ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪 服部倫卓ブログ

ロシア・ウクライナ・ベラルーシを中心とした旧ソ連諸国の経済・政治情報をお届け

 あまりフォローできていないが、こちらのニュースによると、モルドバ議会選挙の結果は、99%開票の段階で、主な党の得票率と獲得議席数は以下のようになっているということである。投票率は55.6%だった。

  1. 社会主義者党:20.77%:25議席
  2. 自由民主党:19.97%:23議席
  3. 共産主義者党:17.72%:21議席
  4. 民主党:15.91%:19議席
  5. 自由党:9.53%:13議席 以上が議席獲得
  6. 共産主義者・改革者党:4.98%
  7. モルドバの選択-関税同盟:3.17% など

 それで、こちらの記事で、ロシアの有識者が、モルドバ議会で成立しうる3つの連立のシナリオというのを語っている。第1に、「ステイルメイト連立」というもので、これは社会主義者と共産主義者の連立。少数派の連立になるが、3分の2の賛成を必要とするような重要決定を阻止することはできる。ただ、これが成立する可能性は高くない。第2に、「欧州連立」のシナリオがあり、自由民主党、民主党、自由党が連立を組むというもので、これは現実的なシナリオの一つ。ただし、この場合、自由党のM.ギンプ党首の反ロシア的な言動に手を焼くことになり、同党がNATO加盟の主張を強めたりすると、ロシアとの関係が決定的に悪化する。第3に、「広範連立」というシナリオがある。これは、共産主義者党、自由民主党、民主党が連立を組むというもの。左右の両極端な党派を排除でき、ロシアも欧州も満足させられ、最も可能性が高いシナリオ。


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1814

 ロシア連邦モルドヴィア共和国ルザエフカ市(Рузаевка)。人口5万弱で、一応これがモルドヴィア共和国第2の都市なのだが、首都サランスクから25kmのところにあるので、サランスクの衛星都市のような感じでもある。2018年のサッカー・ワールドカップで、なぜ選ばれたのか分からない、謎の開催地が、サランスクである。私も現地を訪問した際に、何人かの人に質問をぶつけたが、得心の行くような説明は得られなかった。ただ、一つの説明としてあったのは、サランスクから程近いルザエフカが鉄道交通の要衝になっており、交通の便が評価されたのではないか、との意見だった。実際、私もちょっとだけ立ち寄ったが、ルザエフカは小都市には似つかわしくないほど、鉄道駅だけは立派だった。当然、紋章も上掲のように鉄道を中心としたデザインとなっている(ただ、この紋章が現在正式に制定されているものなのか、確認はとれなかったので、悪しからず)。


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20141202taimeiken

 洋食の名店として有名な日本橋のたいめいけん。勤務先の近所なので、行こうと思えばいつでも行けるのだが、そう思うとかえって足が遠のいたりするものである。ここに来るのがいつ以来なのか、まったく覚えていないが、少なくとも10年振りか、もっとご無沙汰していたような気がする。あまり話題にならないが、私はここのチキンカツが好きである。しかし、ちょっとドミグラスソースの味が落ちたような。。。


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 以前、「ロシア主導の関税同盟がトルコとFTA?」という記事をお届けした。それに関連し、こちらのニュースによると、今般V.プーチン・ロシア大統領がトルコを訪問し、首脳会談でロシアとトルコのFTA(自由貿易圏)の可能性に関し前向きなやり取りが合ったようである。首脳会談後の記者会見でプーチンは、トルコとのFTA創設は簡単な課題ではないが、実行は可能だ、と述べた。プーチンいわく、現在両国の貿易は年間330億ドルだが、これを将来的には1,000億ドルの水準にしたい、そのためには農産物取引を含め協力を活発化する必要がある、ロシアは自国の市場を開放する用意があり、それには官僚制の障害が多いが、克服は可能だ、ということである。

 プーチンはこのような立場を示したわけだが、管見によれば、ここには2つの問題がある。第1に、ロシアは通商政策をカザフ・ベラルーシとのユーラシア経済連合に委ねるはずであり、ロシアが一国で第三国とFTAを結成していいはずはなく、プーチンの今回の言動は形式論から言えば越権行為である。第2に、これは前回もブログで述べたとおり、ロシアは、ウクライナとEUのFTAが成立したら、安い商品がウクライナ経由でロシアに大量流入し、大打撃を被るとしてクレームを付けまくっているわけであり、にもかかわらずEUとFTA関係にあるトルコとのFTAに前向きというのは完全に矛盾した話である。


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20141202south

 こちらのニュースによると、ロシアのV.プーチン大統領はサウスストリーム・プロジェクトに関して、かなり激しい発言をしたようである。周知のとおり、サウスストリームはロシア領から黒海海底を通ってブルガリアに至り、バルカン~南欧に天然ガスを輸送するパイプラインの建設プロジェクトである。しかし、EUがかねてから警戒的な姿勢を見せていた上に、ウクライナ危機をめぐる東西の対立が加わって、要となるブルガリアが慎重姿勢に転じていた。

 記事によると、訪問先のトルコ・アンカラで12月1日にプーチン大統領は記者会見を開き、サウスストリームに関し概要以下のように発言した。現在に至るまで、我が国がブルガリアから(同国領海の建設)許可を得ていないことを考えると、この状況下では我が国は本件プロジェクトの実施を継続できない。現在は黒海でのパイプライン・システムの建設に着手しなければいけない段階だが、ブルガリアからその許可が下りない限り、作業を開始できない。ブルガリアは、もしも主権国家であるならば、本件によって失う利益の補償を、EUに求めたらいいのではないか。なぜなら天然ガスのトランジットによりブルガリアは年間4億ユーロ以上の直接的な歳入を得られるはずだからだ。ロシアの側は建設に万事準備が整っている。サウスストリームに関するEUの立場は非建設的なものであり、今後ロシアのエネルギー資源は他の市場や、LNGプロジェクトにシフトしていくことになるだろう。また、ロシアとしては、トルコの需要増にかんがみ、同国への供給を拡大するため、新たなパイプラインおよび国境ハブを建設する用意がある。必要に応じ、トルコ領においてそれをギリシャまで伸ばし、南欧市場に供給することも可能だろう。ロシアとトルコの関係は戦略的なレベルに達しており、ロシアはブルーストリームを通じたトルコへのガス供給を30億立米拡大することになる。ロシアはトルコ向けの供給価格を2015年初頭から6%引き下げることを決めており、同国が戦略パートナーであることにかんがみ、一層の値下げも検討する。プーチンは以上のように語った。


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20141202dvd

 以前エッセイで書いたように、私はロシア圏に出かけた際に、現地のDVDを買って帰ってくるというのが、趣味の一つである。しかし、先日の11月のロシア出張では、あまり良いアイテムに巡り合わなかった。そうしたなか、書店の売り場を物色していたところ、上に見るようなものが目に留まった。1950年代からわりと最近までの年号が打たれたDVDのシリーズである。画像では分かりにくいと思うが、ペラペラの薄さであり、絵葉書にDVDが入っているという体である。向こうの人達は、何かというと絵葉書を贈り合う習慣があるから、この商品は相手の誕生年のDVDをプレゼントして、「貴方の生まれた●●年はこんな年でしたよ」というのをドキュメンタリー映像で教えてあげるような、そんな商品なわけである。360ルーブルだから、千円前後か。ただ、こういうのって、他の人のプレゼントと被ってしまうことが多そうな気がする。

