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 このほどこんな本をKindle版で読んでみた。山田吉彦『完全図解 海から見た世界経済』(ダイヤモンド社、2016年)というものである。「海がわかれば、経済がわかる。激変する世界をつかむ新しい視点! 経済予測・分析に使えるデータ満載! 各種データ、航路図などなど、図解でわかりやすい!  激変する世界をつかむ新しい視点。日本の貿易は、99.7%が「海」で行われる。南シナ海は、20兆円の貿易圏である。世界を動かす「石油価格のメカニズム」。経済予測・分析に使えるデータ満載!石油、海運、造船、漁業、紛争etc」などとうたわれている。

 読んでみたところ、海をめぐる経済の諸問題を頭の中で整理する上では、それなりに役に立つ本だなと感じだ。しかし、入門書であるためか、どうも全体に食い足りない。それに、私自身がある程度知見のある分野、たとえばロシアに関してのくだりなどは、全体的にピント外れで、首を傾げてしまったのも事実である。一例として、以下のような部分だ。

 現在のロシアも19世紀の南下政策と同様の動きをしています。目的は天然ガスの輸出ルートの確保です。まずバルト海を目指しましたが、ソ連崩壊後、バルト三国とポーランドはEUの一員となり、現在はロシア軍の仮想敵国ともいえる北大西洋条約機構(NATO)にも加盟しています。今もロシアが支配するバルト海の港、カリーニングラードは、ポーランドとリトアニアに囲まれた飛地にあり、自由に動き回ることが難しくなりました。カリーニングラードとロシア本国の間を移動するためには、リトアニア政府の発給するビザが必要です。ロシアは、カリーニングラードを主要港として期待することができなくなりました。(中略)

 そこで、現代においてもロシアが最後に頼れる海域は日本海です。2014年12月、プーチン大統領はウラジオストクを自由港にするとの計画を発表しました。極東開発は、プーチン政権にとっての生命線となっています。

 さて、エネルギー資源を全面的に輸入に依存する日本にとって、もしかしたら逆転満塁ホームランになるかもしれないのが、メタンハイドレートである。本書には、「2014年度のメタンハイドレート開発促進事業の政府予算は127億円であり、さらに補正予算で20億円が追加されました」という記述があり、個人的にそのあまりの額の小ささに驚いた。一方、こちらの記事によれば、日本はこれまで核燃料サイクルに12兆円つぎ込んできたということであり、つまりメタンハイドレートの年間開発促進費の1,000倍に上る。重点を置く分野を、完全に誤っていると言わざるをえない。



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