服部倫卓のロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪(ブログ版)

私のホームページ「ロシア・ウクライナ・ベラルーシ探訪」(http://www.hattorimichitaka.com)のブログ版です。

 このところのロシア政官界の動きを見ていると、プーチンが新聞で論文を発表したり演説したりするたびに、それに機敏に反応し、それを政策として肉付けし前倒しで実行していこうとする動きが目立つ。何やら、もう新政権が発足したみたいであり、政府・与党一体となって「プーチン公約すぐやる隊」として動いているかのようだ。HPロシア・コーナーのNo.0171で紹介したニュースなども、その一環であろう。

 No.0166で整理したように、プーチンは政策論文シリーズの第5弾として、「公正の確立。ロシアの社会政策」という論文を2月13日に発表したわけだが、社会問題は国民の直接的な関心事であるだけに、プーチン公約の推進がとりわけ急がれているのではないかと推察される。こちらのニュースによれば、シルアノフ蔵相は記者団に対し、プーチン氏が社会問題論文で主張した政策を実施しても、他の財政歳出をカットすれば、財政バランスを崩してしまうほどの歳出の大幅な増大につながらないという認識を示した。また、こちらのニュースによれば、シルアノフ蔵相はプーチンが提唱している「贅沢税」につき、おそらくそれは不動産に対する課税になり、高級車については車両税の馬力当たりの税率を引き上げることによって対処することになる旨発言した。

 ずっと気になっていたテーマであるが、良い機会なので、ここでまとめておく。このところ躍進著しいロシア・ダゲスタン共和国のサッカークラブ「アンジ・マハチカラ」が、かねてから噂されていたとおり、名将として知られ、ロシア代表を指揮したこともあるフース・ヒディンク氏を、監督として迎えることが決まった。本件に関しては日本語でも、こちらの記事などで情報を得ることができるので、私としては側面的な情報を補足したい。

 ダゲスタン共和国というのは、ロシアの北カフカス地域に所在する一連の民族共和国のなかでも、とりわけ人口が多く、また複雑な民族事情を抱えたところである。そもそも「ダゲスタン人」という単一の民族があるわけではなく、「ダゲスタン諸民族」と呼ばれる少数民族の集合体によって住民が形成されている。アンジ・マハチカラというサッカークラブの歴史は比較的新しく、ソ連末期の1991年に設立されたそうである。個人的に「アンジ」という言葉の意味が気になっていたが(どうしてもストーンズの歌を連想してしまう)、今回調べたところ、クムク語(ダゲスタン諸民族の一つであるクムク人の言葉)で「真珠」という意味であり、マハチカラ市の地がかつてクムク語でそう呼ばれていたことから付けられたということである。アンジ・マハチカラはその後ロシア・プロサッカーリーグの1部および2部をさまよっていたが、近年急速に力を付け、2009年に1部で優勝し、2010年シーズンからロシア・プレミアリーグに参戦している。

 そして、2011年1月に、大富豪として知られ、ダゲスタン共和国の古都デルベントの出身であるスレイマン・ケリモフ氏がアンジ・マハチカラのオーナーとなった。ケリモフ氏の人物像に関し、日本語で得られる情報でおそらく一番優れているのは、私が編集している雑誌に掲載した坂口泉「不死身の大富豪スレイマン・ケリモフ」『ロシアNIS調査月報』(2007年8月号)だと思うので、機会があったら参照していただきたい。私のHPでも先日、ロシア・コーナーのNo.0167で関連情報をお伝えした。ただし、ロシア紙に掲載された情報によると、正確に言うとケリモフはアンジを買収したのではなく、クラブの維持費およびインフラ整備費を負担することと引き換えに、アンジの株100%を無償で譲渡されたのだという。それまで、アンジの株の49.9%をダグネフチェプロドゥクト社(マゴメドフ・ダゲスタン共和国大統領が当時のオーナー)が、別の49.9%を家電量販チェーン「エルドラド」の共同オーナーの1人ヤコヴレフが保有していたが、100%をケリモフが無償で取得することになった。その代りケリモフは、選手のサラリーや新規獲得などに毎年3,000万~5,000万ドルを、さらにインフラ整備に2億ドルを投資することを約束したという。アンジは4万人収容のFIFA基準を満たす新スタジアムの建設を計画している。

 20120218hiddink

 ベラルーシという国についてはしばしば、「なぜあんな酷い独裁者なのに、国民が立ち上がらないのか?」という疑問が外部から呈される。ベラルーシの民間シンクタンク「独立社会・経済・政治研究所(IISEPS)」から、最新の2011年12月の世論調査結果を盛り込んだニュースレターが届いたので、そのあたりのところを改めてつらつらと考えている。

 2011年はベラルーシにとって、経済危機の年だった。IISEPSの調査でも、「2011年はベラルーシにとって前の年よりも困難だった」と答えた回答者が74.7%に上っており、これはリーマンショックの時期よりもはるかに高い比率である。

 その結果、2010年12月の大統領選の時点では53%あった国民のルカシェンコ大統領に対する支持率は、2011年9月には20.5%へと急落した。これは、これまでで最も低い支持率である。ただ、外貨交換の制限措置を解除したことなどで、国民の生活が多少安定に向かい、支持率も2011年12月には24.9%まで持ち直している。

 さて、今回、私が注目したのが、IISEPSの世論調査のなかにある「貴方は自分のことを現政権に対する反対派(opposition)だと思うか?」という設問である。その回答を時系列的に跡付けてみると、下図のようになる。ルカシェンコの支持率が底に下がった2011年9月ですら、現政権に対して自覚的に反対している向きは、3割弱にすぎなかった。自分を「反対派」だと自覚するということは、ルカシェンコ政権のあり方やその政策路線に対し原則的に同意していないということを意味していると考えていいだろう。逆に言えば、経済危機で市民の生活が悪化すれば、当然多くの国民は不満を抱き、ルカシェンコの支持率が下がったりはするが、そうした批判の声は原則的というよりも流動的なものであり、社会・経済状況が改善すればルカシェンコの支持率もある程度持ち直すし、増してや多くの国民がルカシェンコ体制の打倒のために自ら立ち上がるようなことは考えにくい、ということにならざるをえない。

 もう一つ特徴的なのは、現政権への支持が低下しても、それが野党への支持にはまったく結び付かないという事実である。大統領を信頼するという回答者は、2010年12月の55.0%から、2011年の9月には24.5%に落ち込んだ。しかし、野党を信頼するという回答者は同じ時期に、16.3%から12.3%へと、こちらも落ち込んでいるのである。というわけで、現時点では、現体制に取って代わる受け皿が存在しないなかで、時々の社会・経済情勢に応じて、現政権の支持率が単に上がったり下がったりしているだけという状況である。
20120217belarus