 そんなわけで、試しに1枚買って観てみた。ちょっと、作りが地味で、外国人には退屈なものに思われた。面白かったら、他の年も揃えて、ソ連戦後史を勉強する教材にしようかと思ったけど、ちょっと微妙。


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Saransk

 ロシア連邦モルドヴィア共和国サランスク市(Саранск)。最初は帝政ロシアが南東国境の守りを固めるために、1641年に砦として築かれた。今日のような大都市になったのは、ソ連時代の第二次大戦中に前線方面から当地に工場が疎開し、工業化が進んでからだった。社会主義時代から電気機器・照明・ケーブルなどの生産が盛んで、最近ではテクノパークを開設して経済の高度化を目指している。人口は80万人ほどだが、この街も2018年ワールドカップの開催都市の一つとなっている。

 サランスクの紋章は上掲のようなもので、1781年の古い紋章を元に、2005年に制定された。銀地の盾に、キツネが描かれ、それに向かって3本の矢が放たれているという図柄。狩猟が盛んであったことにちなむらしい。先端恐怖症気味の当方などは、あまり気持ちの良い感じがしないデザインだ。


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 ウクライナのシンクタンク「ラズムコフ・センター」が定期的に出しているらしい『National Security & Defence』という刊行物の2013年No.4-5が、ウクライナの対EU関係の特集号だったので、それを眺めてみた。ラズムコフ・センターは、ウクライナ切っての世論調査実施機関なので、この号に掲載されている2013年4月の世論調査でウクライナ国民に対EU関係および対ユーラシア関税同盟関係の意識を問うている部分が、とりわけ興味深い。

 かつて、ポーランド・チェコ・ハンガリーといった中東欧諸国がEU加入を目指した際に、「欧州への回帰」ということが、よく言われたと記憶する。これは、中東欧諸国は伝統的にヨーロッパ文化圏に属していたのだが、戦後一時的にソビエトの支配に組み込まれ、共産圏が崩壊したことによって、元々属していた欧州へと自然の流れとして戻っていく、という捉え方であろう。しかし、上掲のラズムコフ・センターの意識調査結果を見ると、ウクライナ国民にとってはEUへの接近は「回帰」ではないことが浮き彫りとなる。

 たとえば、「何がEUに参加する主たる利点だと思いますか?」と3つまでの複数回答で問うたところ、答えは以下のようになった。

高いレベルの社会的保護:46.9%
法の支配:31.5%
発達した民主主義:27.1%
金融的な資金を得やすいこと:22.2%
医療水準:18.6%
科学技術の発展:16.7%
汚職水準の低さ:13.7%
教育へのアクセス:8.9%
治安:7.3%
文化水準の高さ:7.3%
社会的活動:4.6%
共通の歴史・文化、似通ったメンタリティ:3.5%
その他:0.8%
利点は見出せない:18.0%
回答困難:5.9%

 もしもウクライナ国民にとってEUへの参入が自らが元々属していた場所への「回帰」であるならば、「共通の歴史・文化、似通ったメンタリティ」という回答が多くなるはずである。しかし、実際にはその回答が最低であった。ちなみに、逆にロシアを中心としたユーラシア関税同盟の利点を同じ形式で尋ねたところ、以下のような結果になった。

共通の歴史・文化、似通ったメンタリティ:53.4%
天然資源やエネルギーが得られること:47.1%
安定した経済状況:15.4%
安い労働力:10.6%
科学技術の発展:8.1%
教育へのアクセス:5.9%
高いレベルの社会的保護:5.8%
医療水準:4.0%
社会的活動:3.9%
発達した民主主義:3.4%
文化水準の高さ:2.0%
その他:1.3%
利点は見出せない:20.8%
回答困難:8.3%

 ご覧のとおり、ロシア/ユーラシア圏に関しては真逆で、「共通の歴史・文化、似通ったメンタリティ」が最多の回答となっている。つまり、ウクライナ国民のEU志向というのは、これまでは自分たちがロシアを中心としたユーラシア圏に属してきたことを承知の上で、自国の現状を打破すべく、これまでのユーラシアという居場所をかなぐり捨て、異質ではあるがより政治・経済・社会水準が高いEUに舵を切ることによって、自己変革を図っていきたいと、そんな意味合いを帯びているわけである。その意味で、中東欧諸国がEUを目指したのとは、似ているようでやや異なる面がある。

 別の設問で、「ウクライナの人々と、精神的により近親なのは、どちらだと思いますか?」と尋ねても、ユーラシア関税同盟諸国の人々:64.3%、EU諸国の人々:8.2%、どちらも同じくらい:18.6%、回答困難:9.0%、という結果になっている。やはり、圧倒的に精神的に身近なのは、ユーラシアの方だ。

 「貴方はウクライナとEUの連合協定の中味を知っていますか?」という設問では、いいえ:54.7%、はい:30.0%、回答困難:15.3%、という結果だった。これはまあこんなところだろう。

 少々驚いたが、「貴方はEU諸国、ユーラシア関税同盟諸国に個人的行ったことがありますか?」という設問で、EUに行ったことがあるという回答者はわずか21.1%で、ないという向きが77.9%に及んでいる(1.1%は回答困難)。ただ、ロシアをはじめとする関税同盟諸国に行ったことがあるという者も48.1%止まりで、ないという回答者の方が50.9%でやや多い(1.0%が回答困難)。そんなもんかなあ?


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Mordovia

 ロシア連邦モルドヴィア共和国(Республика Мордовия)。11月にロシア沿ヴォルガ地方のこの共和国に出かけて現地調査をしてきたので、せっかくだから本日から同共和国の一連の紋章を取り上げることにする。しかし、ざっと下調べしてみたところ、モルドヴィア共和国は紋章不毛の地と言おうか、あまりネタが豊富でないことが分かった。そもそも、小さな共和国なので、本格的な集落自体が少ないし、紋章を制定していないところもあったりして、あまり膨らみそうにない。

 ともあれ、上に掲げたものがモルドヴィア共和国の紋章だ。まあ、この全体像は例によって大紋章であり、中央に描かれた盾の部分が紋章本体(小紋章)ということになる。その小紋章は赤・白・青の共和国旗の色で彩られており、真ん中に首都サランスク市の紋章(明日紹介予定)が描かれるという、シンプルなもの。大紋章の装飾部分に目を転じると、上部に描かれた星のようなマークが目立っている。これは太陽、善良などを象徴するとともに、形が4つに分かれていて、これは共和国の主要民族であるモクシャ人、エルジャ人、ロシア人、タタール人が平穏・安定を希求していることを表しているという(ウゴル・フィン語族のモクシャ人とエルジャ人を総称してモルドヴィア人と呼んでいるわけである)。


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20141130vr

 個人的に色んなイベントや雑事が続いて、ニュースのフォローが全然追い付いていない。前のエントリーで、今般発足したウクライナ最高会議でCIS脱退決議案が上程されたということをお伝えしたが、順番から言えば新議会の発足をまず取り上げるべきであろう。

