メドヴェージェフ大統領とプーチン首相は、5月になれば立場が入れ替わることになる。ロシアでもこのような形の権力継承は初めてのことであり、よってそこにはマヌーバの余地も生じる。それに関連し、『コメルサント』紙のこちらの記事が、興味深い動きを伝えているので、記事の要旨を以下のとおり紹介しておく。

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 メドヴェージェフ大統領とプーチン首相はどちらも昨日、5月の新政権発足後に取り組むべき一連の問題に関する「ロードマップ」の必要性について述べた。形式的には両者とも現在の役職の管轄分野のことを取り上げたので、メドヴェージェフは民営化、国営企業、汚職対策の実力行使部分、中央銀行といったテーマにつき首相に就任する未来の自分に指示を与えるような形となっている。一方プーチンにとっては、自らが選挙戦の過程で論文やマスコミで述べた内容が、新政府の下で実施されるということが関心事になっている。

 両者は「ロードマップ」を、ほぼ同時に語り出した。プーチン首相は昨日現職閣僚たちと閣議を開き、自らが一連の選挙綱領論文で述べた主な政策をなるべく迅速に実現することについて討議した。プーチンは、「本日は、私が一連の論文の中で述べたすべての課題が実現に向けて実際に着手できるよう、我々が採択すべきロードマップ(複数)について話をしたい」と切り出した。それからわずか数時間後、「公開政府」の会合で、ロシア経済スクールのS.グリエフ学長の提案を支持する形で、メドヴェージェフ大統領も、ロードマップ(複数)の策定を提唱した。メドヴェージェフは、ロードマップの策定、期限を設けての民営化と規制緩和については、100%支持し、疑いの余地はないと明言した。

 プーチンが今回の会合で扱った分野からして、プーチンはメドヴェージェフ新政府にとってのロードマップの策定を唱えているようである。とくに、2011年の警察・軍の賃金改革で導入された賃金体系をすべての公務員に適用するという、純然たる政府の管轄分野が取り上げられた。対するメドヴェージェフのロードマップも、あたかも来たるプーチン新大統領の行動計画と思えるようなもので、またプーチン現首相に指示を出す内容だった。ただ、5月からは立場が入れ替わるわけだから、現在のプーチン首相に指示を出すと、5月からは自分がその内容の指示を出されることになり、メドヴェージェフは実質的に未来の自分に指示を出した格好となったわけだ。

 それでもメドヴェージェフは、政府が伝統的に従属的な役割を果たす政策領域に関して、自らの大統領権限を秋まで延ばすような動きに出たわけである。すなわち、重要な国家サービスのビジネスプロセスの最適化や、大民営化(2011年にプーチンが実質的に停止した)についてのロードマップを示すよう要求した。また、国営企業のトップを公務員から切り離すこと、政府調達のルールを国家コーポレーションや国の出資する株式会社にも適用すること、公共テレビ、公務員の所得公開、最高裁における汚職対策裁判官グループの可能性などについて語った。

 この構図において、両者は現在の権限内で動いており、法的には違反していないが、今後果たすことになる権限からすると明らかに越権している。どうやら、お互いにロードマップを描き合っていることは、政府の役職をめぐるプーチンとメドヴェージェフの駆け引きを反映しているものと見られる。メドヴェージェフのN.チマコヴァ報道官は、政府の人事および組織が明らかになるのは首相が下院によって承認された後であり、あくまでも首相が閣僚人事を大統領に提案する(その逆ではない)ということを強調している。一方、プーチンは4月11日に下院で過去1年の活動実績報告を行うことになっているが、D.ペスコフ報道官は、プーチンは首相としてだけでなく、新大統領という立場からも演説することになると指摘した。

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