 ウクライナで重要な閣僚人事があったので、まとめておく。

 こちらのニュースによると、2月14日、ヤヌコーヴィチ大統領はクリュエフ第一副首相兼経済発展・商業相をその職から解き、国家安全保障・防衛評議会の書記に任命した。なお、クリュエフ氏はこれまで、EUとの連合協定および自由貿易協定の締結交渉も担当していた。また、これまで国家安全保障・防衛評議会の書記を務めてきたR.ボハティリオヴァ女史を、新たに副首相・保健相に起用した。この人事につきヤヌコーヴィチ大統領は18日、クリュエフには書記としてウクライナの安全保障強化という重要な課題が課せられる、重要課題の一つはエネルギー安全所掌、省エネ、有利な価格での、少なくとも欧州向け並みの価格でのエネルギー確保であると述べた。他方、ボハティリオヴァ女史に関しては、医療改革、社会政策戦略の策定に取り組むことになると述べた。

 一方、こちらの記事は、誰がクリュエフの後任の第一副首相になったとしても、その人物がアザロフに取って代わる首相候補の一番手になるとしている。記事によると、アザロフにとってみれば、クリュエフは首相就任の野心こそあったものの、それを急ごうとはせず、ナンバー2として都合の良い存在であった。しかし、誰がクリュエフの後任になったとしても、後継の首相候補の一番手となる。「いつ、誰が」というのが、現下ウクライナ政治の最大の焦点となっている。6月に地域党の党大会があり、そこで議会選挙の候補者名簿が決まるはずなので、新しい第一副首相がその名簿を率いることになろう。時間が限られているので、すでに有力な政治家でなければならず、しかも改革者というイメージが必要。現実的な候補となるのは3人しかおらず、絶対的な本命はいない。

 まず、最近蔵相に就任したV.ホロシコウシキーがおり、同氏がややリードしている。最近、「大統領の側近」というイメージができており、リオーヴォチキン大統領府長官も現在は同氏を押している。かつてヤヌコーヴィチ内閣でアザロフが第一副首相・蔵相として働いたように、蔵相が第一副首相になるというのは座りが良い。ホロシコウシキーは地域党での仕事を望んでいないのは事実だが、それはこれからの4ヵ月で何とかなる。ただ、ホロシコウシキーが蔵相になって1ヵ月にすぎず、まだ実績を示すには至っていないのがマイナスで、それゆえに第一副首相が4月まで決まらないということもありうる。

 また、B.コレスニコフ副首相・インフラ相がいる。ホロシコウシキーと異なりすでに副首相であり、ユーロ2012の準備という実績もある。第一副首相・インフラ相というパターンも、役所を代えて第一副首相・経済相というパターンも、両方ありうる。マイナスは、コレスニコフがアフメトフ派であり、最近ヤヌコーヴィチ大統領が自派以外の人物を要職に据えようとしないことである。ただし、大統領がリオーヴォチキン派の影響力を削ごうと考えた場合には、コレスニコフ起用もありうる。

 最後に、S.チヒプコが考えられる。副首相・社会政策相というステータスが彼の野心にも、改革派というイメージにも見合っていないことは明らか。マイナスは、地域党のなかで外様であることだが、ヤヌコーヴィチはそのことを問題視しておらず、リオーヴォチキンもホロシコウシキー擁立が上手く行かなかった場合にはチヒプコを押すかもしれない。

 その他、第一副首相候補としては、アキモヴァ大統領府第一副長官も挙げられているが、大統領は経済問題で同女史に頼っており、内閣による経済改革も同女史の補助によりコントロールしているので、大統領としては失いたくないはず。また、アキモヴァは省や地方で働いたことはないし、他の第一副首相候補を抑えるのには相当な権威が必要。S.アルブゾフ中銀総裁などは、将来的にはありうるかもしれないが、2012年ということはない。O.ヴィルクル・ドニプロペトロウシク州知事など、州知事からの抜擢なら、ありえないこともない。、

 HPロシア・コーナーのNo.0163でお伝えしたとおり、ロシアのプーチン首相は2月9日にロシア産業・企業家同盟の総会で演説し、そのなかで90年代に国有資産が不明朗な形で民営化されたことが尾を引いていると指摘したうえで、こうした過去に終止符を打つため民営化の受益者による国庫への納付金のようなものを検討すべきという考えを示した。これを受け会計検査院のステパーシン長官が2月17日付の『ロシア新聞』のインタビューに応じ、基本的にプーチン提案に協力する用意がある旨表明している。こちらのニュースが報じている。

 これによれば、会計検査院は90年代に実施された民営化の再評価、しかるべき納付金の額の計算を行う用意がある。90年代に資産を取得した額と、その実際の価値の差額を弾き出すことは、基本的に可能だ。必要があれば、司法の場での解決もありうるし、それに会計検査院等の管理機関が関与することもできると、ステパーシンは語った。

 2003年に会計検査院はロシアの90年代の民営化を総括する調査を完了しており、大部の報告書が作成された。ステパーシンによると、会計検査院はロシアの民営化の結果を分析し、それは欧州で最悪なものの一つであったということを、正直に指摘した。他方、報告書では、大規模民営化にしても、担保オークションにしても、法的には合法であり、当時の法律や大統領令に則って行われたということも述べられている。したがって、法的な観点からは、民営化の取り消しというのは、不適切である。ステパーシンによれば、この報告書が出たあと、何人かの大実業家が納付金の支払を申し出たことがあり、今日でも「不誠実な」民営化に対する補償を行う用意のある向きが出てくる可能性はある。自主的な補償なら何の問題もなく、大いに結構なことだ。肝心なのは、90年代の民営化の問題に終止符を打つことであり、過去についての真実を語ることで、今後の民営化を適切に行うことができると、ステパーシンは指摘している。

 こちらの記事によると、このほどThe Economist誌が世界200大企業を対象に、過去10年間で最も収益を挙げた株式のランキングを発表した。その結果、米アップル社に次ぎ、ロシア最大の銀行ズベルバンクが2位の座を占めた。ズベルバンクの場合、10年前に100ドルで取得した株式が、その後3,722ドルの収益をもたらした計算になるという。アップルの当該数値は3,919ドルだった。3位のコノコフィリップスは1,400ドルであり、1位と2位が圧倒的な数値であることが分かる。

 陳腐なことを言うようだが、ロシア経済研究者の端くれとしては、「10年前に買っておけば…」と思わずにはいられない。

 図の掲載のテストも兼ねて、こちらの記事を。

 ロシアのレヴァダ・センターが2011年12月に実施したロシア国民の社会階層意識に関する調査結果が、こちらのサイトに出ている。「自分はどの社会階層に属すと思うか?」という質問に対する回答をまとめたものである。最新の調査は2011年12月6~23日にロシア全国1,511人の成人を対象に行ったもの。過去3年間の回答結果の推移を、下図にまとめた。

