kaletaev

 このほどUEFAチャンピオンズリーグ(CL)本選初出場を決めたカザフスタンのFCアスタナ。2009年創設と、まったくの新興勢力である。そのアスタナの後見委員会議長で、カザフ・サッカーの仕掛人とも言えるD.カレタエフ氏(写真)が、2015年9月2日付のロシア『スポルト・エクスプレス』紙でインタビューに応じているので、以下発言要旨を整理しておく。

 (記事前書き:D.カレタエフは、大統領プロスポーツ・クラブ「アスタナ」の後見委員会議長で、同クラブ傘下にFCアスタナ、ホッケーのバルィスなどが入っている。カレタエフは、サムルク・カズィナ基金のトップマネージャーであり、同基金はアスタナおよびカザフ代表のゼネラルスポンサーである。カレタエフは、FCアスタナやカザフ・サッカー協会で何らかの執行職に就いているわけではないが、この3年ほどで、カザフ・サッカー界を動かす存在となった。FCアスタナは、ロシアのゼニトほどではないが、カザフで最も裕福なサッカークラブであり、カレタエフはそれを取り仕切って、戦略を決めている。その賜物で、CL初出場を決めた。)

 CLの抽選会で、UEFAのインファンチーノが、アスタナの初出場について特別にお祝いのコメントをしてくれたのが、嬉しかった。正直言うと、CLへの出場が叶うなど、今も夢のようである。2014年にアスタナでUEFAの会議があり、光栄にもプラティニと知り合うことができたが、まさかその時には、こんなに早くCL出場が叶うとは思わなかった。ただし、我々はそれを目標に据えていた。昨シーズン、ヨーロッパ・リーグ(EL)の予選で3つものラウンドを戦った経験と自信がものを言った。最後にくじ運に恵まれず、ビジャレアルと当たって、当時のアスタナには歯が立つ相手ではなく、力尽きたが。

 CLでのグループステージに関しては、むろん野心もあるが、まずはホームゲームで高いレベルの戦いをしてサポーターを喜ばせることが大事で、その上で勝ち点を1つでも奪いたい。

 (CLのグループステージの対戦相手が、バルセロナ、レアル、チェルシーといったメガクラブではなく、ベンフィカ、アトレチコ、ガラタサライといった地味なところになって、残念か?)そんなことはない。CLの組み合わせで残念などということはありえない。ちなみに、ガラタサライとは1年前に協力協定を結び、提携関係にある。ガラタサライには、育成アカデミーの開設を支援してもらったし、そのほかにも貴重な情報を伝授してもらった。アスタナ・アレーナのこけら落としで、FCアスタナとカザフスタン・ユース代表が試合をした時には、まだガラタサライとの協定がなかったにもかかわらず、トルコのレジェンドであるハサン・シュキュール、ハサン・シャシがゲームに出てくれた。9月30日に、カザフスタンで最初に開催されるCLの試合が、トルコのチーム相手なのは、象徴的である。

 (N.ナザルバエフ大統領は、カザフスタン・スーパーカップの試合に列席したが、9月30日のCLの試合にも来てくれそうか?)昨日、大統領からCL出場に対する祝電を受け取ったところだ。大統領は重要な試合にはなるべく来てくださるし、ましてや「大統領」の名を関したFCアスタナの試合である。むろん、我々はガラタサライ戦だけでなく、すべてのCLの試合の招待状を大統領に送っており、来ていただけるかどうかはスケジュール次第である。

 (ガラタサライはアスタナのことを知っているとしても、アトレチコなどは、可動式屋根付きの最新スタジアムを見て、驚くのではないか?)アトレチコ・クラスを驚かすのは簡単ではないが、頑張ってみよう。(屋根が20分で動かせるというのは、本当か?)それは誇張だ。4時間くらいはかかる。なお、スタジアムはクラブではなく、スポーツ省の所有であり、クラブが借り受けて経営するという案もあったが、採算面で難しい。

 CL予選4回戦で、キプロスのアポエルとのホームゲームで、スタジアムは満杯だった。我々が若いクラブで、普段は集客で苦労していたにもかかわらずである。しかし、予選で勝ち進むにつれ、人々の関心が高まり、我々が正しい道を進んでいるということが分かってもらえた。カザフはすでにUEFAのランキングで27位である。アポエルとのアウェーのリターンマッチでは、カザフ時間0:45時だったにもかかわらず、3,000人もがパブリックビューイングに詰めかけた。

 むろん、FCアスタナには、アクトベや、カイラト・アルマトィのような栄光の歴史はまだない。それでも、アスタナとカイラトの試合は、もうナショナルダービーのようになっている。カイラトがボルドーに惜敗し、ELの本選出場を逃したのは、実に残念だった。カザフのサッカーは、個々のクラブだけでなく、リーグ全体の質が向上しており、カイラトのボルドーとの戦いもそれを示して余りあるものだった。

 我々は協会と一体となっており、サムルク・カズィナ基金が協会とクラブの両方のゼネラルスポンサーになっているのも偶然ではない。協会は正しい路線を歩んでおり、たとえば現在、ACミランでプレーしていたA.メルケルのカザフへの帰化手続きが進んでおり、同氏はカザフ代表でプレーする意向を示している。我々のモットーは「強いクラブ(複数)、強い代表」というものであり、選手たちがクラブレベルで国際的な経験を積んで、それが代表チームも進歩させるというものだ。我々は代表監督のYu.クラスノジャン(注:ロシア国籍、52歳)とも素晴らしい関係にある。(クラスノジャン監督への賃金が未払いになっているという報道があるが?)詳しいことは知らないが、何かの間違いではないのか。

 アスタナの予算規模は、カイラトやアクトベとだいたい同じくらいだが、アスタナの方がやや大きいかもしれない。CLのグループステージに出場するだけで1,400万ユーロが得られ、これは我々の年間予算の3分の1に相当し、特に現在のような経済危機の条件下ではとても大きい。我々は当初3,000万ドル相当のテンゲ建ての年間予算を組んだが、サッカーでは予算は常に変動するものであり、すでに3,500万ドル相当に膨らんでいる。そうした中で、昨今のテンゲ安もあり、CL収入はきわめて大きい。実際にCL収入が入るのは2016年で、その間の苦しさはあるが、選手・首脳陣に特別給も支払う。

 CL出場に当たって補強も考えたが、カザフ・リーグは春秋制であり、すでに移籍ウインドウは閉まっていて、協会に確認したところ、たとえCLだけのためでも、プレーヤーの追加は不可能ということだった。アスタナのエースストライカーであるパトリック・トヴマシが6試合の出場停止になっており、補強なしでは非常に苦しい。せめて数試合分でも、この処分を軽減してもらえないか、UEFAに照会する予定だ。

 アスタナの選手で、ヨーロッパを驚かすことができそうなのは、セルビア人MFのN.マクシモヴィチ。カザフ人では、FWのB.ジョルチエフ。昨シーズンのカザフ・リーグの得点王、中央アフリカ共和国のF.ケテヴォアマもおり、この選手は明るくて人気があり、すでにロシア語も話す。20歳のG.ジューコフは、カザフ生まれでベルギー育ち、現在はスタンダールからのレンタルでアスタナでプレーしているMFで、彼がカザフ代表でプレーできるように手続きを進めているところであり、彼はいずれ欧州の主要リーグでプレーする器だと思う。

 *この後、話は、チーム創設期の話題に移るが、長くなるので、このあたりにしておきたい。


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