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 こちらのサイトで、タチヤナ・スタノヴァヤという評論家が、メドヴェージェフ・ロシア首相の地位が危うくなっていることを論じているので、要旨を簡単にまとめておく。

 メドヴェージェフ首相の身辺が慌しくなっている。政権幹部の人事異動が相次いでいることから、9月の下院選挙後にメドヴェージェフ首相が退陣するかもしれないという噂が流れている。それと時を同じくして、教育問題にする討論会で首相が失言をする事件が起きた。それを受け、ネットではメドヴェージェフ首相解任を求める署名集めが始まり、20万人が署名を寄せた。

 現在、メドヴェージェフ首相にはいくつかの逆風が同時に吹いている。第1に、7月28日にプーチン大統領が行った大規模な人事異動である。本件は内閣の上層部には直接及ばず、解任されたのは3人の知事、4人の連邦管区大統領全権代表、連邦関税局長、連邦登記局長だったが、新たに任命されたのは武力省庁系が多く、プーチンが「文民」を信頼していないことを印象付けた。そうした武力省庁系の人材が、本来の社会・経済的な課題に対処できるとは期待しにくい。カリーニングラード州知事に起用された連邦保安局出身のエヴゲーニー・ジニチェフなどは、知事としてまず最初にやったのはジャーナリストの排除であり、こうした状況では投資誘致や改革はおぼつかない。過去2年ほどは、メドヴェージェフ首相の地位は安泰で、2018年大統領選前に首相の座から退くようなことは予想されていなかったが、ここに来てにわかに、プーチン大統領が内閣に手を付けるのではないかという見方が出てきた。

 第2に、7月28日の人事異動の後、下院選後に内閣改造があるのではないかという噂が流れ、さらに8月1日付のフィナンシャルタイムズがメドヴェージェフ首相の退陣とアレクセイ・クドリン氏の首相就任の可能性について論じた。それだけであればロシア国内では特に注目を集めなかったはずだが、ドミトリー・ペスコフ大統領報道官が、そうした報道に留意している旨のコメントをしたことで、メドヴェージェフ首相退陣の可能性が本格的に取り沙汰されるようになり、首相の立場が弱まった。イーゴリ・シュヴァロフ第一副首相も、後任の首相候補に挙げられた。

 第3に、選挙戦が近付くにつれ、政権党の比例名簿の1位に掲げられる首相の言動への注目が高まっている。国民も、エリートも、普段であれば気に止めないような首相の言動を、選挙の文脈でより重大視するようになっている。そうした中、先の教育問題に関する討論会で、教師の給料の低さを提起された首相が、カネを儲けたければビジネスに転職すればよいと受け取られかねないような失言をして、物議を醸したわけである。


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