 日本について、「1億総中流」などと言われて久しいが(最近は逆に怪しくなっているが)、ロシアも意外に中流意識が強く、現時点で国民の85%は自らを中流と見なしているという結果になっている。ただし、日本の場合は「中の上」という意識が主流なのに対し、今日のロシアではまだ「中の中」や「中の下」が圧倒的に多いという違いがある。図には参考までに、日本において中流意識が拡大し始めた時期に当たる1958年の数字を示しており(ウィキペディアより)、今のロシアはこれに見るような昭和30年代頃の日本の状況に近いと言えるかもしれない。

20120216middle

 ウクライナとロシア間で、「チーズ戦争」が起きている。こちらの記事によると、先週ロシア消費監督局がその地域支部に対し、ウクライナの3社の製造したチーズを回収するよう、指令を出した。3社の製品は植物油を含有しているためロシアの技術基準を満たしていないというのがその理由で、具体的にはプロメテイ社(チェルニヒウ州)、ピリャティン・チーズ工場(ポルタヴァ州)、ハジャチスィル(ポルタヴァ州)の3社がその対象。2月9日にロシア消費者監督局のオニシチェンコ長官とウクライナのピリシャジニューク農相が会談し、ウクライナ側が必要な文書をすべて提出することで合意した。しかし、その後2日間で状況が変化し、10日にはアザロフ・ウクライナ首相が、本件はウクライナ製品の流入を阻むためにロシア企業が画策したものだと非難、フリシチェンコ・ウクライナ外相もロシア消費者監督局の対応を非難した。ウクライナ側は本件につきWTOに提訴も辞さない構えだが、それが効力を有するのはロシアが実際にWTOに加盟した後のことになる、という。

 こちらのニュースによると、ロシア最大の銀行ズベルバンクは2月15日、オーストリアの銀行グループ「Oesterreichische Volksbanken AG (OVAG)」の東欧子会社「フォルクスバンク(VBI)」の株式を100%取得する契約に調印した。1年にわたった交渉が実り、ズベルバンクは晴れて国外市場に進出することになった。ただし、ズベルバンクがロシア国内でリテールを手掛けているのに対し、VBIはその実績は乏しく、中小企業との取引を主力としている。もっとも、東欧にはロシア企業が進出しているので、それらへのサービスという方向性が考えられる。VBIは300の支店、60万の顧客を有し、中東欧諸国のほかウクライナでも営業しており、オーストリアでの事業免許もある。総資産は6月末時点で94億ユーロ。ソ連崩壊から20年の時を経て、ズベルバンクがベラルーシ、ウクライナ、カザフスタンの3子会社に加えて、東欧に強力なネットワークを有する銀行の買収に乗り出したのは興味深いと、この記事は結んでいる。

 なお、別の記事は、ズベルバンクは東欧新子会社につき、「フォルクスバンク」という名称を放棄し、「ズベルバンク」というブランドで事業を展開する意向である旨伝えている。

 こちらのニュースによると、モルドバからの分離独立を唱えている沿ドニエストル共和国のシェフチューク新大統領はこのほど、同共和国はロシアから供給される天然ガスの決済ができていない旨認めた。15日、記者団に語ったもの。

 記事によると、大統領は以下のように語ったとのことである。すなわち、沿ドニエストルは現在きわめて厳しい経済状況にあり、ガスの決済は事実上行われていない。共和国内の経済を活性化し、マクロ経済状況を精査して、当座の支払を開始できるように条件を整えなければならない。ロシア側は、旧債務と当座の支払の2つに分けて、解決策を見出そうとする姿勢をとっており、それぞれに関する作業グループが設置されている。沿ドニエストル側も自分たちの提案を出しているが、市民や企業の所得を向上させない限り、向こう2年間で本件を好転させることは不可能である。

 一部情報によれば、沿ドニエストルはガスプロムに28億ドルの債務を負っているという。

 一方、2011年末にモルドバ本国のモルドヴァガス社は、ロシア・ガスプロムと、現行の供給・トランジット契約を2012年第1四半期一杯まで延長する契約を結んでいる。モルドヴァガスは1999年に創設され、持ち株比率はガスプロムが50%、モルドバ政府が35.3%、沿ドニエストル内閣が13.44%、少数株主が1.23%となっている。

 12月のウクライナ出張の土産話も、終わりに近付いてきた。

 西ウクライナのリヴィウで、せっかくだから何か郷土料理的なものを食べたいと思い、旧市街をさまよい歩いてレストランを探してみたのだけれど、どうもあんまり良い店がなかった。結局入った店は、お城の地下室のような感じで雰囲気はあり、豚のオブジェも楽しげだが、肝心の食べ物が今一つ。写真に見る料理の、手前右側はサラダなのだけど、冷凍野菜を解凍しただけといった感じ。左側のシチュー風の肉の煮込みも、ありきたりの味だった

P1050513

P1050510

 スレイマン・ケリモフ氏と言えば、ロシア、というか世界有数の富豪として知られる。2011年1月から同氏がアンジ・マハチカラというロシア・ダゲスタン共和国のサッカークラブのスポンサーになり、豊富な資金力でど派手に選手を買い集めていることが話題となり、最近日本での知名度も高まっていると思われる。同氏に関する「スレイマン・ケリモフ:秘密のオリガルヒ」と題する記事が、2月10日付の『フィナンシャル・タイムズ』に出た。ただ、私自身は、それを伝えた2月13日付の『コメルサント』紙でその内容を読んだ。以下、記事の要旨を簡単にまとめておく。

 ケリモフ本人も、その右腕のアレン・ワインも、ケリモフが米国の投資銀行の株式をどれだけ保有しているのかは明かそうとしない。いくつかのケースでは、出資比率は3%にも上るという。関係者によれば、これらの出資はしばしば、西側の銀行やヘッジファンドからオプションを通じて巨額の借入を行って実現したものだという。ケリモフの出資100に対し、80は銀行が担保として押さえているとのことだ。だが、それでもケリモフは堂々と、大口の株主として当該銀行の経営陣との会見を求めるのだという。そして、大銀行の幹部がケリモフのモスクワの自宅に招待されるまでになった。

 その際に、銀行家たちにとってケリモフはしばしば、クレムリンの延長上の存在で、政府と歩調を合わせて動いているように見えるのだという。ただ、ケリモフ自身は、自分が投資しているのは自前の資金であり、プーチンとは数年前に公式行事で一度会ったことがあるだけであると主張している。

