服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版)

私のホームページ「ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪」(http://www.hattorimichitaka.com)のブログ版です。

2014

 こちらのサイトに、2014~2016年のウクライナ製菓市場のブランド別動向に関するデータが出ているので、紹介する。ポロシェンコ大統領は、2014年の選挙戦に際し、利益誘導の疑惑をかわすため、自らが保有する製菓大手「ロシェン」を身売りする構えを示していたが、現在のところ実現していない。上に示したのが2014年の市場シェア、下に示したのが2016年のそれなのだが(単位は菓子類の生産量、トン)、ポロシェンコ大統領在任中にロシェンの一強体制が強まるという、少々よろしくない現象が起きている。なお、ウクライナの製菓産業全体では2016年にわずかながら生産が回復し、前年比0.1%増の69.9万トンとなった。

2016

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 この話、初めてというよりは、確か以前から出ていたと記憶するが、こちらの記事によれば、日本政府はウクライナのドンバス復興に向けて400万ドルを拠出するということである。このほど角駐ウクライナ大使がその旨を表明した。2017年4月から2018年3月にかけて、国連および赤十字を通じて400万ドルを拠出し、戦乱で被害を受けたドンバスのインフラ再整備、中小企業支援、被害住民への支援などに充てる。なお、2014年4月半ばから続くドンバス紛争では、少なくとも9,940人の犠牲者、23,455人の負傷者が出ている。


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Denis_Voronenkov

 少々古い話になってしまったが、ロシアの元下院議員であるデニス・ヴォロネンコフ氏(写真)が3月23日にキエフで暗殺された。私自身はきな臭い話が苦手で、当ブログは経済を中心とする人畜無害な情報が主だが、ヴォロネンコフ氏の事件については少々事情があって簡単に調べたので、要点だけ整理しておく。

 デニス・ヴォロネンコフ氏は1971年生まれで、司法、軍事、ネネツ自治管区行政などの仕事をしたあと、2011~2016年に共産党所属の連邦下院議員を務めた。2016年の下院選ではニジェゴロド州の小選挙区で落選、選挙運動の際に「自分はアフガン従軍帰りだ」といった偽りの主張をし(実際にはソ連がアフガンから撤退した時にはヴォロネンコフはまだ未成年だった)、どうも虚言癖のある人物だったようだ。奇矯な言動の一つとして、2016年には「ポケモンGoユーザーはスパイや、さらにはテロリストになりかねない」と唱え、ロシアにおけるその利用禁止を関係省庁に訴えたことが知られている。2014年12月に不動産乗っ取り(5億円程度の物件)疑惑に関連して議員不逮捕特権の剥奪が提起される。2016年9月の落選後、2016年10月にウクライナに逃れたことは(12月にウクライナ国籍取得)、訴追を逃れるのが目的だったか。2017年2月にロシアより国際指名手配を受けている。ウクライナに亡命してから政治的立場を一変させ、以前はロシアのクリミア併合を称賛していたが、ウクライナ亡命後は「自分は反対票を投じた」と立場を翻した。暗殺の数日前に、ロシアのウクライナ侵略を支援しているスポンサー、ウクライナ側の協力者を暴くとの名目で「ウクライナ・ロシア調査センター」の創設を提案、自らそのトップとなる構えを見せた。しかし、3月23日にキエフの街中で3~4発の凶弾を浴び、その場で息を引き取った。事件が起きたのは11:30で、現場はシェフチェンコ大通りのプレミア・パレス前であり、まさに白昼堂々の暗殺劇であった。実行犯のウクライナ人、オレクサンドル・パルショフ(1988年セヴァストポリ生まれ、ドニプロ在住)はその場でボディーガードから発砲を受け、病院で死亡が確認された。前科者で、近年は傭兵のようなことをしていたらしい。暗殺事件に関しポロシェンコ大統領は即座に「ロシアによる国家テロリズム」と非難した。


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 こちらの記事によると、過去1年ほど続いている石油・ガスの供給をめぐるロシア・ベラルーシ間の対立につき、解決策を探る両国政府間の交渉が3月30日に行われたものの、物別れに終わった。本件は、2016年初めから、ロシアの供給するガスの料金が不公正に高いと主張して、ベラルーシ側が一方的に引き下げた価格での支払を行い、その結果7億ドルの債務が累積、ロシア側はベラルーシへの原油供給を削減するという対抗策を示していたものである。不調に終わった今回の政府間交渉につき、ロシアのノヴァク・エネルギー相は、次のようにコメントした。いわく、残念ながら、紛争の調整につき、最終的な合意は得られなかった。最大のネックは、ベラルーシ側が、大幅な値下げと支払期限の延長がなされなければ、債務を償還しないとしていることである。我が国からすれば、ベラルーシの立場は充分に建設的とは言えないが、この紛争は我が方から始めたのではなく、交渉は続けていくつもりで、ベラルーシ側がより建設的になってくれることを願う。ノヴァク大臣は以上のように述べた。


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 こちらのサイトに、2015年の欧州各国の天然ガス消費量と、各国の消費量に占めるロシアの供給シェアを示した図解資料が掲載されているので、紹介させていただく。ウクライナは備蓄からの消費分を含むということである。ドイツの60%という数字が目を引き、このあたりが欧州国際関係の綾となっている。ベラルーシは98%で、がんじがらめだ。


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 最新の情報というわけでもないはずだが、個人的には初めて知ったので、メモしておく。こちらの記事によると、アルメニアは、大統領の権限が強い半大統領制から、首相・議会の権限が強い議院内閣制に移行しようとしているということである。大統領という役職は残るものの、名目的な国家元首となり、儀典的な役割を果たすだけとなる。それに伴い、たとえばユーラシア経済連合やCIS集団安保機構の首脳会合に出席するのも、大統領ではなく、首相になる予定だという。セルジ・サルキシャン現大統領の任期満了に伴い、新たな政治体制に移行する。上掲写真はカレン・カラペチャン首相。


