こちらのサイトで、O.ゴルブノフという評論家が、ウクライナにおける最高会議選挙を経た今後の地域党政権内部の派閥抗争についての展望を示しているので、それを要約しておく。

 11月8日にウクライナ中央選管はようやく開票を終えた。勝利したのは地域党であり、同党は共産党、小選挙区の無所属議員とともに、議会における多数派を形成することになる。

 西側はすでに選挙結果を事実上承認している。一部批判的なコメントも聞かれるが、それはティモシェンコ事件以降は、いつものことである。そのことを考慮すると、ウクライナ政府は今後、欧州統合路線の継続、すなわち自由貿易協定を含む連合協定の調印に注力することになる。関税政策、ウクライナ領を通過する貨物のトランジット、ビザの簡易化、欧州の投資家のウクライナ市場へのアクスなど、調整すべき点は多岐にわたる。ウクライナ市場がより透明なものとなるよう、EU側はL.クチマ大統領の時代からウクライナに行政改革や司法改革を求めており、その一層の推進を迫るだろう。

 ウクライナ側は、S.リオーヴォチキン大統領府長官をヘッドとして、憲法会議を開催しており、2015年までに憲法に大幅な修正を加えることを検討していて、それによりEUの求めに応えようとしている。

 というわけで、西側との政治交渉を担う役割は、引き続きリオーヴォチキン長官に委ねられることになりそうだ。リオーヴォチキン長官は、大富豪のD.フィルタシ氏をパトロンとし、新たな議会においてUDARの議員からなる「自らの」非公式な会派を設けようとしており、一部の地域党の比例・小選挙区議員もそれに加勢すると見られる。

 国家安全保障・国防評議会書記で、ウクルピドシプニク社を中核とする財閥の総帥でもあるA.クリュエフ氏の立場は、揺らぐことになった。同氏は、比例名簿とその得票に責任を負っていたわけだが、比例区の得票は伸び悩み、野党連合「祖国」に10%程度の差をつけることが要請されていたにもかかわらず、その差はわずか4.5%にとどまった。

 引き続き、閣内の要職は、V.ヤヌコーヴィチ大統領に近い3大派閥の間で分配されることになる。それは、R.アフメトフ氏の財閥SCMの派閥、DFグループのD.フィルタシ氏の派閥、そして大統領の長男O.ヤヌコーヴィチ氏を中心とする「ファミリー」である。前2者が以前から存在しているのに対し、最後の派閥は比較的新しい。ファミリーは、今回の選挙戦の結果に付け込み、現中銀総裁のS.アルブゾフを、自分たちの代表として新首相に据えることを狙っている。同氏はすでに、本年9月に米ワシントンに出かけ、「お披露目」を済ませている。

 ヤヌコーヴィチ・ジュニアの影響力拡大を、古い2派閥は全力で抑えにかかるだろう。一説によると、ファミリーとアフメトフ派の対立により、アフメトフ派がすべてのポストを失う可能性もあるという。とりわけ、B.コレスニコフ副首相・インフラ相と、R.ボハティリオーヴァ保健相の処遇が焦点となる。

 だが、フィルタシ派の境遇も、同じくらい不透明である。前出のリオーヴォチキン大統領府長官に加え、Yu.ボイコ・エネルギー相、ウクライナ経済の浮沈を握る西側からの借入に責任を負うV.ホロシコウシキー第一副首相らの処遇が注目される。というのも、フィルタシは、新たな議会で数十人の議員を影響下に置いたという手応えを掴んだら、攻勢に出るはずだからだ。それらの議員たちとの同盟関係は、憲法改正が可能な300議席を達成する上で、死活的に重要である。

 もしもヤヌコーヴィチ大統領が政府の要職にアフメトフ派とフィルタシ派を留任させれば、政策的な変化は一切生じないだろう。アフメトフとフィルタシが、お互いを牽制し合う格好となり、両者とも現状維持を望む。

 それに対し、より大きな変化を起こしたいのが、ファミリー派である。ファミリー派の官僚やビジネスマンたちは、まだアフメトフ派やフィルタシ派に比肩しうるような資産や影響力を手にしていないからである。しかしながら、ファミリーは自分たちを欧米で売り出そうとしているものの、欧米の側はファミリーとの協力には乗り気薄である。所詮ファミリーは、これまでのヤヌコーヴィチ大統領やM.アザロフ首相らのように、西と東を天秤にかけようとするという風に、欧米は見ているからである。

 結局のところ、ヤヌコーヴィチ大統領にとって最も合理的なやり方は、政府のポストを表面的にいじるということである。そして、大統領に忠誠を誓うアザロフ首相に、引き続き各派閥を統制させることだ。だが、ファミリーの影響力がこれから着実に強まっていけば、遅かれ早かれ政権内部の対立が激化し、そのことは2015年大統領選を前にして地域党を分裂させることになりかねない。


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