ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 こちらのニュースによると、9月18日にヨーロッパ・サッカー協会(UEFA)の執行委員会が開催され、その席でウクライナ・サッカー協会はロシアがクリミアのサッカー・クラブを一方的に自国の管轄下に編入し、ウクライナ領であるクリミアでロシア主催の試合を無許可で開催したかどで、ロシアに制裁を科すことを主張することになるという。A.コニコフ・ウクライナ協会会長がこのほど表明した。コニコフは、UEFAはロシア協会の会員資格を停止することになる可能性もある、としている。

 まあ、確かにヨーロッパのサッカー世論的にも、ウクライナに対する同情、ロシアに対する反発の方が大きいかもしれない。もう一つのポイントとして、ウクライナはH.スルキス氏をUEFAの副会長として送り込んでおり、UEFA上層部における影響力はロシアよりも上なのではないかと思われることだ。ただ、確認のためこちらのページを見て初めて知ったが、UEFAってプラティニ会長の下に5人の副会長がいて、その副会長全員の序列が決まっており、ウクライナのスルキスは第5副会長なのね。いずれにしても、ロシアのS.フルセンコ氏は執行委の平メンバーだから、影響力はウクライナの方が上だろう。ただ、さすがにロシアの会員資格を停止するというのは、現実的だろうか? となれば、必然的に、すでに始まったEURO2016予選からロシアを外すことになり、影響が大きいし、当然クラブにも適用されるだろうから、まさに今週開幕したUEFAチャンピオンズリーグからロシアの2クラブが抜け、莫大な利益が吹き飛ぶことになる。まあ、もう少し事態の成り行きを見守ることにしよう。


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20140917asha

 ロシア連邦チェリャビンスク州アシャ市(Аша)。チェリャビンスク州の領土には西に突出したような部分があるが、その先端部分にあるのがこのアシャの街である。その中核企業がアシャ冶金工場で、各種の鉄鋼製品を生産している。紋章は上掲のようなもので、詳しい説明は見付けられなかったが、赤い星が鉄鋼業の飛び散る火花を表しているのだと思われる。


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 こちらのニュースによれば、EUとウクライナは9月16日、予定どおり連合協定の批准を行った。協定は6月27日に両者間で結んだもので、この日はウクライナ時間の13時、ウクライナ議会とストラスブールの欧州議会を映像で結んで、同時に批准投票を行った。ウクライナの最高会議では、出席議員381人のうち、355人が賛成、26人が投票せず、反対はゼロだった。

 なお、私の理解によれば、協定が発効するためには、さらにEUの全構成国による個別の批准も必要なはずであり、こちらの方はまだ一部しか済んでいない。

 ところで、関連する話題として、こちらの記事によれば、EUの拡大政策担当のフュレ委員は、EU・ウクライナの連合協定に伴う自由貿易圏の実施が1年間先送りされたのは、ロシアによる脅迫のせいだったと発言したということである。欧州議会の会合の席で、本件につき質問を受けたフュレは、最初は「ウクライナ側の申し出によるもの」と答弁していた。「ウクライナの深刻な経済難ゆえに、彼らは技術標準導入のために、長い期間を置くことを希望した」という説明だった。しかし、その後の質疑りで、ロシアは、「協定批准の翌日には、ウクライナは経済的困難に直面するだろう。なぜならロシアは経済制限措置を適用するからだ」と公言したという。これは延期ではなく、ロシアの脅迫の結果である、とフュレは述べた。


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 このところ「日めくり紋章」でロシアの鉄鋼城下町のシリーズをお届けしているが、そのうちチェリャビンスク市やベロレツク市に所在する製鉄所は、大手グループ「メチェル」の傘下である。ところが、当ブログでも以前お伝えしたように、そのメチェルは経営難に陥っており、保有資産の身売り検討を余儀なくされているようである。

 最新のこちらの記事は、セヴェルスターリ、ノヴォリペツク冶金コンビナート、ロシア鉄道あたりが、その買い手として有力であると伝えている。セヴェルスターリやノヴォリペツクは、抱えている債務が少ないので、有力視されているということだ。つい先日メチェルのO.コルジョフ社長は、価格さえ折り合えば、保有するいかなるアセットも売却する用意があると明言していた。主力のチェリャビンスク冶金コンビナートも例外ではなく、全株式でも、その一部でも、売却が可能だとした。さらに、エリガ炭田に至る鉄道区画、エリガ炭田自体、ブラーツク合金鉄工場、在米の石炭会社Bluestoneも売却候補に挙がっている。メチェルでは、資産の売却により20億~30億ドルを捻出したい考えである。