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 ロシアで発生した反体制デモにつき、アレクサンドル・イヴァフニク氏によるこちらの論評の中から、興味深い箇所のみ大意を紹介する。

 3月26日の反体制デモは、2011~2012年の誠実な選挙を求めるデモとは、本質的な違いがあった。前回は、極左から民族主義者までの多様な政治勢力がデモの開催に尽力し、各指導者が登壇して具体的な政治的要求を打ち出した。それに対し今回は、「政権がメドヴェージェフ首相の汚職疑惑に沈黙していることに抗議の声を上げよう」というナヴァリヌィの呼びかけに呼応して、100近いロシアの都市で同時に抗議デモが発生した(うち当局の許可があったのは21だけ)。26日のデモで諸政党の関与は確認されておらず、多くの現場では登壇のためのステージも用意されなかった。唯一の組織者は、現在急速に構築されているナヴァリヌィの地方ネットワークであった。ただ、意識の高い市民の間でナヴァリヌィの権威と人気は大きいものの、重要なのはむしろ、ナヴァリヌィは単に引き金を引いただけだと思われることである。つまり、人々はナヴァリヌィを支持するために街頭に繰り出しているわけではなく、彼らは現政権の(具体的な事柄というよりも)振る舞い全般に不満が鬱積しており、それを表現するためにデモに参加しているのである。

 こうしたことから、無許可の集会であるにもかかわらず、モスクワには少なくとも1.5万人が、サンクトペテルブルグでも1万人が集まり、ロシア全土に予想外の広がりを見せた。「クリミア・コンセンサス」はいまだに世論に残存しているが、その役割はどんどん小さくなっている。そうした中で、ナヴァリヌィが絶妙な形で汚職の問題を取り上げ、デモ参加者たちの意識の中ではその点が結束要因となった。エリートたちは自分たちとはまったく異なる生活様式を送る人々だと捉えられ、その象徴であるメドヴェージェフが珍しく抗議運動の個人的な標的になった。

 今回のデモの特徴は、地方都市への広がりに加えて、年齢構成である。前回の2011~2012年は、クリエイティブクラス、30~40歳の人々、伝統的な民主派インテリ、中高年層など、多彩であった。それに対し今回は、学生が圧倒的に多く、高学年学童も見られる。もしもデモが許可を得ることができたら、より多彩な年齢構成になったかもしれないが、無許可となったことで、守るべきものがある大人たちは参加を回避した。それに対し、若者は向こう見ずで、ロシア伝統の年長者や権威の尊重といったものがなく、テレビ以外の情報源を利用している。ナヴァリヌィの汚職告発動画が最も刺さったのが、そうした社会層だった。むろん、今回の動画で彼らが開眼したというわけではなく、進んだ若者は以前から、過去ばかり見ている国、能力ではなくお上への忠誠やコネで社会的上昇が決まってしまうような国には将来性がないことを分かっていた。彼らの中に「我々と彼ら」という二分法が形成され、もはやメドヴェージェフやプーチン個人云々というよりも、国の発展ではなく自己保存にしか向いていない統治システムそのものを問題視するようになったのである。

 今後政権側は、広域的なデモを許さず、それが試みられた際には最初から弾圧をするかもしれない。インターネット、ソーシャルメディアの自由なやり取りを制限することも充分考えられるし、学校での教育的指導もあるだろう。しかし、閉鎖性と汚職が現体制の基本的な特徴である以上、政権が譲歩できる余地は乏しい。今後デモが広がりを見せるかどうかは不透明である。現在のところ怒れる若者たちには組織も、しかるべき地方リーダーも、具体的要求もなく、いかにナヴァリヌィが精力的でも、安定的な抗議運動を形成するのには不充分だろう。いずれにしても、様々な形で不満を表明する土壌は出来上がり、このことは大統領選や汚職追及に影響を及ぼしていくだろう。


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 ウクライナの銀行セクターは、かつてロシア資本の進出が盛んな部門の一つであった。しかし、過去3年のウクライナ危機、ウクライナ・ロシア関係の悪化により、その事業環境は厳しくなっており、先日も当ブログで「ウクライナがロシア系銀行に制裁」というエントリーをお届けしたところである。

 そうした中、こちらのサイトに、ウクライナにおけるロシア系銀行の状況をまとめた図解資料が載っており、便利なので、上掲のとおり転載させていただく。

 このうち、ズベルバンク・ウクライナについては、すでにロシアのズベルバンク本社がウクライナ法人身売りを決定している。こちらの記事などが伝えているとおり、サイド・グツェリエフ氏を筆頭とするコンソーシアムが100%の株式を買い上げることになり、このほかラトビアのノルヴィク銀行とベラルーシの民間企業がコンソーシアムに名を連ねている。なお、サイド・グツェリエフは、スラヴネフチ/ルスネフチのオーナーとして知られるミハイル・グツェリエフの息子である。


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 こちらの記事によると、ロシア最大の地場自動車メーカー(現在はルノー=日産アライアンス傘下)のAvtoVAZでは、今後5年間のうち(すなわち2022年まで)に、生産した完成車の20%を輸出に向けたい意向である。ニコリャ・モル社長がこのほど国際自動車フォーラムの席で表明した。同社では現在すでにコンポーネントの20%を輸出しており、完成車の輸出もそれと同じレベルに高めるという方針である。また、現地化比率の目標として80%を掲げており、それが達成されればイジェフスク、トリヤッチの両工場がフル稼働に移れる。輸出比率を高めていく政策の一環として、右ハンドル車の生産も検討していく。また、製品がコスト高となる一因の輸送費に関しては、ロシア政府がそれを補助する政策をとっていることが、助けとなる。