 『フィナンシャル・タイムズ』が得た情報によれば、ケリモフは自らの西側銀行とのコネクションを活用し、クレムリンが推進しているモスクワ国際金融センター構想を後押ししようとしている。彼の助力のお蔭で、同プロジェクトはJPモーガンのジェイミー・ダイモン、Citigroupのリチャード・パーソン、Blackstoneのスティーヴン・シュヴァルツマンといった西側の大物金融家たちの支持を受けることができた。2011年10月28日に本プロジェクトに関する国際諮問会議の第1回会合が開かれ、彼ら全員が駆け付け、ケリモフがプレゼンを行った。

 HPのNo.0151、No.0148、No.0147など一連の記事で報告しているとおり、大統領選に立候補しているプーチン首相は、実質的に自らの選挙綱領に相当する一連の論文を新聞紙上で五月雨式に発表している。本コーナーではすでに第3弾の経済編までお伝えしたが、その後も「論文攻勢」は続いており、さらに2本の論文が発表されている。数が多くなってきたので、ここで改めて整理しておきたい。

●第1弾(総論・導入編)「集中するロシア ―我々が応えるべき要請―」(2012年1月16日付『イズベスチヤ』紙)。

●第2弾(民族問題)「ロシア:民族問題」(2012年1月23日付『独立新聞』)。

●第3弾(経済問題)「我々の経済的課題について」(2012年1月30日付『ヴェードモスチ』紙)。

●第4弾(政治問題)「民主主義と国家の質」(2012年2月6日付『コメルサント』紙)。

●第5弾(社会問題)「公正の確立。ロシアの社会政策」(2012年2月13日付『コムソモリスカヤ・プラウダ』紙)。

 正直、熟読している余裕はないが、関連する動きを少しだけ紹介しておく。こちらこちらのニュースによると、連邦議会の上下院が、プーチン論文第5弾の社会問題編を受けて、早くも対応に乗り出そうとしているようだ。下院の統一ロシア会派の幹部は、プーチンの社会問題論文を、下院の社会問題に関する取組のプログラムにしていく意向であると発言した。また、マトヴィエンコ上院副議長も、上院はプーチン首相が社会問題論文で示した提案を法制化していくことに労を惜しまない旨発言した。

P1050495 というわけで、Yahoo系の「ジオロク」はやめることにしたので、今まで「こっそりブログ」の方に書くことの多かったカジュアルな話題も、こちらのライブドアのブログにシフトすることにしようと思う。

 で、「こっそりブログ」の方で2月14日付で書いた記事の続き。西ウクライナ最大のショッピングモールである「キングクロス」には、フランス系のスーパーマーケット「アシャン」がテナントとして入っていた。店そのものは巨大だったが、モスクワのアシャン店舗を見慣れている側から言うと、モスクワのような爆食的な消費風景はなく、あまり賑わっていないような印象を受けた。

 私は黒海の港の研究をしているので、関連する情報としてメモしておく。こちらの記事によると、ロシア最大の港のノヴォロシースク港を操業する公開型株式会社ノヴォロシースク貿易港の国家保有株を、国営石油会社のロスネフチが取得するという動きがあるそうである。しかし、経済発展省がこれに反対している。

 記事によると、以前にセーチン副首相が、ノヴォロシースク貿易港の株25%をオークションなしで、ロスネフチが直接買収しようと動いていた。国家(国有資産基金)に属する20%と、ロシア鉄道に属する5%を、ロスネフチが直接買い上げるという案だった。同港が有する国家戦略的な重要性に鑑みて、拒否権発動が可能な数の株式を集め、それを独立の鑑定人が下した評価額で国営石油会社たるロスネフチが買い上げるというのが、セーチンの説明であった。

 これに対しナビウリナ経済発展大臣が14日、オークション手続きなしでのロスネフチへの売却には反対である旨、記者団に語ったものである。ただし大臣は、20%と5%をまとめて払い下げること自体には賛意を表した(ロシア鉄道のヤクーニン社長も先週、それを受け入れる姿勢を示している)。大臣はまた、港湾も自然独占という特質を帯びていることから、荷主が港湾サービスにしかるべくアクセスできるよう配慮する必要があるとの認識を示した。株主のうちのいずれかが拒否権を保持できるようぬすべきかどうかについては、投資コンサルタントの結論を待つべきである、とした。

 ノヴォロシースク貿易港グループは、取扱貨物量でロシア最大で、ヨーロッパ第3位の港湾オペレーター。同社は、2011~2013年の民営化リストに掲載され、民営化のコンサルタントはモーガン・スタンリーが務めている。同社には、ノヴォロシースク貿易港の本体のほか、レニングラード州のプリモルスク貿易港(2011年から)、ノヴォロシースク穀物ターミナル、ノヴォロシースク船舶修理工場、ノヴォロシースク貿易港船団、ノヴォロスレスエクスポルト、IPP、バルト・ステベ会社が加入している。

 こちらの記事によると、ロシアの民主野党の諸勢力の間で、大同団結の動きがあるようだ。以下、記事の要旨を紹介する。

 「国民自由党」の共同議長であるM.カシヤノフ、B.ネムツォフ、V.ルィシコフは、新たな民主連合ないし政党の設立をめざして動き出した。「ヤブロコ」、旧「右派連合」の一部、A.クドリン前副首相・蔵相、大統領候補の富豪M.プロホロフ、人気ブロガーのA.ナヴァリヌィーが加わる可能性があり、交渉が進められている。当事者たちは、もしもメガ政党の結成に成功したら、下院選で30%の得票が可能で、ロシアは違う国になる、としている。

 カシヤノフによると、国民自由党の幹部らは、すべてのリベラル民主派を広範な連合に束ねることを主導していくと、決定した。ネムツォフによれば、もしも政党登録に関する法律が簡素化されれば、プーチンは民主派政党を小党分立させて、仲間割れを生じさせえようとすると考えられ、そうなれば各党は2%を得票するのが精一杯なので、何とかしてスーパー政党を作らなければならないという結論に至った、ということである。

 リーダーたちが想定しているシナリオには、2通りがある。第1に、国民自由党とヤブロコがそれぞれのブランドを取り下げたうえで、すべての民主派が参加する新たな組織を作る。第2に、単一の政党への合流がならなかった場合、対等な参加者による連合体を結成し、候補者名簿の策定は選挙向けに最大の効果を挙げうるように決定する。資金拠出も対等の条件でなされ、たとえばプロホロフ1人が拠出するといったことがないようにする。カシヤノフ、ネムツォフともに、連合体の結成に向けた交渉は大統領選後に取り掛かるべきということを強調した。

 現在のところ、潜在的な参加者とのコンタクトは、「ロシアの政治状況に関する意見交換」という形で進められている。カシヤノフは、「プロホロフとクドリンは、野党の側に立つのかどうか、態度を決めなければならない。プロホロフはプーチンの下の政府で働く用意があると言っているし、クドリンの政治的立場も曖昧だ」と指摘。また、ナヴァリヌィーについても、政治家になるのか、社会活動家にとどまるのか、はっきりしないと指摘した。