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 ウクライナがEUとの連合協定の自由貿易圏にかかわる部分の実施を1年間延期したことに関しては既報のとおりだが、こちらのニュースによるとP.ポロシェンコ大統領は、協定のうちウクライナの構造改革にかかわる部分は批准後即座に実施することになり、これは実質的にウクライナの改革プログラムだ、と発言した。9月15日、議会各会派のリーダーらとの会合で語ったもの。なお、議会による批准的続きは、本日9月16日、ウクライナ時間13:00、西ヨーロッパ時間(?)11:00に、同時に行われる。

 一方、こちらのニュースによると、A.ヤツェニューク首相は9月15日現地のテレビに出演し、ウクライナはEUとの自由貿易圏の実施を1年先送りにするものの、それに関して正式な決定を採択するようなことはしないと述べた。ヤツェニュークは、D.メドヴェージェフ首相が、ウクライナ議会が協定実施延期に関する決定を下したと述べたが、それに関する明文の決定が下されることは一切ないと公式的に表明する、と述べた。


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20140916beloretsk

 ロシア連邦バシコルトスタン共和国ベロレツク市(Белорецк)。当地に所在するベロレツク冶金コンビナートは、18世紀以来の歴史を誇り、今日でも街は実質的に同コンビナートの企業城下町となっている。新生ロシアの時代となり、コンビナートは民営化され、大手企業グループ「メチェル」の傘下に入った。ただ、採算上の理由から、コンビナートでは2002年に高炉・平炉が廃棄されており、現在では鋼材圧延およびワイヤーロープの生産のみが行われている。1977年に制定された市の紋章は、緑色の地に、銀色の槌を持ったクロテンを描いたものとなっており、冶金産業、機械工業、クロテンの毛皮産業が市にとって平等の価値を有することを表している。


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 こちらの記事が、クリミアの乗用車市場の近況を伝えているので、以下要旨をまとめておく。

 クリミアのドライバーたちは、ウクライナのナンバープレートや運転免許を、ロシアのそれに変更している。しかし、新車の購入は困難だ。大手のメーカー、ディーラーはクリミアに出先を開設すると表明していたが、まだその公約を実現していない。クリミアの住民は、ロシア本土のクラスノダル地方に出向いて、新車を購入することを余儀なくされている。

 明らかになっているのは、AvtoVAZがクリミアにディーラーを開設しようとしていることであり、本年中のオープンを予定している。

 他方、従来AvtoVAZのLada車の販売に従事していたディーラーが、他のブランドの販売に切り替えることを検討する動きもあるが、それはせいぜい5軒ほどであり、また現時点では新たなブランドの店舗基準を満たさないので改装が必要である。

 AvtoVAZでは、クリミアの販売台数はおそらく大きなものではなく、月に500~1,000台程度になると見ている。

 AvotoVAZでは、2014年の初頭から、ウクライナおよびクリミアへの公式的な出荷を停止していた。今後は、ケルチ海峡経由、ノヴォロシースク港経由で出荷を行う予定である。

 ロシアに進出している大手メーカーは総じてクリミアに関する方針を表明していないが、現状ではクリミアへの供給をビジネスの観点から効率の悪いものと見ているようである。

 そうした中で、中国系のGeelyのロシア・ディストリビューターは、先駆的にクリミアでの販売に乗り出している。初夏に、シンフェロポリに1箇所、セヴァストポリに2箇所のディーラーを開設した。これまでもウクライナ法人のディーラーがあったので、それを登記変更するだけで済んだ。Geely社によると、現在ロシア市場は外国メーカーに席巻されており、彼らは経済制裁をめぐる情勢が明確にならない限り、クリミアに進出しようとはしない、ということである。

 クリミアの新車販売市場は2008年の経済危機前には年間2.5万台に達していたこともあり、将来的にはこの水準を回復する可能性もある。現在は市場は3分の1ほどに落ち込んでおり、その回復のためには政治の正常化だけでなく、インフラの発展も必要。現在のようにフェリーで運ぶのには限界があり、ケルチ海峡大橋の完成が待たれる。