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 2017年3月2~6日にロシアのレヴァダ・センターが汚職問題に関する世論調査を行ったそうで、その結果概要がこちらのサイトに出ている。それを紹介した記事がこちらであり、上掲の図はその記事から拝借したもの(3月2日にナヴァリヌィがメドヴェージェフ汚職糾弾動画を発表し、その当日に調査が始まるとは、何とも手回しが良いというか)。

 日本人が「汚職」と聞くと、大臣などの権力者による悪事というイメージを抱くのではないだろうか。しかし、これはロシアでも、ウクライナでもそうだが、あちらの国でコラプションと言った場合には、政治家や役人だけでなく、医者や教育者への賄賂といったことも含んでおり、国民に非常に身近な現象なのである。ロシア国民は誰しも、自分が賄賂を贈ったり、受け取ったりする当事者になる可能性があるわけだ。したがって、今回のレヴァダ・センターの調査でも、まずは国民にとって身近なそうした汚職問題についての意識が問われている。

 その上で、政権幹部による汚職の問題も問われている。ただ、その際に最高指導者のプーチンは、汚職の大元、親玉というよりも、その権力を行使して汚職を根絶すべき存在といった位置付けをなされているように思われる。

 設問の中に、「野党は政権幹部の汚職、資金不正利用について常に批判しているが、プーチンはその蔓延にどの程度責任があるか?」というものがある。回答状況は以下のとおりで、それを図示したのが上図である。プーチンへの批判の声が趨勢的に高まっているというわけではなさそうだ。「プーチンがより一層強権を発動して悪事を取り締まってほしい」と考えるのが、ロシア国民の一般的なメンタリティなのではないだろうか。

  • 完全に責任がある:25%
  • かなり責任がある:42%
  • 一部責任がある:20%
  • 責任があるはずはない:9%
  • 回答困難:4%

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 ウクライナのUNIAN通信のスマホアプリは、以前は「共有」ができず、情報の後処理にとって不便という欠陥があったが、久し振りに利用してみたら、「共有」できるようになっていた。そこで、改善記念に、UNIANの記事を使って1本お届けしたい。

 こちらの記事によれば、ウクライナの化学産業業界団体である「化学同盟」は、化学肥料の輸入代替の必要性を唱えている。同団体によれば、2016年にウクライナは149.5万tの窒素肥料、139.9万tの硝酸ナトリウム、36.8万tのリン酸アンモニウムを輸入し、約305億グリブナの費用を費やした。このうち、窒素肥料の149.5万tは完全に自給して120億グリブナを節約することが可能だし、硝酸アンモニウムも90万tは国産化し90億グリブナの節約が可能である。つごう、210億グリブナをウクライナは節約できるのだ。しかも、輸入の70%はロシアからであり、それだけの資金が国外に流出する一方、ウクライナではリウネとチェルカスィの窒素肥料工場が停止を余儀なくされている。ウクルトランスガスはOstchemのガス3.5億立米を押さえており、それをOstchemに返却すれば、両工場の操業再開は可能である。オデッサ臨港工場はOstchemに2.5億ドル分のガス代未払いがあり、同工場が利益を上げて債務を返済できるような条件を整備すべきである。「化学同盟」の幹部はこのように主張した(業界団体と言いつつ、完全にOstchemの利益代表だな、これは)。


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 レヴァダ・センターのこちらのページにある、国民がプーチンの活動を支持している割合、同じくメドヴェージェフの活動を支持している割合というデータを、久し振りに見た。迂闊にも気付かなかったが、しばらく見ないうちに、国民のメドヴェージェフを見る目が、ずいぶん厳しくなっていた。上の図がプーチンで黒が支持する、青が支持しない、下の図がメドヴェージェフで同様である。なお、プーチンは1999年8月から始まっているのに対し、メドヴェージェフは2007年2月からで、上下の図が時系列的に対応しないので、ご注意いただきたい。

 メドヴェージェフへの国民の支持が低下し、2016年8~10月には不支持の方が上回ったこともあったのに対し、国民のプーチン支持はほとんど揺らいでいないことが分かる。なお、数字は2017年2月が最新であり、その後にメドヴェージェフの不正蓄財が暴露されたので、当然のことながら次のデータが発表されればさらに数字が悪くなることが予想される。

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 経済難にもかかわらず、政権への支持率は高く、国内情勢は安定しているかと思われたロシアとベラルーシで、それぞれ別のきっかけにより、かなり大規模な反政権デモが発生している。ロシアの方は、反体制ブロガーのアレクセイ・ナヴァリヌィ氏が、メドヴェージェフ首相の重大な汚職を暴露したことが発端になっている。詳しくフォローする余裕はないが、発端になった動画は上掲のもので、3月2日に公開されたようである。こちらのサイトで、そのテキストバージョンを閲覧することも可能。

 動画をざっと見てみたが、複雑なスキーム、親友・旧友の仲介、オフショア企業などを使い、またオリガルヒからの資金提供を受け、メドヴェージェフが超豪華な別荘、ヨット、ぶどう畑およびワインセラーなどの莫大な資産を実質的に手に入れているということが、非常に克明に検証されている。真に迫った内容であり、動画のプレゼンも良く出来ている。ただ、どういう経緯で、今こういうスキャンダルが暴露されたのは分からないし、おそらく政権幹部は皆似たような蓄財をしていると思われる中で(動画の最後でその旨の指摘はある)、なぜメドヴェージェフが狙い打ちされたのかとか、不可解な点は少なくない。