 10月26日の選挙の結果を受け、上に見るような会派の勢力図が成立した。まあ、ほとんど選挙の際の党がそのまま会派になっているわけだが、事前に予想されていたとおり、無所属だった候補者が当選後に与党に加わるという動きがあった。すなわち、大統領与党のポロシェンコ・ブロックは、選挙の獲得議席は132だったが、会派は145で発足した。なお、クリミアや、ドンバスの多くの選挙区では議員を選出できなかったので、27の欠員が発生しているわけだが、発表されている各会派(無会派も含む)の人数を合計しても418にしかならず、これだと欠員が32ということになり、事実関係がよく分からない。

 だいたい選挙の時の政党がそのまま会派になっているわけだが、「人民の意志」というのは、I.エレメエフ、S.イヴァヒウの富豪コンビを中心とした小選挙区議員の集まりである。V.リトヴィン元最高会議議長もこの会派に名を連ねている。一方、「経済発展」は、ウクライナ南東部および中部の小選挙区議員が結成したものであり、かつて地域党に所属していた各地の名士的な人々の集まりと位置付けられる。

 11月21日に、上記の会派のうち、ポロシェンコ・ブロック、人民戦線、自助党、バチキウシチナ、急進党が連立協定に調印した。この議会多数派連立が、450の定員のうち、301議席を占めている。

 新たな最高会議議長には、11月27日に、ポロシェンコ・ブロックのV.フロイスマンが選出された。フロイスマンは1978年ヴィンニツャ生まれ。若くして民間企業で働いたあと、ヴィンニツャ市議に選出され、その後は市長に選出された。ユーロマイダン革命後、2014年2月27日にフロイスマンはA.ヤツェニューク首相により副首相に抜擢され、地域発展・建設・住宅公営事業相を兼務した。2014年7月24日にヤツェニューク首相が辞意を表明した際には、フロイスマンが首相代行を務めたが、7月31日に最高会議がヤツェニュークの首相辞任を否決したため、首相代行在任は1週間程度に終わった。10月の選挙ではポロシェンコ・ブロックの全国比例名簿の4位で戦い選出された。ヴィンニツャはポロシェンコが経営するロシェン製菓の工場があるところなので、以前からポロシェンコとフロイスマンは関係が深かったのだろう。


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 今般、ウクライナで第8回の最高会議が発足したが、こちらのニュースによると、ウクライナのCIS諸機関における加盟を停止する決議案が議会に上程されたということである。ユーロマイダン革命後、暫定政権がCISからの脱退を表明する一幕があったが、私の理解によれば、正式にその手続きが開始されたという事実はないはずである。今回の最高会議決議案は、立法府の一部から改めてCIS脱退を促そうとした動きであると位置付けられる。

 記事によると、決議案(法案?)を提出したのは、バチキウシチナ(祖国)のYu.ティモシェンコ会派長およびB.タラシューク元外相ら。これに先立っては、11月14日に内閣が対ロシア・CIS・ユーラシア経済共同体協力問題全権代表というポストを廃止するという動きもあった。また、P.ポロシェンコ大統領が、A.ドロニ駐CIS大統領代表を召還するという動きもあった。

 こちらのニュースによると、ロシア上院議長で、CIS議会間総会の議長も務めるV.マトヴィエンコは11月28日、ウクライナがCISから脱退すれば、まず何よりも同国の経済が打撃を受ける、むろんCISは自発的な組織なので脱退は自由だが、ウクライナは密接な紐帯でCIS諸国と結ばれており、その法的・社会的影響を考慮すべきだ、などと指摘した。


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OKC_seal

 米国オクラホマ州の州都、オクラホマシティ市(Oklahoma City)。グレン・キャンベルの名曲By The Time I Get To Phoenixのフェニックスを取り上げたついでに、この曲の中で主人公が辿る旅路を紋章で追ってみようという悪趣味な企画だが、最終回を迎えた。男は、最後にオクラホマに流れ着く。オクラホマシティの市章は上掲のようなもので、これはわりとヨーロッパのスタンダードな紋章に近い。左下に原子力のマークらしきものが見えるのは、何か関連施設があるのだろうか?

 なお、歌の歌詞は、

By the time I make Oklahoma she'll be sleepin'
She'll turn softly and call my name out loud
And she'll cry just to think I'd really leave her
Tho' time and time I try to tell her so
She just didn't know I would really go.

 と、締め括られるのである。


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20141129magadan04

 ホームページ更新しました。マンスリーエッセイ「コルィマ番外地」です。よかったらご笑覧ください。色々バタバタしていて、危うくマンスリーエッセイを書くのを忘れるところだった。


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20141129joukamachi2

 ロシアの『コメルサント』紙は時々、産業別の特集付録みたいのを載せているようで、先日の11月11日の号に金属産業の特集が出た。そのうち、こちらの記事が、ロシアの金属産業(鉄鋼業および非鉄金属産業)の企業城下町の問題を論じている。この中で、金属産業の城下町の一覧が掲載されているので、それを当方なりにアレンジして、上のように日本語の表を作成してみた。また、記事の冒頭部分だけ、以下のとおり抄訳しておく。

 エカテリンブルグ、ノヴォシビルスク、リペツク、チェリャビンスクといった州都レベルを別とすれば、冶金産業都市はほぼすべて企業城下町であると理解していい。ロシアに存在する313の企業城下町のうち、75が問題を抱えていると認定されている。

 これに対応するため、ロシア連邦政府は2015~2017年の期間でモノゴーラド発展基金を創設し、250億ルーブルを計上した。基金はすでにスヴェルドロフスク州クラスノトゥリインスク市に11億ルーブルを拠出した。同市では2014年にルサール社がボゴスラフ・アルミ工場を閉鎖したところである。基金の目的は、企業城下町におけるインフラの開発、投資プロジェクトの始動のための資金を拠出することである。

 危機リストに含まれるのは、次の5の条件のうちの2つ以上を満たすところである。①都市中核企業が閉鎖されたか、破産手続き中である場合。②企業の職員削減が10%を上回っている場合。③市況が悪化している場合。④失業率がロシア平均の2倍以上に上っている場合。⑤社会調査によって住民の意識が不況時のそれであることが示されている場合。

 ウラル鉱山冶金会社は、ヴェルフニャヤプィシマ、レヴダ、セロフの市行政府と共同で、総合開発プログラムを策定した。ヴェルフニャヤプィシマではすでに、250億ルーブル規模の2013~2015年のプログラムが実行されている。ほとんどすべての大企業グループが、このような独自の「社会発展基金」を有している。マグニトゴルスク市の「冶金」基金などの例では、20年以上の長期プログラムとなっている。総合的な基金となるとレアケースだが、各企業グループは何らかの形の基金を設けており、教育や児童福祉政策などの内容が多い。セロフ、チェレポヴェツ、ヴィクサ、マグニトゴルスクなどのように、市行政府が都市中核企業と一体化していくようなケースが増えている。両者は相互に深く依存している。

