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 ベラルーシの鉄鋼業というのは、一般的にあまりイメージにないだろう(ていうか、ベラルーシという国自体が、日本人のイメージにないと言った方がいいか)。ロシアやウクライナと違い、ベラルーシでは鉄鉱石や石炭の採掘は行われていないので、高炉メーカーは所在していない。しかし、ジロビン市にベラルーシ冶金工場(BMZ)という有力メーカーがあって、そこが電炉による粗鋼の生産や、鉄鋼製品の生産を手掛けているのである。

 それで、年末の話になるが、こちらの記事などが伝えているように、EUはそのBMZ製の鉄筋にアンチダンピング関税を暫定的に適用することになった。欧州の業界団体であるEuroferが2016年2月15日に提出した申請にもとづき、欧州委員会が3月31日にBMZ製のEU向け輸出に関するアンチダンピング調査を開始。Eurofer側は、ベラルーシが鉄筋をEUに非市場価格で販売し、欧州の生産者に打撃を与えていると訴えていた。そして今般欧州委員会はBMZの鉄筋に12.5%のアンチダンピング関税を暫定的に適用することを決め、12月20日に公布したものである。正式決定は7月20日までになされ、通常は5年間課税が続く。

 これを受け、こちらに見るように、BMZのアナトリー・サヴェノク社長が現地紙のインタビューで、ダンピングの事実はない旨強調する発言をした。社長いわく、我々はEUの立場には同意しがたい。数量だけでなく、その他の要因をとってみても、BMZの輸出がEU産業の脅威になっていることはありえない。具体的に言えば、我が社の販売戦略にしても、EUの供給者を含め原料を外部に依存していることにしても、設備が過剰となっているわけではないことにしても、ダンピングはありえない。我が社の戦略は、市場を分散してリスクを最小化することにあり、輸出はCIS市場、欧州市場、その他の市場と約3分の1ずつになっている。ある市場が落ち込んだら、別の市場向けを増やすことができるわけだが、その場合でも決して急増するわけではない。EUの中の特定の国に輸出を集中するということもしておらず、多くの国に均等に供給することを心掛けている。EU28ヵ国のうち、24か国に輸出しており、2016年1~11月の金額ベースでは、ドイツ12.7%、オランダ8.5%、リトアニア7.9%、ポーランド6.2%、イタリア3.7%といった内訳だった。我が社にはそもそも遊休の製品や生産能力がなく、特定の市場に供給を急増させることはできない。もしかしたらEU側は2015年の状況を重視しすぎているのかもしれないが、同年にはラトビアおよびスロバキアで工場の閉鎖があったので、BMZからポーランドおよびバルト3国向けの輸出が一時的に増えただけである。同年にはロシア市場で利益が出なくなったので、EU市場に製品を振り向けたという側面もあった。現に2016年にはベラルーシからEUへの鉄筋輸出は低下し、ほぼ以前のレベルに戻った。ロシア・ルーブルが強含んだので、我が社は再びロシア市場に注力するようになった。サヴェノク社長は以上のように弁明した。なお、BMZの生産キャパシティは年産300万tで世界110位ほど、ベラルーシの2015年の粗鋼生産量は世界で41位となっている。

 2016年7月のこちらの記事では、ベラルーシ鉄鋼業の近況が簡単に触れられている。これによれば、機械産業および建設業の低迷が、ベラルーシ鉄鋼業にとっての打撃となっている。2016年第1四半期には、BMZがベラルーシの株式会社の中で最大の赤字を記録した。

 EU市場では、2015年に需要が2.3%増に留まりながら、輸入は27%も増大した。中国に加え、ロシアのメーカーが、EUの生産者を圧迫した。ベラルーシもその波に乗り、非合金鋼の半製品、鋼材のEU向け輸出を拡大した。

 業界団体の「ルースカヤ・スターリ」によれば、2015年にロシアでは鉄鋼の消費が9%減少した。ベラルーシでも、2015年にトラック生産は半減、トラクターの生産は35%減となり、それに伴い鉄鋼需要が低下した。

 2012~2014年にはベラルーシの鉄鋼輸出は年間23億~25億ドルで安定していた。しかし、2015年には価格および需要低迷で前年比26.4%減の17.4億ドルとなった。ただ、いくつかの品目の輸出数量は増大している。BMZの形鋼輸出量は5%伸びたが、価格低下で額は落ち込んだ。2013~2014年にBMZは純損失を記録したが、販売そのものの利益は挙げていた。しかし2015年には販売による利益も挙がらなくなり、活発な設備投資を実施した中で、巨額の純損失を計上した。

 2016~2017年にユーラシア経済連合諸国では経済成長は期待できず、鉄鋼需要が高まるとは思えない。ルースカヤ・スターリの予測によれば、2016年に鋼材需要はさらに6%落ち込むことになる。ベラルーシ国内需要の回復も期待できない。ただ、ベラルーシの鉄鋼メーカーにとって、事態はそれほど絶望的なものではない。ベラルーシの輸出先は充分に分散されており、2016年にEUおよびその他世界向けの輸出量は確保されるだろう。問題はその価格である。


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