 それで、今回のロシアの反政府デモには、若年層が積極的に参加しているという話を聞いたので、その様子も動画で見てみようと考えた。下に見るのはあくまでもその一例であり、3月26日のモスクワのデモの様子ということである。プーチン政権が色々問題を抱えていることは明らかにもかかわらず、最近まで沈黙していた国民が、一部であるにせよ、なぜ今回はナヴァリヌィに積極的に呼応したのか、そのあたりも個人的に今一つ良く分からない。


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 こちらの記事に、分かりやすい図が出ていた。2010年12月を起点にとって、その後ウクライナの平均賃金(青の縦棒)と住宅・光熱費(赤の折線)とが、2016年7月までにどれだけ上昇したかを見たものである。この間、賃金も100%ほど上昇はしているが(つまり2倍になった)、住宅・光熱費は300%近く値上がりしており(つまり4倍近くになった)、まったく賃金が追い付いていないことが分かる。特に2015年春の公共料金値上げがどれだけラディカルなものであったかが、一目瞭然である。

 なお、この記事を書いているのはオレクサンドル・オフリメンコというエコノミストで、ウクライナの論壇では非常によく目にする名前であり、体制に批判的な論陣を張ることが多い。「ウクライナ分析センター」というシンクタンク(といっても個人商店だろう)を主宰しているようで、フェイスブックページに見るように、ウクライナ経済の困難を図解で解説するのを得意としている。


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 ベラルーシがロシアと石油・ガス供給で揉めて、ロシアの代替の原油供給源模索の動きに出ている。そうした流れで、こちらのニュースによれば、今般イラン産原油8万tを積んだタンカーがウクライナのオデッサ港に到着した。オデッサから鉄道でベラルーシのモズィリ製油所に輸送される。ウクライナ領の鉄道輸送は、オデッサ・ペレスィピ駅から、対ベラルーシ国境のベレジェスチ駅までで、輸送料は1t当たり11.88ドルとなる。


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CS

 『ベラルーシ実業新聞』のこちらのページに、CIS諸国の平均賃金を米ドルに換算してその推移を比較した図が掲載されていた。ありそうでない、便利な図なので、日本語を添えた上で転載させていただく。

 図は、2016年11月までの月別の推移を跡付けたもの。ちなみに、旧ソ連諸国では12月に賃金の未払い分などがまとめて支払われることが多いので、どの国も各年の12月の山が突出する形となっている(したがってインフレ率なども12月にピークを迎える)。2014年頃からロシア、カザフスタンといったCISの中では豊かな国でもドル換算賃金が低下しているのは、原油価格の低下とそれに起因する景気後退、為替下落によるものである。ウクライナは政変後に為替がドカンと落ち、かつて欧州最貧と呼ばれたモルドバを下回り、今や中央アジアの低開発国であるキルギスと肩を並べている。なお、最新の2016年11月の各国の平均賃金を、大きい順に並べると、以下のとおり。

  • ロシア:553ドル
  • カザフスタン:416ドル
  • アルメニア:378ドル
  • ベラルーシ:363ドル
  • アゼルバイジャン:302ドル
  • モルドバ:254ドル
  • キルギス:203ドル
  • ウクライナ:201ドル
  • タジキスタン:128ドル

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 こちらの記事などが伝えているとおり、ロシアでエリヴィラ・ナビウリナ中央銀行総裁が続投する方向となった。今般ナビウリナ総裁がプーチン大統領と面談した際に、大統領がナビウリナ氏再任の意向を示し、その人事を審議する下院も問題なく承認する見通しとなっている。ナビウリナ氏は経済発展大臣を経て、2013年6月24日から中銀総裁を務めており、本年2017年6月に任期が切れる。再任されたあかつきには、さらに5年を務めることになる。ナビウリナ氏は堅実な手腕で金融危機に対処し、また銀行システムを整理して銀行数を3分の1ほど削減した。こうした実績から、再任は理に適ったものであるとの評価がロシアではもっぱらとなっている。

 世界で最も保守的なロシア中央銀行と、最もアバンギャルドな日本銀行。中央銀行だけ、とっかえたいなあ。


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 都合により、ウクライナの話題が続いて恐縮である。日本の通関統計によれば、ウクライナからのタバコ輸入が増えている。タバコは2015年にウクライナからの輸入品目として突如登場し、ざっくり言うと日本の対ウクライナ輸入の半分前後を占めるに至っている。2015年には55億本、2.9億ドルが、2016年には62億本、3.6億ドルが輸入された。ウクライナ・グリブナが下落したことで、ウクライナから調達するメリットが生じたのだろう。

 それで、どんな商品が輸入されているかを、ざっとネット情報で調べてみたところ、こちらのページに見るように、どうもフィリップモリスのマールボロ・ブラック・メンソール・エッジ1、エッジ8という商品がウクライナ産らしい。ウクライナには日系JTIの立派な工場もあるので、JTIウクライナ工場の商品が日本に供給されているのかな?などとも勘繰ったが、そうした事実は掴めなかった。


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 こちらのサイトに、ドンバス紛争とオリガルヒのリナト・アフメトフ氏のかかわりについて論じた論考が掲載されているので、その要旨を以下のとおりまとめておく。

 ドネツィク人民共和国、ルハンシク人民共和国は、ウクライナ側によるドンバス封鎖の解除を求めていたが、期限として設けていた2月27日までに解除されなかったので、3月1日に在ドンバス企業に対する外部管理に踏み切った。ドネツィク人民共和国のトップであるザハルチェンコによれば、これまで企業がウクライナ側に納税していたのか、人民共和国側に納税していたのかを精査し、前者の場合には人民共和国への登記変更を行い人民共和国に納税する必要があるという。

