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 このほど読了した本。野口悠紀雄著『「超」情報革命が日本経済再生の切り札になる』である。私は野口先生の信者で、出た本はほとんど全部読んでいる。なので、本書を読み、同意できる点が多い反面、「以前も読んだな」という話が多かった。「『超』情報革命」というのは、単にITの飛躍的な発展のことだし。安倍内閣の「新3本の矢」や、TPPについての評価は、新しい話題だが。

 野口先生は、近年の著作で、製造業亡国論を執拗に主張しておられる。

 「要素価格均等化定理」が予測するように、日本の産業構造が中国と同じなら、賃金はいずれ中国並みに低下する。 ここで「要素価格均等化定理」とは、「異なる国の生産技術が同じであれば、その技術を用いて生産された製品が自由貿易されることによって、貿易できない土地や労働などの生産要素の価格も国際的に均等化する」という定理である。

 そして、超情報革命が進んだからこそアメリカ経済が目覚ましい成長を遂げつつあり、日本は円安誘導で製造業を守ることに固執して、それにより中国と同じ土俵に自ら乗っかってしまっていて、だから賃金水準は中国と同一化していき、消費が伸びず経済が成長しないと、そのような図式を描いている。パナソニックは、アップルのようなやり方でやらないから、企業価値が高まらないのだ、と。

 私自身は、野口先生のご指摘は、分析としては正しいかもしれないが、ではパナソニックが本当にアップルのようになる可能性があるのか、日本がアメリカのようになれるのかというと、心許ない気がする。野口先生ご自身、本気で日本のアメリカ化を主張しているのか、それとも日本のアメリカ化は理論上の可能性にすぎず、「彼我はこれだけ違うから駄目なのだ」という諦念を表明しているのか、本書を読んでいて、良く分からなくなってきた。それに、アメリカ型経済に付き物の貧富の格差の拡大や、アップルやグーグルのような企業が雇用や納税でどれだけ貢献できているのかという疑問もある。



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