スポーツ選手が政治家に転身したりするのは、イヤな感じがするものである。小沢一郎のマスコットになってしまったヤワラちゃんしかり。目下のところ私が心配しているのは、なでしこジャパンの澤が既成政党の甘い言葉に誘われて次の総選挙に出馬したりしないかということだったりする。まあ、自らの政見や信念があっての政界進出ならそれもアリだろうが、広告塔だったり、国会の乱闘要員としてスポーツ選手がリクルートされるのは、勘弁してほしい。

 さて、ウクライナ・スポーツ界の最大のヒーローで、先のユーロ2012で最後の輝きを放ったアンドリー・シェフチェンコが、サッカー選手として現役引退し、政治家に転身することになった。正直言って、背景に少々きな臭いものを感じる。

 こちらのニュースによると、シェフチェンコは7月27日にサッカー選手として引退して政界に進出することを表明。翌28日、ナターリヤ・コロレウシカ女史の政党である「進め!ウクライナ」に加わることを発表した。シェフチェンコは、「私は政治家として自己実現し、ヨーロッパでの経験を皆と分かち合い、国のために尽くしたい。私はナターリヤ・コロレウシカのチームに加わることを決めた。なぜなら『進め!ウクライナ』は未来の党、若きリーダーたちの党だからだ。政治家として私は社会政策とスポーツを推進する。私のモットーは、健全な精神は健全な肉体に宿るというものだからだ」というコメントを出した。一方コロレウシカは、「シェフチェンコはウクライナの誇り。彼が我々のチーム、新世代の政治家のチームに加わってくれたことに感謝する。国のため、人々のために働く時が来た。シェフチェンコは未来の政治、新しい政治を選択してくれた。これは非常に重要なことで、我々は共に、ウクライナが前進するために一体となって全力を尽くす」と述べた。そして、こちらのニュースによると、「進め!ウクライナ」は8月1日から2日にかけて党大会を開催し、10月28日に投票が行われる最高会議(国会)選挙に向けた比例名簿を決定、シェフチェンコは党首のコロレウシカに次ぐ名簿2位で選挙を戦うことになったようである。

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 さて、問題はこの「進め!ウクライナ」の素性である。コロレウシカは元々Yu.ティモシェンコ女史の弟子的な存在として、野党陣営に属していた人物だ。しかし、昨秋にティモシェンコが投獄されたあたりから、個人的な野心を見せるようになり、野党陣営との亀裂が生じていた。コロレウシカは社会民主党という政党に属しており、同党は他の民主野党勢力とともにティモシェンコ・ブロックを形成していたわけだが、2011年12月23日にコロレウシカが同党の党首に就任し、雲行きがおかしくなる。2012年3月14日にコロレウシカは最高会議のティモシェンコ・ブロック会派から除名され、翌15日には社会民主党自体がティモシェンコ・ブロックから除外された。コロレウシカは、この決定はリーダーたるティモシェンコの了解を得ずにO.トゥルチノフ氏が勝手に決めたことだと批判、これに対しトゥルチノフは獄中のティモシェンコとは連絡をとるのが難しかったとして独自の判断だったことを認めた。3月22日に社会民主党は「ナターリヤ・コロレウシカ党『進め!ウクライナ』」と改名した、という経緯である。

 トゥルチノフをはじめとするティモシェンコ・ブロックの幹部が社会民主党/コロレウシカの排除に動いたのは、同勢力がヤヌコーヴィチ政権と裏で繋がっていると判断したからである。これに対しコロレウシカは、我々は引き続きヤヌコーヴィチ政権に反対していると弁明していた。しかし、最新のこちらのニュースによると、「進め!ウクライナ」には政権与党である地域党のO.エフレモフ会派長が資金を拠出しているという指摘もあるということだ。

 つまり、「進め!ウクライナ」は政権側が野党陣営を分裂させ、いざという時の連立パートナーを用意しておくための工作であるという疑いが強いということになる。シェフチェンコが汚い政局に巻き込まれて国民からの信頼を失うようなことがなければいいが…。

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