 ドンバスの占領地には、アフメトフ氏のSCM傘下のDTEK、メトインヴェストに属す企業が47社所在する。メトインヴェスト系で主なものには、カリミウシケ(旧コムソモリシケ)鉱山管理局(上掲写真)、ハルツィシク鋼管工場、エナキエヴェ冶金工場がある。DTEKはドンバスに火力発電所複数を抱えている。ドンバス占領地にあるメトインヴェストの鉱山冶金企業は、年間15億ドルの輸出収入をもたらしているほか、ウクライナ本土の企業もその供給に依存している。たとえば、クラスノドンヴヒーリャからの石炭供給が途絶えると、ウクライナのコークス化学工場におけるコークス生産が年間100万t低下する。また、カリミウシケからの石灰の供給が止まると、マリウポリとザポリージャの製鉄所も被害を被る。ドンバス企業の停止によるメトインヴェストの外貨収入喪失額は年間24億ドルに、雇用の喪失は4.5万人に達する恐れがあるという。アフメトフが保有するウクルテレコムのドネツィク事務所も3月1日に事業を停止し、通話やネットアクセスの停止で20万人が影響を被る。2014年以来人道支援の拠点として用いられていたドンバス・アレーナも、封鎖された状態にある。

 紛争が始まって以来、両人民共和国の指導部とアフメトフがこれほど大掛かりに対立するのは、初めてのことである。アフメトフは過去3年、人民共和国とウクライナ政府の間でバランスを取ろうとし、最低でも自分の資産を守り、あわよくば両者の仲介役として株を上げようとした。しかし、すぐに関係は悪化し、アフメトフ派の人材が両人民共和国の要職から排除された。アフメトフに近いヴォストーク大隊のホダコウシキー司令官は、ザハルチェンコに敵対する立場に転じ、ドンバスをロシアに編入すべきという立場に転じているが、ドネツィク人民共和国指導部には入っていない。

 かくしてドネツィク人民共和国は実質的に、アフメトフとの間に形成されていた非公式な関係の見直しに着手した。これまでアフメトフはドンバス住民を支援し、地域を資金的に回す役割を担わざるをえなかったが、ここに来ての情勢緊迫化で、アフメトフ系の企業が非公式な形で地域を支え続けることが難しくなっている。人民共和国当局が、国有化はせず、外部管理に留めていることは、アフメトフが当地の資産を保全するために、彼により厳しい条件を押し付けていることを意味する。妥協の余地がある反面、アフメトフが企業に対する管理を完全に失うリスクもある。ドネツィク人民共和国側もフリーハンドではなく、アフメトフの企業が供給する原料に依存しており、生産の全面的停止、社会破綻の脅威がある。ロシアから原料を調達する構えも見せているが、それには時間がかかりすぎ、制裁の対象になりかねないためロシア企業が供給に応じるとは思えず、これは脅しの試みだろう。ロシア市場を製品の販路にできるとも思えない。

 ロシア側では、両人民共和国の独立を承認する問題が取り沙汰されることが増えてきている。仮にそうなれば、2008年にアブハジアおよび南オセチアでやったのと同じシナリオになるが、実際にはロシアはドンバスについては最初から沿ドニエストル・シナリオを選んでいたように思われる。ロシアがドンバスの独立を認めると、ウクライナの対外政策の手足を縛る圧力のテコを失ってしまう。ドンバスが独立すれば、ウクライナは地政学的により一層西側一辺倒の国になってしまい、それはロシアの利益にそぐわないし、ミンスク合意が最終的に破綻し、西側がロシア包囲網をより一層強めることになりかねない。


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 ウクライナのキエフ国際社会学研究所は、定期的に実施している全国世論調査において、「貴方は社会的な抗議活動に参加する用意があるか?」ということを問うているようである。2016年12月に実施されたその最新結果が、こちらのページに出ている。今回の調査では、参加する用意があるという回答が48.5%、ないという回答が45.6%、回答困難が5.9%だった。参加する用意があるという回答者は、上図に見るとおり、今回の調査で過去最高レベルに達したようである。こうやって見ると腐敗していたヤヌコーヴィチ時代の方が民心は安定していたようであり、もとの濁りのヤヌコこいしきといったところだろうか。

 なお、今回の調査結果を地域別にみると、抗議活動参加の用意があるのは、西部で49.2%、中部で43.5%、南部で50.0%、東部で57.2%となっている。一方、こちらに見るとおり、ユーロマイダン革命直前の2013年11月に実施された世論調査の同様の設問では、抗議活動参加の用意があると回答した者は22.2%に留まっていた(上掲図と整合せず、どうも調査方法の技術的な変更があったような様子だが、正確なことは不明)。その際に、2013年の結果を地域別に見ると、西部では28.5%、中部では22.2%、南部では21.4%、東部では16.7%であった。不穏な空気は、かつては西部で強く、今日では東部で強くなった、ということになる。


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 こちらの記事が、ウクライナ与党の動向について伝えている。ウクライナでは、2014年11月に議会選挙が実施され、「欧州ウクライナ」という名称の連立与党が結成された。名を連ねた会派は、ポロシェンコ・ブロック、人民戦線、急進党、祖国、自助党で、302名からなる多数派だった(過半数は226議席)。しかし、2015年9月に急進党が離脱、2016年2月に祖国と自助党が離脱し、連立与党にはポロシェンコ・ブロックと人民戦線が残るのみとなった。どの会派も連立協定を破棄すると宣言はしていないので、法的には議会における与党多数派は存続しているが、残留している2会派では226議席に達していないので、実質的にはすでに多数派でなくなっている。そこでポロシェンコ・ブロックでは、元の5会派から成る連立を再興すべく、交渉を開始しているが、現在のところ進展はない。2月には急進党が連立に復帰するとの観測が伝えられたが、党首のリャシコは2月末にそれを否定している。

