ウクライナのクリミア自治共和国の新首相。案の定、「アクセノフ」と読む初歩的なミスを犯している日本のマスコミもあるが、もちろん正しくはセルゲイ・アクショーノフである。ただ、当方はウクライナの固有名詞はウクライナ語風に読むことを原則としているので、セルヒー・アクシオーノフということになる。

 ところで、セルゲイ・アクショーノフという同姓同名の似たような人物がいるので、混同しそうになった。一人はこのクリミアの新首相だが、もう一人ロシアで在外同朋の権利を擁護する政治団体を主宰していて、カザフのロシア人に武器を供与しようとして逮捕されたこともあるセルゲイ・アクショーノフというのがいるそうで、あやうく間違えるところだった。

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 さて、クリミア新首相となったアクシオーノフ(写真)の方は、1972年モルドバのベルツィ生まれ。シンフェロポリ上級工兵学校を卒業し、そこでクリミアとの繋がりができたようだ。企業経営を手掛けるかたわら、2008年から「クリミア・ロシア人共同体」のメンバーとなり、ロシア系住民の権利擁護運動に参加する。2010年にクリミア議会の議員に当選していた。なお、アクシオーノフに関しては、犯罪グループとのかかわりが指摘されているという。

 そして、2月27日にクリミア議会がヤヌコーヴィチ派の最後の残党とも言うべきA.モヒリオーフ首相を解任し、アクシオーノフを新首相に任命したわけだが、ニュースで伝えられているとおり、騒然とした状況下での任命となった。同日、議会は正体不明の武装集団によって占拠され、ウクライナの警官は排除された。武装集団は議員らを議場に入れ、事前に彼らから通信手段を没収した上で、議決が行われた。その結果、アクシオーノフが新首相に任命されるとともに、住民投票の実施が決定されたものである。2月28日にアクシオーノフはクリミアの新内閣を組閣。アクシオーノフが出した最初の指令は、クリミアに所在する武力関係機関を自らの指揮下に置くことであった。また、ロシアのプーチン大統領にクリミア支援を要請した。3月1日、トゥルチノフ・ウクライナ大統領代行は、アクシオーノフの選出は違法であるとの大統領令を出した。

 他方、キエフ在住のウクライナ人政治学者であるS.スロボチュークは、こちらの記事で、クリミアの議員たちが小銃を突き付けられて不本意ながら投票したと考えるのは誤りで、現実には議員たちは武装グループに包囲されていることを承知の上で整然と議場に入っていった、要するに現在クリミアで起きていることはマイダン革命の裏返しであり、突如として有無を言わさず上から既成事実を押し付けられた住民の怒りの表れである、キエフの新政権派はクリミアの住民と胸襟を開いて話し合うべきではないか、といったことを論じている。


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