koukan

 恥ずかしながら、これまでまったく知らなかった話を、今般初めて知ったので、ここにメモさせていただく。モルドバは黒海圏に位置する国ながら、惜しい形で内陸国であり、その国土は直接には黒海に面していない。しかし、モルドバがウクライナと領土交換条約を結んだ結果、モルドバはドナウ川の河川港を手に入れ、これによりドナウ川経由ではあれ、自国の港を基盤に黒海海運にアクセスできるようになったとのことである。

 ざっと物色したところ、こちらのサイトの情報が詳しそうだ。上の地図に見るように、モルドバの国土は「むくんだブーツ」みたいな形をしているのだが、モルドバはそのつま先の部分をウクライナから獲得し、これによってモルドバは600mほどとわずかではあるが、ドナウ川の左岸を領土として獲得することができ(ドナウ川にプルート川が注ぐあたり)、そこにジュルジュレシティ港を建設、かくして同港からドナウ川を通じて黒海への出口を確保したわけである。一方、モルドバはむくんだブーツのかかとの先っぽ部分を、ウクライナに割譲した。ウクライナのオデッサ州は、ドニエストル潟をはさんで、領域が北東と南西に分かれてしまっていたのだが、ドニエストル潟の北岸の幹線道路が通る小さな部分がモルドバ領からウクライナ領となり、これによって州都のオデッサ市とイズマイル、レニといった小都市との道路交通が格段に便利になった。このように、それぞれが抱えていた交通上のボトルネックを、ごくわずかな領土の交換によって解消できるという、ウィン・ウィンの取り決めだったわけである。

 下の地図に見る濃いグレーの部分がモルドバが獲得した新領土らしく、このようにちょこっとだけドナウ川に面しているだけではあるが、それが大きいのだ。

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 本件交渉は1995年頃から始まり、1999年に中間的な協定が結ばれたところ、モルドバ側が先走って河川港建設の工事に着手してしまい、その一方でウクライナ側に引き渡すはずだったパランカ村郊外の区画をなかなか明け渡そうとしなかったため、両国間で対立する場面もあったようだ。しかし、こちらの記事によると、ようやく2011年になってモルドバも当該区画を明け渡し、これをもって両国間の領土交換が完了した形になったようである。

 そして、こちらのサイトに見るように、モルドバはジュルジュレシティを中心に自由経済区を創設し、同港は国際自由港というステータスになっている。モルドバにとっての唯一の海への出口であり、なおかつ対ウクライナ、対ルーマニア(すなわち対EU)国境に面するという、興味深い地理的条件を備えている。そのジュルジュレシティ港の取扱貨物量の実績が、下表に見るとおりである。現状で決して大規模とは言えないが、趨勢的に拡大しているし、小国モルドバにとっての意義は小さくないだろう。なお、ウクライナが完成させたドナウ川~黒海運河があり、ジュルジュレシティに出入りする船もその運河を使うことによって(言い換えればルーマニア領を流れるドナウ川スリナ支流を避けることによって)、さらに黒海との行き来がスピードアップしているということである。

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