 下図は、少々古いが、こちらから拝借したもの。

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 ウクライナで、本土とドンバス占領地の鉄道輸送が遮断されていた問題は、こちらに見るとおり、3月15日のウクライナ国家安全保障・国防会議において、境界線の貨物通過を停止する旨の決定が正式に下された。こちらのサイトで、ドンバス封鎖問題につき、ロシアの有識者がコメントしているので、その要旨を以下のとおり紹介する。上級経済学校国民研究大学世界政治経済学部のアンドレイ・スズダリツェフ副学長(写真)のコメントである。

 ウクライナ政権がドンバスを経済・輸送面から封鎖することを決めてから、ドンバスは苦境に立たされるだろう。ドンバス経済の一部は、ウクライナとの関係を保っていた。たとえばエナキエヴェ冶金工場は、石炭はドンバス産、鉄鉱石はウクライナ本土のクリヴィーリフ産であり、こうした事例は数多い。占領地とウクライナ本土で境界線が引かれていても、砲撃を受けたり、オーナーが放棄したりした企業以外は、ドンバス企業は生産を停止しなかった。

 ドンバスの人々は、少ないながらも、賃金を受け取っていた、ルハンシク、ドネツィク当局も、企業が稼働し、住民が安定的な所得を得ることを重視し、税収を得るよりも賃金を優先していた。ウクライナ側も、ドンバス産の石炭、原料、半製品に対しては旺盛な需要があり、ウクライナ全土の冶金産業にとってドンバスが大きな役割を果たしていた。ウクライナは石炭供給の問題をドンバスなしでは解決できず、ロシアを含む他国から輸入せざるをえなくなる。

 ウクライナや、一部のロシアマスコミも誤って伝えているが、ドネツィクおよびルハンシクの両人民共和国は、企業を国有化したわけではなく、外部管理下に置いただけであり、ましてや企業が閉鎖されるわけではない。外部管理を敷いたのは、企業を稼働させたいからであり、すでに外部管理導入から数週間経っているが、一部の企業は完全にではないにせよ稼働を続けており、一部は停止した。

 ドネツィクおよびルハンシクの両人民共和国は、ロシア市場を当てにしている。客観的に言っても、ドンバス経済はロシアに対して競争力がある。ロシアにとってドンバスの産業の面倒を見るのは荷が重いが、これらの地域を支援しなければならないので、他に方法はない。

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 今日のロシアで経済政策の柱となっている輸入代替について、ロシア政府機関紙『ロシア新聞』の2016年12月15日号の別冊付録で特集が組まれた。こちらでPDF版を閲覧可能である。

 その中で、上図に見るように、ロシアの製造業部門ごとの輸入浸透率(ロシアの国内消費に占める輸入品への依存比率)を、2014年と2016年1~9月とで比較しまとめたグラフが掲載されていたので、これを紹介したい。なお、原典では棒グラフとデータラベルとの間に明らかに矛盾が散見されたので、そうした場合にはグラフの方を優先し、グラフを判読してデータラベルを修正した。

 図から一目瞭然のように、あらゆる製造業部門で、輸入浸透率が低下しており、すなわちそれだけ国産品の比率、輸入代替が進展したということになる。しかし、それがロシア政府の政策的取り組みの成果なのか、それとも単にルーブル安で輸入が抑制されただけなのかということに関しては、慎重な評価が必要だろう。


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 だいぶ遅れ気味のフォローになるが、ウクライナとドンバス占領地を結ぶ鉄道を封鎖している「有志」本部が、今度は3月5日から、ウクライナとロシアを結ぶ鉄道輸送を妨害し始めたということである。両国間の主たる鉄道路線が通るウクライナ・スムィ州のコノトプという街で、運行が遮断されているということらしい。しかし、その後、実際には貨物は問題なく通過できているような情報もあり、正確なところは未確認だ。ともあれ、本件とドンバス封鎖の問題につき、こちらのサイトに出ているロシアのアレクサンドル・グシチン氏のコメント要旨を以下のとおり紹介しておく。

 ウクライナがロシアとの通商を遮断しているのには、いくつかの側面がある。

 第1に、ウクライナ内政の要因である。自助党は、リヴィウでのごみスキャンダルと、クリヴィーリフでの選挙失敗で問題を抱えていたが、対ロシア通商封鎖で先頭に立ち、得点を稼いでいる。封鎖はオリガルヒのR.アフメトフ氏への打撃となるので、その背後にはオリガルヒのI.コロモイシキー氏がいるという説がある。本件はまたポロシェンコ大統領への痛手ともなる。ポロシェンコはミンスク和平は手詰まりだと語っており、封鎖にもかかわっているが、それによってウクライナの電力部門は苦境に陥っており、封鎖はウクライナ自体にボディーブローとなっているほか、グリブナ下落やその他の金融面での悪影響が生じかねない。こうして見ると、封鎖は大統領への圧迫であり、得点を稼ごうとする政治勢力の試みである。

