20150531kzcn

 こちらの記事の中で、カザフスタンの有識者が、中国の新シルクロード構想とカザフスタンの利害のかかわりについてコメントしているので、その要旨をまとめておく。

 カザフスタン国境協力協会のM.シブトフ会長コメント:(ロシアやカザフスタンなどで形成する)ユーラシア経済連合と、中国の新シルクロード構想は、お互いに歩み寄った。したがって個人的にユーラシア統合についても楽観視している。しかもカザフスタンで昨年発表された「新経済政策」も、中国の戦略を受けて策定されたもの。中国からカザフスタン領を経由して欧州に至る物流こそ、カザフ独立後に我々が期待していたものである。現在のところ、カザフのトランジット・ポテンシャルは、主に天然ガスの輸送で活用されている。しかし、現在ロシア~中央アジアの輸送路はガスプロムによるガスの買付量の低下に伴い意義が低下しており、イラン方面はもっぱら政治次第である。カザフの新経済政策は、中国の新シルクロード構想が実現して初めて、有効性を持ってくる。というわけで、新シルクロード構想とカザフ新経済政策は重なり合うが、カザフ新経済政策の資金はカザフの国家予算と銀行の融資でカバーされ、中国のから追加的な資金調達を行う必要はないだろう。

 「リスク評価グループ」のD.サトパエフ氏のコメント:中国の新シルクロード構想とカザフの新経済政策は、内容的にオーバーラップしている。双方とも、運輸・ロジスティクス・インフラの開発に重点を置いている。カザフは自国の新経済政策実現のための投資資金を中国から獲得することに関心を抱いているはずである。新経済政策の枠内での主要プロジェクトは、主にカザフ国民基金から拠出されることになるが、カザフ政府はそれだけでは不充分だということを認識している。プログラムの諸プロジェクト実現のために2015年に国民基金から6,860億テンゲの拠出が見込まれてはいるものの、中国を含めた新規投資の獲得は我が国にとって関心事となる。資金源の一つとなりうるのが、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)である。カザフはAIIBに多大な関心を寄せており、特にインフラ・プロジェクトの資金源として有望視している。また、2014年暮れにはカザフ・中国共同の直接投資基金が創設されており、当初の資本金は5億ドルとなっている。発表によれば、同基金はインフラ・ロジスティクスだけでなく、製造業、エネルギー、農業にも資金を投資していく予定である。しかしながら、中国は世界各地で投資を行いつつ充分な見返りも得ており、中国資本で実施されるプロジェクトには自国の労働力や物資を投入しようとする。それに対し、カザフの新経済政策では、インフラ・プロジェクトを実施することによって、自国の周辺産業の発展や雇用の創出の効果も狙っており、我が国としては自らの新経済政策で中国の投資家や建設会社を儲けさせるわけにはいかないのである。新シルクロードがカザフの国益や新経済政策の目的に合致しないのであれば、我が国は対中協力を断念せざるをえない。ただ、カザフが自国の国益や産業発展を重視しなければならないのは当然で、その点に関して中国も幻想を抱いているわけではなく、カザフにとって有利な条件で協力を行えるチャンスはある。カザフのトランジット・ポテンシャルは巨大であり、陸のシルクロードを実現する上で中国はカザフの協力なしではそれが困難になるということを、よく理解している。また、こうした大構想の実現は政治的安定が鍵になるが、多くの中央アジア諸国やその他周辺国と違って、カザフはその点が優れている。中国がカザフとの協力関係に強く期待している以上、我が国としては自国の条件を通すべきだ。


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