 しかしながら、ヤブロコのリーダーの1人S.ミトロヒンは、挙がっている名前はあまりにも雑多であり、イデオロギーがどんなものになるのかさっぱり分からず、政党など作れるはずがない、連合体はまた別だが、新法はそうした連合を禁止することになるとして、懐疑的な見解を示した。プロホロフのYu.スラシチェフ顧問は、プロホロフとクドリンは定期的に連絡をとり、相互理解があり、新たな右派政党の結成の可能性についても話しているが、具体的な決定はないとコメント。ナヴァリヌィーは、民主連合の結成については聞いていないとして、ノーコメントだった。

 ウクライナのアザロフ首相が2月13日、自らのウェブサイトを開設した。http://www.azarov.ua/というのがそのアドレスである。むろん内閣のウェブサイトはこれまでもあったわけだが、今回開設されたページはURLに「gov」がないことから見ても、個人のページという位置付けになるのだろう。昨今では、スマホで情報を発信するアプリを提供する政治家がちらほらと出始めたものの、こういうオーソドックスなホームページを新たに開設するというのは、逆に珍しいかもしれない。

 おそらく、注目点は2つあるだろう。第1に、首相交代もささやかれるなかで、なぜこの時点でHPを立ち上げたのかということ。まあ、それほど深い意味はないのかもしれないが、もしかしたら、首相として生き残るために自らの存在感を誇示する、あるいは逆に首相解任を見越してその後の身の振り方のことを考え始めた、等々といった事情があるかもしれない。

 第2に、アザロフ首相のウェブサイトは、ロシア語・ウクライナ語のバイリンガルになっており、しかもロシア語の方がデフォルトになっていること。アザロフ氏は民族的にはロシア人であり、このHPにビデオが掲載されている記者会見を見ても分かるとおり、日頃からロシア語で発言している。ただ、ウクライナの公的機関のウェブサイトはほぼウクライナ語一辺倒だから、その意味でも本HPは個人色の強いものと言えるだろう。

 むろん、ロシア語を使うから、「親ロシア」などと考えるのは、ナンセンス。ここ数日のニュースを見ても、ロシア以外の石油・ガス供給源の確保に目途が立ったとアザロフ首相が発言したり、地域党現政権とロシアの関係は、ぎくしゃくしている。

 本田圭佑のCSKAからラツィオへの移籍が土壇場で頓挫したことが、様々な論議を呼んでいる。

 日本の報道のなかで、非常に目立ったのがこちらの記事。「本田圭佑、移籍破談でいつまで続く“監獄”生活。~CSKAにまつわる“何故”?~」というタイトルが物語るように、選手の意向を汲もうとしないCSKAを批判する内容になっている。私自身、決してロシアが好きで同国を仕事の対象にしているわけではないが、一応はそれで禄を食む者として、日本を代表するスポーツメディアに「ロシア人の辞書に『譲歩』という単語は存在しないのだろうか」などと書かれると、ドキっとするところはある。

 それとは対照的な評価を示しているのが、辛口で知られるサッカー評論家の杉本茂樹氏。同氏はこちらのコラムのなかで、現状ではラツィオよりもCSKAの方が格上であり、最高峰の舞台であるUEFAチャンピオンズリーグの戦いの場に身を置き続けるためにもCSKA残留が正解であった、と唱えている。

 私自身は、この2つのコラムとも、やや極端ではないかと感じた。まず、前者の記事はCSKAを金の亡者であるかのように書き立てているが、クラブが決められたルールのなかで利益を最大化しようとするのは当然であり、今回CSKAはルール違反をしたわけではないのだから、CSKAを一方的に非難するのは当たらないのではないかと考える。ただし、私自身、ロシア畑の人間としては本田がCSKAに長くいてくれた方が有難いものの、彼の現在の境遇は何やら蟻地獄にはまり込んでしまったかのようであり、気の毒には感じているが。

 他方、杉山氏の主張も、やや一面的であるという印象を受けている。杉山氏は、ラツィオよりもCSKAの方が現時点のクラブ・ランキングが上であること、コンスタントにチャンピオンズリーグに出場しているのはCSKAであることを根拠に、CSKA残留が正しい選択であると訴える。しかし、私は(個人的な都合で本田のCSKA残留を喜びながらも)本田本人および日本サッカーにとってはやはりラツィオの方がベターではなかったかと考えている。

 確かにロシアの国内リーグは、上から6チームくらいまではヨーロッパ・レベルだけれど、下位はかなりレベルが落ちるし、しかも地方遠征は移動距離や治安の困難も伴う。気候の厳しさは言わずもがなで、特に怪我がちになってきた最近の本田にとっては、ロシアの冬やルジニキ・スタジアムの人工芝は気の毒。だいたい、モスクワという街自体が、住んでいて一つも面白くないし(失敬…)、ストレスばかり溜まるところである。私はロシアを研究対象としているから、毎年モスクワにも行くし、味気ない地方都市も努めて訪問するようにしているが、ちょっと一般の日本人には勧められないというのが本音だ。むろん、観光客がモスクワやサンクトペテルブルグの観光地をスポットで訪れるだけだったら楽しいだろうけど、ロシアに暮らしてそこで働くとなると、それ自体がかなりの負担になると思う。

 その点、イタリア・セリエAの方が、リーグ内の格差はロシアよりも小さいだろうから、仮にチャンピオンズリーグに出れないとしても、国内リーグ戦だけでも充分に研鑽が積めるはず。国内遠征も、行く先々が風光明媚で、ホテルも居心地が良く、食べ物も美味しいのではないか。普通に考えれば、心身ともにポジティブな状態でサッカーに取り組めるのは、やはりイタリアだろうと思う。

 ただし、人間、恵まれた環境の方が良い結果を出せるとは限らないというのも、難しいところ。特に、本田のようなストイックな人間にとっては、モスクワとローマのどちらが本当に良いのかというのは、一概に言えない。一つだけ確実に言えるのは、当面残留が決まったのだから、今はモスクワで頑張ってくれということだけで、そんなことは外野が言わなくても本人が一番分かっているだろう。

 「ロシア産業・企業家同盟」と言えば、「ロシアの経団連」などとも呼ばれ、一頃は「オリガルヒの巣窟」などとも言われていた、ロシアの中心的な経済団体である。この産業・企業家同盟の総会が2月9日に開かれ、大統領選に立候補しているプーチン首相がこれに出席して演説を行った。なお、もう一人の大統領候補であるプロホロフ氏も、自身が産業・企業家同盟の幹部ということもあって、総会に出席したということである。

 総会におけるプーチンの演説については、首相サイトのこちらのページに、そのテキストが掲載されている。ただ、逐語的に紹介している余裕はないので、ここでは政治工学センターのA.イヴァフニク政治分析部長によるこちらの論評を、ごくかいつまんで、以下のとおりまとめておく。