 ただ、クリミアの市場は大きなものではなく、しかも現地住民の所得はロシア本土に比べはるかに低く、新車を買う余裕のない向きが多い。現在は、ロシア本土からの中古車の流入には障害がなくなっているので、中古車市場の方が発展する可能性が考えられる。


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20140915YESporo

 昨日のエントリーで、YESという国際フォーラムでA.ヤツェニューク・ウクライナ首相が述べた発言を紹介した。このYESという行事について事実関係を整理しておく。経緯を辿ると、かつてL.クチマ大統領の時代に、その娘婿である政商のV.ピンチューク氏が政治的にも強い影響力を有していた。しかし、クチマ氏の引退する2004年頃からピンチュークも政治に直接関与することは少なくなり、むしろ文化活動などに力を入れるようになる。そうした流れの中で、ピンチュークは欧州統合路線推進のキャンペーンに尽力するようになり、その一環として2004年に立ち上げたのが、YESという国際フォーラムだった。内外のVIPを集めた、かなり格式の高い催し物のようだ。YESというのはYalta European Strategyの頭文字と、英語の「イエス」をかけたものであり、2013年までは実際にクリミア半島のヤルタで開催されていたが(しかもヤルタ会談の舞台となったリヴァルディア宮殿でやっていたらしい)、クリミアがロシアに併合されてしまったので、本年はキエフで開催したということのようである。ポロシェンコ大統領も出席してスピーチを行っている。


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20140915novotroitsk

 ロシア連邦オレンブルグ州ノヴォトロイツク市(Новотроицк)。人口10万人弱であるが、この街もロシア鉄鋼業の拠点の一つである。1929年に当地で褐鉄鉱の鉱脈が発見され、ソ連政府はそれを利用した製鉄所の建設を決定、1955年に「オルスク・ハリロヴォ冶金コンビナート」が稼働した。この工場が1992年に「ウラリスカヤ・スターリ」と名前を変え、現在でも街の中核企業となっており、2万人近い従業員を抱えている。同社は2006年に大手企業グループ「メタロインヴェスト」の傘下に入った。2002年に制定された市の紋章は、エネルギーを象徴する赤地の上に、ウラル川を表す青い線と、金属産業のシンボルであるバケットを描いたものとなっている。


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20140914u2

 U2の新作アルバムが、期間限定で、iTunesで無料ダウンロードできるようになっているらしいという話を聞き、なおかつ渋谷陽一先生が本作を激賞しておられたので、自分も試してみた。古い人間なので、ダウロードしたのを、わざわざCDに焼いて、オーディオコンポで聴いたのだが、今までしていなかったiCloudの設定等々、技術的に戸惑う点が多かった。そもそも、iTunes向けにチューニングされた音だろうから、あまり意味のないやり方だろうな。


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 超図解! といっても、自分で図を作ったわけではなく、ロシア・ノーヴォスチ通信のこちらのサイトに、西側諸国による対ロシア経済制裁(9月12日の追加分までを反映)と、ロシアによる対抗措置が図にまとめられており、便利なので、それをご紹介しようということだ。下の図は、その一部を切り取っただけのもので、原典ではこれが大河ドラマのように延々と続くわけである。日本は、大したことはしていないのに、こうやって図にすると、案外目立つ(笑)。

20140914sanction

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 これまでウクライナの民主・民族主義勢力の代表格だった「バチキウシチナ(祖国)」から、8月26日にA.ヤツェニューク首相、O.トゥルチノフ最高会議議長らの幹部が大挙して脱退した。この動きには、P.ポロシェンコ大統領への敵対姿勢を緩めないYu.ティモシェンコ党首に三行半を突き付け、ポロシェンコ大統領との協力路線を明確にするというこれら幹部らの意図があったと思われる。離脱したヤツェニュークとトゥルチノフらは、「人民戦線党」を名乗ることになった。この党自体は、2014年3月31日に登記されていたものだったが、形式的にその組織と名称を借りて新党を立ち上げたということのようである。

 そして、こちらのニュースによると、人民戦線党は大統領派のポロシェンコ・ブロックとは別々に来たる議会選挙に出馬するということである。9月13日にキエフで開催されたYESという国際フォーラムにヤツェニューク首相が出席し、その場で表明した。ヤツェニュークは、自分はポロシェンコ・ブロックには満足できない、彼らと我々は別々の陣営にある、しかし変革のための改革という点では団結している、と発言した。