 記事はまだ続くが、このへんで。


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Albuquerque

 米国ニューメキシコ州アルバカーキ市(Albuquerque)。昨日は、グレン・キャンベルのご当地ソング三部作で一番有名なBy The Time I Get To Phoenixのフェニックスをお届けしたのだが、実はこの曲自体が主人公が旅をしていく物語なので、その行き先も取り上げてしまおうという次第。まあ、市章は上掲のように面白みのないものだが。

 アリゾナ州フェニックスを後にした男は、ニューメキシコ州アルバカーキ市にたどり着く。その部分の歌詞は、

By the time I make Albuquerque she'll be working
She'll prob'ly stop at lunch and give me a call
But she'll just hear that phone keep on ringin'
Off the wall that's all

 …とある。続きはまた明日。


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20141128mmz

 何年か前に、モスクワで開催された金属産業見本市を視察したことがあるのだが、その時の写真を整理していたら、上掲のようなものが目に留まった。「モルドバ冶金工場」のブースである。「モルドバに製鉄所?」と一瞬驚いたが、記憶を辿ると、ああそんな企業もありましたねと、思い出した。拙著『ウクライナ・ベラルーシ・モルドバ経済図説』でも取り上げていたし。「モルドバ冶金工場」と称してはいても、この企業はモルドバからの分離独立を唱えている沿ドニエストル共和国に所在している(ルィブニツァ市)。経済図説で解説したとおり、沿ドニエストルにはこれ以外にも、総合悪徳会社の「シェリフ」、モルドバ地区発電所といった大企業があるわけだが、どうやらメーカーとしてはモルドバ冶金工場が最大のようである。

 むろんモルドバ冶金工場の公式HPもあるが、こちらの記事の方がどんな会社なのか分かりやすいかもしれない。同社は基本的に、ロシアの大富豪として知られるA.ウスマノフ氏のメタロインヴェスト社の傘下にあり、またウクライナのR.アフメトフ氏も部分的に出資をしている(いた?)ということである。工場は1985年に稼動を開始し、年間68.4万tの粗鋼、50万tの完成鋼材生産が可能。

 私は、ドンバスが非承認国家になったら、アフメトフの鉄鋼業は破綻すると論じていたが、モルドバ冶金工場の例を見ると、もしかしたら生き残りの術というものがあるのかもしれない。



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 以前、『地球の歩き方』だったか、日本で出ているロシアの旅行ガイドを見ていたら、こんな話が出ていた。ロシア南部の地方都市であるロストフ市への行き方に関し、モスクワから鉄道で行こうとすると、一部の区画でウクライナ領を経由することになり、別途ウクライナのビザが必要になるので、あまり得策でないと、確かそんなことが書かれていた。興味をもって地図で確認してみたところ、確かにモスクワからロストフへの鉄道はウクライナ領を経由していた、というのを覚えている。今ではウクライナは日本国民にはビザを免除しているとはいえ、いずれにしてもウクライナ領にちょっと入るだけなのに、そこで一々出入国手続きをされたら、面倒だろう。

 で、新しいニュースを眺めていたら、関連する動きが伝えられていた。こちらの記事によると、ロシア政府は同国南部の対ウクライナ国境付近の鉄道路線において、このように部分的にウクライナ領を通過する区画が存在する問題を解消するため、迂回路を建設する意向ということである。M.ソコロフ運輸相が11月27日、記者団に明らかにした。そのような問題箇所は、ヴォロネジ州とロストフ州の4箇所に存在する。ソコロフ大臣によれば、本件決定はすでにロシア連邦の2015~2017年の連邦予算案にも計上されており、短期間で執行されることになるという。


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Phoenix

 米国アリゾナ州の州都、フェニックス市(Phoenix)。グレン・キャンベルのご当地ソング三部作(ジム・ウェッブ作)で一番有名な曲と言えば、言うまでもなくBy The Time I Get To Phoenixであろう(「恋はフェニックス」という滅茶苦茶な邦題が付いているが)。そのフェニックスの市章は、上掲のとおりフェニックス=不死鳥をデザインした順当なものである。

 なお、歌の歌詞は、

By the time I get to Phoenix she'll be rising
She'll find the note I left hangin' on her door
She'll laugh when she reads the part that says I'm leavin'
'Cause I've left that girl so many times before

 …と続くのだが、続きはまた明日。


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20141125mordovtsement

 先日、ロシア沿ヴォルガ管区のモルドヴィア共和国に出向いて現地調査を実施してきたわけだが、今回私が入手した資料によれば、同共和国で最大の売上高を誇る代表企業はモルドヴセメント社である。実際、同共和国やその周辺地域に車を走らせていると、上の写真のような同社のミキサー車を何度か目撃し、存在感の高さがうかがえた。ちょうど私のロシア滞在時、『コメルサント』紙の2014年11月18日号に、モルドヴセメント社のオーナシップに関する記事が出ていたので、要点をまとめておく。ウェブ版はこちらで閲覧可能。

 モルドヴセメントは、ロシアの独立系セメント会社としては大手の一つだが、現在、売りに出されている。ノヴォロスセメント社のL.クヴェトノイが、その取得に意欲を示している。売却価格は10億ドルを超える可能性があり、これはクヴェトノイが一連のセメント資産を旧オーナーのYe.バトゥーリナ(インテコ社)から買収した値段よりも、3倍も高い。ただ、モルドヴセメントに関しては、F.ガリチェフのユーロセメント・グループも関心を示している。

 連邦独占禁止局はこのほど、チェヴレ・インヴェストメンツがモルドヴセメントの株式100%を買収することを承認した。チェヴレはノヴォロスセメントを保有している会社で、その最終的な利益享受者はクヴェトノイとされる。

 ノヴォロスセメントには、プロレタリー、オクチャーブリ、ペルヴォマイスキーという3つの工場がある。同社の2013年の売上高は114億ルーブル、純利は4.3億ルーブルだった。クヴェトノイのガズメタルプロエクトは、2011年にバトゥーリナのインテコからヴェルフネバカンスキーセメント工場を買収しているが、その金額は3億ドルだった。このほかクヴェトノイはヴヌコヴォ空港の取締役にも名を連ねており、同氏の資産額は19億ドルと評価される。

 モルドヴセメントの身売り話が浮上したのは、同社の経営ミスから、負債が膨らみ、独力ではその解決が困難になったからだという。同社の2013年の売上高は190億ルーブルだが、純利は21.5億ルーブルの赤字だった。2013年末の時点で短期債務が226億ルーブルを超えていた。

 それでも、モルドヴセメントはロシアで3位のシェアを誇り、7.2%の市場シェアを占めている。2014年1~9月の数字を整理すると、1位はユーロセメントの29.3%、2位はノヴォロスセメントの8.2%、3位がモルドヴセメントの7.2%、4位がシブセメントの6.4%、5位がDyckerhoffの6.3%だった。ヨーロッパ・ロシア部の需要を満たす上でモルドヴセメントの役割は大きく、こうしたことから、負債にもかかわらず、モルドヴセメントは価値のある資産と見られている。

 モルドヴセメントは1948年創業、1996年に株式会社化された。同社の傘下には、鉱山管理局、スタロアレクセフスキー工場、アレクセエフスキー工場、センギレエフスキー工場、一連の補助的会社がある。現時点の個人の大株主は、S.シウショフ13.21%、R.トゥトゥルキナ13.0%、A.メルクシキン10.0%、S.メルクシキン8.3%、N.シキトヴァ6.0%となっている。残りの49.1%はヴィタライン社に属し、その利益享受者は前出のシウショフ等である。


