kaigaitoushi

 昨日の話の続き。アベノミクスにより、日本の財政・経済の潜在的リスクがますます肥大化しつつある中で、いよいよそれが本当に立ち行かなくなる日が来る危険性を直視せざるをえず、では私たちはそれに備えてどうしたらいいのかを考えてみようという談義である。で、私も経済の研究者の端くれなので、経済や投資についての勉強をしつつ、ついでにシルバーウィークの読書三昧を兼ねて、いくつか書籍を読んでみたというわけである。まあ、「資産防衛」などと言っても、「お前には守るに値するほどの資産などあるのか?」と言われればそれまでなのだが(笑)、いやむしろ、なけなしの蓄えしかないからこそ、真面目に考えなければ大変な目に遭うのではないかと懸念するのだ。

 私の問題意識に一番近い本は、橘玲『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』というものである。もっとも、この本は新規ではなく、すでに2年前に読んで本ブログにもレビューを書いているのだが、今回改めて読み直してみた。橘玲さんというのは、学者ではなく、経済小説などを書いている作家のようだ。この本では、日本が財政破綻する危険性は、やはり無視できないという前提に立っているように思われる。本書の冒頭に掲げられた短編の近未来小説が、否が応でもその不安感を高める。しかし、それ以降の本の中に書かれている日本破綻への備えの方法論は、拍子抜けするほど冷静で、一見悠長とも言えるものである。著者が強く主張しているのは、破綻は一夜にして生じるわけではないので、その進行に応じて、段階的に対処すればいいという点である。以下、引用させていただく。

 経済には強い継続性(粘性)があることです。 仮にの「破滅シナリオ」が現実のものになったとしても、それは次のような順番で進行するでしょう。 第1ステージ 国債価格が下落して金利が上昇する。 第2ステージ 円安とインフレが進行し、国家債務の膨張が止まらなくなる。最終ステージ(国家破産) 日本政府が国債のデフォルトを宣告し、IMFの管理下に入る。書店に行けば「国家破産」のタイトルのついた本が並んでいます。日本国が抱える1000兆円の借金を考えれば、誰も財政破綻の可能性を否定することはできません。 しかしここで強調したいのは、別の単純な事実です。〝危機〟は第1ステージから第2ステージ、最終ステージへと順に悪化していくのですから、ある朝目覚めたら日本円が紙くずになっていた、などということは絶対にありません。だとすれば私たちは、いたずらに「国家破産」を心配する必要はありません。仮に日本国がデフォルトするとしても、それまでの間に自分と家族を守るための時間はじゅうぶんに残されているのです。

 ・・・・・・〝臆病な投資家〟への私の提案は、日本経済の未来のうち、「楽観シナリオ」と「悲観シナリオ」、および「破滅シナリオ」の第1ステージまでは普通預金こそが最強の資産運用だということです。 もちろん、「破滅シナリオ」の第2ステージである大規模な経済的混乱が起きれば、普通預金だけで資産を守ることはできません。しかしその場合でも、プライベートバンクやヘッジファンドなど「高度な資産運用(といわれているもの)」に頼らなくても、近所の銀行や証券会社(もしくはネット銀行・ネット証券)で売っている3つの金融商品だけでじゅうぶん対応可能です。 金融市場の正しい知識と資産運用の原則さえ知っていれば、「最悪の事態」が起きたとしてもなにひとつ慌てることはないのです。


 次に、今回新たに紐解いてみたのが、田村正之『老後貧乏にならないためのお金の法則』という今年出た新刊である。その内容は、「確実に目減りする預貯金、実質減額されていく年金、物価の上昇 ―長い長い老後の生活資金はどんどん枯渇していきます! でも、大丈夫。資産運用から、年金・保険や相続財産の賢い活用法、住宅まで、今なら間に合う老後貧乏脱出法をやさしく解説します」というもの。非常にカジュアルにまとめられた本でありながら、内容はとてもしっかりしており、なおかつ実践的で、有用な書籍だと感じた。貯蓄や資産運用だけでなく、医療・保険、住宅、年金、相続など、老後への備えの問題が多面的に扱われているのが、この本の良いところだろう。資産運用に関しても、堅実な方法論が示されており、信頼できる。他方で、本書は日本の財政破綻のような非常シナリオは想定しておらず、その点に関する若干の疑問が残った。

老後貧乏にならないためのお金の法則
田村正之
日本経済新聞出版社
2015-06-26

 さらに、岡村聡『完全レベル別 30代~50代のための海外投資「超」入門』という本も読んでみた。その内容は、「日本の多くの個人投資家の運用スタイルは、真の意味での投資にはほど遠い、短期志向の投機的なものであり、スキルに乏しい人が過大なリスクをとった投資を行い、大きな損失を出す結果となっている。 本書では、前提知識が一切なくとも、基本編からスタートして、初級編・中級編・上級編へと順番に読み進めていくことで、投資に必要な知識とスキルを体系的に学べ、投資家としてレベルアップしていくことができる。 自己資産をすべて海外に投資し、2009年以降年率平均15%以上のリターンをあげつづけ、マネー誌・一般誌で人気連載中の著者が初めて書いた、誰でもゼロからはじめられて、確実に利益を出せる海外投資の完全マニュアル。月1000円からはじめられて、30年間で3000万円の資産を無理せず築くことが可能なノウハウを明かします。」というものだ。謳い文句を見ると、何やらキャッチーな印象を受けてしまうが、読んでみたところ、内容は非常に堅実で全うである。具体的なノウハウが綴られているので、すぐに実践できそうである。ただ、本書は2012年に出たものなので(電子書籍のKindle版が出たのが2014年なので、新しい本のように錯覚して買った次第)、アベノミクス発動後に状況が変わった部分もあるし、金融商品の情報も若干古くなっているところがあるかもしれない。また、今回紹介している書籍は、すべて電子書籍のKindle版で読んでおり、ゆえにテキストのコピーが容易でブログを書いたりする上で便利なのだが、この『完全レベル別 30代~50代のための海外投資「超」入門』は技術的に古い仕様であり(どうもPDFになっている模様)、テキストのハイライトやコピーができず、それが不便である。まあ、充分参考にはなったので、元はとれたのではないかと。


 あと、こんなのも読んでみたよ。『日経トレンディ』(2015年10月号)「どっちが得する?お金の〇と×」という特集号。まあね、これはごく短期的な視点に立った損得の話であり、「当面の資産運用、ドルとユーロ、とっちがお得?」といった話ばかりだから、中長期的な日本リスクに備えるという用途には向かない。

日経トレンディ 2015年 10月号 [雑誌]
日経トレンディ編集部
日経BP社
2015-09-04


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