 こちらのサイトに見るように、すでにヤツェニューク・トゥルチノフ党(ここでは「ウクライナ愛国者党」となっているが)に対する国民の支持が、ティモシェンコのバチキウシチナに対するそれを上回っていることを示す世論調査結果もある。


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20140914nizhnytagil

 ロシア連邦スヴェルドロフスク州ニジニタギル市(Нижний Тагил)。鉄鋼業の企業城下町のシリーズで、本日はエヴラズ・グループに属すニジニタギル冶金コンビナートのあるニジニタギルを取り上げてみよう。ここは私自身も多少馴染みのあるところで、以前「煮えたぎるニジニタギル」なんてエッセイを書いたこともある。2006年に制定された市の紋章は、えんじ色の地に、「探鉱者の枝」および槌と、それを飾る蔓を金色で描いたデザインになっている。「探鉱者の枝」とうのは、Mの字を横に2つくっつけたような印であり、ウラル地方の紋章のデザインにしばしば登場する。


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 こちらのサイトで、アレクサンドル・ロジェルスという専門家が、ドンバスを確保できても、失っても、いずれにしてもウクライナ経済は苦境に立たされるという分析を披露している。欧米人っぽい名前だが、ウクライナのヴィンニツャ州生まれで、今はモスクワで評論活動をしている人物のようだ。主な論点を以下のとおり整理しておく。

 ドンバス(ドネツィク州、ルハンシク州)の喪失はウクライナ経済に悪影響を与えるが、現在行われている交渉の結果にかかわらず、もうすでにそれを失っている。というのも、今日の状況下で、ウクライナ政府がドンバスの再興を遂げるのは、現実的でないからである。

 2つの州には約650万人が住み(ウクライナの人口の15%)、面積も全国の8.9%を占める。紛争前まではウクライナの鉱工業生産の4分の1を生み出していた。2州の2013年の輸出は166億ドル、輸入は77億ドルで、89億ドルの黒字をもたらした。ウクライナ全体の2013年の輸出は682億ドル、輸入は806億ドルで、124億ドルの赤字だった。ドンバス抜きのウクライナは、人口が3,600万人に縮小し、貿易赤字も213億ドルに膨れ上がる計算になる。単純計算では、ドンバスを失うと、ウクライナのGDPが16%縮小し、残された州の債務負担が15%拡大する。

 ただ、これは単純な算数の計算であり、二次的な影響が多岐にわたることを考慮すれば、現実にはドンバス喪失の経済打撃ははるかに深刻となる。

 たとえば、ウクライナの石炭生産の4分の3はドンバスに集中しており、それが得られなくなると、現在すでに問題が生じている発電・暖房が危機的状況となる。過去2ヵ月間、キエフでは給湯が行われておらず、9月初頭からはピーク時の朝と晩の停電も始まった。

 I.コロモイシキーの保有するドニプロペトロウシク州の鉄鉱石鉱山は、無用の長物となり、閉鎖されることになるだろう。なぜなら、その鉄鉱石は基本的にノヴォロシアの製鉄所に供給されており、その多くは戦闘の結果、現在大がかりな改修を要するか、破壊された状態にあるからである。最近ウクライナ政府の幹部は、600の企業が破壊されたという数字を挙げた。その一方で、ノヴォロシアの消費市場はロシアやベラルーシの食品や軽工業品で満たされるようになり、これもウクライナの生産者に打撃になる。

 ウクライナ南東部の工業州を失えば、ウクライナ政府がIMFをはじめとする国際金融機関から融資を調達するのもはるかに困難になるだろう。というのも、IMFの融資にしても、分離主義地域に対する支配を回復することが明確な条件の一つとされているからである。

 ウクライナの鉱工業ポテンシャルの大部分は南東部に集中しており、ロシア・CIS市場を志向しているが、それが無用の長物と化しつつある。ウクライナがCISとの協力を停止し、欧州統合を志向するということは、実質的に鉱工業を放棄し、産業化以前の姿に戻ることを意味する。マイダンとは、本質的に農村の都市に対する、過去の近代に対する反乱である。過去数ヵ月、砲撃や爆撃によってドンバスの鉱工業を破壊してきたことは、その裏付けである。

 グラジエフやカタソノフといった高名な経済専門家たちの分析によれば、ウクライナ経済を救えるのはロシア主導の関税同盟との統合である。EUはウクライナにエネルギー資源も、販売市場も提供できず、そうしようという関心を抱いていない。つまり、キエフの指導者が米国の操り人形である限り、ウクライナにとって良いことな何もないのだ。(なんだ、結局そっち系の論者か。)