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galvestoncity

 米国テキサス州ガルヴェストン市(Galveston)。ついでだから、昨日の続きで、グレン・キャンベルのご当地ソング三部作で行ってみようかと。三部作の一角は、下の動画にも掲げた「ガルヴェストン」という曲である。これもどんなところか知らなかったが、調べてみると、テキサス州のメキシコ湾岸海岸線上にある島内都市で、人口6万人ほどだという。海抜が低いので、たびたびハリケーンの被害に遭っているそうだ。いずれにせよ、島の街ゆえ、船のデザインの紋章になっているのだろう。


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 2018年FIFAワールドカップ・ロシア大会の開催都市には、バルト海に面したロシア領の飛び地、カリーニングラードも含まれている。ところが、スタジアム建設予定地になっている島の地盤か何かの問題で、先日V.ムトコ・スポーツ相が、カリーニングラードを開催都市から外すことを示唆する発言をしたということである。

 しかし、こちらのニュースによれば、ロシア当局は開催都市を減らす意向はないようだ。11月25日にクレムリンでW杯組織委員会の理事会会合が開かれ、V.プーチン大統領はFIFAに対してロシア政府が示した保証をすべて履行するよう(つまり、すでに決まっている開催都市での準備作業を遺漏なく実行するよう)、関係当局に指示した。その中で、特にカリーニングラードのスタジアムに関しては、12月17日までに建設地を明確にするように求めた。


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20141125akhmetov

 ロシア『RBC』誌の2014年10月号に、ウクライナ切っての富豪R.アフメトフと彼の財閥「システム・キャピタル・マネジメント(SCM)」が、ドンバス紛争によってどのような状況に陥り、今後どうなっていくのかということを論じた記事が出ている。こちらでウェブ版を閲覧もできる。上のような図が出ていたので「おお!」と注目したのだが、分析自体はわりと凡庸というか、それほど新味がないような…。ともあれ、記事の要旨を以下のとおり抄訳しておく。

 7月にドニプロペトロウシク州のI.コロモイシキー知事は、分離主義の支持者の資産を没収することを提唱した。副知事のB.フィラトフは、R.アフメトフらが数十の工場、電力会社、ウクルテレコムを公開入札なしで、タダ同然に取得したと批判した。他方、自称「ドネツィク人民共和国」の幹部も最近になって、基礎産業部門は人民共和国の所有に帰属すべきだとの立場を示している。

 8月の戦闘の被害を受け、アフメトフの資産のうち4工場が稼働を停止した。生産連関が崩れ、鉄鋼・石炭の生産が低下している。数カ月にわたりアフメトフはキエフ、分離主義のどちらにも付かず、バランスをとろうとしてきた。しかし、ドンバスが戦乱に巻き込まれると、その盟主と言われたアフメトフも、距離を置くことは至難になった。

 2013年1月現在、Bloombergのランキングによれば、アフメトフの資産総額は223億ドルとされ、ウクライナで1位、世界でも26位で、ロシアのどの富豪よりも上だった。ところが、2014年9月には127億ドルまで落ち、ロシアの6人の富豪に抜かれてしまった。

 アフメトフの財閥SCMは、鉄鋼のメトインヴェスト、石炭・電力のDTEK、第一ウクライナ国際銀行、等々から成る。2010年にV.ヤヌコーヴィチ政権が誕生すると、アフメトフの帝国は拡大した。2012年の時点で、DTEKはウクライナの石炭採掘の46.1%、発電の28.5%、売電の37.8%を占めた。2012年にはSCMの売上高は235億ドルで、うちメトインヴェストが53.4%、DTEKが39.7%を占めた。SCMは国営のナフトガスに次ぐウクライナ第2の納税者であり、2012年の時点で290億フリウニャを納入し、税収の4.7%を占めた。SCMの従業員総数は50万人を超える。

 2012年の時点で、メトインヴェストの売上128億ドルのうち(注:若干計算が合わないが)、24%が欧州市場だった。これは同社にとって国内市場よりも5%大きく、CIS市場の2倍だった。アフメトフはかねてからSCMの多国籍化を推進しており、自社製品のEU市場へのアクセスを容易にするEUとの連合協定を支持した。ユーロマイダン、クリミア編入の過程で、アフメトフはウクライナの一体性を支持する立場を示していた。

 しかし、アフメトフは自分の持ち札もキープしようとした。4月上旬に東ウクライナで中央政府に反旗を翻す勢力が行政府庁舎などを占拠した際に、中央政府側が実力行使を試みようとした。その際、アフメトフの声に酷似した声の持ち主が、反乱派と路上で会話している様子がインターネットに流れ、「もしも強制排除が行われるなら、私は貴方方とともにある」と発言した様子が伝えられた。その際には、反乱派への説得が成功し、内務省本部に出向いて交渉の席に着くことになった。その数日後には、アフメトフは「ドンバスに一目置かせる」ために、抗議運動を支持すると発言し、自らは、ドンバスに出向いてきたA.アヴァコフ内相、A.ヤツェニューク首相との交渉に参加した。ただ、交渉は実を結ばず、4月15日にはO.トゥルチノフ大統領代行が、ウクライナ南東部のテロ撲滅作戦は実力行使の段階に至ったと言明した。

 ドンバス紛争は当初、アフメトフのビジネスにあまり影響を及ぼさなかった。2014年1~6月のメトインヴェストの生産は前年同期に比べて、粗鋼で8%、鉄鉱石精鉱で3%、原料炭は21%減ったが、同社では季節的要因によるものと説明していた。

 政治面では、アフメトフは、キエフ、ドンバスの板挟みに会い、苦境に立たされた。アフメトフは、駆け引きをしようとしていたのだと見られる。SCMの広報によれば、アフメトフ自身はドネツィクに留まっているという。ある専門家の指摘によれば、もしもアフメトフがこの地を離れてしまうと、国全体の力のバランスが崩れてしまい、アフメトフも二度と戻ってこれなくなるかもしれない、ということである。

 この春にアフメトフは、ドンバスはウクライナに留まるべきだが、より多くの権力を与えられるべきだと、自らの立場を明確にした。5月14日のビデオでアフメトフは憲法改正と分権化を呼びかけた。権力をキエフに集中しておいて地域を発展させるのは無理があるというのである。ただし、人民共和国の創設や、ロシアへの編入には反対の立場である。仮にそんなことになったら、彼の製品は制裁で誰も買ってくれなくなるわけだから、これも当然である。

 そうこうするうちに、紛争がアフメトフのビジネスに直接の打撃を及ぼすようになった。5月19日付のビデオでアフメトフは、人民共和国側が鉄道を占拠してそれを止めたが、鉄道はドンバスの心臓であり、鉄道なしではドンバスの産業は死んでしまうと指摘した。

