSで放送され、個人的に録画はしてあったが、何となく気が重く未視聴でいたドキュメンタリー番組を、このほどようやく観た。「BS世界のドキュメンタリー」のシリーズで放映された「ベラルーシ自由劇場の闘い~“欧州最後の独裁国家”の中で~」である。米国制作の番組で、その内容は、

 “ヨーロッパ最後の独裁国家”とも呼ばれる旧ソビエトのベラルーシ共和国。その中で、弾圧を受けながらも現体制を批判し続けてきた「ベラルーシ自由劇団」の活動に密着する。

 ベラルーシ自由劇団は、元ジャーナリストや元国立劇場所属の俳優たちが作った小劇団。20年以上も続くルカシェンコ大統領の独裁政権下で、自由と解放を求めて活動してきた。しかし、2010年の大統領選挙で対立候補を応援したことが原因で政府に目をつけられ、身の危険にさらされたメンバーは亡命を余儀なくされるが、国外から「表現の自由」を訴え続ける。(2015年国際エミー賞受賞)

 というものである。上掲はその告知動画。原題は「Dangerous Acts:Starring the Unstable Elements of Belarus」となっており、「危険な演目:出演はベラルーシの不満分子たち」といったところだろう。

 事前には、もっと演劇が中心の内容で、「不自由な中でも頑張っています」みたいな奮闘記なのかなと想像していたのだけれど、実際には2010年大統領選を軸とした反体制活動記録に近く、むしろ反体制活動のはけ口として演劇があるような、そんな描かれ方だった。私は演劇に疎いので、この番組の中で断片的に取り上げられた演劇のシーンだけでは、純粋に演劇としてどれくらいの水準にあるのか、良く分からなかった。2010年大統領選後の弾圧で、劇団は半ば欧米への亡命を余儀なくされ、英国で「ミンスク2011」という公演を行ったりもしたのだけれど、劇中の言語はロシア語。これでは、英国に身を寄せているベラルーシ人くらいしか関心を集めないのではないか、などと思ってしまった。実際、番組の中でも、ベラルーシ反体制派の訴えが英国の一般の人達にまったく関心を持ってもらえない様子が描かれている。

 「ピオネール」と言えば、かつてソ連に存在した翼賛児童育成機関だが、ベラルーシには今日もなおピオネールが存在する。この番組の中で、シングルマザーの劇団員が登場するのだが、幼い女児が母親の意に反して、ピオネールに加入してしまったというシーンには、胸が締め付けられた。子供は「だって、私以外みんな入っているんだもの。宣誓の言葉? 忘れちゃった」と、無邪気そのものだ。(親の承諾なしに児童が宣誓するだけで入れるのだろうか?という疑問は覚えたが。)

 2010年の大統領選後、紆余曲折があって、現在は国際社会はそれほど激しくベラルーシに批判の矛先を向けていない。しかし、ルカシェンコ体制は本質的に何も変わっておらず、ベラルーシを取り巻く国際的な風向きが多少変わっただけなのだろう。そんなことを再認識させてくれるドキュメンタリーだった。


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