 2月9日にプーチンが産業・企業家同盟の総会で演説したことは、選挙戦のハイライトの一つとなった。この演説でプーチンは、大企業の財界よりも、市民への訴求を重視した。まず、一握りの金持ちくらいしか利用できない長い新年休暇を短縮し、その代り5月初頭の休日を増やすという(この時期は市民が家庭菜園に精を出す時期)、市民の間で求める声の多いアイディアへの支持を表明した。

 その一方でプーチンは、ロシア社会にビジネス、私的所有に対する否定的態度が広がっているのは、ソ連時代をルーツとするというよりも、90年代に国有資産が不明朗な形で簒奪されたことに起因していると指摘、こうした過去に終止符を打つため民営化の受益者による国庫への納付金のようなものを検討すべきという考えを示した。ただし、英国で1997年に労働党政権が誕生した際に、サッチャー時代の民営化で過大な利益を得た向きが、埋め合わせのために重税を課せられた例こそあるものの、ロシアでは所有者も所有構造もその後変容しており、誰がどれだけの納付義務を負うか、弾き出すのは至難である。したがって、このテーマは、選挙が終わってしばらくすれば、フェードアウトするだろう。一般市民にとってみれば、プロホロフが大会で語ったとおり、すべての層のビジネスを「腐敗税」から解放することの方が、はるかに切実である。というわけで、プーチンのこの発言は、他人の財産をやっかむような人々へのウケを狙った大衆迎合的なポーズと言える。同じ層に向けてプーチンは、贅沢税を導入する必要があるという主張を繰り返したが、その際にもプーチンが財政赤字補填の観点ではなく、道徳的な側面を強調したのが特徴的だった。

 むろん大会での演説でプーチンは、大企業の犠牲を求めただけでなく、支援の姿勢も示した。たとえば、行政の許認可手続きの期間短縮や数およびコストの削減、関税や税制に関連した法令の評価制度、非資源部門への税負担軽減、建設許可の容易化、等々について語った。しかし、これらの提案はまったくの一般論として提示され、具体的な措置や期限についての説明はなかった。過去10年、ロシアの経済界は再三にわたってこうした提案を聞かされてきたわけだが、ロシアのビジネス環境は劣悪なままである。改善のためには、抜本的な制度改革が必要だが、産業・企業家同盟での演説でも、一連の新聞論文でも、プーチンはそのことを語っていない。

 それでも、大企業の代表者たちはプーチンの演説を熱心に聞き入り、ロビーですら彼を批判する向きはなかった。産業・企業家同盟は、2000年代の初頭は国と対等の立場で経済政策の基本的な方向性を決定付けていたものの、そのステータスを失って久しく、今では各自の個別の問題の解決を陳情するだけの聞き分けの良い存在になっている。昨今、ロシアの社会では劇的な変化が生じているわけだが、その変化が財界トップの姿勢を変えるところまではまだ至っていないようだ。

pda

 まず最初にお知らせ。このホームページのモバイル版を立ち上げました。スマートフォンや携帯電話からご利用ください。アドレスは下記のとおり。ただし、スマホからトップページ(http://www.hattorimichitaka.com)にアクセスすると、自動的にモバイル版に飛ぶように設定してありますが。

http://www.hattorimichitaka.com/pda.html

 自分のHPのモバイル版を作成してみたいというのは、旧来の携帯電話の時代から漠然と思ってはいたのだけれど、スマホ時代になっていよいよ避けて通れないなという気がしてきた。しかも、決定的だったのは、これまでスマホから私のHPにアクセスしようとすると、エラーになってしまっていたこと。フラッシュのアニメが悪いのか、フレーム割が悪いのか、はたまたジオシティーズというサービスそのものが悪いのかはよく分からないが、いずれにせよスマホで私のHPにアクセスすると、いったんは表示されかけるものの、すぐに「URLが存在しません」みたいな表示に切り換わってしまっていた。このスマホ全盛の世に、そういう状態を放置することはとても気持ちが悪いので、とりあえず策を講じることにした次第。

 しかし、実際にモバイル版をご覧いただくと、「何だよ、文字大きくしただけじゃん」と言われそうである。そのとおり、これは新着記事をシンプルに並べて、文字を大きくしただけのページである(当然のことながら、PCで閲覧すると、文字がどデカかく表示される)。でも、私の場合HPはすべて手作りだから、これだって思案を重ね、試行錯誤を経て、ようやく実用的に閲覧できるページに仕立てたのである。スマホからアクセスしたら自動的にモバイル版に飛ぶ設定なんて、訳が分からなくて、ほとんど涙目でこぎ着けたんだからさ。アホだからJAVAのスクリプトとか書けないんだよ。私の今のリテラシーでは、これ以上無理!

 まあ、もうちょっと時間的余裕があったら、勉強をして、ちゃんと見栄えのするスマホ・サイトを構築してみたいが。その点、ホームページ・ビルダーだと、スマホ・サイトのデザイン雛形が用意されていたり、PC版のHPを更新するとそれが自動的にスマホ版にも反映されるような機能があるらしいんだよね。いいなあ、簡単ソフトは。私も今さらながらDreamweaverからホームページ・ビルダーに乗り換えようかなあ。せっかくDreamweaverにも多少慣れてきたところなんだけど。

 ただし、私のHPは写真や図表も多いことだし、あくまでもPCのHPがメイン。モバイル版では、図版は省略するし、諸々至らないところもあると思うけれど、あくまでも簡易版なので、ご容赦ください。

 それにつけても、私のIT環境は、この半年くらいでかなり変わった。その直接のきっかけは、昨年10月にiPod Touchを購入したこと。その経緯については、以前こちらこちらで述べたとおり。そこに書いたとおり、iPod Touchは単なる音楽プレーヤーというよりも、通話のできないスマホのようなもので、WiFiでネットに接続できるので、ウェブやメールが使えるのである。私はその後、このiPod Touchで出先でもWiFiに繋がるように公衆無線LANサービスに加入したりアプリに目覚めたりと、iPod Touchが垣間見せてくれるスマホ・ワールドに徐々に引き込まれていった。それが高じて、「スマホでロシア・NISのニュースをチェックする」なんてレポートを発表したりもした。

 そして、昨年暮れには、フェイスブックを始めてみた。そもそも私は、一方的な情報発信をしたいタイプであり、SNSで他人と繋がりたいなんてことはあまり思わない人間である。だから、自分のHPにも、ブログにも、コメント欄は設けていなかった。私にとってウェブでの情報発信はあくまでも、媒体を紙から電子に置き換える(あるいは後者が前者を補完する)だけのもので、双方向的なやり取りは拒絶していた。私の書いた文章を引用・批評していただいたりすることはウェルカムだけど、それは各自やってください、というスタンスだった。