 5月25日に人民共和国側が占領したドネツィクで、空港をめぐる攻防戦が始まり、初めてウクライナ軍が空爆に訴え、被害者が出た。6月後半になると、アフメトフは中央政府を批判する立場に転じ、事あるごとに「交渉」を唱えるようになった。分離主義勢力がドネツィクに兵力を集結すると、7月6日のテレビインタビューでアフメトフは、「ドンバスを爆撃してはならない」ということを再三繰り返した。同日にはメトインヴェスト傘下のハルツィシク鋼管工場に武装主義勢力が来襲し、車両10台を奪って逃げた。数日後には「赤いパルチザン」炭鉱、クラスノドンヴヒーリャなどが被弾し、死傷者が出た。送電線の破損、炭鉱の休止が相次いだ。7月22日にはアウデエフカ・コークス化学工場が被弾。8月にはエネキエヴェ冶金工場、「サモソノウスカ西」炭鉱、「コムソモレツィ・ドンバサ」炭鉱が被害を受け、エナキエヴェ・コークス化学工場、ハルツィシク鋼管工場、マキイウカ冶金工場が操業を停止した。8月半ばまでには、鉄道の破損と戦闘の激化により、高炉へのコークスの供給が大幅に縮小した。専門家は、9月にはその影響が明瞭になるだろうとしている。

 しかし、アフメトフにとっての最大の脅威は、コロモイシキー・ドニプロペトロウシク州知事と、ドネツィク人民共和国が、それぞれの側からアフメトフの資産を国有化しようとしていることにあるという指摘もある。アフメトフが行政資源を失った今、コロモイシキーの攻撃をかわすのは困難かもしれない。しかし、権力闘争のバランス上、いまやP.ポロシェンコ大統領にとってアフメトフは同盟者だという見方もある。

 人民共和国幹部によると、アフメトフの代表者が人民共和国側に接触し、自分の資産には爆撃を加えないように依頼した。同時に、アフメトフは資金の提供を申し出たが、人民共和国側が断った、という。アフメトフの広報は、これは「作り話」であり、以前アフメトフ本人が明言したように、アフメトフは人民共和国に資金を提供したことはないし、これからもないと主張した。

 アフメトフはこれまで、ウクライナのどんな政権とも話をつけてきた。そのビジネス帝国の規模ゆえに、ウクライナで特有の地位を築き、ある意味でどんな政権よりも盤石で安定していた。しかし、さすがのアフメトフも、戦争は未体験の事態であり、金と武器のどちらが勝つのか、予断を許さない。


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Wichita

 米国カンザス州ウィチタ市(Wichita)。話せば長いことながら、グレン・キャンベルというアメリカのカントリー歌手が放ったご当地ソング三部作(いずれもジミー・ウェッブ作)の中に、「ウィチタ・ラインマン」という曲がある。で、ご当地ソングだけに、地名らしいというのは察していたのだが、どこのどんな街なのか、長い間知らなかった。先日、「小型飛行機が空港ビルに衝突、4人死亡 米カンザス州」というニュースが伝えられ、その現場がまさにウィチタということであり、「ほうカンザス州の街でしたか」と、ようやく認識するに至った。だいたい、ラジオで聴いただけだったので、「ウィチタ・ラインマン」というタイトルの、どの部分が地名かも、良く分からなかったのである。ありがたいことに、この曲に関する日本語の解説が、こちらのブログにあった。ラインマンというのが、鉄道の保線作業員という意味なんて、初めて知った。実際、ウィキペディアによれば、ウィチタというのは、道路・鉄道の交通の要衝として栄えてきたところというし、くだんの曲はそのあたりの情感を描いたものだったのだろう。ウィチタって、人口が34万人もいて、カンザス州最大の都市らしいけど、恥ずかしながらまったく知らなかったなあ。


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 『コメルサント・ヴラースチ』誌の2014年11月3日号に、現在ロシア極東で整備が進められている新型特区の概要と、在来型特区との違いなどを論じた記事が形成されている。こちらでウェブ版を閲覧可能。要旨を以下のとおりまとめておく。

 V.プーチン大統領はロシア極東の開発を21世紀の国家的な優先課題だとしていて、極東各地に「優先的発展区域(TOP)」のネットワークを築こうとしている(訳注:以下では単に「新特区」とする)。それに向けた法案が、11月19日に議会の第一読会に諮られる予定である。

 限定された区域において、税制優遇、関税免除、完成されたインフラといった条件を与え、投資家にとっての楽園を築き、それによって極東の地域総生産を2025年までに2011年比で倍増させるという青写真である。極東連邦管区は、面積はロシアで最大だが、人口は最少。N.ズバレヴィチ社会政策独立研究所部長の指摘によれば、連邦から極東への交付金は北カフカス全体へのそれを上回り、最大の受益地域はサハ共和国である。その際に、ロシア極東に隣接する形で、世界の成長リーダーである国々がひしめいている。極東発展省次官のO.スクフィンスキーは、こうした中でロシア極東に注目してもらうためには、税制・関税上の優遇以外にすべがないと説明する。

 極東発展省では、新特区の整備により6,000億ルーブル以上の直接投資を呼び込み、3.7万人以上の高度な職を創出することを目論んでいる。ただ、副首相で極東管区代表のYu.トルトネフの見方はもっと慎重で、投資を900億ルーブル、雇用創出を6.5千と見ている。一方、前出のズバレヴィチは、ロシアの当局は大プロジェクトに偏重する傾向があり、そもそも投資家に対しどこでどのような事業に取り組むべきかを指示するようなことは誤ったアプローチであって、もし仮に新特区が1、2箇所でもできれば、それは望外の成果であろうと、だいぶ厳しい見通しを示している。

 実際、ロシア当局はこれまでも優遇的な条件でロシアに投資を呼び込もうとしてきたが、成功は収めていない。極東新特区は、本質的に、2005年以降30ほど設置されてきた経済特区と、変わるところはない。既存の特区のうち利益を生んだのは2箇所だけで(タタルスタン・エラブガとリペツク)、誘致できた民間投資は、投入された公的資金にさえ及ばない。ちなみに、極東新特区に選定された14箇所のうちのいくつかは、以前に経済特区だった経緯がある。ヴァニノ港は港湾特区として、ルースキー島は観光特区として、機能しなかった。

 極東新特区の管理パートナーであるアーンスト&ヤングのA.イヴチェフは、次のように説明する。新特区は、確かに既存の特区と本質的に同じである。ただし、新特区は単に税制優遇だけではなく、インフラプロジェクトによって支えられる社会・経済発展のコンセプト全体である。今日の条件では、アジア太平洋地域で成功している既存のプロジェクトと競争しなければならないからだ。その他の既存特区との違いは、最大限に輸出を志向すること、地域の輸送ハブを形成することである。というのも、ロシア国内市場が数千kmも離れているのに対し、潜在的な外国市場はすぐ隣にあるからだ、と。

 極東新特区で提供される税制優遇は、在来型の特区のそれを上回る。保険料率が初めて7.6%に設定される。最初の5年間はすべての入居企業に対し土地税および資産税がゼロとなり、利潤税率は5%以下に設定され、付加価値税の還付は迅速に実施される。地下資源採掘税も優遇される。保税地域が適用され、企業活動に対する検査は最小限となる。行政のワンストップサービスもある。