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 これは、少々意外な展開になった。こちらこちらのニュースによると、EUとウクライナの連合協定に伴う両者間の自由貿易圏(FTA)の適用は1年間延期されることになり、2016年1月1日から施行ということになった。このFTAがロシアに及ぼす打撃に関し協議する3者間の閣僚級会議が9月12日ブリュッセルで開催され、EU・ウクライナ側がロシアに譲歩した格好である。その際に、FTAの成立に先立って、EU側は本年4月から自発的にウクライナに対する関税を撤廃しているわけだが、EUはその一方的な優遇措置を2015年末まで延長し、ウクライナが引き続きその恩恵に被れるようにする。他方、ウクライナがEU向けに市場を開放するのが1年先にずれるので、ウクライナ企業がEU企業との競争に備える時間的余裕が生じるのとともに、その間はウクライナ市場に競争力の強いEU商品が溢れかえるということもなくなり、それがロシアに流入して同国に打撃を与えるということもなくなり、ウクライナは引き続きCIS自由貿易協定に参加できる、ということになる。

 なるほど、これならロシアがゴネ続けるのは難しいだろう。なかなか上手い方法を考えたものである。1年間時間的な余裕が生じ、その間に中長期的な枠組みをじっくりと話し合えばいいわけだし。

 こちらのサイトに、EU・ウクライナ・ロシア閣僚の共同声明が出ているが、ここにもロシアとウクライナは引き続きCIS自由貿易協定を適用すると明記されている。思いのほか、建設的な結果が得られたものだ。


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20140913novokuznetsk

 ロシア連邦ケメロヴォ州ノヴォクズネツク市(Новокузнецк)。鉄鋼業の企業城下町のシリーズだが、ロシアの中でもだいぶ東に飛んで、シベリアのケメロヴォ州にあるノヴォクズネツクである。ここには、エヴラズ・グループ傘下のノヴォクズネツク冶金コンビナートと西シベリア冶金コンビナートが所在している。昔この地方はトムスク県に属していたようで、紋章の上半分の緑地に白馬というのは、トムスクのシンボルである。下半分は鍛冶屋の小屋だそうで、(ノヴォ)クズネツクという地名自体が鍛冶屋を意味するロシア語単語Кузнец、クズネツから来ていることから、そのルーツを描いたものであろう。


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20140912uaauto

 久しぶりにウクライナの自動車販売の数字をチェックしたら、相当酷いことになっていた。まあ、無理もないか。2014年1~8月の新車の乗用車の販売台数は70,908台で、前年同期から50.9%も減少していた。8月などは前年同月比71.2%減である。


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 既報のとおり、ロシアはEU・ウクライナの連合協定が自国の経済に悪影響を及ぼすとして、その見直しをEU・ウクライナ側に迫ってきたわけだが、こちらのニュースによると、ロシアは方針を転換したという。これまでは協定の条文そのものを修正し、貿易品目のうち20%を自由貿易圏から除外するように要求していた。しかし、それを断念し、協定の履行方式を変更するようウクライナに提案する方向であるという。具体的には、関税・料金率(?)を問題視しているほか、ウクライナの生産者が欧州標準がロシアのGOSTかを選択できるようにすること、現行の衛生管理証明書を引き続き使用できるようにすること、などを求めていく。


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 こちらのニュースによると、先日合意されたEUの対ロシア追加制裁は、本日9月12日付のEU官報に掲載され、発効することになっている。しかし、この追加制裁に関し、欧州理事会のヘルマン・ファン・ロンパウ議長は9月11日声明を発表し、この追加制裁措置は9月末までに見直される可能性があるとの立場を示した。ウクライナの和平計画の履行状況を精査し、それが順守されていることが確認されれば、ロシアに対する制裁は全面的または部分的に変更・停止・撤廃される可能性があるという。ロンパウ議長は、ウクライナ危機の当初から、EUは制裁の「可逆性」を検討してきたと述べた。


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 EUとウクライナは本年6月27日に連合協定に調印し、両者によるその批准が必要とされている。私の知っている範囲内では、EU側ではルーマニアが国として先陣を切って批准をしたというニュースを読んだが、その他の国については未確認である。(PS 調べてみたら、2014.7.2ルーマニアに続いて、2014.7.8リトアニア、2014.7.14ラトビア、2014.8.29マルタが議会による批准済みだった。)

