こちらの記事によると、このほど国際知的財産権同盟(IIPA)が発表した年次報告書で、トレントを用いたコンテンツの違法コピーの件数において、ロシアは世界第4位の国という評価を受けた。前年の10位から、順位が上がってしまった形。しかもロシアの捜査当局による取り締まりは弱まっているという。

 ロシアは1997年から特別監視国リストに掲載されているが、報告書は2012年にもロシアをリストに含めることを勧告。同リストは前年の13ヵ国から、今回は10ヵ国まで削減され、ロシアの他にはカナダ、インド、ウクライナなどが名を連ねている。

 報告書が指摘するところによると、ロシアで状況が好転しているのは、オフィス向けのソフトの分野だけで、同分野では違法複製ソフトの比率が2004年の87%から2010年の65%に低下している。にもかかわらず、ロシアで違法コンテンツに対して起訴された事例は、前年の78から、2011年の63に低下、しかも有罪は41から19に低下した。2011年の組織改編により、取締り体制が弱体化したという。

 トレントを用いたコンテンツの違法コピー件数で、ロシアは前年の10位から、4位に順位を上げてしまった。主なハリウッド映画だけで、3,100万件の違法コピーが行われた。また、ロシアには世界で最も悪質な劇場用の映画の違法コピー・グループが存在し、2011年には77の違法コピーが作成され、しかもそれはきわめて高質で高い人気を得ている。このビジネスに対する取り締まりは事実上行われておらず、2011年には映画館で32件の逮捕がなされたものの、刑事訴追されたのは1件だけで、すぐに起訴猶予となった。

 ロシアではインターネットのブロードバンド加入1件当たりの音楽の合法ダウンロード金額は年間11.1ドルにすぎず、50~100ドルに達する欧米よりもはずかに小さい。産業を引き続き脅かしているのは、無料ないし安価な違法コンテンツであり、とりわけソーシャルネットワーク「フコンタクチェ」を用いた配信である。IIPAではフコンタクチェを、ロシア最大の、そして世界でも有数の違法音楽配信媒体と名指ししている。IIPAも認めているとおり、フコンタクチェも権利者から要請があった場合には違法コンテンツを削除はしているものの、対応が追い付いていない。

 IIPAでは、ロシアはWTO加盟が完了するまでに、海賊版対策を強化しなければならないと指摘、とりわけロシアの独禁当局が本件に関与することを勧告している。また、ロシアで隣接権料の徴収を担当している全ロシア知的財産権機関に対し、透明性を確保するとともに、外国のオブザーバーの参加を認めるよう、要請している。