 しかし、フェイスブックに関しては、世界情勢を読み解く鍵にまで浮上しており、どんなものなのかという興味はあった。そうしたなか、12月にウクライナ出張に出向いた際に、機中で読もうと思って『日経トレンディ―』を買ったら、「3分で使えるフェイスブック」というオマケ本が付いてきて、それを読んだらフェイスブックへの関心が膨らんでしまった。これは、もしかしたら自分の勤務先の情報発信ツールとして使えるかもしれないので、まず個人で試してみようと思い、始めることにした。実名制が基本のフェイスブックなら、生産的なやり取りも可能かなという期待もあったし。もっとも、本音を言えば、ロシア関係のアプリ漁りが一段落してしまい、他にもiPod Touchで遊ぶ何か面白いものはないかという気持ちもあったかもしれない。

 フェイスブックを始めてみたものの、前掲の「3分で使えるフェイスブック」には、「見ず知らずの人からの友達リクエストは断るべき」と書いてあったので、それに倣っている。そもそもがシャイな性格なので、フェイスブック上で知り合いを見付けても、自分からは友達リクエストを出さないというスタンス。なので、今のところ「友達」は十数人しかいない。だから、フェイスブックの持つ情報伝播力のようなものは、まだ実感できない。ただ、不思議なもので、SNSを疑問視していた私でも、友達リクエストが来たり、コメントや「いいね」をもらえると、妙に嬉しかったりするものである。恥ずかしながら、新しい自分を発見しつつあるというか。そんなわけで、私が勧めるのもなんですが、皆さんもフェイスブック、どうですか?

 で、私の場合、やると決めたら、とことんやるタイプなので、私のこのHPの各記事にも、フェイスブックの「シェア」ボタンを付けることにした。しかし、日々、記事を書くだけでも大変なのに、フェイスブックに対応したり、並行してモバイルサイトも更新しなければならず、私の場合それを全部手作業でやってるから、やたら手間が増えたなあ。なお、フェイスブックに加えて、ツイッターのボタンを付ける実験もしてみたんだけど、そちらの方は技術的にあまり上手く行かず、依然としてツイッターには抵抗感もあるので、ツイッターはとりあえずやめにした。

 目下のところ私が思案しているのは、近日中にスマホを買うべきかどうかということ。iPod Touchでスマホの美味しいところはだいたい体験できているつもりだけれど、やはり真正スマホ・ユーザーになりたいとう願望はある。携帯はドコモに加入しているので、アンドロイド端末を買うつもりだ。ネットや雑誌で、最新機種を比較検討する日々。でも、日系メーカーの端末を買いたいのに、どう考えても日本勢は現状ではサムスンのギャラクシーに見劣りし、購入に二の足を踏んでしまう。買えないうちに好奇心や知識ばかりが肥大化し、スマホ耳年増になりそう。

 雑誌の編集作業に追われ、ここ数日、ロシアのニュースのフォローが行き届かなかった。で、これはその間の話題だが、こちらのニュースによれば、プーチン首相は2月7日、旧ソ連諸国に対するビザ制度の導入は、これらの国々がロシアの影響力圏から最終的に離脱してしまうことにつながると発言した。

 プーチンは、自らの選挙代理人らとの懇談の席で、移民問題に触れ、以下のように述べた。「昨日、政治評論家らと話した際に、彼らは(CIS諸国に対し)ビザ制度を導入すべきと言っていた。貴方たちに私の立場を知っておいてほしく、それは国民にも秘密ではないが、旧ソ連諸国にビザを導入することは可能ではあるが、その場合我が国は、それらの国々を完全に失ってしまう。同諸国では現在それでなくてもロシア語が追いやられており、今後自由なコミュニケーションもできなくなるし、追加的な制限が課せられ、ひいては同諸国を失い、我が国の影響力圏から離脱してしまい、結局は我が国を弱体化させてしまう」と、プーチンは述べた。

 プーチンによれば、否定的な影響は長期的なものとなり、ロシアの経済や国民の生活にも打撃となる。法の枠内で移民が働くことは正常であり、それはロシア経済にとって不可欠。必要なのは秩序をもたらすことであって、不法移民と彼らを手助けするロシア国民への罰則を厳格化すべきである。1つのアパートに200人もの移民が居住登録されているような事例が横行している。他方、移民が奴隷的な労働に従事させられているという問題もあり、彼らが安心して働ける環境が必要だ。プーチンは概略以上のように述べた。

 ベラルーシを代表する政治評論家のV.カルバレヴィチ氏に、最新のベラルーシ事情に関するレポートを寄稿してもらった。そのなかで、ベラルーシの原発建設に言及した箇所があるので、差し当たりその部分だけ以下のとおり翻訳して紹介してみたい。

 ベラルーシの原発建設は、実に奇妙なプロジェクトだ。原発建設は、ベラルーシが直面する問題を何一つ解決せず、逆に新しい問題を作り出す。

 ベラルーシが厳しい経済難に見舞われているまさにその時に、大規模建設プロジェクトに着手するというのは、賢明なこととは思われない。ベラルーシの国庫には、そのために必要な財源はない。原発はロシアの資金で建設されようとしており、その目的のためにロシア側は100億ドルを貸し付けることになっている。

 ロシア側がベラルーシで実施しようとしている原発の設計案は、一切前例のないものであり、またしてもベラルーシ人が実験台にされようとしている。

 当初、原発建設の理由の一つとされていたのは、余剰となった電力を輸出し、貿易赤字を補填するというものだった。ところが、現在この地域では、リトアニア、ポーランド、ロシア・カリーニングラード州、そしてベラルーシと、実に4箇所で新たな原発の建設が計画されている。カリーニングラード原発などは、すでに建設が開始された。しかも、この地域一帯は産業の発展度が低い。ベラルーシの原発は同国北西のグロドノ州オストロヴェツでの建設が決まっているが、同州は産業の発展度でベラルーシ東部に引けを取る。バルト3国などは、ソ連時代の鉱工業をすでに放棄してしまった。

 かくして、余剰の電力をどこに持って行くのかというのが、大問題となる。ベラルーシの原発は元が取れないという恐れも出てくるわけで、その場合にロシアからの融資をどのように返済するのか?