 それで、こちらのニュースによると、ウクライナのA.ヤツェニューク首相は、ウクライナ最高会議とEUの欧州議会が9月16日に連合協定を同時批准することになるはずだ、との立場を示した。9月11日、ウクライナ訪問中のM.シュルツ欧州議会議長との会談後、記者団に明らかにした。ヤツェニュークによれば、両議会間をビデオブリッジで結ぶことを現在準備中であるという。首相は、「我が国にとっては、ウクライナがロシアの侵略と戦う上で、欧州の議員たちが支援の立場を、断固として一枚岩で示してくれることが重要だ」と発言した。

 連合協定のロシア経済への影響について検討する閣僚級会合が本日9月12日に予定されており、ロシア側は協定そのものの修正を求める立場なわけであるが、16日にEUとウクライナの議会が同時批准ということになったら、ロシアの反発はさらに強まりそうだ。


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20140912cherepovets

 ロシア連邦ヴォログダ州チェレポヴェツ市(Череповец)。ロシア北西部のヴォログダ州に位置する街で、ほぼ完全にセヴェルスターリ社の製鉄所の企業城下町と理解していいだろう。さて、その紋章なのだが、意外にも当地もそのデザインに鉄鋼業は関係ない。クマは先住民を、椅子は権力を、十字は信教を、魚は漁業を、左下の石山は高地であることを、右下の太陽は生命を、ハンドルは運河(の水門のそれ?)を象徴しているということで、どこにも鉄を思わせるものは出てこない。


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 ロシアは、EUとウクライナの自由貿易圏の創出で、競争力の強いEU製品がウクライナを経由してロシアに流入してくることを懸念していおり(少なくとも、表向きは)、その問題を解決する交渉をウクライナ・EU側と重ねている。それに関連して、こちらのニュースによると、ロシア側は自国にとってとりわけデリケートな144の品目につき、EU・ウクライナ間の関税撤廃を数年間延期することをウクライナ側に提案する意向だという。9月10日、V.プーチン大統領が閣僚らと面談した席で、A.ウリュカエフ経済発展大臣がその意向を表明した。また、技術・衛生基準などに関し、ウクライナはEUスタンダードを導入する方針だが、ロシアはEUスタンダードをEU・ウクライナ貿易にのみ適用し、ロシア・ウクライナ貿易では現行の基準を保持し、両国税関間での情報伝達方法も従来どおりとすることを提案している。ウリュカエフ大臣によると、技術・衛生基準については当事者間で合意が得られているものの、関税撤廃の延期についてはEU・ウクライナ側が難色を示しており、EUは関税撤廃による損害額を評価して事後に補償を行うような方式を提案しているという。ウクライナおよびEUとの次回閣僚級会合は9月12日に予定されている。


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 ウクライナの元大統領府長官であるS.リョーヴォチキン氏が「新ウクライナ」という財団というかシンクタンクを立ち上げ、新たな国造りのコンセプトを策定している(ただし、政権との関係は不明)ということに関しては、以前こちらのエントリーでも取り上げた。だいぶマニアックな話になるが、私好みの話題として、こちらのニュースによると、同財団はそうした作業の一環として手始めに、今後ウクライナ経済を牽引していくべき5つの地域を選定し、その開発計画を練ろうとしているということである。具体的には、首都のキエフ市・州、農業州でウラン資源もあるキロヴォフラード州、地方自治の模範的存在であるヴィンニツャ州、クリミア喪失後に観光業の中心となるべきオデッサ州、運輸・造船を抱えるミコライウ州がその5つであるという。