 第2の要因として、ウクライナでは社会的な不満が非常に高まっており、その責任をロシアおよびドンバスになすりつけることによって国民の不満を逸らそうという思惑がある。

 第3の要因として、ドンバスを切り離して、ロシアに押し付けるための一環という面がある。一部の政治エリートはこの路線を志向し、ドンバス保全に努めようとはしていない。ウクライナの条件でドンバスを復帰させることは不可能だからであり、それゆえにドンバスとの経済関係を断ち切ろうとしている。ドンバスをモスクワに転嫁することは、沿ドニエストルでも生じていることであり、現実味がある。この見方によれば、ドンバスをより断固として取り込むよう、ロシア側に強いているということになる。

 ロシアとの通商封鎖に関しては、愛国的なPRという側面が強い。ドンバス封鎖が対ロシア通商封鎖とどのようにリンクしていくかというのが、注目点である。


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 趣味でよく読む(?)日本の財政破綻ものの一種だけど、これは経済書とかノンフィクションというのではなく、小説。幸田真音『大暴落 ガラ』(中央公論新社)である。その内容は、

 与党・明正党の総裁選で惜敗しながら、野党議員の投票により日本初の女性総理大臣となった三崎皓子。党の重鎮議員の反対で組閣もままならない。そんななか、危機管理官より、「秩父に大雨が降っており、このままでは荒川が決壊、都心が水に沈む可能性がある」との情報が入る。さらに追い打ちをかけるように、台風八号と九号が発生。皓子は日本では例がない「緊急事態宣言」を提案するが、経済の停滞を理由に閣内で反対の声が上がり――。

 あかね銀行のディーリングルームではその頃、「なんだこれは! 」絶叫が響いていた。一瞬でドル円相場が20円も飛び、159円をつけたのだ。「ガラだ! 大暴落だ! 」――。

 東京都心を直撃する大規模な自然災害、ゼロ金利政策を続ける日銀への信用不安。いつ現実のものとなってもおかしくない二つの危機に襲われた日本を、皓子はどのように救うのか?

 フィクションとはいえ、この手の作品を楽しめるかどうかは、ストーリーがいかにリアルかということにかかっているだろう。この作品では、複数の危機が同時並行的に発生するわけだが、本作品でそれぞれの危機がどれだけリアリティをもって描かれているかというと、

政治危機 > 自然災害危機 > 金融・財政危機

 であるように感じた。政治危機は、すでに日本で実際に起きていることと、大差ない。自然災害危機は、気象学的な設定にやや強引さがあるような印象もあるものの、一般論として言えば、いったん首都圏で大規模水害が起きたら、破局的な事態になりかねないというのは、その通りだろうと思った。問題は、金融・財政危機の描き方であり、これが著者の一番の得意分野だと思うのだが、正直言えばこの点に物足りなさを感じた。金融・財政危機は長期的・構造的な問題であり、本作ではそれをマーケットの動揺の問題として描くことに終始してしまっている。政治家のひらめきで相場危機を一山超えたら、それで終わりというわけではないはずなのに。

 まあ、小説が苦手な私が、400ページ以上ある本を一気に読んでしまったということは、面白かったことは間違いないが。

大暴落 ガラ
幸田 真音
中央公論新社
2017-03-08


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 ロシア『エクスペルト』誌2017年2月6-12日号(No.6)に、鉄鋼貿易をめぐるロシアとEUの対立に関する記事が掲載されている。これは、2015年5月14日から欧州委員会がロシア産および中国産の冷間圧延フラットロール製品に対する反ダンピング調査を開始し、2016年7月29日の欧州委員会決定により、同8月5日からロシア産品に18.7~36.1%の反ダンピング関税が課せられている問題である。ロシアはこれを不服として、2017年1月27日にWTOの紛争解決手続きの枠内でEUとの協議を求める照会を発出した。協議は紛争解決を目指す第1段階であり、そこにおいて解決策が見出されないと、ロシアは紛争審議のためのパネルの設置をWTOに求めることができる。

 記事によれば、ロシアの業界側はEU側のダンピング認定には根拠がないと指摘している。たとえば、ノヴォリペツク冶金コンビナートの幹部は、我が社はEU市場で公正な競争にしか関心がない、EUでは欧州企業が同様の製品を大量に生産している、ダンピングを非難されるのはまったく的外れだ、などとコメントしている。また、同社によれば、欧州委員会は生産コストを計算する際に、リペツクの実際のコストではなく、EUにおける同様のコストにもとづいており、その結果原料およびその他一般コストが人為的に引き上げられていて、こうした算定方式はWTOルールにもEUの法令にも違反しているということである。セヴェルスターリも、EUの調査はWTOルールに違反している、特にWTOルールによれば為替レートは売買日のそれを利用すべきなのに、EUは契約日のそれを用いている、その結果本来は1ユーロ=70~80ルーブルで換算されるべきであるところ、EUは40ルーブルというレートを用いている、とEU側を批判。また、実際にはセヴェルスターリが欧州委員会の調査に協力しているにもかかわらず、非協力を理由にコスト計算に不利な割り増しがなされたという。実際、EUがダンピング調査をする際に、外国メーカーの生産コストを、当該国の実際のコストではなく、EUの類似コストで算定しようするという点は、専門家の間ではよく知られた話である。そうした算定により、反ダンピング・マージンが、ひいては反ダンピング関税が拡大するわけである。ズベルバンクの専門家は、EUの冷間圧延フラットロール製品に対する差別的な措置によるロシアの被害額が、年間1,000万~2,000万ドルに上ると推計する。ただし、セヴェルスターリでは、販売先がEUから他の市場にシフトして稼働率が維持されているので、損害額を算出するのは困難だとしている。実際、後掲の図1に見るように、2016年にはロシアからの薄板の輸出が数量ベースで26%も伸びている。2016年には金額ベースで34億ドルの薄板が輸出され、うち8億ドルがEU向けだった。今回の反ダンピング関税の導入は、世界的な鉄鋼不況でEUの業界が苦しんでいることに原因があると思われ、現に図2に見るように、ロシアの粗鋼生産が過去10年ほど年間7,000万t前後で安定しているのに対し、EUはじり貧の状況にある。たった10年で、世界の鉄鋼生産に占めるEUの比率は、17%から10%に落ち込んだ。図3に見るように、EUは大口の鉄鋼輸入国に留まっており、ロシアからの冷間圧延フラットロール製品の輸入は規模的にそれほど大きくなくても、欧州メーカーの不満の種となっていることは理解できる。