 前出のスクフィンスキー次官によれば、従来の特区が上手く行かなかった原因は、管理システムが複雑すぎたことである。多くの問題は解決に数年間を要し、どんなことを決めるにもモスクワに行って合意を得る必要があった。極東発展省の課題は、現代的な、顧客重視の管理チームを作ることであり、知事の主導で工場を誘致したカルーガ州のモデルを志向している。

 極東発展省のA.ガルシカ大臣は、非常に詳細な現地調査を踏まえて14の最も有望な敷地を選定したとしており、これらの敷地を投資家にとって整った形で提供するためには、10年間で888億ルーブルの投資が必要である、としている。現在のところ連邦予算に計上されているのは420億ルーブルであり、うち2015年:70億、2016年:150億、2017年:200億、となっている。これとは別に、極東開発基金の資金150億ルーブルも、当該目的に向けられる。極東開発基金は2011年に対外経済銀行の傘下に開設されたが、その後一件の融資もしていない。極東発展省では、財政資金を1ルーブル投資するのに対し、19ルーブルの民間投資を呼び込めるはずと見込んでいる。

 極東新特区で物議を醸している点の一つは、ソチで行われたのと同様の土地の強制収容である。ロシアの在来型の特区が原野に建設されたのとは、大きな違いである。ただ、こうした事例は世界的にも例があり、たとえば東インドのポレパッリ特区の建設では5,000人の住人が移住をしている。ミャンマーとタイが共同で開発しているダヴェイ特区も然りだ。極東新特区では、移住の必要性は最小限となるとされている。

 上述のような皮算用は語られているものの、具体的にどこに特区を設け、何を専門に手掛けていくかということに関しては、最終決定はなされていない。14のリストは暫定的なものであり、近くそれらの評価方法を決め、その上で政府は14の中から第一陣として開発する5箇所を選定するという。現在のところ、数の上では、候補5箇所を擁する沿海地方がリードしている。それに次ぐのがハバロフスク地方の3箇所、さらにサハ共和国とアムール州の2箇所ずつである。カムチャッカ地方とユダヤ自治州は1箇所ずつ。それに対し、チュクチ自治管区、サハリン州、マガダン州はゼロであり、極東に隣接するバイカル圏からもゼロとなっている。

 政府がどのような評価基準を設けるかは定かでないが、もし仮に入居希望企業数が重視されれば、公的資金が、一部の全国的な企業の支援に向けられる可能性もある。沿海地方が推している「石油化学」という新特区候補地は、ロスネフチの東方石油化学コンプレクスに隣接している。コムソモリスクナアムーレ市に新特区「コムソモリスク」を設ける案には、国家コーポレーション「合同航空機製造」とその傘下のスホイ社が関心を寄せている。ロスナノは、ヤクーツクでの複合材の開発・生産プロジェクトに関与している。「バザリト新技術」のプロジェクトは、新特区の前から検討されていた。沿海地方のザルビノ港において同名の新特区を創設することは、Z.マゴメドフのスマ・グループの利益になる。


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 こちらのサイトで、O.ゴルブノフという専門家が、P.ポロシェンコ・ウクライナ大統領のドンバス政策について論じているので、要旨をまとめておく。

 P.ポロシェンコ大統領はドネツィクおよびルハンシクの両「人民共和国」がコントロールする一連の地区を社会・経済的に封鎖する大統領令に署名した。これに先立ち、同様の決定を11月4日に安保・国防評議会が下していた。

 今回の決定には、政治的意図と、経済的意図とがある。

 まず、政治的な意図。ポロシェンコは、議会の多数派連立交渉を進める中で、有権者と、政界に対し、両人民共和国の選挙や、実質的に両地域がウクライナから離れて国家建設が始まったということを単に無視すればいいわけではないということを、誇示しようとした。軍事的手段で紛争を解決する可能性はほぼ尽きており、新たなプランが必要とされている。その筆頭が、資金的な手段である。キエフは現在に至るまで、公式的には、両人民共和国向けの社会保障、賃金、年金の支払いを停止していなかった。だが、実際には、地元住民によると、7月頃には停止していたという。地方公務員も、夏以降キエフからは賃金を受け取っていない。その結果、彼らの多くはウクライナの他地域やロシアに移住した。したがって、今回のポロシェンコの措置は、実質的というよりも、姿勢上のものである。それらは、ウクライナ国民に対し、分離主義者に金を出すつもりはなく、非承認国家の経済的基盤を殺ぐために全力を尽くす意向だということを誇示するためのものである。

 経済的な意図は、ロシアからの天然ガス供給問題、ドンバス喪失に伴う税収の低下を受け、ウクライナが緊縮経済体制に移行するという点にある。ポロシェンコは先日、企業に天然ガスを供給する上で、12月1日から前金制に移行する方法を策定するよう、関係省庁に指示を出した。かくして、両人民共和国の領域にある未納企業・公営企業に対し、ガスを供給しないという意向なわけである。

 むろん、緊縮政策は、政権に対する支持率の低下に繋がる。ただ、政権としてはその代わり、両人民共和国をめぐる緊張した状態を保つことができる。それにより、外敵に備え、国家性を擁護するために、国民を動員する理由が維持される。両人民共和国側は、幹部の発言から判断する限り、そうした措置への気構えができているようである。しかも、ウクライナ本国との関係が希薄化するほど、ロシアとの関係強化の可能性が高まり、ロシアは両人民共和国を持ちこたえさせるためにより多くの資金投入を余儀なくされる。これは今回の決定がウクライナにとって帯びている良い側面であり、キエフは自らの責任を軽減し、ロシアに押し付けることができるのである。ロシアとしては、それでなくても欧米の制裁で苦しいところだが、もしもドンバスが崩壊してしまったら一連の介入工作が水泡に帰してしまうので、やむをえない。これが、ウクライナ危機のモスクワにとってのコストである。


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taraclia

 モルドバ共和国タラクリア市(Taraclia)。本ブログで過日、この街にあるタラクリア経済特区について触れたので、紋章もチェックしておくことにする。しかし、非常にマイナーなところなので、紋章の画像も上掲のようなごく粗いものしか見付からなかった。タラクリアは、モルドバ南部の、ガガウス自治区に隣接したところに位置している。この地は歴史的に、ブルガリア系の移民によって開拓されてきた土地であり、近接するウクライナのオデッサ州ボルフラード(ポロシェンコの出身地)ともその点で共通する。紋章の説明も何も見当たらないが、描かれているのは街の誕生のルーツに関係ある鐘らしい(どうも現存はしていないようだが)。


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 今般カザフスタンのN.ナザルバエフ大統領が、「新経済政策」の発動を宣言したということである。本件に関し、ロシア『アガニョーク』誌の2014年11月17日号が、大統領のブレーンと思われるS.アキンベコフ氏(世界経済政治研究所所長)のインタビューを掲載しているので、発言要旨をまとめておく。

 今日、世界経済は困難な局面を迎えており、こうした時代にはどんな国でも行動の指針が必要。石油価格が落ち込んでおり、これはカザフやロシアのような産油国にとっては歳入の削減を意味するから、重大なチャレンジ。そうした中で、カザフの新経済政策は、過去に蓄積された備蓄によって、歳出を増やすもの。現在、備蓄は1,000億ドルに達している。その意味で我々は一般的なトレンドに反する路線をとる。主たる哲学は、インフラ物件をはじめとする投資を増やすことによって、我が国の未来の発展のための刺激を与えるというもの。これはルーズベルト米大統領が1930年代にとったニューディール政策に近く、まったく同じというわけではないが、共通点が多い。両者とも、国家歳出を拡大して経済を刺激付けようとするものだからだ。