 ロシア側は、ベラルーシの原発で生産される電力を輸出するための合弁企業の創設を、要求している。つまり、ベラルーシは借金を負い、原発を建てながら、電力販売収入はロシアと折半しなければならないわけだ。

 このシナリオは、ロシアにとって好都合だ。ベラルーシは、エネルギー面でも、資金面でも、ロシアに依存することになる。なぜなら、原発の燃料はロシアが供給し、核廃棄物もロシアで処理されることになるからだ。

 こちらの記事によると、ロシアのガスプロム社がドイツ・ブンデスリーガの名門バイエルンのスポンサーになるという観測が浮上し、早くもサポーターの間には反発する動きもあるようだ。

 現在、バイエルンのメイン・スポンサーはドイチェ・テレコムが務めており、一方ガスプロムは2007年からシャルケのスポンサーとなっている。内田篤人のユニフォームの胸のところに、ガスプロムのロゴが入っているので、日本でもお馴染みだろう。

 ところが、この記事によると、先日ガスプロムのミレル社長とバイエルンのヘネッサ社長が会食の場を設けたことから、スポンサーシップに関する観測が浮上した。これについてバイエルン側は、「ミレル氏とはとても和やかな雰囲気のなかで、レストランで楽しい昼食を共にした。ここで強調しておきたいが、我々はシャルケに取って代わってガスプロムをメイン・スポンサーとして獲得するつもりはない。そんな話すらしていない。しかし、何らかの形の協力関係は可能だ」と説明している。ガスプロム側も、同社がバイエルンのスポンサーになるという情報を否定している。なお、今回より少し前に、2012年中にもガスプロムがバイエルンのホームスタジアムのネーミングライツを獲得し、その後にユニフォームのスポンサーにもなるという情報が流れていた。

 このように、ガスプロムもバイエルンもメイン・スポンサーの可能性は否定しているものの、早くも先日のブンデスリーガの一戦で、「NO GAZPROM」との横断幕を掲げるサポーターが南スタンドに現れた。

 個人的には、ガスプロムがアジア・太平洋市場への進出を目論んでいるところでもあるので、金欠Jリーグがロシア資本を取り込んだりすることはアリではないかと思っているのだが……。

 全ロシア世論調査センター(VTsIOM)が先日実施した世論調査で、大統領選におけるプーチン優位の形勢は、首都モスクワ、「北都」ことサンクトペテルブルグでもほぼ同じであることが明らかになった。こちらのニュースが伝えている。

 この記事で示されているモスクワおよびペテルブルグの各候補の支持率を、No.159で紹介したロシア全国の数字と対比しつつ示すと、下表のようになる。ただし、まったく同じ調査の結果だったのかは明記されておらず、確信がない。一部数字が埋まらないが、悪しからず。

 ロシア全体モス
クワ
ペテルブルグ
プーチン524347
ジュガノフ885
ジリノフスキー86 
ミロノフ44 
プロホロフ41211
ヤヴリンスキー5 
投票に参加しない1187
回答困難10912

 要するに、両首都でも、ロシア全国よりも多少数字は落ちるものの、それでもプーチン優位の形勢に本質的な違いはないということになる。ちなみに、「誰々にだけは絶対に入れない」というアンチ・ランキングを見ても、プーチンの数字はモスクワで30%、ペテルブルグで25%であり、各候補の中でプーチンが最も低くなっている。ジリノフスキーに至ってはその数字がそれぞれ74%と72%に及ぶ。

 この調査結果につきVTsIOMのフョードロフ所長は、以下のように解説している。確かに今回の両首都でのプーチン支持率は、高い数字だ。ただ、現政権に対する大規模な抗議運動が始まったのが12月であり、多くが変化したが、それでもプーチンは12年間も政権に就いているのである。ミドルクラスは、モスクワのそれであっても、特にプーチンに反感は抱いていない。彼らは、既存の対抗馬にも、反政府集会のリーダーたちにも期待はできないということを分かっているので、本物の候補を選好する。その観点から言うと、大統領選に初めて出馬しているプロホロフの存在は、目立っている。

 ただし、両首都でもプーチンが優勢とする調査結果に関しては、野党や一部の専門家から疑問視する声も上がっている。たとえば、『政治工学』誌のポリャコフ編集長は、支持率の数字を操作するのは選挙戦の常套手段であり、今回の調査結果もそうしたものの一つだ、モスクワでプーチンの支持率が43%というのは過大であり、30~35%程度が妥当であろう、と指摘している。

 2月4日でモスクワを中心にロシア各地で開かれた反政権デモ、およびそれに対抗する政権支持集会の事実関係については、一般のマスコミが伝えているので、ここでは省略する。さしあたり、私の友人の特派員が書いた記事がこちらにあるので、ご参照いただきたい。私としては、インターネット新聞『ガゼータ』のこちらの社説が目に留まったので、その要旨を以下のとおり紹介しておきたい。

 反政府運動家たちはそろそろ、一般的なスローガンから、どのようにロシアの政治システムを変えていくべきか、3月4日後に一日一日、一歩一歩をどのように進めていくべきかを、提示すべき時だろう。

 親プーチン集会と反プーチン集会のどちらが参加者の数が多かったかということなどは、意味がない。肝心なのは、当局による動員がないにもかかわらず、また最悪の気候にもかかわらず、現政権に反対して数万人の市民が集まったということだ。彼らの抗議を、気まぐれと受け取ってはならず、これは出口を求める切なる声である。そして、その感覚は深まっている。政権を支持するデモに参加している者たちですら、政権のやり方を信頼はしていない。その親玉であるプーチンですら現在の権力体系は有効ではないと思っており、それゆえに自らの本物の支持者に、動員をかけた参加者を混ぜ、反政府側を真似た受け身の対応しかできなかった。つまり、政権は現在の状況への対応を迫られながら、実際にはどうしていいか分からないのだ。

 このように政権側が苦悩しているわけだが、だからといって反政府側の課題が楽になるわけではない。反政府集会で最も流布しているスローガンは「プーチンなきロシア」だが、それを近いうちに実現することは不可能で、だとすると形成されつつある社会運動が、失速し白けに変わってしまう恐れがある。大統領選でプーチンが勝つ可能性が相当高いとしても、反政府側の課題は変わらないのだ。反政府側は現在、選挙監視を大規模に普及させ、プーチンの大勝を阻止することを目指しているわけだが、もしもプーチンの勝利が微妙なものに終わったら、それは「雪革命」の終わりではなく、ロシアの漸進的な改造の始まりを意味するかもしれない。そのためには、選挙前はともかく、選挙後には単純なスローガンは控えて、日常的で長期的な活動への準備を進めなければならない。

 その際に、市民社会は、少なくとも2つの方向性を目指すべきである。それは、選挙法の本質的な修正に向け政権に圧力をかけ続けること、そして司法システムの抜本的な改革を求めることである。その2つとも、政権が改革に乗り出したかのようにも見えるが、不充分であったり、まやかしであったりする。現在提案されている政治改革は、あまりに不明確で、場合によっては権力の一層の独占を招く恐れもある。司法改革にしても、何ら改善はもたらしていない。この2つの改革は、ナショナリストからリベラルまで、政権に反対しているバラバラな勢力を束ねる結節点になりうるという意味でも、有効である。

↑このページのトップヘ