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 ロシアはなぜゆえにベラルーシを重視するのか? かつて、その一つの要因として挙げられていたものに、飛び地である戦略的要衝=カリーニングラードへの輸送路確保というポイントがあった。ベラルーシとカリーニングラード州が直接地続きになっているわけではないのだが、ロシア本土とカリーニングラードとの鉄道輸送はベラルーシとリトアニアを通るので、カリーニングラードという飛び地を維持するためにも、輸送路としてのベラルーシを押さえておく必要があると、まあそんなような言説があった。ちょっと分かりにくいかもしれないけれど、上掲の図参照。

 しかし、そうした状況が変わりつつあるようである。こちらの記事によれば、ロシアは料金への不満ゆえにリトアニア~ベラルーシの鉄道輸送路を敬遠し、カリーニングラードとロシア本土を結ぶフェリー輸送(自動車だけでなく鉄道車両も運ぶ鉄道連絡船)を強化する方針のようだ。

 記事によると、カリーニングラード州バルチースク港と、本土のレニングラード州ウスチルガ港を結ぶ鉄道連絡船が、強化されることになる。新船の建造と運航のために、官民パートナーシップでプロジェクト会社が設立され、㈱ロシア鉄道が出資する。連絡線の価格競争力を維持するために、ロシア政府はカリーニングラード州とロシア本土を結ぶ鉄道輸送に適用している補助金を撤廃することを検討している。2月22日に当該の準備作業がD.コザク副首相から運輸省に命じられた。国は建設作業に51億ルーブルを支出する構え。当該の鉄道連絡船は2006年から存在し、現在2隻が運航しているが、近く退役予定。それに代わる3隻を新たに建造する方針が、2016年春に決まった。建造費用は総額110億ルーブル。


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 こちらのサイトこちらのニュースによれば、ウクライナはロシアの国営銀行系のウクライナ子会社5行に対する制裁を導入した。3月15日付の大統領令によるもので、ズベルバンク・ウクライナ、VTBウクライナ、BMバンク(VTB子会社)、プロムインヴェストバンク(対外経済銀行子会社)、VSバンク(ズベルバンク子会社)が対象。これらの銀行が関係者のために資本を国外に持ち出すことが禁止される。また、ウクライナ国営企業・組織がこれらの銀行に預金をすることも禁止される。ウクライナはEU、米国およびその他の諸外国にも制裁に参加するように呼びかけている。

 上掲写真は、ウクライナの過激派たちがロシア系銀行店舗を襲撃している様子。УВАГАとはロシア語のВНИМАНИЕの意味。


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 ベラルーシで反政府デモの動きが広がっているのだが、一体何について揉めているのか、一般の皆さんには分かりにくいと思う。実はベラルーシでは2015年に「穀潰し課税策」とでもいうべき制度が導入された。国民が失業をすれば、日本であれば失業手当を受けられたり、長期的な貧困に陥れば生活保護が受けられたりするところ、ベラルーシではそうした人は働かずに国民経済に貢献していない者だと位置付けられ、課税されることになったのだ。正直、なぜ今になって反対デモが起きているのか、個人的に分からないのだが、とにかくこの政策反対を掲げるデモがミンスク、モギリョフ、グロドノなどの大都市で発生し、逮捕者も多数出ているということのようである。

 こちらの記事によれば、多くのデモ参加者は特定の野党に属しているのではなく、あくまでもルカシェンコ政権がもたらした今日の経済難がデモ参加の理由だという。デモ隊のプラカードには、「国民にとっての主たる穀潰しは、官僚、政治家、警察だ」といったスローガンが見られる。一方でデモ隊には無政府主義者の一団も含まれており、警察が目を光らせている、という。


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 ロシア政府付属分析センターのこちらのレポートに目を通していて、初めて知ったのだが、ロシアは2013年に「ハイテク製品のリスト」と称するものを制定したということである。高度技術を外国に依存する傾向が強いロシアは、当然のことながら、輸出に占めるハイテク製品の比率は大きくなく、逆に輸入に占めるそれは大きいということになる。現に、上掲のレポートでは、上図に見るとおり、2015年1~9月の時点で、輸出に占めるハイテク製品比率が11.8%止まりであるのに、輸入では58.5%に上るとされている。なお、2013~2014年に比べて2015年の数字が若干改善しているのは、輸入代替の効果であるという。

 さて、問題は、大元のハイテク製品リストそのものにあるように思われる。くだんのリストは、2013年10月3日付のロシア連邦政府産業・商業省指令第1597によって承認されたもので、正式名称は「ロシア経済近代化の優先的な方向性を考慮したハイテク製品リスト」であり、こちらのサイトで閲覧が可能である。

 一般的にハイテク製品と言えば高度な機械類などをイメージするが、このロシア政府版のハイテク製品リストは機械類を全面的に対象としているだけでなく、それ以外のかなり雑多な製品も対象に加えられている。各種の化学品まではどうにか理解できるものの、衣類までがリスト入りしているのは、一体どうしたことだろうか? 靴下の類までハイテク製品に指定して、どうしようというのだろうか。まったく理解に苦しむ。


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