 新経済政策の重点項目は、インフラ整備、とりわけ運輸・ロジスティクス。カザフは東西、南北を結ぶ大規模な輸送ハブになる。多くの自動車道路、鉄道プロジェクトがすでに実施中か、策定中である。カザフ政府はロシア、中国、イラン等のカスピ沿岸、太平洋沿岸の陸上基地および港湾にターミナルを建設・賃貸する計画を策定中で、実現すれば20万以上の新たな雇用が生まれ、カザフ産品を東西向けに輸出する可能性も高まる。諸外国がカザフの運輸システムを利用するニーズが高まるよう、税制を含め有利な条件を整備する。それとは別に、カザフ国内に運輸ネットワークを巡らし、全地域をアスタナと結ぶことも計画中。カザフは居住地間の距離が離れており、これが物価にも影響を与える。幹線網の建設と、各地方におけるロジスティクスセンターの誕生により、カザフの中小企業の発展も促され、中小企業がGDPに占めるシェアが2025年までに50%に高まる。

 パートナーのNo.1は、言うまでもなくロシアである。2015年には中国西部~西欧の自動車幹線道路(のカザフ部分)が開通し、ロシアのオレンブルグ州にまで達する。ロシア側で本プロジェクトがどのように扱われるのかは分からないが、我々はなるべく早い実現を期待し、今後はユーラシア経済連合の枠内で合意を形成するかもしれない。

 運輸以外の分野では、電力のプロジェクトも多い。過去5年カザフで実施されてきた工業化プログラムの効果は大きかったが、カザフでは依然として南部で電力が、中部・東部で天然ガスが不足している。他方、住宅・公営事業、水道・熱供給の近代化も予定されている。さらに、幼稚園、学校などの社会インフラも発展させる。これらは多額の資金を要するが、大統領が述べたように、社会的義務はすべて履行する。

 原資となるのは、国民基金であり、そもそもこれは必要な時の財源として蓄えられてきた。現時点で760億ドルがある(注:上記の1,000億ドルとの関連性は?)。2015~2017年に毎年、基金からインフラプロジェクトに追加で最大30億ドルが拠出される。むろん、必要に応じて、増額されることもある。

 新経済路線に立ちはだかるリスクとしては、インフレが最大の懸念である。2014年のインフレ見通しは6%で、これはロシアよりは低いが、関税同盟パートナーであるロシアのルーブルの変動の影響は小さくない。関税同盟が機能し始めてから、ロシアがカザフに及ぼす影響は必然的に大きくなった。2013年にはロシアの対カザフ輸出は180億ドルで、カザフの対ロシア輸出60億ドルの3倍に上った。2014年にはロシアからの輸入は減ったが、これは2月のテンゲ切り下げの影響であり、翻ってテンゲ切り下げは2013年末~2014年初頭のルーブル下落を受けたものだった。輸入品の価格は重大問題なので、追随して切り下げざるをえなかった。こうした次第で、我々はロシアの為替市場・政策の動向を注視している。

 ユーラシア経済連合は、加盟国間の貿易を拡大し、共同で運輸インフラを発展させる上で有益。その際に、カザフにとって、(ユーラシア経済連合以外の)外国の資本市場が閉ざされているわけではなく、必要に応じてそれにアクセスできる。


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20141124Chernihiv

 悪趣味きわまりない「ベラルーシが失った都市シリーズ」の最終回。ウクライナ・チェルニヒウ州の州都、チェルニヒウ市(Чернігів)である。ロシア語ではチェルニゴフ(Чернигов)。この街も、個人的に現地調査で行ったことがある。要するに、今回の「ベラルーシが失った都市シリーズ」は、私がかつて『不思議の国ベラルーシ』を書くために、ベラルーシ周辺の諸都市を訪れて、「ベラルーシって何だろう」と思いを巡らせたその旅を、紋章で再現しているわけだ。

 結局ベラルーシは、エスニック的にはベラルーシになったかもしれない土地の多くを自国領とすることができず、ミニマルな領域だけで成立した。ただ、もしも本シリーズで取り上げた街を軒並み支配下に収めるようなことになったら、ウクライナ型の地域のパッチワークのような国になり、それはそれで大変だっただろう。


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 正直言うと、人が言うほど粉ものは好きではないが、せっかく広島来たんで、とりあえず。


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20141123sennen

 数日前のエントリーで述べたように、今回のロシア現地調査でモルドヴィア共和国のサランスクを訪問し、資源を持たざる地域のはずなのに、なぜか金回りが良さそうで、諸施設が不自然に立派だったという話をした。その後、その種明かしというか、背景事情について伝えた記事を見付けたので、やや古いが要旨をまとめておく。要するに、サランスクでは2012年にロシアとの一体性千年祭というのが祝われ、それに向けてかなり気前の良い投資が行われたということだ。確かに、今回私がサランスクの街中を歩いた時にも、そのような大きな看板が目に付いた(上の写真)。

 2012年に予定されているモルドヴィア民族とロシアの一体性千周年に向けて、287億ルーブルの資金が投入されることになった。うち、連邦予算からの資金が187億ルーブル、共和国予算からの資金が62億ルーブル、予算外の資金が38億ルーブルである。連邦政府のV.バサルギン地域発展相(当時)によれば、そのうち278億ルーブルは大規模な建設投資に充てられ、残りの9億ルーブルは60程度に上る文化行事に利用される。

 地域の記念行事に向けて巨額の投資が行われるのは恒例になっており、特に2005年のカザン千年祭に向けては1,400億ルーブルが投資され、うち650億ルーブルが連邦予算からの支出だった。むろんモスクワとサンクトペテルブルグは別格だが、それを除いた地方への投資としては、このカザン向けを上回るケースはもう出ないのではないか。したがって、今回モルドヴィアが連邦予算から187億ルーブルの拠出を取り付けたのは、上々の成果である。たとえば、2011年だけで、4つのスポーツ施設建設のために、17億ルーブルが連邦と共和国から共同支出される。2011年9月にサランスクで、11種目のスポーツの世界協会会長を招くフォーラムを開催することも発表された(カザン、モスクワに次いで3番目の栄誉)。サランスクは2018年サッカー・ワールドカップの会場の一つに選ばれたが、それはつまり4万人規模のスタジアムがこれから建設されることを意味する。ちなみに、モルドヴィアではスポーツは盛んであるものの、強いのはサッカー以外の種目である。

 モルドヴィアではソ連崩壊後に人口が流出し、1994年の95.8万人が、2010年には83.4万人になった。しかも、残っている市民にしても、多くの者は二重生活をしており、2~3ヵ月だけ地元に住んで、残りの時期はモスクワで守衛や運転手をして稼いでいるという。千年祭が、こうした状況を本格的に改善することはないだろう。しかし、現地の生活が多少マシになることは考えられ、このことはモルドヴィア共和国当局の連邦中央におけるロビー能力が思いのほか高まっていることを物語っている。


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