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20140911magnitogorsk

 ロシア連邦チェリャビンスク州マグニトゴルスク市(Магнитогорск)。そもそも、ウラル鉄鋼業の躍進は、18世紀半ばにこの地のマグニトナヤ山で鉄鉱石資源が発見されたことに始まる。ソ連時代になって、当地の鉄鉱石と、クズネツクの石炭とを結び付ける「ウラル・クズネツク・プロジェクト」が推進され、これがソ連の重工業化を支えたのだった。1925年5月にこの地で製鉄所の設計作業が始まり、1926年11月にはウラル州国民経済会議幹部会が製鉄所の建設地としてマグニトナヤ鉱山に隣接した地に白羽の矢を立てた。1929年1月にソ連政府が製鉄所の建設開始を正式に決定、同年6月にはマグニトゴルスク市が誕生、1932年1月に最初の高炉が稼働した。かくしてマグニトゴルスク冶金コンビナートが産声を上げ、この街は世界でも最大級の鉄鋼業の企業城下町へと転じていくのである。今日でもマグニトゴルスクは、ほぼ完全に鉄鋼業に特化した街であり、マグニトゴルスク冶金コンビナートを中核とした典型的な企業城下町となっている。しばしば、「ロシアの冶金工業の首都」と呼ばれるのも、うなずける。2003年に制定された市の紋章は、銀色の盾に大きな黒い三角形を描いたシンプルなものであり、この三角形は山を表すとも鉱石を表すとも言われている。


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 こちらのニュースによると、ウクライナには6箇所の製油所があり、合計で年間5,100万tの処理能力があるが、現状では稼働率は25%程度にすぎない。アゼルバイジャン訪問中のYu.プロダン・ウクライナ・エネルギー相が記者会見で語ったもの。その上でプロダン大臣は、アゼルバイジャンからの原油輸入、同国との共同プロジェクトの実施に意欲を示した。


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 ウクライナでは、最高会議が8月14日にガスパイプライン網の管理体制を改革する法案を可決した。9月8日にP.ポロシェンコ大統領がこれに署名し、法案が成立した。そして、こちらのニュースによると、法律は9月9日の官報に掲載され、本日9月10日に発効するということである。法律によれば、ガスパイプライン網と貯蔵施設は国営に留まるが、今後は特別に設置された会社にその経営を委ねることが可能になる。その管理会社では、ウクライナ政府が支配株を保持し、残りの株を欧米の企業が購入することができる。政府は欧米のパートナーとパイプライン網と貯蔵施設管理のための2つの会社を設立する意向。管理の移管はもっぱら、ウクライナがEUおよび南東欧諸国と締結した「エネルギー共同体」創設条約で負った義務に沿った形で行われる。


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 単なる記事のコピーですが、こちらのサイトに、「エネルギー列島2014年版」という連載記事が出ていて、その第22号が我が静岡県だったので、メモらせていただく。

 太平洋沿岸地域の日射量が豊富な静岡県では太陽光発電が拡大するのと並行して、広い平野を流れる農業用水路を利用した小水力発電の取り組みが活発になってきた。用水路に設けた「落差工」の水流を生かした発電方法で、農作物の栽培に影響を与えずに電力を作り出す。


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20140910lipetsk

 ロシア連邦リペツク州リペツク市(Липецк)。ロシア中央部リペツク州の州都であるリペツク市には、有名なノヴォリペツク冶金コンビナートが所在している。ただ、近年では市の郊外に経済特区が誕生し、日本の横浜ゴムのタイヤ工場をはじめ、様々な工場が立地し、産業は多角化しつつある。昨日のチェリャビンスクと同様に、リペツクも紋章は鉄鋼業とは関係ない。リペツクとは「リンデンの街」という意味であり、紋章はそのリンデンの木(ロシア語でлипа、リパと言う)をデザインしたものになっている(今回、初めて知ったが)。


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 北大の岩下明裕教授が、朝日新聞のサイトで、北方領土問題について語っておられる。こちらをご参照のこと。


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 こちらのニュースなどが伝えるところによると、ロシア連邦政府で地域政策を担っているお役所である地域発展省が、廃止される方向となった。9月8日にD.メドヴェージェフ首相がV.プーチン大統領と面談してその方針を打診し、大統領もこれを了承した形である。メドヴェージェフによれば、最近ロシア政府では、極東発展省、クリミア省、北カフカス発展省という特定地域の振興を目指した省庁が誕生しており、こうした個別地域アプローチが一定の成果を生んでいる。他方で建設問題を担当する省も出来た。その結果、地域発展省の担当していた分野のかなりの部分を、一連の新設省がカバーするようになった。そこで、地域発展省を廃止し、その残った機能を他の省庁に割り振ることにつき、大統領の承認を求めたい。一部は経済発展省に、一部は建設・住宅公営事業省に、一部は文化省に行くことになろう。これによって政府の組織を最適化でき、余剰人員の削減も可能かもしれない。メドヴェージェフ首相は以上のように説明した。

 さらに、こちらのニュースによると、プーチン大統領は9月8日、地域発展省を廃止する大統領令に署名したということである。


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